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◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう15◇◆◇◆

1 :名無し草:03/04/25 17:36
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、
 スレも華やぎます。

前スレ、関連サイト、お約束詳細などは>2-10のあたりにありますので
ご覧ください。特に初心者さんは熟読のこと!


2 :名無し草:03/04/25 17:38
◎前スレ「◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう14◇◆◇◆」
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/

◎関連スレ「まゆこ」
 http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 本スレのお約束やスレの今後について話し合うスレです。
 次スレのテンプレ相談もこちらで。

◎関連サイト「有閑倶楽部 妄想同好会」
 http://freehost.kakiko.com/loveyuukan
 ここで出た話をネタ別にまとめてくださっているところです。
 古いスレのログも置いてあります。

◎関連BBS「妄想同好会BBS」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 「有閑倶楽部 妄想同好会」の専用BBSです。
 本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレなどがあります。


3 :名無し草:03/04/25 17:38
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)

・原作者及び出版元とは全く関係ありません。

・名前欄になるべくカップリングを書いてください(ネタばれになる場合を除く)。

・名前欄にタイトルと通しナンバーを書き、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」
 という形で前作へのリンクを貼っていただけると助かります。

・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨を明記
 して頂けると次の人が続けやすくなります。

・苦手な方もいるので、性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記を。

・作品の大量UPは大歓迎です!

・作品UPが重なってしまうのを気にされる人は、UP直前に更新ボタンを
 押して、他の作品がUP中でないか確かめるのがいいかと思います。

・作品UPが重なってしまった場合は、先の書き込みを優先でお願いします。



4 :名無し草:03/04/25 17:38
◆その他のお約束詳細

・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話であっても、
 それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。

・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加
 しやすいように、なるべく名無しで(作家であることが分からない
 ような書き方で)お願いします。

・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など
 自由にお使いください。

・950を踏んだ人は新スレを立ててください(450KBを越えそうな場合は
 950より前に)。
 他スレに迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。



5 :名無し草:03/04/25 17:38
◆初心者さんへ

○2ちゃんねるには独特のルール・用語がありますので、予習をお願いします。
 「2ちゃんねる用語解説」http://www.skipup.com/~niwatori/yougo/

○もっと詳しく知りたい時
 「2典Plus」http://www.media-k.co.jp/jiten/
 「2ちゃんねるガイド」http://www.2ch.net/guide/faq.html

○荒らし・煽りについて
・時々、荒らしや煽りが現れるかもしれませんが、レスせずスルーしてください。
 指差し確認(*)も無しでお願いします。
 *「△△はアオラーだからスルーしましょう」などの確認レスをつけること

・荒らし・アオラーは常に誰かの反応を待っています。反撃は最も喜びますので、
 やらないようにしてください。

・放置されると、煽りや自作自演であなたのレスを誘い出す可能性があります。
 乗せられてレスしたら、その時点であなたの負けです。くれぐれもご注意を。

・どうしてもスルーできそうにない時は、このスレでコソーリ呟きましょう。
 「■才殳げまιょぅ■タロ無し草@灘民【3】」(通称:ちゃぶ台スレ)
 http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1032266474/l50
 (注)有閑スレのことだとバレないように呟いてください
   このスレで他の人のレスに絡んだり、このスレのログを他スレに
   転載したりは、しないでください。

○誘い受けについて
・有閑スレでは、同情をひくことを期待しているように見えるレスの
 ことを誘い受けレスとして嫌う傾向にありますので、ご注意を。
 語源などの説明はこちら
 http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/172

6 :名無し草:03/04/25 17:44
スレ立て乙!
このスレでも競作も連載もたくさん出ますように。

7 :名無し草:03/04/25 18:31
>1
乙カレーです。

8 :名無し草:03/04/25 20:14
>1
乙です。

   〃∩ ∧_∧
   ⊂⌒( ・∀・)〜♪ このスレも楽しみだな〜
     `ヽ_っ⌒/⌒c

9 :名無し草:03/04/25 20:19
現在、競作が13うpされています。
始まったのが20日の夕方だから27日の夕方が
締めきりかな?

実際こんなにたくさんの作品が出るとは全然予想してなかったよ。
雰囲気も味わいも違うものがイパーイ読めて
うれしゅうございます。

10 :競作参加作品のリスト:03/04/25 21:32
前スレの競作参加作品のURLリストです。参考までに・・・

(1)【ピュア】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/622-625

(2)【蛇の酒】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/631-636

(3)【珍しかなる酒】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/645-650

(4)【RONRICO151】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/658-662

(5)【How to … 】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/671-676

(6)【シングルトン】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/680-682

(7)【水面に映る月】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/685-689


11 :競作参加作品のリスト:03/04/25 21:32
(8)【KISS IN THE DARK】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/698-700

(9)【祝い酒にはまだ早い】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/703-707

(10)【レクイエム】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/714-719

(11)【旅立ち前夜】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/725-730

(12)【魅録の場合】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/738

(13)【燃えた花嫁】
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/740-745


12 :名無し草:03/04/25 22:43
イチジョーユカリヲタ??
ちがうか、有閑倶楽部ヲタか・・・

13 :名無し草:03/04/25 23:03
競作リストありがとう!
助かるワ。早速読みにいきまっす。

14 :名無し草:03/04/25 23:47
>10-11
まとめ乙です。

13個もあるなんて、とっても幸せな気分。
企画をまとめたみなさん、作者さん、ありがとう!

15 :名無し草:03/04/26 11:12
競作うpしまつ。
2レス使用。悠理の結婚式後の剣菱夫妻です。


16 :競作 宴の後-1:03/04/26 11:13
「ふぁー、疲れただよ。かぁちゃんは大丈夫だか?」
「えぇ、私もやっぱり疲れましたわ。でもそうもいってられないし」
「あーあ、とうとう悠理も嫁にいっちまっただか」
「そうですわね、本当にこんな日が来るなんてねぇ」
夫妻は着物をぬぎながらため息をついた。
「でも今日の悠理、本当にきれいでしたわね」
「当たり前だ、悠理はかぁちゃんに似て美人なんだから」
憮然としてそういうと、万作は酒瓶とグラスを持ってきた。
「あら、そのお酒は…」
「剣菱の特選大吟醸、生絞りだがや。特別な日に飲もうと
 思ってとっておいただ。さぁ、かぁちゃんも一緒に飲むだ」
グラスになみなみとついだ酒を百合子に差し出すと万作は一気に飲み干した。
「あなた、そんなに飲んでは体に悪いですよ。披露宴でもずいぶん飲んだのに」
「きょうは飲んで飲んで飲みまくるだ」
一応たしなめてはみたものの、万作の胸中を思うとそれ以上なにも
いえなくなってしまう百合子。
「では私もお相伴しますわ」
グラスの酒を一気に飲み干した。

「さすがかぁちゃん、飲みっぷりがいいだ」
「お酒がおいしいからですわ。でもあなた、このお酒は
 悠理の結婚相手と飲むとおっしゃってませんでした?」
「そのつもりだったが、気が変わっただ。悠理をやった上に
 どうしてうまい酒までやらなくちゃいけないだ」
悠理の結婚宣言と相手の挨拶以来、ふさぎこんでしまっていた万作。
今日の結婚式にも
「絶対でない」
といいはっていたのを百合子や五代が必死に説得し、最後は悠理が
「とうちゃんが出てくれないなら、あたい、結婚式なんかしない」
とまでいいだし、やっと出席の運びとなったのだった。


17 :競作 宴の後-2:03/04/26 11:14
「大体あの挨拶はなんだ、『悠理さんを幸せにします』だと。
 悠理はもうすでに幸せなんだ。幸せにするっていうのは
 今までが不幸だったってことじゃないだか」
ぶつぶつ文句をいいつづける万作に苦笑する百合子。
「なにが可笑しいだ、かぁちゃん」
すでに万作の目の焦点は空ろである。
「だってあなたのおっしゃること、私たちが結婚するとき
 実家の父がいってたのとまるで同じなんですもの」
百合子は昔を思い出して遠い目をした。
「そうだっただか?」
「えぇ、私も父にはずいぶんかわいがられましたからね」
「そうか、今度お義父さんと一緒に飲みにいくとするだか」
「そうしなされば、多分今のあなたの気持ちを一番わかってくれると
 思いますわ」
「結局、子供は親よりも好きな相手のほうを選ぶだか」
「だからこそ、手元にいる間は十分に慈しんだじゃありませんか。
 そのうち悠理たちに子供が出来たらあの子達もわかりますよ」
「そうだな、これでまたかぁちゃんと2人きりになっただ。
 せいぜい仲良くするだ」
「そうですわね、あなた」
グラスを傾けながら2人はいつまでも語り合っていた。


18 :名無し草:03/04/26 17:57
>宴の後
駄々をこねる万作が可愛いですね。
悠理の相手は果たして誰だったんだろう・・・清四郎か、魅録か、それとも
美童?でも万作さんにとっては誰でも一緒なんでしょうね。
愛しい娘をとられてしまったのだから。かあちゃんといつまでも
仲良くしてほしいもんだ。

19 :名無し草:03/04/26 20:58
>宴の後
存在を完全に忘れ去られた豊作さんが哀れ(藁

20 :名無し草:03/04/27 10:13
>宴の後

カポーが出てこなかったのが、この話では(個人的には)よかったなあ。
なんかしみじみしただ。
万作さん、悠理のことすごく可愛がってるもんね。

21 :エムエクース:03/04/27 10:43
突然ですが、競作の作家さん方にお願いがあります。
本日(日)の午後6時半でこの企画が終了しますが、
それ以降に

1.競作のタイトル
2.競作発表以前に書いた作品のタイトル(連載・短編・リレー・今回が初など)
3.競作参加の感想

などをお聞かせ願えないでしょうか。
どの作家さんがどの作品を生み出したのか、一ファンとしてとても気になっております。
もし良かったら、で構いませんのでお願いします。

22 :名無し草:03/04/27 11:35
カミングアウト
→作家同士の誉め合い&なれあい
→ジェラシー感じた誰かさんが「ウゼェよゴルア!」
→スレが荒れる


ちょっと勘弁してほしいのでつが・・・

23 :名無し草:03/04/27 14:06
え〜、、
>>22に禿げ同

24 :名無し草:03/04/27 15:08
いまさらでちょっと恐縮なんですが。
「燃えた花嫁」についてチョト質問。

あれって、
レス1……野梨子視点(妄想まじり)
レス2〜3…神視点(現実)
レス4〜5…野梨子視点(妄想まじり)
レス6……神視点(現実)
でしょう?

てことは、レス2の「てめえが振った女に、婚姻届の保証人なんて頼むかなァ」
の悠理の台詞はまぎれもなく、現実の悠理の台詞ってことで。
つまり過去において、悠理⇒魅録
現在は魅録⇒野梨子⇒清四郎×悠理
清四郎が悠理を選んだため、理性では諦めて魅録のプロポーズを受けようとした
野梨子だったけれど、結局精神がそれを拒否して破綻したってことかな。

読解力なくてスマソ

25 :名無し草:03/04/27 18:22
すべりこみで競作うpします。6レス使います。

26 :競作・うれしい1:03/04/27 18:25
ほんの少しためらっていた。
どうしてこんなに胸がドキドキするのだろう。
肩で切り落とした髪がわずかに震えている。
女はパーティー会場の前でわずかに立ちすくんだ後、思いきって
ドアを押して中に入った。
そのドアの横には『聖プレジデント同窓会』というプレートが
掲げられている。

ほんの少しパープルが入ったアルマーニの濃紺のドレス。
パーティーというものに久しぶりに顔を出した彼女は少し地味な
ドレスを選んでまとったつもりだった。
何年かぶりでの華やかな席に気後れがしたせいもある。
スタイルは栄光のティーンの頃には及ばないものの、
30代半ばとしたらまずまずのものを保っていた。
痩せることはあっても盛りを過ぎた女独特の肉がついたことは一度もない。
それは苦労し通しの結婚生活の賜物でもあった。
会場に入るとあちこちに華やかな人の輪ができていた。
さすが聖プレジテント学園の同窓生、すれ違う顔すれ違う顔皆テレビや雑誌で
見かけたことのあるものばかりだ。最も自分も不本意ながらその一人であった
ことを彼女は充分わかっていた。

背中まで届く優雅なウェービーヘア。胸下から腹部にかけて花の刺繍が入った
爽やかなウォーターカラーのロングドレスはさっきから参加者の視線を一人占め
だ。大胆に肩を出したドレスは彼女の日焼けした肌を引き立てている。
ドレスの裾が彼女の動きに合わせ慌ただしく動く。
やがてお目当ての金髪青年を見つけるとドレスは動きを止め、二人は仲良く
おしゃべりを始めた。青年の腕はウェービーヘアの腰に回されている。


27 :競作・うれしい2:03/04/27 18:25
見せつけてくれるもんだ
彼らの背後に立っていた男はウィスキーを口にしながら悪戯心を起こした。
ウェービーヘアの肩をつかむと耳もとで甘く囁く。
「失礼。あなたが余りにお美しいのでつい足が止まってしまいました、マダム」
びっくりして振り返った彼女は自分の後ろに立った男の顔を見ると
たちまち破顔する。
「魅録! お久しぶりですわね」
金髪青年はパートナーに近づく男に嫉妬のためか眉をしかめている。
魅録は彼の方に顎をしゃくった。
「紹介してくれよ……野梨子、新しい彼氏だろ?」
艶やかな笑みを浮かべて野梨子は頷いた。濡れた唇がキラリと光る。
「もちろんですわ、魅録。こちらジャン。フランス人ですの。ジャン、こちら
魅録。私の古くからのお友達ですのよ」
ジャンは人なつこい笑みを浮かべると魅録に握手を求めた。その笑顔が誰かを
連想させ魅録の胸に切ない思いがかげった。
「野梨子。いいニュースと悪いニュースがある。いいニュースは今日可憐が来る」
「そう、よかった……。私が連絡してもいつも居留守ばかりでもう諦めてましたのよ。
魅録が説得してくれたんですの?」
「いや、違う。それが悪いニュースさ。可憐を説得したは美童なんだ。つまり彼も
ここに来るわけ」
美童の名前を聞くと野梨子の顔から花のような笑顔が消えた。額に手を当てて
考えている。ため息をついた。
「そんな……困りましたわ。美童は来ないって伺ったから私も顔を出す気になりました
のに」
ジャンも困ったように首を振っている。魅録は黙ってグラスを空にした。
「別居してるからって旦那だろ。普通に話したら?」
「嫌ですわ、今さら話なんか……。いえ、別に私の方は構いませんのよ、美童が来ても。
ただ、彼の方が……どうなのかしら」


28 :競作・うれしい3:03/04/27 18:25
山のような皿を持ち走っていく女がいる。
「悠理!」
魅録が声をかけた。悠理は野梨子を見ると口にくわえていた焼き鳥を皿の上に落とすと叫んだ。
「……野梨子、お前!」
野梨子はあわててジャンの後ろに隠れる。魅録が悠理を押しとどめた。
「まあまあまあ。久しぶりなんだから悠理」
「まあまあじゃねえんだよ、魅録。こいつのおかげで俺達どんな目に合ったのか
忘れたのか!?」
「……ごめんなさい、悠理。魅録。皆にお祝していただいたのにこんなことになって」
「なって、じゃないだろ!?野梨子がしたんだろ!?その焼肉のタレみたいな男とさ。
お前!ジョンだかジャンだか知らないけど、美童の友だちだろ!?友だちの嫁さん
寝取るなんて最低だぞ、このフランス野郎!」
ジャンは日本語でまくしたてられて目を白黒させている。まだ日本語が全部は理解でき
ないらしい。野梨子が優雅な仕種で髪を手で払うと言った。
「仕方ありませんの、悠理。だって愛しあってしまったんですもの、私達。愛の炎は
誰にも消せませんの」
聞いてる方が赤面しそうな台詞を野梨子はしれっとした顔で言う。さすが美童と連れ
そっただけあるよな。しかし真面目な女のタガが緩むと怖いこと、怖いこと。
「んなろぉ〜。それが夫持ちの女の言う言葉かぁ」
「悠理だって恋をしてみればわかりますわ」
「愛だかなんだか知らないけどな、美童はどうすんだよ!あいつがどうなったか知って
るのか!?毎晩毎晩友だちんちに電話かけて野梨子が来てないか来てたらtelくれって
必死でお前を探してたんだぞ。お前がジャンのところいるって聞いた時、あいつ卒倒して
病院に運ばれたんだぞ!?」
「……知ってますわ。でも行かなかった、私は。行ってどうなるものでもありませんし」
魅録は二人のやり取りを眺めていた。野梨子は変わった。いや、変わってないのか。
昔から変なところで糞度胸がある奴だったしな。その行動はどうあれ、匂い立つような
いい女になった。しかし悠理はどうして変わらないんだ。30過ぎて焼き鳥の串くわえて
歩く奴はこいつしかいねえよ。


29 :競作・うれしい4:03/04/27 18:25
「見つけた」
ストレートボブヘアの女を後ろから誰かが抱きしめた。
女は振り返って微笑む。
「美童、久しぶり。誘ってくれてありがとう」
美童は可憐と同じくアルマーニのタキシードを着ていた。短く整えられた金髪にかなり
多くの白いものが混じっているのを見て可憐の胸が痛む。可愛い小鳥に逃げられた男の
心痛は想像以上に大きかったらしい。
話したいことはたくさん会ったが可憐は我慢した。今日は仕事があるのだ。
「……美童、電話で話したことだけど。わかってるわね。先に行ってるから誰にも
気づかれないように彼を連れてきて」
さっと美童にカードキーを渡すと可憐は背中を向けて歩き出した。

「野梨子、美童が来たぜ」
悠理の声に野梨子は身を固くした。こわばった表情の恋人をジャンがそっと引き寄せる。
しかし端から見ると彼の顔も緊張で真っ赤になっていた。野梨子は息を吸う。
いつまでも逃げてはいられない。ちゃんと話をしなければいけないのはわかってる。
でも−−何と言えばよいのだろう、愛してくれたあの人に、慈しんでくれたあの人に。
他の男が好きになりました。彼のことしか考えられなくなって、二人で手を取り合って
逃げました。そう言ったらいいのだろうか−−−。

「久しぶりだね、野梨子」
頭の上から懐かしい声が降ってきた。驚く程やさしい声に野梨子はハッと顔を上げ、夫の
顔を見る。彼の声が皮肉でも作っているのでもないことは、彼の顔を見てわかった。
「お、お久しぶり、美童」
「相変わらず綺麗だね、野梨子。元気にしているの?」「−−−ええ」
「そう。ならいいんだ」
それから美童はジャンの顔を見つめると静かにフランス語で喋り出した。美童の声に耳を
傾けていたジャンの瞳が揺らぎ、野梨子も耐えられず唇を噛んでこらえた。
やがて美童は魅録を連れて愛妻とその愛人を後にする。


30 :競作・うれしい5:03/04/27 18:25
キョトンとした顔で悠理が言う。「なんて言ったんだ?美童」
堪えていた野梨子の瞳から大粒の涙があふれて零れ落ちた。
「ゆるしてくれたんですの、美童。大事に、ジャンに私のことを大事にするようにって。
もし大切にしなかったら、その時は僕が連れて帰るからって……」
涙があふれて彼女の持っていたワイングラスに滴り落ちた。

「1512号室だってさ、魅録。どうしたらいい?」
「さっきあいつから連絡があった。万事OKさ。もうすぐここに着くはずだ」
「よかった。間に合わないかと思ってたよ」

ドアに背を向けてベッドに腰掛けていた可憐は、ドアが開き、又閉まった音が
したが振向かなかった。部屋の中に入ってきた人物はそのままドアのところに
立っている。
「何も言わないで。お願いだから黙ってあたしを抱いてほしいの」
男は軽く身じろぎをした。
「そして、教えてほしいの。私のために、私の夫のために。あなたが知っていること
全部−ー。警察が動いてるかどうか、知ってるんでしょう?」
軽く咳払いして男は喋り出した。
「知っているかいないかと言われれば、知っていますがね、可憐。僕は魅録じゃ
ないのでどうしようかと考えているところですよ」
可憐は振り返った。そして立っている男−−清四郎を見てあぜんとする。
「清四郎、帰ってきたの!?いつ?それに、どうして?」
少々皺になったジャケットにチノパンとパーティーには不似合いな格好の清四郎は
うれしそうに微笑んでいる。
「どうしてって、可憐が電話をくれたからですよ」
「私……電話なんかしたかしら」
「しましたよ、シリコンバレーまで夜中の3時にかけてきたじゃないですか。
私は失敗したわ、助けてちょうだい、清四郎って散々喚いて一方的に切って。
それで−−っていうのも変ですが助けに来ました」


31 :競作・うれしい6:03/04/27 18:25
可憐は信じられない気持ちで目の前の男を見つめていた。助けに来た?嘘でしょ?
アメリカから?「私、魅録に話があって……」
「君の旦那さんは去年、公共事業を自分の会社で受注するために馬鹿馬鹿しい程の金を
大臣に渡した。ところが最近公共事業がらみで次々と逮捕者が出て、次は自分の番だと
思ってびくびくしている。それで可憐は色仕掛けでも何でもいいから、警察関係の魅録
から情報を仕入れてこいと命令された。そうですね?」

可憐の目に涙があふれてきた。その通りだったから。恥ずかしい。なぜ清四郎が
そんなことまで知ってるの?アメリカにいたくせに。
「……悠理のとこが悪いのよ。剣菱がうちの仕事をどんどん取っていくから、
うちも資金繰りがしんどくなって、収賄とかに……」
「それが狙いだったんですよ」「え?」
清四郎は可憐に歩みよると目の下を親指で押さえた。鈍い痛みに可憐が後ずさる。
「昨日、キッチンで殴られましたね。昔の友だち相手に色仕掛けは嫌だと言ったら
ぽかりと。それも初めてじゃない、違いますか?」「……」

「可憐、君が助けを求めてきてから、僕はあらゆるところから君に関する情報を
集めました。そして君が結婚した相手は外面ばかりよくて妻には暴力ばかりふるって
いることを知ったんです。ここから可憐の救出劇は始まりました。悠理も魅録も
美童も野梨子もアメリカにいる僕に代わって実によくやってくれましたよ」
そう言って胸ポケットから一通の白い用紙を取り出した。
「離婚届けです。彼の方がもう署名、捺印済みです。あとは可憐が書くだけですよ」
「あの人が?離婚してくれるって?本当に?」可憐の声が上ずる。
「それから慰謝料もたっぷりくれるはずですよ。警察が来る前に僕が行って小切手
を切らせましたから御心配なく」
それから可憐に腕を差し出す。
「さあ、下へ行って皆と乾杯しましょう。可憐の新しい未来に。そして僕達にもね」
「清四郎、お願いがあるの?聞いて?」「なんなりと」
「今日は私死ぬ程乾杯するわ。私に、そして大事な皆に。嫌がらないでつきあってね」
「もちろんですよ、可憐。その為に途中で極上のワインを手に入れてきたんですから」


32 :名無し草:03/04/27 18:26
終わりです。ふー、間に合ったー。

33 :名無し草:03/04/27 19:13
それぞれのお酒について

【ピュア・ラブ】
 1980年に生まれた比較的歴史の浅いカクテル。日本人が考案。
 初恋をイメージしたカクテルフランボワーズの甘く酸っぱい味わい。薄オレンジ色が美しい。
 美童と悠理のほほえましい恋愛にぴったりですね。

【ハブ酒】
 マムシの数十倍ともいわれるハブの猛毒は、アルコールに漬けることにより無毒化しているので、呑んでも無害
 数百年もの昔から滋養強壮の酒として重宝されてきたらしい。
 なんか、めっちゃ精力増強しそう(藁
 ぜひともメンバー全員に呑んでほしいものだ。

【ワカメ酒】
 親父の浪漫。
詳しいことは↓ http://www.google.co.jp/search?q=cache:ukbxkPv2gwwC:member.nifty.ne.jp/rakugo/image/bare-kaisetu/wakame-sake.htm+%E3%83%AF%E3%82%AB%E3%83%A1%E9%85%92&hl=ja&ie=UTF-8
 お下劣なネタで笑わせてくれました作者さまw
 やっぱりあんたたちも、男だったんだねと。

【ザ・シングルトン】
 バーボン樽とシェリー樽に寝かせていて、甘味がありソフトな感じで非常に日本では受ウケが良かった銘柄
 この酒の命運は作中にあるとおり。
 豊作の感傷とうまく酒の逸話がマッチしていて、お題にぴったりな作品だと思いました。

【超特撰大吟醸(非売品】
 超特選大吟醸…精米歩合50%以下の吟醸酒のなかで、ランク最上ということ。
 高いものでは100mlで店頭価格15000円以上するらしい(驚愕)
 非売品ということは、酒造所独自で展覧会用に作った酒ということ。
 ……やるな魅録

34 :名無し草:03/04/27 19:14

【ロンリコ151】
ラムでは割と有名。ショットで呑むにはチョト強すぎ。カクテルにとっても使いやすいお酒。
ロンリコ・ラム社の製品。酒名はロン(ラム)とリコ(豊か)の合成語。
ホワイト(ライトタイプ)・ゴールド(樽熟成)・151(アルコール151プルーフ)がある。
151は強烈なラム。濃厚な香味をもつフルボディタイプ。
煙るように濃厚な可憐の色香と、感情の激しさにぴったりなお酒


【KISS IN THE DARK】
「暗がりの接吻」の名の通り、甘く、濃厚な風味のカクテル。
からみつくように濃厚な味わいがある。
初めてにしては、強烈すぎるキスに、これじゃ堪らなかっただろうなぁ悠理。


【チェリーブランデー】
リキュールの種類であって、ブランデーとは別物。
(実際にチェリーから作られるブランデーはキルシェという)
そのまま飲むと甘すぎるような気がするのは私だけかな。
魅録の口には合わないだろうな、確かに

【カミュ】
ブランデーの最高峰で知られるカミュ社が取り扱う銘柄のこと
たくさんの種類の銘柄があります。
ブランデー……魅録の大人で危険な(笑)魅力にぴったり。
是非とも、オプションにシガレットも付けてくだしぃ

【レミーマルタン】
カミュと同じくブランデーの最高峰で知られるイー・レミーマルタン社が取り扱う銘柄のこと
たくさんの種類の銘柄があります。

35 :名無し草:03/04/27 20:27
>33
乙!!
【ワカメ酒】
親父の浪漫。にゲキワラですた。

>うれしい
競作のラストでしょうね。乙でした。
文章こなれてて萌え所もありよかったんですが
酒の題目を生かしきれていないような…。
他の作品は一発で題目が伝わってきたので
余計にそう感じました。
でも競作でなかったら文句のつけどころのない普通に良作だと思います。

36 :名無し草:03/04/27 21:41
>33-34
まとめ、乙です。
とてもわかりやすい説明、THX!

>うれしい
「30過ぎて焼き鳥の串くわえて歩く奴」に笑いました。
確かに、そんなヤツァ悠理しかいない(w

37 :名無し草:03/04/28 00:38
>33−34
飲めもしないくせに、お酒が飲みたくナターヨ
ワカメ酒…実は知らなかった(恥)
なんのことをさしてるのか分からないままだったんだけど、
なんとなく調べないままにしてたんだ。

また2ちゃんねるで変な知識を手にしてしまった(笑)

38 :名無し草:03/04/28 01:20
>37
私も知らなかったYO!
読んだ後、ぐぐってみて、爆笑しますた
常識なのか〜?と思っていたが、そうでもないのね。ヨカッタ

39 :名無し草:03/04/28 02:02
>>24
亀レスですがその通りです。
分かり辛くて、こちらこそスマソ。

40 :名無し草:03/04/28 02:18
いえいえ、私が読解力ないだけですから
(だって、他の人ぜんぜん質問してませんし)

もひとつ。
>悠理が断腸の想いで記入した婚姻届
てことは、悠理はまだ魅録がすきなんですか?
それとも、過去の思い出として切ない思いをしただけですか?

いろんな人の感情が錯綜して、かなりコワーイお話ですね。
怖さの中にエロスを感じます。

41 :名無し草:03/04/28 02:44
>40
魅録に対する悠理の想いは、過去の切なさというイメージでした。
現在は清四郎とそれなりにラブラブのはず。

その割には「断腸の想い」ってえらいオーバーでつよね(藁
書いていた時は、この表現しか思いつかなかったんです……。
修行しなおします(藁
あんな暗い話を読んでくださって、ありがとうございました。

42 :名無し草:03/04/28 08:52
>燃えた花嫁
寺山修司の世界みたいで、個人的に壷でした。

43 :名無し草:03/04/28 17:37
>42
この時期に壷という字を見ると、思わずチーンとしたくなるw(板違い)

板違いついでにネタも書いちゃえ。
ガン○ムに当てはめてみますた。
シャア 清四郎   アムロ 悠理   ブライト 魅録
セイラ 野梨子   ミライ 可憐   ガルマ 美童

44 :名無し草:03/04/28 19:04
そろそろ連載を再開してホスィ・・・

45 :名無し草:03/04/28 20:02
ネタということで便乗して。
ガイシュツだったらスマソ

と○めきトゥナイトに


蘭世=悠理 真壁くん=魅録 曜子=野梨子 カルロ様=清四郎
アロン=美堂 フィラ=可憐 ついでに、望里・椎羅は、剣菱夫妻で(爆
いや、松竹梅夫妻ってのもありかも。それから蘭世=野梨子 曜子=悠理でも
ありかも・・・ 

46 :名無し草:03/04/28 20:02
下げ忘れた、スマソ・・・
逝ってきます。

47 :名無し草:03/04/29 00:56
>44
禿同

それとはまた別に
「有閑探偵社」はもう続きは読めないですか?
続きがずっと気になってるので、再開お願いしまつ

48 :名無し草:03/04/29 11:40
時代劇編が読みたい・・・

49 :名無し草:03/05/01 15:09
競作であんなに盛り上がったのに
急に寂しくなったのはなぜ?
連休で皆さん忙しいのかな?

50 :名無し草:03/05/03 04:25
誰もいない内にコネタを振り逃げ。
メンバーの誕生日って、虎の巻にも書いてないよね?
いつ頃だと思います?
勝手な想像だけど、悠理は4月1日か10月10日、
可憐は4月で、野梨子は3月っぽい気がする。
男性陣は思い浮かばないんだよな…。

51 :名無し草:03/05/03 08:58
>50
同感!
野梨子は2月か3月ぽいよね。
清四郎は5月かな。5月生まれって頭いいって聞くし。
あとの二人はう〜ん。確かに思い浮かばない。

52 :名無し草:03/05/03 09:20
>50
悠理は8月かなーて漠然と思てた。
野梨子は2月で可憐が10月くらい。
野梨子って秋とかも似合うから微妙かも。
魅録は6月かな、、、
美童は12月。
清四郎は4月か5月。

53 :名無し草:03/05/03 09:22
>51
てことは清野は一年近く歳が離れてるってことで、
清四郎の兄貴ブリがイイ感じにキマルなぁ〜妄想妄想

魅録は9月がいいな、ドライな感じで。


54 :名無し草:03/05/03 09:31
便乗して、さらにコネタふります
カポー別でベストな季節ってのはどうでしょう?

魅×野は激しく秋のイメージなのよね…切なすぎて。
清×野は初夏がよろすい。お堅い二人が薄着になってく季節。


55 :名無し草:03/05/03 10:32
清×野なら冬を推してみる。
竹林に舞う雪を眺めつつ縁側でお茶する二人。

魅×悠だったら夏だよなーやっぱ。バイクで海。


56 :名無し草:03/05/03 11:06
可憐は最初おとめ座かな?と思っていたけどさそり座の女の方が似合う気がするので、十月か十一月生まれだと思っている。
悠理はしし座というイメージがあります。

57 :名無し草:03/05/03 13:20
美童3月生まれの魚座って感じがしてました。

58 :名無し草:03/05/03 15:05
あ、私も>52さんとほぼ同じイメージ。
でも御大は、可憐を自分と同じ9月生まれの乙女座に設定しそう…。

59 :名無し草:03/05/03 16:21
清×悠の短編UPします。冒頭のみR気味です。4レス使用します。

60 :Irony:1:03/05/03 16:22

「……ぁああっ」
鼻にかかる甘い声は、五感を刺激して止まない。
美しく伝う背骨に舌を這わせながら、徐々に体勢を昇る。
ともすると崩れ落ちそうになる柔な上半身を右腕で支えた清四郎は、
じんわり汗ばむ彼女のうなじに唇を寄せた。
「はぁ……」
ストライプのピロウを握りしめる手には、細い血管が浮かび上がっている。
「悠理……」
月光へ晒された切ない声は、嘆息だったのかもしれない。


「素敵ですわね」
目の前に出されたジャスミンティーに手を伸ばす。
ウェッジウッドのティーカップを、野梨子はいたく気に入っていた。
無駄の省かれたデザインと曇りの無い純白さは、彼女を惹きつけた。
告げられた時、清四郎は返答に迷った。
視線を数ミリ彷徨わせているうちに、野梨子が続ける。
「文字盤が透明でしょう。変わってますわ」
ああ、これですか、と清四郎は努めて淡白に返し、上着から覗く腕元に目を遣った。
野梨子の言うように、常ならば有る円い文字盤はそこには見当たらない。
かわって、中の微細な部品が静やかに存在を誇示している。
カチ、カチと時は正しく刻んでいて、持ち主に良く似ている、と野梨子は思った。
「軽いし丈夫だし、使い易いですよ」
心持ち意外な気がするのは、以前彼が愛用していたそれが革ベルトであった所以だろう。
「贈り物ですの?」
カジュアル感漂う時計は、彼が択んだ物で無いことは明白だった。
「ええ、まぁ」
交わした言葉の先に、曖昧な笑みだけが残された。


61 :Irony:2:03/05/03 16:25
幼馴染と別れた清四郎は、帰宅するなり時計を外した。

『Irony』
皮肉。
この意味を知っている程、策士だとは思いたくないが。
彼女と――悠理と肌を重ねるようになってから幾多の月が流れていた。
共に過ごす時間が積もってゆく程、彼女を遠くに感じた。
二人の間には同級生であること以外、余り多くの共通点を持ち合わせていなかった。
あうんの呼吸を求めるならば、より適当な相手が居るはずだった。
いつだって、右と言えば、左。晴れと言えば、雨
思いは交錯するばかりで、そこに繋がりを求めることはとても困難な作業だった。
それでも不思議と、合わせる身体は心地よかった。


落ち葉が強く舞った日の夕暮れ。
校舎を被う蔦の複雑な絡まりは、清四郎を憂鬱にさせた。
悠理が、細長い包みを差し出す。
「お前にやるよ」
別れ話だと思っていた清四郎は若干面くらいながら、ゆっくり解いた。現れた箱の中には、時計があった。
針が進む度、ローターが忙しなく動く。まるで、時を急かすように。
「こういうの、持ってないだろ」
彼のクローゼットの大半は、ボタンダウンのシャツとタックの入ったパンツで占められている。
コールハーンの革靴が、きちんと磨かれていない日は無かった。
そして左腕にはアンティーク時計をはめていた。
クロコベルトは老成しており、彼が愛用するブックカバーを彷彿とさせた。
「ありがとう」
純粋に嬉しかった。たとえ服装とは雰囲気を逸しても、いつしか時計の方が
自分に馴染むだろう――と思った。
「使ってくれよな」
柔毛が風にさらわれる。その日を境に、季節は冬隣りへと移っていった。


62 :Irony:3:03/05/03 16:26
清四郎には特筆すべき癖は無く、強いて上げれば耽る時に頬杖をつくことぐらいだった。
しかしその日以降、ベッドに横たわり時計を手に取ることが慣しとなった。
大小の歯車は互いに噛み合い、本来の役割を忠実に果たしていた。
ローターの動きが見たくて、幾度もそれを振る。
冷静に考えると、随分子供じみた所作だと思う。
しかし、日が暮れても飽きることは無かった。


あれから。
雪白の大地と花散る季節を通り過ぎても、腕時計はひどく不似合いに見えた。
皮肉屋の彼は、自尊心で均衡を保ってきた。
しかしそれはときに脆く、まして悠理を前にしては、何の力も持たない鄙鳥と同じだった。
目にする笑顔は、どこまでも眩しく。
触れる肌質は、どこまでも芳しく。
清四郎にとっての悠理は、唯一無二の存在になっていた。
けれど、求める度に染み入る距離は彼を孤独にさせた。
綿毛のようにふわふわと空を漂いながら、やがて彼女は消え去ってしまうのではないか。
そんな焦燥感が、清四郎を独りにさせた。何より確かなものを欲していたのは、清四郎自身だった。

カチ、カチ。
時は、それでも未来へ向かっている。


63 :Irony:4:03/05/03 16:31
「これ、いっつもしてるな」
腕の中の人が、夢現に呟く。
「良かった。ピッタリで」
逞しい腕に回されたシルバーを見止め口端に笑みを作った悠理は、次に、深く息を吐いた。
安堵。
「どうしてですか?」
「何が?」
「……これを僕にくれた理由、ですよ」
端正な眉が歪になる。太陽が雲隠れしたかのような、途方に暮れた顔をしていた。
「……何でそんなこと訊くんだ?」
逆に返され、言葉に詰まる。『Irony』だから。そんな屁理屈など、
口に出来るはずも無い。
「店で見つけた時、すっげ〜カッコ良かったんだ、それ。
お前、いっつも革のベルトだったから、たまにはいいんじゃないかって思ってさ」
それに。彼女は一呼吸置いた後、きわめて慎重に付け加えた。
「針の音を聞く度に、あたいのこと思い出して欲しい。一日のうち一秒でいいから」

もう少しで。彼は決定的な過ちを犯すところだった。
悠理は悠理なりに、清四郎との隔たりを埋めようとしていたのかもしれない。
絶え間無く流れる大きな河は、決して彼らを遠ざけるものではなかった。
逆流の中で、唯一つの想いだけは同じだった。
それだけは確かだった。それだけで良かった。

橋を架けよう、と清四郎は思った。二人を繋ぐ、大きく頑丈な橋を。
そして、彼女に会いに行く。世界はいつだって速く、ややもすれば河岸に取り残されてしまう。
それでも彼は、必ず彼女の手を取る自負があった。そして二人で普通に幸せになろう、と心に誓った。

『Irony』は彼の代名詞。
そして彼と彼女を結ぶ、掛け替えのない橋でもあった。
今日も、明日も、時は正しく真っ直ぐに進んでいく。一つの想いを、秒針に乗せて。


64 :名無し草:03/05/03 16:32
終わりです。

65 :名無し草:03/05/03 21:27
>Irony
…イイ

66 :名無し草:03/05/03 23:24
魅録の誕生日ですが、おそらく9月以降ではないかと思っています。
というのも、エメラルド事件の時点で彼は免許を持っていませんでした。
車の免許は誕生日の一ヶ月前から取りにいけるので
魅録ならさっさと取りに行ってるだろうと思うんです。

8月が誕生日の場合、メンバーとのつきあいを優先した
あるいは夏期休暇は教習所が混むのでパスしたとも考えられますが。

67 :名無し草:03/05/03 23:26
>Irony
す、凄いレベルだ・・・。かっこええ・・。
文体もエピソードの積み上げも、小道具や単語の選びも、起承転結も
物凄く洗練されてて、感動すら憶えマスタ・・・。
いいひと時を味わわせてくれて、サンクスコ!


68 :名無し草:03/05/03 23:54
悠理が選ぶのはSWATCH。
何てイメージ通りなんだ〜!

69 :名無し草:03/05/04 00:17
え、IronyはSWATCHなの?

70 :名無し草:03/05/04 00:18
ごめん、あげちゃった。スマソ

71 :名無し草:03/05/04 00:21
>Irony
カコイイ!
最近魅×野多かったから清×悠読めて嬉しい。

遅レスでスマソなんですが、星座のイメージ私は↓かな。
ちょっと占星術勉強してるからマジレスですが・・・
悠理⇒小細工できない天真爛漫、意外と面倒見よい⇒獅子座
可憐⇒しっかりしてるのに夢見がち、几帳面そう⇒乙女座
野梨子⇒神秘的魅力、洞察力、意外とAll or Nothingな性格⇒蠍座
魅録⇒スピードに縁あり、顔広い、さっぱりてる⇒射手座
美童⇒優しくて女にマメ、憎めない性格⇒魚座
清四郎⇒用心深い野心家、カリスマ性、恋愛に奥手(?)⇒山羊座


72 :名無し草:03/05/04 00:53
>69
「SWATCH IRONY AUTOMATIC Body and Soul 」
金属バンドタイプなのではないかと。


73 :名無し草:03/05/04 09:14
>71
おおっホントにマジレスだ!!サンクス
う〜む、と唸っちゃいましたよ。
完璧主義の清四郎がヤギってとこがイイ!
ふつうだったら水瓶AB型とかになるタイプだよね。
能力とプライドは努力と真面目さによるものが大きいってことでしょうか?萌えです。

野梨子が蠍で美童が魚ってのがツボですた


74 :名無し草:03/05/04 11:08
ここ、こんなに人いたんでつね。良かった。

75 :名無し草:03/05/04 16:55
71です。妄想に水射すと悪いから嫌な人はスルーでお願いします。

>>73
そーなんですよね。
ESP研究会とか入ってるから、それも考えたんですが水瓶座だと革新的すぎるかなと思て。博愛主義でもなさそうだし。なによりファッションが・・・(藁
射手座はより深い学問や探究心を表す星なのでそっちもありだと思います。
清四郎は>71に加えて慎重に計画練るところが山羊座っぽい。
ちなみに皮肉を皮肉として意識してないのに皮肉になるのが水瓶座、
ちゃんと効果を計算して皮肉言うのが山羊座って感じです。
とりあえず知性を表す水星は射手座か水瓶座かも。

76 :名無し草:03/05/05 11:32
昔、りぼんの付録になかった?
有閑倶楽部のポスターで、それぞれの犯罪歴&星座(か誕生月)が書いてたもの。
たしか清四郎は水瓶だったような気が...


77 :名無し草:03/05/05 17:53
>76
それ、もってます。犯罪歴と身長が書いてあったよ。

78 :名無し草:03/05/05 18:00
>77
犯罪暦詳細キボンヌ

79 :名無し草:03/05/05 23:28
>78
今、手元にはないんだけど…。
悠理が公共物破損、野梨子が公文書偽造、清四郎が薬品関係の犯罪
だった気がする。
「有閑を語ろう」の過去ログとかではガイシュツかも…。
詳しくわかんなくてスマン。

80 :名無し草:03/05/06 00:41
>>54-55
清×野だったら春も捨てがたい。
桜舞散る中・・・というのが風流な気がして似合いそう。
魅×野が秋と言うのは禿同。
美×可も秋のイメージだなあ。物憂げな感じがイイ!

悠×魅だったらやっぱり夏でしょう!海が最高に似合うよね。
でも悠理は山も似合うんだよなあ(w

81 :名無し草:03/05/07 00:31
唐突ですが、
聖プレジデント学園の夏服
女子は半袖なのに、男子のシャツは長袖
なんでだろう?

82 :名無し草:03/05/07 01:15
>>81
盛夏服ってのがあるんじゃないのかな。
(私立って冬服、夏服、盛夏服ってあるところ多いから)

83 :名無し草:03/05/07 06:05
>81-82
虎の巻によると、中間服ってのがあるみたい。
春とか秋に着る服ってことかな?
で、季節によらず女子にはタイツ(肌の露出を
抑えたレディな装いのため)、男子には
蝶ネクタイが義務付けられてるとか。

84 :名無し草:03/05/07 07:51
長袖シャツ、魅録が腕まくりしてるのが萌え〜
妙に男っぽさを感じてしまう

85 :名無し草:03/05/07 08:47
素材はリネンなんだろうな。お金持ちの学校だし。
光沢あるから蝶ネクタイも似合いそうだ。

86 :名無し草:03/05/07 09:16
>84
漏れもそれに萌えた覚えが…
あと、清四郎が崩さずにきちんと来ている姿にもなんか萌え〜でちゅ
この二人のコントラストが好きだ…

87 :名無し草:03/05/08 10:22
虎の巻読んでてチョト思った。
キスに最適な身長差は15cmと聞いたことがあるが、
166cmの悠理が一番しやすいんだろうな。
可憐は161cmでも、ヒールをはくのであまり問題なさそうだが
153cmの野梨子はかなりやりづらいだろうな。

88 :名無し草:03/05/08 18:46
>87
野梨子の靴ってヒール低そうだしねえ。
階段にでも立つか?

89 :名無し草:03/05/08 20:40
>88
想像すると、カワイイ>階段立ち
ついでに、野梨子から相手のほっぺにチュウだとさらに萌え
・・・まず、しそうにもないが。

90 :名無し草:03/05/10 08:57
原作中の萌えセリフ教えてください

ちなみに漏れは13巻の魅録のセリフ
「待ってろ!!すぐ出してやる!!どこからそこに入ったのか教えろ!!」でつ。
自力では助からない状況の清四郎と友達思いの男らしい魅録…イイ

91 :「有閑キャッツアイ」編:03/05/10 10:03
前スレ602の続き書きます。

食事後、清四郎と悠理はインペリアルホテルの一室にいた。
とはいっても別に愛を語り合うために部屋を取ったのではない。
酒に酔った悠理がフラフラと歩いていたら、エビのチリソースがけを持ったウェイターと激突して、桜色の着物が真っ赤に染まってしまったのである。
「汚れ綺麗に落ちればいいんだけど」
悠理は清四郎の前で、躊躇無く着物を脱ぎ始めた。
清四郎は、まだ唇さえ重ねていない関係の女の素肌を見るのは、失礼だと思って、顔を逸らそうと思ったが逸らせなかった。
「悠理・・・その痣は?」
下着姿になった悠理の全身の至る所に、赤い痣、青い痣が広がっていた。
「・・・ああ、コレか、体育の授業で跳び箱15段飛びに失敗して体を思いっきり打っちゃったんだよ」
“あたいったらドジだろ?”的な笑いを浮かべながら言っているが、目は笑っていなかった。
悠理の目はやけに険しかった。
嘘だ。悠理は嘘をついている。
清四郎は直感的に悠理が嘘をついていると感じていた。


92 :「有閑キャッツアイ」編:03/05/10 10:04
――あの男、あたいのこと思いっきり蹴りやがって!
清四郎には笑みを浮かべながらも、悠理はこの痣が出来たあの事を思い出し、心の中で舌打ちしていた。
悠理の身体の至る所に痣が出来たのは、美術館での清四郎との攻防戦が原因だった。

しかし、悠理は目の前の男が、彼女を思いっきし痛めつけたのだとは気付いていなかった。
清四郎もまた、悠理の身体に広がる痛々しい痣をつけたのは自分だとは気付いていなかった。

恋は彼らの鋭い直感の一部を狂わせていた。
何を思ったのか、清四郎は悠理を抱き寄せ、胸元の痣、背中の痣、太ももの痣、痣のある箇所に唇を落としていった。
恋に勘を狂わされた清四郎はとんでもない台詞を吐いた。
「許せないですね・・・あなたをこんなに痛めつけた人を、僕は殺してやりたいと思いますよ」
途端に悠理の身体がカキーンと固くなった。
(あたいの嘘バレバレだよ)
「悠理、あなたを痛めつけた人は誰なんですか?」
「あたいの身体に・・・痣を作ったのは・・・」
清四郎に全てを打ち明けてしまいたいという衝動に悠理は駆られた。
この時点で、悠理は清四郎は医者の息子だと聞いていたので、彼の職業は医者だと勘違いをしていた。
****************************************
(゜Д゜)ノ 続きよろしくお願いします。



93 :「有閑キャッツアイ」編:03/05/10 19:13
書かせてもらいました。
とりあえずお見合い終わらせてみました。

>>92

しかし悠理はそこで言い淀んだ。脳裏に野梨子と可憐の顔があった。
ここで言ってはいけない。
痣の理由を話せば、それに至った原因も聞かれるだろう。どんなふうに取り繕っても今ここで打ち明けるのは危険に思えた。
体を捻るようにして清四郎から離れると窓の外を眺めた。一緒に歩いた庭園が見える。風が吹いて、緑を淡い桜色が覆った。
「ううん、やっぱなんでもない。・・・言いたくないんだ。今は・・・」
ごめんと呟く声は小さく、表情は見えないが多分美しい眉をひそめているのだろう。
「今は」というはそのうちに話してくれるということだろうか。
素早く胸の内で計算しながらも、清四郎を焦れるような感覚が襲った。彼は平常では考えられないほど感情に溺れていた。
もう一度、悠理を抱き寄せ、自分の方を向かせると今度は唇を重ねた。瞬間、悠理の体が強張ったが、左手で頭を支え、右手で強く抱きしめて逃がさないようにすると、尚更くちづけた。最初は強張っていた悠理の体も徐々に力が抜けて清四郎に体を預けるかたちになった。
長いキスの後、解放すると悠理の頬が桜色に上気していた。まるで、先程まで着ていた振り袖ように。だが、この桜は清四郎が咲かせた血の通った桜だった。
「僕との話、進めても構いませんか?」
相変わらず抱きしめたまま、言った。その声は優しかったが、懇願するような真剣さが混じっていた。
「う・・・うん」
悠理は、まだ少し夢現つのような心持ちで答えてから、これで良かったのかなとぼんやり思った。
清四郎は諾という返事を聞いて、はじめて体を離した。そのまま、ホテル内のブティックで買った洋服を袋から取り出すと、悠理に渡す。
「残念ですけど、これ以上は不謹慎ですからね」
部屋の前で待ってますからと言うと、苦笑をして出て行った。

94 :「有閑キャッツアイ」編:03/05/10 19:14
一人残された悠理は徐に服を着た。
一緒に歩いたり話したりするのが楽しくて、迂闊にも彼に痣を見られてしまった。秘密の、仕事の痣だ。
お見合い相手の清四郎は思っていたよりいいヤツだった。一緒にいて楽しい。相手も気に入ってくれたらしい。そして、自分は話を進めていいと答えてしまった。それは結婚を前提につき合うことを意味していた。
彼との時間が楽しかった分、悠理の胸にじんわりと染みのような不安が広がった。

ドアの前で清四郎は、今日に限ってペースが崩されがちなのを自覚していた。
今まで、ある特定の女性にこんなに乱されたことがあっただろうか。
そこまで考えた時、ドアが開いた音がして、悠理が現れた。
桜色の振り袖とはうって変わったカジュアルな服装だった。アーミーシャツに細身のストライプパンツは、その華奢な体に誂えたかのように似合っていた。中性的な彼女の美貌をさらに引き立て、整った顔立ちが清冽なまでの印象を与えた。
清四郎は、着物姿とはまた違う美しさに、暫し目を奪われた。
悠理は言葉通りドアの前で待っていた清四郎にくすぐったいような気持ちになって、少し照れたようにお待たせと一言だけ言った。その顔は笑みを浮かべると清冽な印象に変わって、忽ち暖かい陽射しのような顔になった。
清四郎はその変化に魅了されながら、自然と頬を緩めた。見つめる瞳は暖かかった。
「さ、戻りましょう。今頃、僕たちの帰りが遅いので探してるでしょうね」


95 :「有閑キャッツアイ」編:03/05/10 19:15
二人がロビーに戻ると、やはり探されていたらしかった。
悠理の服装についての経緯を説明がされると、百合子は怒りの目を愛娘に向けた。彼女は娘の可愛らしく着飾った振り袖姿にご満悦だったのだ。
百合子の怒りの迫力に気圧されながら、時宗と清四郎は悠理のフォローに廻り、何とか取り成すことができて一同は安堵した。そして百合子も清四郎の、噂に聞く切れ者ぶりを目の当たりにして、気に入った。
結局、その後予定されていた、時宗と百合子を交えてのティータイムはお流れになった。
すでに、春の日は西に傾きつつあり、庭園の桜も長い影を延ばしていた。
時宗が先立ち、丁寧に暇を乞うと、それをしおに清四郎と剣菱母娘も立ちあがって挨拶を交わしながらホテルを辞した。
こうして本来の姿をお互いが知らないまま、二人のお見合いは終わった。

それから数日後、悠理は、時宗が正式に剣菱家を訪れた時、清四郎が警察の人間だと知って驚くことになるのだった。

**************************
ごめんなさい限界でつ。続きお願いします(´Д⊂

96 :名無し草:03/05/10 23:13
92さん、ご苦労様でつ!
有閑キャッツアイ最高〜!
物凄くワクワクしました!
これからどうなってしまうんだ・・・、ドキドキ。


97 :有閑キャッツアイ:03/05/10 23:24
>>95続き
携帯電話の着信音を清四郎はグループ別に分けている。
プルルルというシンプルな着信音は仕事関係の者たちからの電話だ。
「もしもし…魅録ですか。どうしたのですか?
電話は魅録からであった。
「えっ?キャッツアイから、新たな挑戦状が届いたのですか?分かりました。今から行きます」
清四郎の休日の夜は悠理との思い出に浸る暇もなく、仕事へと駆り立てられてしまった。

警視庁に着くと、ジーパンにスニーカーという、えらいラフな格好をした魅録が清四郎にキャッツアイから届いた挑戦状をやや乱暴な調子で手渡した。

98 :有閑キャッツアイ:03/05/10 23:26
魅録もまたキャッツアイのせいで休日の夜を台無しにされた一人であった。
「ったく、アイツらはよ〜俺らの貴重な休日まで奪いやがって」
マルメン片手に文句をいう魅録の横で、清四郎は挑戦状を読み始めた。

挑戦状にはこのような事が書かれていた。
『――過去と現在が交差する庭にて、猫たちは三姉妹を狙うだろう』
**************************
ミッションだけ作って書き逃げします。続きお願いします。

99 :名無し草:03/05/11 19:07
有閑キャッツの復活がウレスイ!
98タン、まさに書き逃げですね(w
清四郎の気分になって考えてみたけどサッパリわからんですばい。

思いついたことといえば「マルメン」とは何ぞや、
「マルマルとしたメロン」の略か、はたまた「丸ごとメンボウ」か
「丸太とメンチカツ」かとか「まる裸で面接」?とか
そんなアホなことばっか・・・
しばらく考え込んでようやく煙草だとわかった私って・・・

100 :名無し草:03/05/11 21:01
99タンのお陰でやっと煙草だとわかった私も…

101 :可×清 可憐さんにはかなわない(69):03/05/12 02:15
>>http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/557
ぼりぼりぼりぼりぼりぼり。
大きな煎餅を齧る大きな音が生徒会室に響いている。
ふくれ面の悠理は何かを拒否するかのように、親の仇のように煎餅を食べ続けていた。
テーブルに両手をついた魅録はそんな悠理の態度に内心うんざりしながら再度説得を試みる。
「なぁ、いいだろ悠理」
「やだ」
「頼むよ、悠理」
「やだよ。だってお前んち行っても食って寝るだけじゃん。それだったらダチと
ツーリングの方が断然面白いもん」
冷たく魅録の頼みを断ると悠理は十何枚目かの煎餅に手を出した。
魅録はテーブルを回って悠理の隣まで来て説得を続ける。
「ダチって男だろ?ツーリングなら俺と行こうぜ。他の男と泊まりがけでなんか行くなよ」
悠理は煎餅を咀嚼しながら横目で魅録を見た。
「なんだよ、魅録。束縛する気かよ。あたいの彼氏でもないくせに」
天井を仰いで魅録は嘆息する。また出た、この台詞。
今までに何回同じやり取りを繰返したことか。
「だから「彼氏になる」って言ってるじゃないか。つき合うよ、ちゃんと。
これだけ一緒にいるのに彼氏じゃなきゃ俺、お前の一体何なんだよ」
「セフレだろ」
「阿呆。悠理。真面目に考えろよ」
「考えてるよ。別にお情けで魅録の彼女にならなくてもいいもん」
「お前、まだ可憐のこと言ってるのか?可憐とはもう終わったんだって
何回言ったらわかるんだよ」
「別にどっちだっていい。あたいには関係のないことだし」
また煎餅に手を出す。魅録が器ごと煎餅を取り上げた。
「もう喰うな!人が真面目に話してるのに。煎餅と俺とどっちが大事なんだ!」
「煎餅に決まってるだろ!返せ、煎餅!」
「お前なぁ!そんなに煎餅が好きなら煎餅と結婚しろ!」
「言われなくたってしてやるわい!」

102 :可×清 可憐さんにはかなわない(70):03/05/12 02:15
魅録と悠理が煎餅をめぐって揉み合っているところにバタンという大きな音がして
生徒会室の扉が開いた。
「うわっ」
「きゃっ」
部屋の中に野梨子が、そして野梨子を押し倒すようにして清四郎がなだれ込んで来た。
床の上で重なり合った二人は息を切らしてしばらく倒れたままであった。
不思議に思って魅録と悠理が近づいてみると、野梨子は片手に鈴を持ち清四郎の下敷きになって
幸せそうに目を閉じている。清四郎はどういう訳か白いハチマキで目隠しをしていた。
喧嘩中なのも忘れて魅録達が呆気に取られていた。やがて目を開けた野梨子が二人の
視線に気がつき赤くなる。
「い、嫌ですわ、清四郎ったら。重いですわ、どいてくださいな」
「す、すみませんね。野梨子。このハチマキを取らないと何も見えなくて」
清四郎は慌ててハチマキをほどこうとしたが結び目が思ったより固くてほどけない。
焦る清四郎の姿を見て野梨子がクスクス笑う。
「ひどいですね。笑う暇があったらほどいてくださいよ」
「ごめんなさい、だって清四郎ったら何だか可愛らし……」
野梨子が途中で言葉を切った。清四郎のハチマキを柔らかな手がほどきだした。
ホッとしながら清四郎は上機嫌で喋り出した。
「それにしても野梨子のいうことは本当ですね。目隠しをしながら歩いたら歩きなれた
道でも遠く感じましたよ。野梨子が鈴を鳴らして先導してくれなければここまで来れた
かどうか」
清四郎の言葉に誰も答えない。やっと結び目がほどけて目隠しがはずされた。
日の光の眩しさに目が眩んだ清四郎は今し方目隠しをほどいていた手を握りながら礼を言う。
「どうもありがとう、野梨子」
「どういたしまして。お安い御用よ」

ぼやっとしていた視界がはっきりとしてきた。目の前に呆れた顔の魅録と悠理、
それに「両手で口を押さえて」困った顔をした野梨子がいた。
という事は、僕の握っているこの手は……。
振り返りたくない。清四郎は激しくそう思った。


103 :可×清 可憐さんにはかなわない(71):03/05/12 02:15
「可憐さぁ、何で今ごろ倉庫の大掃除なんかしてるの? 皆、生徒会室で待ってるよ」
埃まみれになりながら倉庫の中を走り回って掃除している可憐に美童が声をかけた。
可憐は返事もせずに熊の着ぐるみにハタキをかけ、大量の埃にむせた。
それでも倉庫から出て行こうとはしない可憐を見て美童がニヤニヤ笑い出した。
「は、はーん。清四郎とうまく行ってないんだ。顔を合わせるのが嫌なんだろ」
「うるさいわね」
「野梨子が本気出してきたから焦ってるとか。やっぱり幼なじみには弱いのかな、彼も」
「うるさいったら」
物凄い形相で振向いた可憐の顔はススと埃で真っ黒だった。
美童は唖然としたがすぐにクックッと笑い出す。
「すごい顔だな。絶世の美女が台なしだよ、可憐」
美童は優雅な仕種でポケットからハンカチを取り出し可憐の前に立つと、古ぼけたソファ
に彼女を座らせた。そして優しく顔のススを拭う。美童のネーム入りの生成りのハンカチは
すぐに真っ黒になった。
「可憐、元気出しなよ。この学校で一番美人なのは可憐じゃないか。だから自信持ってよ」
その言葉を聞くと可憐の顔がパアッと明るくなった。
「美童……。ほんとにそう思う? 野梨子より私の方が全然きれい?」
「決まってるよ。野梨子なんてお子ちゃま体型じゃないか。可憐のダイナマイトボディに
比べたらカスだよ、カス」
「私……ダイナマイト? 野梨子……カス? ありがとう、美童。あなたいい人ね。
私、元気出てきたわ!」
「そう、よかった……。それじゃあといっては何だけど、この間のご褒美ちょうだい」
「ちょっと待った。それとこれとは別」
近づいてきた美童の唇を可憐は真っ黒な手で遮る。顔に黒い手形がついた美童が抗議する。
「野梨子をうまく遠ざけたらご褒美くれるって約束したじゃないかぁ。ちぇっ。いいよ。
可憐に頼まれたこと清四郎に全部話しちゃおうかなぁ」
「さっき言ったこと撤回するわ。あんたって嫌な奴ね〜。わかった、いいわよ。すれば
いいんでしょ!さっさとしなさいよ。でも言っておくけどキスだけだからね」
「可憐からしてほしいな。ご褒美なんだから」
無邪気な笑顔の美童の首に渋々ながら可憐は腕を回した。

104 :可×清 可憐さんにはかなわない(72):03/05/12 02:15
実は、可憐を探しに来たのは美童だけではなかった。清四郎が美童と共に生徒会室を
出たのだった。しかし美童が突然「そういえば教頭が清四郎を探していた気がする」と言い
出し、やむなく教頭に会いに行ったものの教頭はすでに帰宅していた。
無駄足を踏んだ清四郎は引き返してようやく倉庫に向かい、可憐が美童の首に手を回した、
ちょうどその時、倉庫の扉の前に立ったのである。
何気なく細く開けられた扉の中で美童と可憐が仲睦まじく座っているのが、見えた。
可憐は美童の首に手を回し、そして−−−美童の唇にキスをした。
扉に手をかけた清四郎の頭は真っ白になった。

数秒もしないうちに可憐は唇を離した。「はい。おしまい」
美童は少し沈黙すると困ったように目を伏せた。
「あのさ……、余りこういうこと言いたくないけど……。可憐て清四郎にもこんな
ふうにキスしてるの?」
「あのねー、清四郎にはもっと情感込めてしてるにきまってるでしょ」
「そう……ならいいんだ。今のはちょっと……だもんね」
苦笑しながら首を振る美童に可憐は突然不安になった。
「何……?あたしのキスってよくないの? そ、そりゃ今はちょっとおざなりだったけど」
「うーん、そうだね。こう言ったら何だけど野梨子でももうちょっと上手かな」
の、野梨子がぁ!? 可憐はキッとなって言った。
「そそそそそんなことあるわけないでしょ。この百戦錬磨のあたしがあんなド素人に
負けるなんてっ」
「ド素人には違いないけど、何て言うかコツをつかむのがうまいんだよなぁ、野梨子は」
野梨子とキスしたこともない癖に美童はしたり顔で訥々と語った。
頭に血が上った可憐は美童の肩を持つとゆさゆさ揺さぶった。
「ちょっと、ちょっと待ってよ。さっきのは全然本気出してなかったんだから。
もう一回、もう一回試させて!」
「え〜、別にいいけど……」

二人の会話までは清四郎の耳に聞こえなかった。ただ可憐が再び美童の首に手を回して
彼に口づけするのを見るといたたまれず、肩を落とすと回れ右をして歩き出した。


105 :可×清 可憐さんにはかなわない(73):03/05/12 02:15
そんなこととは露知らず可憐は美童に、自分のキスの方が野梨子より上手いと言わせよう
と必死だった。
柔らかく柔らかく唇を重ねながら、ソフトに舌をからませる。
「……どう、美童?……」
「ん……さっきよりいいけど、まだ野梨子の方が上手かな……」
本当は頭の芯がとろけそうな癖に、美童はわざと可憐を煽るような事を言う。
それを聞いて可憐はもっと情熱的に美童の唇を吸った。
金髪を触っていた可憐の指が美童の背中を愛撫するように動く。
美童の体がゾクゾクとしてきた。自分に押し付けられた可憐の胸の感触が堪らなく、いい。
「……どう!?美童!?」
「んんんん〜っ、いっ、いい感じ……のような気がする〜」
熱くなってきた美童は可憐の耳に、首筋にキスをした。
可憐が「あっ」と声をあげるのを聞いて、堪らず美童は彼女をソファの上に
ぱぱぱっと押し倒した。
「可憐……。僕、もう我慢できないよ……」
「美童、私も……」
可憐は美童の頭を引き寄せると甘い声で囁いた。
「私と野梨子、どっちがキスが上手……?」
負けずに美童も甘い声で囁き返す。
「もちろんキミさ……可憐」

その途端、可憐は美童をガバッとはね除けて飛び起きた。
「よしっ。これで清四郎は私のものよ。野梨子め〜っ、負けないわよぉっ」
「かっ、可憐〜」
哀れな美童の目に映ったのは脱兎のごとく駆けていく可憐の後ろ姿であった。


106 :可×清 可憐さんにはかなわない(74):03/05/12 02:15
「あらっ? 清四郎はぁ?」
「何だか気分が悪いそうで先に帰りましたの。心配ですわ」
本当に心配そうな顔で野梨子が小首を傾げて言った。生徒会室には野梨子と魅録、
それに悠理が座って書類の選別をしていた。なぜか魅録と悠理はテーブルの端と端に
遠く離れて座っている。床の上には煎餅のかけらが散乱していた。
可憐と視線が合うと野梨子はニッコリ微笑む。ふん。野梨子なんてカスよ、カス。
鞄をつかんで帰ろうとする可憐を悠理が呼び止めた。

「おい、可憐。さっさと帰るなよな。まだ仕事山程残ってんだぜ。なあ、野梨子」
「そうですの。可憐、手伝ってくださいな。」
「あ〜面倒くさいな〜。大体言い出しっぺの清四郎が何で先に帰るんだよ。
野梨子、さっきの封筒どこにやったか魅録のクソに聞いて」
「はいはい。ク…じゃなくて魅録、悠理がさっきの封筒どこですかって」
野梨子が悠理の伝言を魅録に伝えると魅録は顔も上げずに答えた。
「お前がさっき自分で鞄にしまってたろがボケってボケに言ってくれ、野梨子」
「わかりましたわ。ボ…じゃなくて悠理、さっきご自分で鞄にしまったそうですわよ」
「ちょっと悠理。魅録。アンタ達、何で直接喋らないの」
呆れて可憐が口を挟むと、野梨子が可憐をつつっと脇に引っ張っていった。
「どうやらお煎餅を取り合って喧嘩したらしいんですの。それより可憐、お願いが
あるのですけど」「何よ」
「清四郎の具合が悪い訳、私達のせいかもしれませんわ。私達が張り合っているので
彼、気を使い過ぎてアップアップになってしまったみたいですの」
「え……それ、ほんと?」

清四郎がストレスで熱を出して唸っていることを想像し、可憐は先刻彼に怒りをぶつけた事を
後悔した。
「私も反省致しましたの。焦って彼を追い詰めてしまったのではって。ですから、少し
彼をそっとしておきませんこと? 今日もお見舞いとかは無しということで」
「わ、わかったわ。私も反省した。あんたって偉いわ、野梨子。ちゃんと清四郎のこと
思いやってるのね」「そんな当然ですわ」


107 :可×清 可憐さんにはかなわない(75):03/05/12 02:16
とは言うものの。
学校帰りに可憐はスーパーの袋を下げて菊正宗家の前に立っていた。
やっぱり心配だもんね。寝てるのかな。確か今日からおじさん、おばさん旅行に出てる
筈よね。和子さんは論文作成で家にほとんど帰ってきてないみたいだし。
お手伝いさんにも休んでもらってるって聞いたし、食事が困るんじゃないかしら。
お雑炊くらい作ってあげよう。
それにしても遅くなっちゃったわ。野梨子の奴、先生に呼ばれたとか何とか結局
戻ってこなかったし、私が悠理と魅録の通訳にされちゃってイイ迷惑よ!

菊正宗家の呼び鈴を押す。しばらくして足音が聞こえると玄関の戸が開いた。
戸を開けた人物を見て可憐は目を見開く。
そこには和服の袖をたすき掛けにし、前掛けをした野梨子が微笑んでいた。
「あら、可憐。いらっしゃい」
「のっ、のりこ〜〜〜〜〜っっ!あんたね〜〜〜、抜け駆けしたわね〜」
「ずいぶんですわね、可憐。私、抜け駆けなんかしてませんわよ」
ウソぶく野梨子に可憐は今にもつかみかからんばかりの勢いだ。
「してるじゃないの!」
「いいんですよ、可憐。僕が呼んだんです」
小柄な野梨子をかばうようにパジャマ姿の清四郎が表に出て来た。
白地に水色のストライプのパジャマを来てサンダルを履いている。
野梨子に小声で何か囁くと彼女は微笑んで家の中に入った。
「どうぞ、ごゆっくり」
閉まった扉に清四郎は寄りかかっている。可憐と視線を合わせようともしない。
「何か僕に用ですか、可憐」
「用ってあの……。具合が悪いって聞いたから何か作ろうと思って……」
「それはわざわざすみませんでしたね。でも野梨子が来てくれてますし、
間に合ってますよ」
清四郎の口調がどこか冷たいのに気づき、可憐は驚いた。
「清四郎……、あの、どうかした?」
「別にどうもしてませんよ。それより暗くなってきたから早く帰ったらどうですか」

108 :可×清 可憐さんにはかなわない(76):03/05/12 02:16
「清四郎?」
「送っていけなくてすみませんね。ああ、そうだ。電話して美童に迎えに来てもらったら
どうですか。それか魅録でもいい。二人とも喜んで送ってくれるんじゃないですか」
そう言い捨てると清四郎は家の中に入り、可憐の鼻先でバタンと扉を閉めた。
可憐はスーパーの袋をぶら下げたまま、呆然と家の前に立ち尽していた。

そんな可憐の様子を清四郎は二階からじっと眺めていた。が、野梨子が雑炊の器を載せた
御盆を運んできたので、さっと窓から離れる。野梨子は御盆を清四郎の机の上に下ろしながら
こう言った。
「いいんですの、可憐にあんな冷たいことを言って。気になってるんじゃありませんの」
「聞いていたんですか」
清四郎は苦笑いしてベッドに腰掛けた。その膝の上に野梨子は雑炊の椀を載せる。
「聞こえてしまったんですの。熱いですから気をつけて召し上がってくださいな」
「やあ、すみませんね。おいしそうだな」
湯気の立つ雑炊を口に運びながら、しかし清四郎は可憐の手作り弁当を思い出していた。
「うわっ、あちちっ」椀を床に取り落とし、熱い雑炊が飛び散った。
「きゃっ、清四郎ったら、だから言いましたのに。清四郎、お水!」
水をあわてて飲んだ清四郎は気管に入ったのか、今度は激しくむせた。
野梨子が急いで側に座り清四郎の背中をさする。
清四郎はしばらくむせていたやがて咳がおさまると照れて野梨子に笑いかけた。
「いや、恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
野梨子は笑わなかった。しばらく黙っていたがやがてその苺のような口を開く。
「いいんですの。これからもどんどん見せてくださいな、清四郎の恥ずかしいところ。
知りたいですわ、清四郎のこと全部。素敵なところも恥ずかしいところも全て」
黒く円らな瞳で野梨子は清四郎を見つめ、そして静かに瞳を閉じた。
「野梨子……」
清四郎は戸惑いを隠せなかったが、やがてそっと彼女の唇に自分の唇を重ねた。

涙って熱いんだなぁ。可憐は駅までの道を重いスーパーの袋を下げてトボトボと歩いていた。
目から涙が後から後から湧いて出て来たが、拭う元気は、ない。
清四郎の冷たい言葉に可憐はすっかり打ちのめされていた。

109 :可×清 可憐さんにはかなわない(77):03/05/12 02:16
ただひたすら歩き続ける可憐の傍を一台のバイクが通り過ぎ、前方で停車した。
ヘルメットを取った男がこちらを見ていたが可憐は目もくれず、その横を通り過ぎる。
そんな彼女の後ろ姿に向かって男が声をかけた。
「おい、可憐。俺だよ。こんなところで何してんだあ?」
男の声に振向いた可憐は一台の大型バイクの前にピンク色の髪の元・恋人を見つけた。
しかし可憐は近づこうともせず、そのままそこに立ち尽している。
魅録が近づいていこうとすると可憐が来ないでというように片手を前に突き出した。
「なんだよ」
「そのままバイクに乗って行って。お願い」
「可憐」
「何でもないの、大丈夫なの。ただ今だけ側に来られるとちょっと辛いから。
悪いけど行って。おねがい」
鼻声に気づいた魅録は歩みを止め、腕組みをして可憐の様子を見ている。
可憐は魅録に背を向けると再びとぼとぼと歩き出した。

「おい、どこ行くんだよ。駅そっちじゃねえぞ」
「つびでごないでっていっだ」
「だってこっち暗いからさ、女一人じゃ危ないよ」
「ひひの、つびでごないで!」
「可憐、どうした」
「……」
「清四郎と何かあったか」
「なんがあっだばよっ、ばるい!?」
「ティッシュいるかぁ? 鼻水だらだらじゃいい女が台なしだぞ」
「……いる」
可憐は魅録から渡されたティッシュで思いきり鼻をかんでかんでかみまくった。
鼻が出切った頃を見計らって魅録は声をかける。
「どうしたんだよ、可憐。清四郎にふられたか?」
「……あんな男、こっちからふってやるわよ……」
可憐の瞳から又涙がどっと溢れ出すと、魅録はそっと彼女を煙草くさい上着に抱き寄せた。

110 :名無し草:03/05/12 02:16
今回は以上です。続きます。

111 :名無し草:03/05/12 03:00
>可憐さん
怒涛のUPが嬉しいです。ヤッター
あっちでもこっちでも混線模様なんですね。
どうやって軟着陸するのか、先が凄く楽しみです。
伝言で話す魅録と悠理には大笑い(w

112 :名無し草:03/05/12 09:03
>99
マルメンは、多分、マ○ボロメンソール(タバコ)だと思われ。
マルメンライト、と旦那が言ってのをおもいだしまつた。

113 :名無し草:03/05/12 09:19
>可憐さん
魅録と悠理の関係がかなり好き!!
この先どうなるのかとっても楽しみです!


114 :名無し草:03/05/12 17:58
>>99たん
(´ー`)y-<タバコの省略形でつが マ○ルドセブンがマイセン(食器みたいだ)
マ○ボロメンソールがマルメン
セブン○ターがセッター
赤いパッケージのマ○ボロが赤マルというらしいでつ

115 :名無し草:03/05/13 11:36
>可憐さん

うーん、どうなってしまうんでしょ・・・
可憐さんに幸せになって欲しいなあ・・・

116 :名無し草:03/05/13 19:10
「有閑キャッツ」>>98の続きいきます。


117 :名無し草:03/05/13 19:11
ごめんなさい。ちょっと後にします。>キャッツ

118 :名無し草:03/05/13 19:38
>117
何があったんだ?
待ってます(w


119 :ホロ苦い青春編:03/05/13 22:06
>>http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/long/l-06-1-1.html
視線の先で、裕也が少女に懸命に何かを話していた。
少女の方は、うつむいたままでその表情は見えない。
裕也は困った様に頭を振ると、彼女の肩に手を置いた。少女はようやく顔を上げる。
真っ直ぐに裕也だけを見詰めるその瞳は、幾分か濡れているかのように見えた。
それは、言葉よりも雄弁に彼女の気持ちを表していて―――それを見て、
彼らの関係が分からないほど、鈍感ではなかった。
―――畜生
きつく唇をかむ。
あまりにも迂闊だった。数ヶ月とはいえ、時は確実に流れていたのである。
いかに野梨子が裕也の心を捉えた存在であったとしても、
離れてしまった現在、恋人が出来た可能性はいくらでも考えられただろう。
それなのに、がらにもなく感動の再会などをセッティングするつもりで、
その事にまで考えが及ばなかった。
後悔ばかりがつのり、やりきれず二人から目を逸らす。
目の端に細い肩が映った。
瞬間、胸のうちに切り裂くような痛みが走る。
だが、野梨子はこんなものではないだろう。きっと、もっとひどい。
そして、本来ならば味わわずに済んだ痛みを、与えたのは自分なのだ。
その自分に野梨子にかける言葉などあろうはずがない。
けれど―――苦い思いを噛み締めながら、考える。
今、野梨子の側にいるのは、皮肉な事に俺一人だけだった。
たとえ、彼女が望んでいなくても支えられるのは、俺しかいない。
意を決して、野梨子に向き直った。
野梨子は真っ直ぐに彼らの様子を見つめていたが、視線に気付いたのかこちらを見上げる。
しかし、その黒目がちの瞳は、予想とは異なり、静けさに満ちていた。
澄んだ眼差しが注がれるのを感じると、囚われでもしたかのように目が離せない。
言葉が出ないまま、ただ彼女を見つめる。
続いた沈黙はどの位だったのか。耐えかねたのか、先に口を開いたのは野梨子の方だった。

120 :ホロ苦い青春編:03/05/13 22:07
鬼門、金沢に負けず続きを書きました。
どなたか続きをお願いします。

121 :名無し草:03/05/13 22:17
>鬼門、金沢に負けず続きを書きました。
乙かれっす(笑

何か久しぶりだなー、ホロ苦。魅録は彼女がいる裕也に野梨子を
引き合わせたことを自分のミスだと感じてるんですね。
いい奴だな。ホロリ。

122 :名無し草:03/05/13 23:03
先程「キャッツ」うpすると書いたものです。
ちょっと私事でうp遅くなりました。
気を取り直して「有閑キャッツ」>>98の続きいきます。


123 :有閑キャッツ:03/05/13 23:09
「せっかくのお申し出ですが、うちには警備は必要ありませんわ」
丁寧に手入れされたバラに囲まれて、老女はしゃがれ声で清四郎達の警備の申し出を断
った。白地に赤い薔薇模様のワンピースを着て、白のつば広の帽子の下から腰まで垂れた
ロングヘアは銀色に波打っている。一体いくつなのか見当もつかないこの老婆はこの家を
守る三姉妹の長女・紅子だ。

次に「猫」達が狙うと清四郎達が踏んだのは、都内にありながら異空間のような佇まいを
見せる豪邸・一乗寺家だった。今回キャッツが狙っているのは、この屋敷の一番奥の部屋
に眠ると噂される名画、『三姉妹』であると思われる。見たものは何故か次々と早死にし
たことから、「死」の呪いがかかっているという噂の作者不詳のこの絵は、一般に公開さ
れることがなく、「誰も見たものがいない」という評判でマニアの垂涎の的であった。

この家のかつての主、一乗寺虎造は著明な名画・名品コレクターの顔とは別に、奇行が噂
される変人といった一面も持っていた。一度手に入れてしまったものには、それが札束を
山と積んだものでも、とんと興味を示さず、おかげで彼の屋敷は名品・珍品がごちゃまぜ
にゴロゴロと転がっている有り様である。いつぞやはゴッホ、しかも永らく行方不明とな
っていた名品が玄関ドアの前に打ち捨ててあり、訪れた美術評論家がうっかり足跡をつけ
てしまった。哀れ、その美術評論家は気がおかしくなってしまったということだ。

変人・一乗寺の奇行話はまだある。彼の妻になった女達は望むものを与えられ、何でも好
きなことをさせてもらえた。しかしただ一つ、決して屋敷の外に出る事は許されなかった
のである。彼女達が屋敷の外に出られるのは死んだ時か、狂った時のみであった。
実際白い木の棺に入って『外に出た』妻達が何人もいた、らしい。
そんな一乗寺の娘が紅子、鈴蘭、琴子の三姉妹である。この屋敷で生まれ育った彼女達も
屋敷から出る事は許されなかったが、一乗寺の妻達程には外に対する憧憬が強くないよう
だ。一乗寺その人が鬼籍に入ってしまった後も一歩も外に出る事なく、三人で仲睦まじく
屋敷を守っているらしい。庭の薔薇も、屋敷の中の調度品も、全てが父親が生きていた頃
のままで、この屋敷の時はまるで、止まってしまっているかのようだった。

124 :有閑キャッツ:03/05/13 23:15
清四郎と魅録の後についてきた美童は、今し方通ってきた屋敷の広間の様子に愕然とし
ていた。(あの壁に何枚か無造作に立て掛けてあった絵、あれセザンヌだよね。それか
らさっき魅録がけとばしたの、高村光太郎の彫刻じゃないかなあ。マネもピカソもある
…。うぁぁ、あんなに雑に扱って芸術家が化けて出そう……)
その時、美童は建物の二階のベランダから一人の美少女が自分を見つめているのに気が
ついた。長く豊かな黒髪を持つ少女のその顔はゾッとする程白く、唇は血のように赤
く、そして黒く大きな瞳にはまるで表情が感じられない。彼女と目が合った瞬間、美童
の身体は硬直した。すぐに少女はベランダから姿を消した。身体の奥から黒い熱があ
がってくるのを美童は感じていた。(美しい人だ……。誰なんだろう、あの少女は)

他人が家に入るのをしぶる紅子にもう一人の老女・鈴蘭が近づいた。元から似てるの
か、老いのせいなのか彼女は先の老女・紅子に瓜二つだった。
「いいじゃありませんか、紅子姉様。子猫ちゃん達と遊ぶのもたまには面白うございま
しょ。それに、あの金髪の殿方……きっと琴子ちゃんが喜びますわ」
老婆の視線の先には二階のベランダを見上げたまま動かない美童の姿があった。
「この屋敷には父様が作った盗人を捕らえるための仕掛けがあちこちにありますのよ。
たまに馬鹿な使用人が引っかかっりますけど。それに逃げ出した女達を懲らしめるため
のお仕置き部屋もございましてね、悪戯な猫共を懲らしめるのはもってこいの家だと思
いますわ。ですから、あなた方若い人達の手を借りる必要はないけど、お手並み拝見と
いきましょうかね」そう言うと紅子と鈴蘭は歯のない口でカカカと笑った。


125 :有閑キャッツ:03/05/13 23:15

「いけすかないな、あの婆さん達。猫よりもよっぽどワルの臭いがするぜ。あんなとこ
ろに盗みに入るキャッツに同情するよ。それに……気がついたか、あの家」
魅録の問いかけに清四郎はうなずいた。
「ええ……。薔薇の香りでも消しきれない程の死臭が漂ってましたね。あの三姉妹は
どうやらかなりの曲者らしい。油断しないようにしましょう。……美童?どうかしまし
たか?」
「いや、なんでもないよ。そういえば三女の琴子って見かけなかったね」
「婆さんだし寝てたんじゃないのか。そういや琴子ってお前みたいなんが好みなんだっ
てよ。気をつけろよな、この年増キラー」

126 :名無し草:03/05/13 23:16
「本文が長過ぎます」でひっかかってうpに時間がかかってしまい
重ね重ねすみませんでした。

ちょっとオカルト入っちゃってますが、三女の琴子は姉達と違い、なぜか少女のまま
という設定です。屋敷に様々な仕掛けがあってキャッツだけでなく、魅録達も罠にはまって
脱出するのに四苦八苦・・・て感じはどうかな、と。で、美童は琴子と老女に襲われる
のをキャッツに逆に助けられるとかもいいかななんて。どうですかね?

あくまでも漏れの設定なんでイマイチでしたら無視ってください。
****こんなんですが、次の方よろしくお願いします******


127 :名無し草:03/05/15 11:33
うおー、すげえ。面白い。
禿しく続きが気になります。

128 :名無し草:03/05/15 20:12
今晩も人いないのかな。。。

ところでこのカポーにはこの曲が合う!みたいのありますぅ?
あったらぜひ妄想の肥やしにしたいぞ。

あんまりレスつかなそうだけど。。。

129 :名無し草:03/05/15 20:42
いえいえ、毎晩見てますよ〜

有閑キャツのつづきが早く読みたいんですが、話が山場に差し掛かっているので
作家さんたち遠慮しあっているのでは?などとつい勘ぐってしまいます。
一読者としては続きは何パターンあっても歓迎なので、
是非ともお願いします!!

130 :「有閑キャッツ・アイ」編:03/05/15 23:36
>>125タンの続き

清四郎たちが一乗寺邸を後にした頃、屋敷の中ではメイド姿の野梨子と可憐が
メイド頭から業務の説明を受けていた。
一乗寺邸はガードが固く内部の図面も手に入らなかったため、
やむを得ず中に入り込んで情報を仕入れることになったのである。

常ならば運動が不得意な野梨子は頭脳担当で、肉体労働ははずされるのだが、
今回は絵を運ぶのに人手がいりそうなので渋々参加していた。
眼鏡をかけたメイド頭は説明の最後に、二階の北側の部屋にはけっして入らないこと、
と二人にうるさい位に念を押した。
「そこは体を悪くしている三女の琴子さまのお部屋ですから、けっして
近づいたり、ましてや絶対に中をのぞいたりなぞしないように」
彼女の言い付けにうなずきながら、野梨子と可憐はそっと目くばせを交
わした。

地下の厨房の前を野梨子たちが通りかかると、中から大きな怒鳴り声がして、
若いシェフ見習いが一人走り出て来た。口に海老をくわえている。
「ちょっと・・・悠・・・介くん!」
可憐が呼び止める。振り返った悠介こと悠理は可憐たちを見つけると
嬉しそうな顔で近づいてきた。シークレットブーツが歩きにくいのか
モタモタ歩いてくる。白いシェフの制服と帽子が中々似合っていた。
新人が女三人では目立つので悠理は今回も男役である。


131 :「有閑キャッツ・アイ」編:03/05/15 23:37
次の日がキャッツが予告した当日だった。
魅録たちによって屋敷の中と外に警官が十数名配備された。魅録たちが慌ただ
しく警備のチェックを行っているのを面白そうに見物しながら、
老姉妹の紅子と鈴蘭は昼食を優雅に庭でとっていた。
若いシェフ見習いがぎこちなく歩きながら、ランチが載った銀の盆を運んで
いく。しかし次の瞬間、彼=彼女はあやうく盆をひっくり返しそうになった。
なぜなら悠理の前方からやってきた鮮やかな短髪の男がこう言ったからだ。
「清四郎!表のチェックは終わったぜ。あとは従業員達の面通しだ」
盆の上でグラスの水が小刻みに震えていた。
(まさか・・・。いや、そんな偶然があるわけな・・・)

背後で聞き覚えのある声がする。
「ああ、魅録、ありがとう。面通しは僕がしましょう。では・・・と。すみませんが、
白い帽子の君、ちょっとお願いできますか?」
最後の言葉は間違いなく悠理にかけられた言葉だった。

老女たちの前に皿を並べながら悠理は聞こえないふりをしていた。
と、清四郎の手が肩にかかる。
「君のことですよ、将来有望なシェフ君。そんなに時間はかかりませんから」
(しかたない。空とぼけて押し切るしかないか)
悠理は覚悟を決めて・・・ふりむいた。
<続き、どなたかよろしくお願いします>

132 :名無し草:03/05/16 20:41

 \ 「有閑倶楽部」が好きな人いないかー /
    ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ∧∧ ∧∧ 
    ∩゚Д゚,≡,゚Д゚)
     `ヽ    |)
       | _ |〜 
       U U



133 :名無し草:03/05/16 22:55
くぅ〜キャッツアイおもろい!
どうなるんだ・・・。

134 :名無し草:03/05/16 22:56
くう〜キャッツおもれ〜
これからどうなるんだ・・・!

135 :「有閑キャッツアイ」:03/05/17 01:06
>>131さんの後書きます。
視線の先には、やはりあの男の姿があった。
(やっぱり…!清四郎、刑事だったのかよ…)
先日交わした甘やかな感触が蘇る。身体に付けられた無数の痣を辿る薄い唇。
『痣を負わせた本人を殺してやりたい』とまで言い切った力強い眼差し。
初めてのキスが最期のキスになるかもしれないなんて、神様は意地悪だ――。
左胸が鈍く痛む。それが、一際大きく残った痣の所為でない事は悠理にも解せた。
悟られないよう唇を噛みしめた後、コックハットを目深に被り直した悠理は、一つ咳払いをした。
幸いにも逆光が手助けとなり、はっきり顔を認められる事はないだろう。こうなったら演じてみせる。
彼女の瞳がキャッツの時のそれに変わった。
「手短に訊きますが、名前は?」
「悠介、だよ。剣持悠介」
男にしては高い声を発すると思いながらも、体型や雰囲気から察するに15、6歳の少年なのかもしれない。
清四郎は、極めて事務的に記していった。
「こちらにはいつ頃から勤めているんですか?」
「最近だよ。シェフの見習いを募集してたんだ」
「失礼な事を伺いますが、まだ学生ですか?」
「高校には行ってない。中学出てすぐにここで働き出したから」
「そうですか…」
顎に手を当てた清四郎は、目の前に佇む華奢な少年をまじまじと見つめた。
果たして、見落としてはいないだろうか。とても重大で大切な、何かを。
ハットから見え隠れする栗毛の先にある、真実を。

136 :「有閑キャッツアイ」:03/05/17 01:07
「もういいだろ」
思考が中断させられる。気を取り直した清四郎は、優雅にティーカップを運ぶ老女に視線を移した。
「彼の言っている事は正しいですか?」
「――何ですって?すっかり耳が遠くなって、良く聞こえませんわ」
問われた鈴蘭は何食わぬ顔で返す。軽くこめかみを押さえた清四郎は、隣りでムニエルを食す紅子に応えを求めた。
「ええ、そんな所です。若い子が家に居るっていうのは良いものですよ。今まで厨房を取り仕切っていたのは
年配の方達ばかりでね。やはり料理というのは食べるだけではなくて見た目も大切ですものね」
「そうそう。見て良し食べて良し、ですわ姉様。特に熟れ頃の果実の美味しいことと言ったら!」
悠理の紅い口元を見ながら、鈴蘭が薄気味悪く笑う。
「あら、嫌ですわ鈴蘭ちゃんたら、まったく」
天まで突き抜ける老女の笑い声が、再び庭園を被う。
「協力有難うございました」
自分に向けられた礼の言葉を皆まで聞かず、踵を返した悠理は瞬時にその場から消えた。
「猫みたいに素早いな」
苦く笑いながらも、清四郎は次の面通しを行うことにした。

                            続きお願いします

137 :名無し草:03/05/17 01:20
>キャッツ
わお、続きがいっぱいだぁ?ウレチイ
今度は今までになく無気味な館が舞台なのですね。
清×悠の行方もさりながら紅子・鈴蘭のおばーちゃんもいい味だわ・・・。

面通しはクリアしたが清×悠の格闘で清四郎が悠理を脱がして
「女!?」てぇのを是非ヨロシク>作家さんたち

138 :有閑キャッツアイ編:03/05/17 22:10
>136さんの続きです

「可憐、どうでしたの?」
野梨子にしては珍しく急かすように言った。
この時間、狭い女中部屋は誰も来ないはずであるが、その声は小さい。
「ん、今回は変装してきて正解よ。これから使用人の面通しみたい」
可憐は今回のミッション用のショートヘアの鬘に手をやった。
使用人に化けるのに、ゴージャスなウェービーでは目立つだろうと急遽用意したものである。
黒髪のショートに眼鏡で、全くの別人のように見える。眼鏡でチャームポイントのホクロも隠れた。
野梨子は髪を一つに束ねて前髪を上げ、メイクで思いきり地味に作りこんであった。
その時、廊下の奥からバタバタと足音がして悠理が現れた。
「どうしよう、野梨子、おまえの予想当たったよ!」
オロオロした様子でさっき庭で起きた偶然の対面を語った。

数日前、悠理のお見合いの相手が警察の人間で『清四郎』という名前なのを知って、まさかと思いながら保険をかけておいたのである。
(ということは、「敵」の頭脳とこれから本格的に戦わなくてはなりませんわね)
野梨子は気を引き締めた。悠理を通して剣菱夫人から入手した情報によると相当の切れ者らしい。
悠理にはかわいそうだが婚約者とのプライベートな時間にも細心の注意を払わなければならないだろう。


139 :有閑キャッツアイ編:03/05/17 22:11
「とりあえず、夜になるまで悠理はなるべく調理場から出ないようにしてて下さいな。あとは可憐と私で探ってみますわ」
「そうねぇ。もう1階はだいたい調べたわ。下手な小細工した部屋がいくつかあったくらいね」
「となるとやっぱり2階が怪しいってことか・・・」
やや南北に長い形をした一乗寺の家は北側が屋敷の奥になる。
南側には紅子と鈴蘭の部屋があり、北側には琴子の部屋があった。
だが、2階の北側には紅子と鈴蘭と決まった使用人しか近付けないようにしてあるようだ。
「多分、琴子の部屋ですわね」
「だな」
「さ、持ち場に戻りましょ。野梨子、例の美童って刑事さん、あんたのこと気に入ってたみたいだから気を付けてよ」
「ありがとう可憐。でもあの程度の刑事さんなら平気でしてよ」
ほほっと軽やかに笑う野梨子に、可憐は少し眉を上げた。
「バカね、あの手の男って女に関しての洞察力だけは凄いのよ。気を抜いてると見破られるわよ」
「わかりましたわ。可憐も気を付けて」
「じゃ、また夜に」
慎重にドアを開けて廊下を窺うと、3人はそれぞれの方向へ散らばっていった。

可憐は暗い廊下を進むと、階段室のドアを開けた。
ここにも警官が数人いた。
形ばかりの会釈をすると、見事な細工の施された古い木製の階段を上がる。
ギィギィと低い音をさせながら上ると、逆光を背負った赤い髪の男が立っていた。

続きよろしくお願いします


140 :名無し草:03/05/17 22:18
>キャッツ
やりぃ、続きだ!
しかも今度は魅×可な展開になりそう。は、早く続きを……。
細かいことだが階段室に萌え。逆光魅録に萌え。

141 :名無し草:03/05/18 23:53
「可×清 可憐さんにはかなわない」うpします。
今回は全て魅×悠でRありです。しかも魅×悠は少しお馬鹿なので
嫌いな方はスルーお願いします。


142 :可×清 可憐さんにはかなわない(78):03/05/18 23:54
>>109
「可憐、バイクに乗せただろ」
ここは魅録の部屋。二人でくつろいでいる時に、突然、悠理がそんなことを言い出したので、
魅録は飲みかけのコーラを噴き出しそうになった。恐る恐る振向くと、悠理がメットの中から
長くゆるやかにウェーブがかかった髪をつまみ出したところだった。
今日の悠理は金色の文字でデカデカと「Cacth Me!」と書かれた白いTシャツに
ジーンズ生地のミニスカートを合わせている。
焦った魅録だったが、冷静を装い「乗せたよ」とだけ答えて煙草を取り出し吸い始めた。
床に寝転がって煙を吐きながら、素知らぬ顔でバイク雑誌をパラパラとめくる。
悠理は黙って魅録のすることを見ていたが、やがてこう言った。
「魅録ちゃーん」
「何だよ」
「煙草、うまいか」
「ん?ああ……」
「火ついてないぞ」
「……おっとぉ。どうりで味しねぇと思った」
あわててライターで火をつける魅録に悠理は追い討ちをかける。
「みーろくちゃん」
「何だ?」
「煙草逆さまだぞ」
「……おっとっと。どうりで火つかねぇと思った」
魅録は煙草をくわえ直した。二人の間に無気味な沈黙が続く。やがて悠理が口を開いた。
「みーろーくーちゃーーん」
「あんだよ!?」
「あたい、やっぱりツーリング行くわ」

魅録はがばっと起き上がった。悠理の細く華奢な肩をつかんで揺すぶる。
「何でだよ!その話はもうケリついただろ?又蒸し返すのかよ」
「別にぃ。何となく」
つぶやいて悠理は足の爪をいじり始めた。

143 :可×清 可憐さんにはかなわない(79):03/05/18 23:54
眉間に皺を寄せていた魅録は、ふっと微笑んだ。悠理の頭を手でいい子いい子する。
「……なんだよ」
「お前、ひょっとして焼きもち焼いてんのかぁ?」
「ばっ……ばっかやろう。だっ、だれが、焼きもちなんか……!」
真っ赤になった悠理に魅録は少しホッとした気持ちを抱く。
(俺って少しは悠理に愛されてる?)

「安心しろよ、可憐は家に送っていっただけだ。信用しろ」
悠理の顔を引き寄せ唇にキスすると、布団の上にやさしく押し倒した。
そして「Cacth Me!」の文字が踊るTシャツの下に手を滑り込ませる。

がし。
「……」
悠理の足の裏が、魅録の顔を遮った。
「そうやってすぐ押し倒すな、Hで話をうやむやにすんな」
珍しく真面目な顔をした悠理が魅録に向き直った。
「信用してほしかったら証拠を見せろよ」
「証拠って言われても、なあ。どうすればいいんだよ。可憐に電話かけて聞いてみっか?」
「今からあたいが帰るまで、あたいに触らないこと。そしたら信用してやる」
あまりに突飛な申し出にポカンとした顔をした魅録だったが、ニヤっと笑った。
「……んだよ、それ。ホントはしてほしいくせに意地張るなよ」
「るせぇな。あたいだって、触られたくない時あるんだよ。できないんだったら別にいいけど」
どうやら悠理は大まじめにこの申し出をしているらしかった。
悠理の思考が読めない魅録はため息をつく。
(何なんだよ、悠理。せっかく仲直りしたと思ったのに。くそ。しかし、ぜってぇ男と
ツーリングなんか行かせたくないしなぁ……)
魅録は一瞬悩んだが悠理の申し出を受けることにした。

144 :可×清 可憐さんにはかなわない(80):03/05/18 23:54
に、しても。
「おい、何やってんだよ、悠理」
気がつくと悠理は四つん這いになって魅録の部屋の押し入れをガサゴソやっている。
「押し入れに先週のジャンプあっただろ?探してんの」
悠理のミニスカートのが魅録の鼻先で揺れていた。スカートと悠理の太ももとの
境界線がずりあがり、ちらちら白いものが見えかくれする。
「ゆ、悠理、俺が探すわ……」
「あれっ、このビデオ何が入ってんの?」
奥の方から悠理がタイトルの書かれてないビデオテープを見つけてきた。魅録は無言で
それを奪い取った。美童からもらった秘蔵のテープ(外国産)だったからだ。
「そ、それより悠理。この間『Xメン』ビデオに撮ったんだけど見るか?」
「ん。」
映画が始まったが魅録は全然集中できなかった。隣からチュパチュパと音がするからだ。
悠理がチュッパチャプスを舐めている。まん丸とした可愛い球体を口にくわえては
チュポンと取り出して楽しんでいる。かと思うと桃色をした小さな舌を出して、
棒が突き出た部分から上に向かってレロレロと舐め上げていく。舐めるのに飽きると
また口にくわえてしゃぶっては、チュポン……。
(ゆ、悠理……)
チュポン、チュポン、チュッ、ポン……。

魅録は悠理の手からチュッパチャプスを奪い取った。
「なっ、何するんだよ、あたいのチュッパチャプスだぞ!」
「うるせぇな。チュッパチャプスは俺の大好物なんだよ。俺の前でチュッパチャプス
舐めたら無くなると思え!」
「何だよーーーっ」
非難の声にも構わず魅録は自分の口にチュッパチャプスを放り込んで知らん顔をする。
チラッと横を見ると、悠理は名残惜しそうにベトベトになった指を舐めていた。
親指、人さし指と一本一本丁寧にくわえていく。(悠理ぃ……)
チュッパチャプスをくわえながら魅録は必死で映画に集中しようとしていた。

145 :可×清 可憐さんにはかなわない(81):03/05/18 23:54
悠理が魅録にもたれかかってきた。見ると目を閉じている。
「……どうした?映画見ないのか?」
「ん、もういいや。眠くなってきた」
閉じた瞳の睫毛が長い。唇が赤い。キスしたくなるのを我慢して視線をそらした
魅録はガンと頭を殴られた気がした。座ったまま魅録に寄りかかっている悠理は
こともあろうに膝を立てている。スカートは滑り落ちて太ももが丸見えになっている。
しかも。
(今日はイチゴ柄か……て、違う!かんべんしてくれよぉーー、悠理!)
その時、魅録は悠理が薄目を開けていることに気がついた。
目が合いそうになると慌ててパチッと閉じる。わざとらしく寝息が聞こえてきた。
(タヌキ寝入りか? こいつ、まさかワザとやってる?)
少しムカついた魅録はこんなことを言い出した。
「あーあ、悠理寝ちまったのかなあ。でも、おかしいよな。いつもの悠理だったら
もっとイビキがすごいはずなんだけどなぁ」
大音量のイビキが始まった。魅録はニヤッと意地悪い顔をした。
「寝てる、寝てる。でもいつもだったら、時々30秒位息が止まるんだけどなぁ」
イビキが止まった。赤い顔をして苦悶しているようだ。30秒立つとゼイゼイ言って
再びイビキをかきだす。
(……阿呆。少し遊んでやるか)

「仕方ねぇな、寝かしておいてやるか。一度寝たらこいつはどんなことされても、
絶対起きないもんな」
魅録は布団を敷き、寝たふり悠理を布団に運んだ。悠理を横たえた後、しばらく眺めて
いたが、やがて、
「本当に悠理は爆睡するよな。体中触っても絶対起きないもんな。大した奴だぜ」
「……!?」
大きな手が悠理の身体の上を這いずり出した。
(……魅録の奴!触らないって約束なのに根性なし!でもここで起きたらタヌキ寝入り
がばれる……)

146 :可×清 可憐さんにはかなわない(82)R:03/05/18 23:54
いつのまにか全身にじわっと汗がしみ出している。魅録の手の動きは止まるどころか
どんどん大胆になってきた。山から谷へ。低いところから高いところへ。感じるところ、
そうじゃないところ。男の手は悠理のほっそりとした身体の秘密を全て明らかにしようと
言うかのように動き続けていた。悠理は規則正しく息をするだけで精一杯だった。
その唇を魅録の唇がさらう。悠理の口の中に彼の舌が滑り込んできた。
(魅録……)

「汗いっぱいかいてるな。脱がせてやるよ」
大きな手が彼女のTシャツを脱がせにかかっている。
「……!」
あせった悠理は寝ながら抵抗しているふりをして彼の手を振りほどきにかかる。
ごす。うっかりアッパーカットが魅録の顎に入ってしまった。
軽くとはいえ、魅録はしばらく立ち直れない。
「……う。」
魅録は悠理から手を離し顎を押さえている。かなり痛そうだ。しかし、気を取り直して
再び悠理を脱がせにかかる。再び悠理は暴れた。
どす。つい、蹴りが魅録の腹に入ってしまい、魅録は仰向けに倒れた。
(や、やべー。ばれたかも……)
それでも寝たフリを続ける悠理。暴れたためミニスカートが腰までめくれあがっている。
そのまま待ったがシンとしている。薄目を開けようとした時、荒々しく唇が奪われるのを
悠理は感じた。

147 :可×清 可憐さんにはかなわない(83)R:03/05/18 23:54
魅録の手が悠理の腕を強い力で押さえつけている。悠理が試しに体を動かそうとしたが
ビクともしなかった。そのまま強引に悠理にキスを続けている。苦しくなって顔を背け
ようとしたが魅録は許さなかった。舌をからめ、唇を噛む。
(く、苦しい)
さすがに我慢できなくなって、渾身の力を込めて魅録の腕から自分の腕を取り戻し
彼の顔を押しやる。やっと息が出来た。と、目の前にムッツリとした魅録の顔がある。
(あり?)
悠理は自分が目をパッチリ開けているのに気がついた。
「あ、あははは。何か苦しくってさ、目が覚めちゃった……」
弁解する悠理を魅録は引き寄せ再びキスを始めた。
柔らかい髪の中に手を差し入れ、小さな頭を支える。もう一方の手がTシャツをめくり
あげ、「Cacth Me」の文字は読めなくなった。ブラジャーの下に手を潜り込ませ
親指で先端を転がす。
「……あっ……。み、みろく……約束……」
「忘れた。」
魅録はきっぱり言うと悠理の体からTシャツとブラを剥ぎ取った。胸の頂きを口に含んで
舌でもて遊ぶ。悠理の体がピクンと跳ねた。白い肌が薄赤く染まっていく。それでも
悠理は魅録の腕の中から脱走を試みる。体を捻って胸を魅録の口から解放すると、
四つん這いで逃げる。しかし後ろからあっさり魅録につかまって憎まれ口を叩いた。
「何だよ。ツーリングに行かないでほしいっていうのは口だけか」
「口だけじゃないよ。悠理が他の男の側で寝たりするの嫌だよ」
「一緒に寝るわけじゃないよ」
「変なことしないか?」
「へ、変なことって……」
魅録は悠理の温かい部分に手を差し込む。溢れる蜜の中をかき回す。悠理の体がビクッと
した。彼女の瞳が濡れてくるのを見て魅録は再び口づけながら言った。
「こんなこと他の男とはするな」
「し、しないよ。魅録とだけだよ……」

148 :可×清 可憐さんにはかなわない(84)R:03/05/18 23:54
指が敏感な部分をなぞると悠理がかぶりを振る。裸の胸の上を汗が一筋滑って行った。
彼女が衣服を身につけているのは下の部分だけだ。しかし魅録によってそれも奪い取られた。
「それから」
悠理の臍の下に魅録の頭がもぐり込む。密やかな場所に舌を這わせながら、魅録は言った。
「こんなこともするな」
「あ……あっ、あ、あー、んん、ぅん、しっ、しないっよっ。魅録と、だ……け」
散々彼女に身をよじらせた後で、魅録は自分も全て脱ぎ去ると期待で瞳を輝かせる悠理に
言った。彼女の脚を開かせ、意欲満々の自分自身をあてがう。
「それから、悠理!」
「うっ、うん、魅録!どんなことしないの!?」
「こんな、」
「あっ、ちょ、ちょっと待って。別の向きがいいな……」
「ん。」
体勢を変える二人。
「ゆ、悠理。いいか?あのな、」
「うんっ」
「こんなことしたら駄目だぞっ」
「うんっ!!」

トントントン。
「魅録。清四郎です。夜分すみませんが……」
「だっ誰もいねぇーーーーっっ!留守だーーーーーっっっ!!」
「帰れ!帰れーーーーーっっ!」

149 :名無し草:03/05/18 23:55
以上です。続きます。

150 :名無し草:03/05/18 23:57
>可憐さん

ごめんなさい。CatchがCacthになってました。
は・ず・か・しーっ。逝ってきます・・・

151 :有閑キャッツアイ編:03/05/19 00:34
わぁ〜可憐さんだ!
魅×悠嬉しいっす。
作者様乙!明日からの仕事も頑張れます。

152 :名無し草:03/05/19 11:39
>可憐さん

朝から鼻血出そう・・・
魅録も悠理もなんかカワイイ。

153 :名無し草:03/05/19 18:07
>可憐さん
この話の清×可も好きだが魅×悠のこんなやり取りも大好きです。
しかもRとはうれすぃ〜。グッジョブ!


154 :名無し草:03/05/19 20:35
>可憐さん
くぅー!!悠理 > 魅録の形勢が、いつの間にか悠理 < 魅録に!!
魅×悠の、この展開はたまりません!!悠理カワイイです!!

そして”招かれざる客”(?)の突然の訪問に向けるセリフ最高です♪


155 :名無し草:03/05/19 20:57
申し訳ありません。↑下げ忘れましたー(泣)
逝ってきます。


156 :名無し草:03/05/20 15:33
はじめまして*今過去レスを一生懸命読んでます!!
誰でも書き込んでいいんですよね??



157 :名無し草:03/05/20 15:44
156ですが・・・
野×清、野×魅、野×美マンセーです。
(つまり野梨子マンセー)
野×清で、可→清←→野(でも自分の気持ちに気づいてない)
で野梨子と可憐の友情にヒビが・・・
てゆうの書きたいんですけどいいですか?
野マンセーとしてはやっぱ王道カポーが萌えなので・・・


158 :有閑キャッツアイ編:03/05/20 17:43
>157
お約束をよく読んでうpしてね。>1から>5
あと、過去ログ読むとわかるけど、
ここは書きたい人は書くスレなので、「いいですか?」とか
聞かない方がいいとおもいます。
>5にも書いてありますが誘い受けは嫌われる傾向です。
それさえ守られれば、作品うpは大歓迎!
一緒に妄想しましょう(^-^)



159 :名無し草:03/05/20 18:26
>>158
やさしいねぇ・・・。
私も見習おう・・・。

160 :名無し草:03/05/20 18:33
>>158
あなたってもしかしたら>>151
だとしたらあなたもお約束読みなおした方がいいかもね。

161 :名無し草:03/05/20 18:36
>158
うん・・・素晴らしい・・・。

ひととおり過去ログを読んでから書かれるのをお薦めするです。
誰のためでもなく、あなた自身を守るためですので。
その上でだったら、ホント大歓迎!! 待ってますよーん。

162 :158:03/05/20 19:52
わかりました。忠告どーもです!


163 :名無し草:03/05/20 21:58
可憐さん〜イイですね!!魅×悠は一番好きなカポーなので嬉しいっす!
有閑キャッツも楽しみだ〜!!

164 :名無し草:03/05/20 22:59
池のコイ誘拐事件で悠理がブローチ落として
取りに行って逃げて逃げて逃げ切ってそのあと野梨子が
「あっ・・・」
て言うところ萌え〜

165 :魅×野 きみがすき(1):03/05/20 23:23
一番初めに、気づいた。
いつもなら他人の恋には気づかない。
他人ではなかった。
自分の大切な女の子が、恋の香りを秘めている。
自分には送られてこない香りの風向き。
黒い瞳に涙の膜。
瞳の鏡に、僕を映して-------

野梨子は、魅録に恋をしている。

166 :名無し草:03/05/21 00:47
>「きみがすき」
新連載ですね。続きを楽しみにしています。
たぶん新人さんだと思いますが、新連載を始める時は、その旨、最初に一言ご
挨拶いただくと読者も入りやすいです。

又、ある程度ワープロ等で文章を作ってから少しまとまった量でうpし、
次回に続く場合は<ツヅク>など入れると良いかと思われます。
でないと次にうpしたい人が遠慮してうpがあるのを待っていることが
あるためです(文章がサンドイッチする・されるのを避けるため)。

前スレや嵐さんの妄想同好会にある過去ログをお読みになると
よくわかりますよ!長文スマソ

167 :名無し草:03/05/21 14:40
>165
つまらん。詩か?w


168 :名無し草:03/05/21 16:31
キャッツアイ好きです。いつも楽しませて頂いてます。

>167
まあまあ・・・

169 :山崎渉:03/05/22 02:11
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―

170 :名無し草:03/05/22 16:37
久々にアゲときます。

171 :名無し草:03/05/22 18:00
>170
このスレはsage推奨ですが、何か意図ありなのかな?
カキコがあればサガってても消滅はしないはずだが。

172 :名無し草:03/05/22 18:12
>>170
保守はsageでもOK。
なんでageるのかねぇ・・・。

173 :名無し草:03/05/22 20:12
某所でのリボン読者対象、初恋の相手アンケートで
われらが清四郎氏が真壁俊(ときめきトゥナイト)についで2位だったのでビクーリ!
あんなに悠理いぢめてるのに・・・そういう漏れの初恋も清四郎なのだが・・・

174 :名無し草:03/05/22 22:30
173>まじですか…。漏れのランキングでは
清四郎は6位です。好きだけど(w

皆様の6位は?

175 :名無し草:03/05/22 22:32
6位…
なぜそんな微妙な順位を知りたがる…?(w

176 :名無し草:03/05/22 22:42
ワロタ


177 :名無し草:03/05/22 23:36
そろそろ他の作品の続きが読みたいと言ってみる

178 :名無し草:03/05/22 23:57
新たな小説うpしたいと思います。

題名:ステディ  野×清
ほのぼのです。Rではアリマセン。

179 :ステディ(1) 野×清:03/05/22 23:58
いつもの生徒会室。
キーンコーンカーンコーン♪チャイムがなる。
「もうこんな時間かあ!腹減った〜。かえろ」
「あっ俺もいく!CD借りるっていっただろ」
バタン。
「あたし今日デートなのよね。お先〜♪」
バタン。
美童はすでにデートでいない。
「そろそろ我々も帰るとしますか」
「…そうですわね」
幼馴染の二人も生徒会室をあとにした。

二人は校門を出ると、何やら待っている人がいたのに気づいた。ここの学校の生徒ではない。
「あのっ、、菊正宗清四郎さん…ですよね?」
肩までの黒髪を揺らして頬を紅潮させている可愛らしい子だ。
彼女が何を言わんとしているかぐらい野梨子にもわかった。
「私、先に歩いていますわね」
言い終わるか終わらないかのうちに、野梨子の足は速くなった。
最近彼は全国高校生の武道大会にけが人の代わりに聖プレジデントの代表でむりやり出場させられ、
あっけなく優勝してしまった。
その素早さと人間国宝の元で修行した経歴、ルックス、さらには大病院の息子という
肩書きもあいまって、マスコミはたちまち清四郎を時の人にしてしまった。
そのおかげでこうして毎日誰かしら女の子が彼の帰りを待ち構えているのだ。

180 :ステディ(2) 野×清:03/05/23 00:22
(清四郎ったら…いい気になりすぎですわ)
野梨子の足はいっそう速くなる。
まるで彼女の鼓動を反映するように。

それでも、最初のほうはまだよかった。
「すっかり有名人ですわね」
などと軽い口を叩いていたものである。心のどこかで、こんなのは一瞬のものと
タカをくくっていたのだ。
しかし予想ははずれ、1ヶ月たった今も清四郎を訪ねに来る女の子は
途切れることを知らないのだった。
さらに悪いことに、聖プレジデントの生徒にとっての常識ーーつまり、
『清四郎にはいつも一緒の幼馴染がいる』
ということが女の子達には通用しないのだ。

野梨子はどうすることも出来なかった。今自分の心に浮かび上がってくる気持ちを
言葉で表すことは出来ない。清四郎に呆れているはずなのにそれよりも
変わるがわるやってくる女の子達を睨んでみたくなったり、
『そこは自分の場所』
と言ってやりたいような、ふしぎな気持ちだった。
そしてそれを思うたび彼女の心は、柑橘類の香りを嗅いだように
きゅんと窪むのだった。
>つづく


181 :ステディの作家です:03/05/23 00:25
ありがとうございました(w

他の作家様頑張ってください!

182 :名無し草:03/05/23 00:26
ステディさん。
過去ログちゃんと読んだほうがいいよ。

183 :名無し草:03/05/23 00:30
174>みんな好き(w

184 :名無し草:03/05/23 00:32
182>もうちょとやさしく!


185 :名無し草:03/05/23 01:11
>ステディ
新連載ですね。続きを楽しみにしています。
たぶん新人さんだと思いますが、
ある程度ワープロ等で文章を作ってから少しまとまった量でうpすると
良いかと思われます。
でないと次にうpしたい人が遠慮してうpがあるのを待っていることが
あるためです(文章がサンドイッチする・されるのを避けるため)。

あと、他の作家さんへのエールは
「作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加しやすいように、なるべく名無しで(作家であることが分からないような書き方で)お願いします。」
とお約束にありますので、名無しでされるほうが無難だと思います。

前スレや嵐さんの妄想同好会にある過去ログをお読みになると
よくわかりますよ!

一部>>166タンのカキコを借りました。勝手にスマソ。
しかし、10個ちょっと前の注意も読まない作家がいるなんて・・・

186 :名無し草:03/05/23 01:15
>>185
補足
この場合の「ある程度まとまった量」は
ここで直打ちせずに、ワープロ等でまとめて打った後にコピペしてうpしてね、
という意味です。

187 :名無し草:03/05/23 21:21
皆さんご迷惑かけすみません!
でも、過去ログ読んでなかったんじゃなかったんです。
(名無しで感想、はごめんなさいです。)
納得して、ワードでつくる→コピー→貼り付け。
ワードでつくる→コピー→貼り付け。って一回ずつ
やって、それがまとめてつくるって事だと思っていました。
『よしこれで大丈夫!』って感じでした。
実は家にパソコンが来たのが3ヶ月前で、
沢山ためて置くっていうのがわかってなかったんです。
多大な迷惑ごめんなさい!
でも読んでたのは本当です。
証拠に紹介と『つづく』が入っています。
これからは純粋に読者として楽しみます。
親切に教えてくださった方々ありがとうございました。


188 :名無し草:03/05/23 22:41
さて妄想妄想!
キャッツの婆姉妹がどうくるかワクワクしてまつよん。


189 :名無し草:03/05/24 00:56
>187
失敗は糧でつよ。
そう恐縮しなさるな。

190 :名無し草:03/05/24 08:11
>187
お約束のことで叩かれる人はたくさんいますよ!
あなただけじゃないです。
もしできれば、それで脅えてしまわずにがんばってうP続けて
ほしいと思います。

191 :名無し草:03/05/24 10:25
皆さんやさしんですね。ありがとうございます!
もうちょとパソコンの勉強しますね。


192 :名無し草:03/05/25 04:12
誰もいないスキにネタ書き逃げゴメン!

両津=悠理、中川=魅録、麗子=野梨子
本田=美童、寺井=可憐、大原=清四郎


193 :名無し草:03/05/25 04:38
実はいた!
漏れも書き逃げ。

ヒカル=悠理、アキラ=野梨子、佐為=美童
緒方=清四郎、加賀=魅録、あかり=可憐

アキラがぴったり(w

194 :名無し草:03/05/25 21:34
192は「こち亀」だよね?でも、193は分からない…。何の漫画?

195 :名無し草:03/05/25 21:37
194>>ヒカルの碁だと思いますよ!!呼んだことないけど・・


196 :名無し草:03/05/25 21:52
>195
194じゃないけどサンクス。
なるほど。そういえば囲碁倶楽部だもんね。>野梨子と清四郎

197 :名無し草:03/05/26 00:36
196>>そうか…194だけど気づかんかった。
野梨子と清四郎は碁は野梨子が上??


198 :名無し草:03/05/26 00:38
↑間違えた195です。逝ってきます…


199 :名無し草:03/05/26 11:47
有閑キャッツはまだかいな…

200 :名無し草:03/05/26 22:34
久しぶりにリレー小説読みたいなと言ってみるテスト(w

201 :名無し草:03/05/27 22:27
病院坂、カモーン!! 

202 :山崎渉:03/05/28 10:46
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

203 :山崎渉:03/05/28 17:24
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

204 :名無し草:03/05/28 18:52
うざい

205 :名無し草:03/05/30 03:15
有閑キャッツ・病院坂がよみたいー

206 :名無し草:03/05/30 09:04
だから上げるなよ

207 :名無し草:03/05/30 09:55
秋の手触りщ(゚Д゚щ)カモォォォン

208 :名無し草:03/05/30 21:45
ここ1週間ほど、何の話も出てこないなー
どうなってんだろ

209 :名無し草:03/05/30 22:37
208>作家さんお休みモード??次が楽しみです♪


210 :名無し草:03/05/31 03:13
短編うpさせてもらいます。
野×悠(悠×野)で、清×野
ややダーク(でもぬるい)なので、要注意

211 :甘い毒薬 【序】:03/05/31 03:13
 ****************************************************************

 夏が匂い立つ夜だった。わたくしは独り、夜道を歩いた。
 道端に咲く夏草は月下の夜露をはじき、幻想的に闇に光る。
 酷く胸苦しかった。狂おしい思いを抱いて、わたくしはむしろ幸福でさえあった。
 行為は唐突で、無慈悲で、わたくしから何もかもを搾取していったのだけれど。今わたくしが
思うのは、己の踏みにじられた尊厳ではなく、ようやく長く続いたわたくしたちのあいまいな時間
から逃れうるかもしれないということだった。
 あの人が悪いわけではないのだ。それでもけっして。

 悪いのはわたくしで、そして何より彼女だ。

 溺れ、もがくわたくしとあの人の足掻きに困惑し、眉を顰め、同情し、醒めた目をむけ、
そして唆した彼女。
 シャツの和はとびもしていないし、首筋に鬱血など残っていない。あの人はどこまでも――
ぎりぎりのところで自制しようと足掻いていた。
 けれど、今わたくしはこんな夜道に道を歩いている。
 傷ついたのはわたくしの身体ではない。わたくしの心でもない。あの人の全て。

 悪いのは彼女で、そして何よりわたくしなのだ。

 ****************************************************************

212 :甘い毒薬 【T】:03/05/31 03:15
「いつまでそうやって被害者ぶってんだ? ――野梨子から全部聞いたよ」
 背後で突然声がして、清四郎ははっとした。ついで、ぱちりという音とともに生徒会室の蛍光
灯が点灯され、彼は眩しさに眉を顰めた。
 一体、どれぐらいの時間自失していたというのだろう。気がつけばすっかり夜の帳は落ちている。
背徳的な行為の最中、途切れることなく続いていた運動部の掛け声は消えうせ、窓の外の
グラウンドには、人っ子一人いない。
 嗚呼。
 そういえば、制服のブラウスを纏う最中の野梨子の表情は、落日の光の所為で定かではな
かった。――ということは、あれからもう二時間は経ったというのか。
 清四郎は生徒会室の中央に置かれた会議机の椅子に座ったまま、振り返った。
 声の主は彼の眼差しの中、ただ無表情で立っていた。声にも出さず、表情にも出さず、
しかし清四郎には、彼女が内心で嘲っているのが手に取るように分かった。
 愚かな選択をした友を、それを許した"恋人"を。
 「悠理」
 彼女は私服だった。普段の奇抜な服装ではなく、無造作なジーパンとTシャツ。小脇に抱
えるフルフェイスのメットを含め、豪奢な内装の生徒会室の中で彼女だけ浮いている。彼女
は静かに清四郎の傍まで歩み寄ってきた。
 清四郎の隣まで来た悠理は、まるでスローモーションのようにやけにゆっくりとした動作で腰を
屈めると、彼に囁きかける。
「野梨子は処女だったろ」
 刹那、己の身体の中で激情が迸った。抑えがたいその感情が、怒りなのか嫉妬なのか、
悲しみなのか、後悔なのかもはや分からない。分からぬまま、彼は椅子を跳ね飛ばすように
立ち上がり、そのまま悠理の胸倉を掴むと壁に叩き付けた。
 ダン!
 柔らかな少女にぶつけてよい暴力ではなかった。いくら、それが剣菱悠理であったとしても。
頑丈な壁にぶつかった途端に悠理の身体はくの字に曲がり、そのまま床にずれ込んだ。
 だが、清四郎が悔悟の念に取り付かれるよりも早く、悠理は顔を上げ、清四郎を見据えた。
そこには苦痛の色はない。信じがたいことではあったが、彼女の表情は平静そのものだった。
「清四郎、おまえアホだろ」
 悠理は薄く笑った。

213 :甘い毒薬 【U】:03/05/31 03:16
「野梨子はすっかりあたいとセックスしてるって、お前思い込んでいたもんな? 嬉しかったか?
野梨子の身体に傷ひとつなくって」
「や…めろ」
 まるで自分こそが暴力を振われたかのように、打ちひしがれて清四郎は立ち尽くす。悠理は、
しかし容赦しない。
「――ついでに言っておくと、あたいも処女だぜ。あたいと野梨子は、ままごとみたいなキスさえ
しなかった」

「やめろと言っている!」

 清四郎の恫喝に、だが悠理は怯まない。――もはや、悠理が怯える理由などまるでない
からだ。彼女には失うものはもうない。
「怒鳴るくらいなら、後悔するぐらいなら、はじめから抱かなかったら良かったんだ――どうして、
抱いた」
 悠理の言葉に、清四郎は奥歯を噛み締めた。
 ――煽ったのは、悠理でしょう……っ!!
 何に替えても少女を欲しいという思いが一方通行でないと知ってしまえば、どうして諦めること
など出来よう。たとえ、友情を逸脱してしまえば傷つけあうしかないと悟ってしまったとしても。
 どうしようもなく縺れ、悪化してゆく清四郎たちの関係を横目で見ていた悠理は、スープを匙
で掬うように容易く、野梨子を連れ去ってしまった。
 取り返せるものなら取り返してみろとばかりに、己の目の前で嵶かな身体を抱きしめ、黒絹の
ような髪に口吻けてみせた悠理の、あの瞳は忘れられない。
 あの灼けつくような胸の痛みを!
 どうしても、どうしても許せなかった。
 胸で渦巻く思いを御すだけで精一杯になり、しばし無言となった清四郎を眇めみた悠理は、
ようやく床から立ち上がった。膝の埃を払うと、再び問う。
「答えろよ。どうして抱いた?」
「愛してるからですよ」
 嘘偽りなど、欠片も混じらぬ声音を聞き取った瞬間、悠理は清四郎の頬を間髪を入れずに
引っ叩いた。不意打ちによろける清四郎に向って、無表情に告げる。
「臆面もなく言えるお前が羨ましいよ――行って来いよ、野梨子はお前のもんだ」

214 :甘い毒薬 【V】:03/05/31 03:18
 そう言った途端、清四郎の顔に喜色が浮かぶのを、悠理は諦観とともに見つめていた。
 許しを得たのだと、彼はそう思ったに違いなかった。
 走り去る清四郎の後姿を見送った悠理は、そのまま床に座り込んだ。そのまま瞳を瞑ると、
今更ながら清四郎に打ち付けられた背中が痛み出す。唇を引き結び、痛みの波が引くのを
悠理は待つ。
 朦朧とする脳裏に、野梨子の姿が揺らめいて、消えた。
 再び瞳を開いた悠理は、涙が零れそうになるのを耐えるために天井を眺める。
 ――救ってやりたかった。
 野梨子を、この先訪れるだろう未来から、護ってやりたかったのだ。たとえそれが、己の自己
満足だとしても。
 清四郎の想いを疑うのではない。逆だ。何よりも近い二人だからこそ、異常なまでに執着
しあう二人が怖かったのだ。お互いを思えば想うほどに歪みを帯びてゆくのを耐えかねて。
 けれど。
(許したんじゃ、ない)
 清四郎の想いに屈しただけだ。
 あれほどの想いで絡め取られたならば、逃げることは叶うまい。
「野梨子……」
 想いそのものを告白するかのように、かの少女の名前を紡ぐ。
 自分が感情を込めてこの名を呼ぶのは、これで最後だろう。
 悠理はそこに野梨子がいるかのように、何もない空間を両手で包み込み、抱きし
めた。腕が、覚えている。彼女の身体の細さを、柔らかさを、軋みをあげる骨の感触を。
 もはや自分が護ってやることのできない少女を、抱え込み、悠理は今度こそ、涙で頬を
濡らす。

215 :甘い毒薬 【終】:03/05/31 03:19
 ****************************************************************

 彼が生真面目な表情が歪ませ、今にも泣き出しそうになりながら腰を折るのを見つめながら、
わたくしはけっして彼への思いから、そして彼からの思いから逃れ得ぬことを知ったのだった。
 溢れんばかりの彼への愛と憎悪がわたくしの胸のなかで鬩ぎ合い、わたくし自身を緩慢に
殺していった。
 壊していった。
 走ってきたせいだろう。わたくしを抱きしめる彼の腕は汗ばみ、いつも完璧にセットされている
すだれ頭が崩れている。吐息の熱さが、わたくしをゆるゆると狂わせていった。
 それは何よりも甘い致死性の毒だった。



 わたくしは、瞳を瞑った。
 そして、つい先ほどまで恋人であった少女に想いを馳せ、そしてその思いは彼の施す口吻け
によって記憶の海に溶けてゆくのだった。

 **************************************************************** 

216 :名無し草:03/05/31 09:02
おお。朝っぱらから、なかなか深い文章を読ませていただいた。
文体が綺麗だから、ダークだけどすんなり読めたです。
悠→野って初めてだった気がする。ハードなのは苦手だけど
これくらいなら自分的には許容範囲で、面白かったッス。

217 :名無し草:03/05/31 11:56
久々のUPで、しかも読み応えのある作品が♪
それぞれの持つ、深く複雑な想いがいいですね〜
一人取り残された悠理はどうなるのでしょう
可哀相で可哀相で、ハグしてあげたくなりました (つДT)

218 :名無し草:03/05/31 12:15
情感のある短編、素敵でした。新鮮な構図でした。
野・悠・清って、幼稚園のときからのつきあいで
(悠はそんなに仲良くなかったかもしれないけど)
6人の中では歴史が長いわけですよね。
だから3人の微妙な関係ていうプロットもありかも。
そうそう、中学生のとき、野が男子にもてる優等生で女子たちから
ういてたころの話が読みたいなあ。清はかばってあげるん
だろうけど、それがまた女子達のジェラシーを煽ってただろうな。
それに悠はどうからんでたのかな・・・とか。
あと病院坂のファンなので続き楽しみです。

219 :名無し草:03/05/31 15:02
短編素敵でした!
ダーク読むの初挑戦だったんですけど悠理の切なさが
良かったです。深い海の底って感じでしたぁ・・

220 :名無し草:03/05/31 19:47
序の「シャツの和」は「シャツの釦」だよね・・・

221 :名無し草:03/05/31 21:40
久しぶりの作品うpサンクス! 他の作家さんも待ってます

222 :名無し草:03/06/01 02:25

有閑キャッツ、2レス、うpします。
魅×可が思いつかなかったので、美×野で書いてみました。


223 :『有閑キャッツ』編:03/06/01 02:25
>>139
「何かお探しですの?」
くすんだ黄金色のノブがずらりと並ぶ廊下で、何気なくその一つに手をかけた
美童は背後から投げかけられた鈴のような声にドキリとした。
透き通るような美しい声、もしや意中の姫君か−−と振向いて落胆する。
そこに立っていたのはベランダの美少女とは似ても似つかぬ、地味で貧相な体
つきのメイドだった。髪は無造作に後ろで一つに束ねられ、まとめきれなかっ
た数本がゴムから飛び出して立っている。

真っ白なリネンを抱えたメイドは美童の前を無愛想に横切り、彼が手をかけよ
うとしたノブをためらいなく回した。ガチャリと音がしてドアが開くと、彼の
鼻先でバタンと閉まる。ため息をつきながら、そっとドアを開くと中でせっせ
とベッドのシーツを変えている。どうやらここは客用の寝室らしい。
美童は無愛想なメイドに話しかけた。
「ねえ、君……ここは長いの?」
メイドはちらりと金髪の男に目を向けたが、すぐに目を反らして答えた。
「いいえ。まだ入ったばかりですわ」
「そう……。じゃ、知らないかな。その、このお屋敷で黒くて長い髪をした色
の白いお嬢さんて見かけたことってない? とても綺麗な女の子なんだけど」

(長い黒髪の色白の美少女?)

リネンを操る手が止まった。
無愛想なメイドに扮した野梨子の脳裏に、紅子・鈴蘭の老姉妹の姿が浮かぶ。
少女、ということは、あの二人の、それかまだ姿を見せない琴子の娘だろうか。
そんな娘がいるという話は聞いていない。姿を見ないということは食事は自分
の部屋でとっているのだろうか。その食事は誰が運んでいるのか。
厨房の悠理なら探れるかもしれない。早速、聞いてみなくては。
そのルートから琴子の部屋にもぐり込めるかもしれない−−。

224 :『有閑キャッツ』編:03/06/01 02:25
美童はメイドが突然考え込んでしまったのを見て、ひょっとしたら彼女が何か
知っているかもしれないという淡い期待を抱いて歩み寄った。
「彼女を知ってるの? よかったら紹介してもらえないかな。あ、いや、別に
やましい気持ちがあるわけじゃなくて……ただ、そのお話してみたいなぁと」
自分の思考に捕われていた野梨子は、彼の声にフッと我に返った。そして男の
言ったことを反芻してみて少々呆れる。

(たしか私達ともお食事を、とか言ってましたわよね、この方)

しかし、彼の青い瞳には浮気者には似つかわしくない真剣さが見てとれた。
青い晴れ渡った空のような男の瞳に吸い込まれそうな気分を味わう内に、野梨
子の頭にピカッと一つの計画が閃いた。心から残念そうに美童に言う。
「申し訳ないのですが、まだこちらにお勤めしてから日が浅くて、お屋敷のこ
とよく存じ上げないんですの。ただ、こちらの二階の北側奥にあるお部屋には、
近寄らないようにと言いつかっております。病気の方がいらっしゃるという事
ですが、もしかしたら……」
男の瞳に喜びの色が走るのを見て、野梨子はあわてたように口を押さえた。
「余計な事を申し上げてしまいましたわ。今のこと、くれぐれも他言なさらな
いでくださいね。でないと私が御主人様に叱られてしまいますわ」

次の瞬間、抱きしめられて野梨子は息がつけなくなった。
あろうことか額に彼の唇が触れる。
「……ありがとう!感謝するよ。絶対誰にも言わない。ありがとう、ほんとに」
うれしさを隠し切れずにスキップして部屋を出て行く美童を見て、野梨子は
胸が痛んだ、ほんの少しだけ。

(無邪気な方。少々利用させていただきますけど、悪く思わないでくださいね)

ふと額に手をやった野梨子は、己の顔が赤らんでいるのに気がついた。
****続き、どなたかお願いします***

225 :名無し草:03/06/01 20:28
>キャッツ
美×野も少し進展しましたね(*^_^*)
野梨子の地味っぷりがカナリツボでした。

226 :名無し草:03/06/03 00:11
待ってました!有閑キャッツ!

227 :有閑キャッツアイ編:03/06/05 20:10
>224の続きです

可憐の体を一瞬の緊張が走った。
しかしその男ーー魅録は可憐を一瞥しただけで、何も気付かなかったようだ。
そのまま左へ折れて鈴蘭の部屋の前を掃除し始める。
真昼の日が燦々と射し込む廊下はすこし暑い。
可憐は日の光を背景に立っていた魅録の姿を思い返した。
日に透ける髪は輝いて輪郭はぼやけている。
何故か心の奥が懐かしいようなくすぐったいような……。
「ふぅ」
魅録に一瞥された時はドキドキしたが、どうやらパーティーで会った女とは
思わなかったようだ。
変装しているからバレる可能性は少ないと思いながらも、やはり不安はあったのだ。
安心した反面、妙な残念さが可憐の胸に去来する。
苦笑しながら、無意識に服の上から胸元に下がるペンダントに触れた。
布を通して伝わる硬質な感触を愛おしむようになぞる。
「すみません」
ふいに後ろから声がかかった。
可憐の体が再び緊張する。振り向くと、やはり魅録が立っていた。
「なんでしょうか?」
「この先の廊下の扉、鍵かかってんだけどさ。開けてもらえない?」
自分に関することではない質問に安堵する。
「あの……申し訳ありませんが、廊下より先は立ち入り禁止になっておりますの」
魅録が目顔でどういうことだ?と問うてくる。
「あれから先は琴子様のお部屋なんです。琴子様はご病気ですからあまり騒々しく
 しないで下さいね」
「でもキャッツの予告は明日なんだぜ?」


228 :有閑キャッツアイ編:03/06/05 20:10
屋敷の警備を担当する魅録は幻の名画『三姉妹』がどの部屋にも無いことに気が付いていた。
ーーとすれば、それは開かずの間の奥にあるのだろう。
可憐は魅録を話すうち、徐々に冷静さを取り戻した。魅録に注ぐ目はキャッツのものだ。
どうやったら、上手く動いてくれるだろうか。彼の動作や言葉を思い出す。
刑事にしては案外真直ぐな性格なのかもしれない。だったらーーー
「そうは仰られても、あそこは決められた者しか入ってはいけないんですよ」
「決められた者?」
魅録は案の定引っ掛かった。
「ええ。ご姉妹と担当のメイドだけ。それ以外の者が入ったら叱られるんです」
魅録の顔が曇った。あの扉を開けさせるには、またあの主人姉妹と交渉しなくてはならない。
屋敷の周りの警備について交渉した時も大変な時間と労力がかかった。
これが屋敷の中となったら、一体どれだけの労力が必要なのだろう。
可憐は放った言葉が十分に浸透するのを待って切り出した。
「あの……こんなこと申し上げ憎いんですけど……主人は何とも思ってらっしゃらない
 ようですけど、私はキャッツなんて恐いんです……メイドの仲間もそう言ってますし」
焦らすようにたどたどしく話す。それは怪盗に恐怖するメイドを上手に演出していた。
「……本当は警察の方にちゃんと警備していただくのが一番だと思うんです……。
 あの……鍵とかわかりませんけど、なんとかならないでしょうか……?」
メイドから潤んだ瞳を向けられて、魅録はたじろいだ。女の涙は苦手なのだ。
それに今まで眼鏡に阻まれてよくわからなかったが、眼鏡を取れば結構な美人に違いない。
「いや、なんというか、ほらっ、キャッツが狙ってるのは絵であって、その……」
「そうですか。だとしたら、いいんですけど……」
微妙に眼鏡の位置を直して睫毛を震わせながら、可憐は十分な手応えを感じていた。
さらに声のトーンを低くして提案する。
「刑事さん、お困りのようですし……私、鍵持ってる人聞いてきます。クビに
 なっちゃったら困るけど、不安のまま過ごすよりいいですよね」


229 :有閑キャッツアイ編:03/06/05 20:11
「え?」
魅録は思いがけない展開に逡巡した。あの食えない老姉妹と交渉するか、
このメイドに鍵を見つけてきてもらうかーーいや、そしたらこの人を巻き込んでしまうーー
「いや、いいよ。なんとかなるさ」
微笑む魅録に可憐は自分の思惑通りになったのがわかった。
これであそこの鍵はこの男がなんとかしてくれるに違いない。
可憐はしおらしく「ありがとうございます」というと、仕事に戻ろうとした。
手がまた無意識にペンダントに触れる。

じっと可憐を見つめていた魅録がふいに言葉を発した。
「……あんたさ。俺と前にどこかで、会ってないか?」
可憐は一機にあの緊張に包まれた。瞬間、息が詰まる。
「ーーいいえ。初めてお会いしたと思いますわ」
「そうか……。ならいいんだ。変なこと言って悪かった」
魅録はさっきから、メイドを見ながらパーティーで会ったあの美女と面影が重ねていた。
つい質の悪いナンパのようなセリフを口にしてしまったのに心の中で自嘲しながら
「じゃ」といってまた階段室へ戻っていった。
可憐はしばらく動けないでいる。
魅録が完全に立ち去っても胸がドキドキしていた。

続きお願いします。

230 :名無し草:03/06/06 07:54
>有閑キャッツ
きゃー、続きだー。可憐の心理描写がすごく丁寧で
読みやすかったです。

231 :秋の手触り[60]:03/06/09 00:23
>>http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/605-612

(それにしても、さっきのふたりの様子は変だったな)
 出席簿を職員室から取り行った帰り道、清四郎は首を傾げていた。具体的に指摘する
ことは出来ないが、隠し事の匂いがした。――己のこういったことへの洞察力は、悠理の野生
の勘に勝るとも劣らない自負がある。
 週番ということで急いでいたせいもあって、あのときは大して不信感を覚えなかった。しかし、
後から思い返す毎に、疑念は積み重なってくる。
 剣菱の車で一緒に登校したことと、何か関係しているのだろうか。
 あれこれ考えているうちに教室にたどり着いたので、とりあえず清四郎は一旦思考を止めた。
「おはよ、清四郎」
 HR前のざわめく教室の扉を開くと、大勢の生徒の中で、まっさきに清四郎の姿に気づいた
可憐が声を掛けてきた。そして、そのまま近寄ってくる。
 机と机の間を縫うように清四郎の元へ歩く可憐を、男女の区別なく生徒たちはごく自然に
注視する。その際立った美貌が一番の要因ではあるが、美男・美女が量産される聖プレジデ
ジデント学園において、美貌のみで注目されるのはただごとではない。やはり可憐は特別な
存在といえた。
 そういったことは、有閑倶楽部のメンバー全員に言えることであったが、彼女の場合は侵し
がたい聖域を思わせる野梨子とも、無性的かつ両性的な魅力を持つ悠理とも違う。
女優のように、可憐は自分の美貌を熟知し、生かしている。そこに嫌味はない。恰も呼吸を
するかのように、ごく自然と可憐は己を華やかに装うのだ。
 洗練された貴婦人のように。あるいは、艶かしい娼婦のように。
「おはようございます」
 清四郎が挨拶を返すと、可憐は早速口を開いた。
「さっき美童に聞いてビックリしたんだけど、あんた結局医大に行くんだって?」
「ええ。一応、ですが」
「一応? 暢気ねえ。もう秋よ。受験勉強してんの? あんたの成績じゃ、今更猛勉強しな
くてもいいのかもしれないけどさ、実際の頭の良さと、受験の成績って無関係らしいし」
「あながち無関係とも言えませんよ。最近は、知識だけじゃなく思考能力も問うらしいですから。
まあ、そろそろ勉強しなくてはいけませんね」

232 :秋の手触り[61]:03/06/09 00:28
 そう返事しながらも、実際には本格的に勉強するのは冬休みに入ってからのつもりである。
 はっきり言って、清四郎はどこに進学しようかと悩むことはあっても、合格するか否かで悩んだ
ことがない。受験勉強の「受」の字もない聖プレジデントに通っていながら、たいした自信と言え
よう。
「あんたがいないと、やっぱり寂しいわね。なんか場が締まらないっていうか」
 そう言いながら、可憐は肩にかかった髪を払う。可憐の髪型は今時めずらしいほどのゴージャス
な巻き毛だが、不思議と野暮ったくならない。
「そりゃどうも。まあ、住んでいる場所まで変わるわけじゃないので、しょっちゅう会えますよ。
可憐はやはり、プレジデント大学の家政科ですか?」
「残念でした。英文科よ。大ッ嫌いなね」
「そりゃあまた……どういう心境の変化ですか」
 目を瞠った清四郎に、可憐は悪戯っぽい表情で、わざとらしくシナをつくった。
「だって、英会話ぐらい出来ないと、玉の輿を逃してしまうかもしれないじゃな〜い」
「なるほど」
 勉強が好きとは世辞にもいえない彼女が英会話にまで挑戦しようとは、ますます玉の輿思考
に拍車がかかっているようである。果敢でよいことだ。この勢いなら、いずれ自分で玉の輿を作れ
るのではないかとも思うが。
「で、美童は何処に入るつもりでしょうね」
「まだ考えてないんじゃないの。エスカレーターに乗っかって、うちの大学に進むことは間違い
ないけれど。あんたじゃあるまいし、うちの高校から外部大学を目指すなんて今更無理だし。
悠理は国文科ね。うちの大学で一番偏差値が低い科だから」
 可憐の予想に、なにげなく清四郎が言葉を挟んだ。
「家政科だって、国文科と大して偏差値は変わらな――いや、忘れてください」
 悠理が家政科などに入ったら、講師が発狂する。
 そのさまを想像して、可憐はくすくすと笑った。中学校の頃、悠理が家庭科の授業でつくった
「クリームシチュー」と称する不思議な色の液体の異臭を嗅いで以来、聖プレジデントのクラス
メイトたちは彼女を試食役に専念させているのだった。
「――魅録は、防衛大学に入らないのでしょうかね?」

233 :秋の手触り[62]:03/06/09 00:30
 メンバーの中で、清四郎を除き、エスカレーターに乗らない可能性があるのは、彼ぐらいである。
 魅録ほどの男である。なろうと思えば、警察だろうと自衛隊だろうと、プログラマーだろうと
メカニックだろうと、なんだって出来るはずである。前に彼は現状で満足していると言っていたが、
しかし
 大学生活の四年は長い。この間のショットバーでは、進路の話はもっぱら自分に振られ、魅録に
ついてはさっぱり聞けなかった。
「さあね。あいつもあんたと同じで、趣味が広すぎるのよねー。いっぱい道がありすぎて選べない
んじゃない?」
「……耳の痛い意見をどうも」
 確かに自分は、医者の道を進んだとしても、それに飽き足らずすぐに別の職種を始めてしまう
危険性は高い。清四郎は少し苦笑した。
「そういえば、魅録といえば……」
 嫌な話題は避けるに限る。清四郎はさりげなく、話題をすり替え、先ほどの魅録と悠理のことを
可憐に話してみた。
「――奴ら、なんか隠してますね」
「え?」
 清四郎の言葉に、可憐の耳がぴくりと動く。常に刺激に飢えている有閑倶楽部メンバーとして
は、身内であろうと秘密は格好のネタ。
 可憐の反応を満足げに見やった清四郎は、くすりと笑って言った。
「確証はありませんし、僕としたことがさっきは煙に巻かれてしまいましたが、後で思い返せば
思い返すほど、怪しく感じてきました」
 可憐の目が生き生きと輝きだした。この辺の反応は、さすがに有閑倶楽部のメンバーと言えよう。
「事件ね!」
「最近、めぼしい騒ぎもありませんし――どうです、探ってみません?」
 具体的に、どんなネタなのか分からない。本当に隠し事があるのかさえも定かではなかったが、
可憐は即答した。
「もちろん。野梨子と美童も誘って、徹底的にね」
 魅録たちだけに面白い思いなどさせるものか。お祭り騒ぎにはぜひ、自分も加えて貰わなければ。
 可憐と清四郎は顔を見合わせてニヤリと笑うと、さっそくその秘密とやらに思いを馳せて、その
場は取りあえず自分の席に戻った。

234 :秋の手触り[63]:03/06/09 00:31
 昼休みになり、可憐は持参したお弁当を持って、校舎を出た。有閑倶楽部のメンバーで一緒に
昼食をとることになっていた。
 可憐のお弁当は、花嫁修業と美容を兼ねて、毎日お手製である。いつか「君の料理を毎日
食べたい」ととびきりいい男に言わせてみせるためだ。
 今日は玉子焼きが上手く焼けた。たかだか玉子焼きと侮るなかれ。可憐は、料亭で出しても
おかしくない、ふっくらと出汁の美味い玉子焼きを目指しているのである。
 昨日の日曜日にデートした男性が、和食党であり、目下の目標は彼のマンションで料理をつくる
ことだった。
(豪華な料理もいいけれど、こういった日常の品に意外とポイント高いのよね♪)
 ほくほくとした気分で中庭に到着すると、まだ野梨子しかいなかった。
「お待たせ、野梨子」
「なんだか嬉しそうですわね?」
 ピクニックシートに靴を脱いで座った可憐に、野梨子が首を傾げて聞いた。
「ふふ、最近あたし、調子いいの」
 エクササイズの成果があって、夏休みに増えた体重が元に戻ったし、街でモデルに間違われた。
ネイルが上手く塗れるようになったし、素敵な男性と知り合い、デートまで漕ぎつけた。
「ああ、この間カフェで知り合ったとかいう?」
「そうなの。江崎さんといい感じなのよねー」
「――それでいいんですの、可憐は」
 躊躇いつつ、そう問うた野梨子に、可憐は笑みをしまった。
 野梨子は、口にしてしまったことを悔やんだが、一度出してしまった声を戻すことは出来ない。
 他人の恋にとやかく口出しを出来る身ではないことを承知の上で、彼女は言葉を連ねる。
「美童が、好きなんでしょう」
「好きよ」
 全てを見抜かれてしまっている友の前で、可憐は想いを隠すことはなかった。彼女の即答に、
野梨子の方が痛みに耐えるような表情をする。それが可笑しくて、可憐はくすりと笑った。
「あんたがそんな顔しなくてもいいのよ」
「同情してるわけじゃ、ありませんのよ?」
「分かってるって」
 きっとこの恋は実ることがないだろう。

235 :秋の手触り[64]:03/06/09 00:35

 受け止め、その手で昇華させてくれた。むろん、それでも野梨子は暫くの間、苦しまなかった訳
ではない。だが、今はこうして笑っていられる。仲間として、手をつないでいられるのだ。
「美童も受け止めてくれるって?」
「ええ。恋は努力すれば叶うなんて簡単なものじゃありません。けれど、もし失恋したとしても、全てを
失うわけじゃないでしょう。もちろん、告白してしまえば、再び仲間に戻るのは難しいでしょう。けれど、
不可能じゃありませんわ。美童はそんなに狭量ではないもの」 
 仲間内で、軽視の言葉をかけられやすい美童ではあるが、それは本心ではない。みんな、内心では
彼の度量を認めているのだ。
 可憐は野梨子の言葉に答えることが出来ず、ピクニックシートに手をついて背を反らすと、無言の
まま空を眺めた。
 秋晴れの気持ち良い日である。
 吹き付ける風は穏やかで、涼しい。ピクニックシートの下で、絨毯を敷くように生える芝生の感触は
乾き、もうすぐ枯れた季節になるだろうことを予感させた。そろそろ、人肌が恋しくなる季節なのだ。
 可憐は、去年の冬を思い浮かべた。あの頃はまだ、美童に恋してはいなかった。別の男性を、夢中
になって追い求めていた筈だ。
 今年は、そんな男性はいない。美童の他にはいない。
 たった一人で、冬をひとりで過ごすのは、酷く寂しいことに思われた。
 冬になれば、この思いを告げてみようか。
 唐突に、可憐はそう思った。そして、思った傍から、とても無理だと首を振る自分がいる。
「ごめんなさいね、可憐の問題なのに、あれこれ口出しして。――みんなまだ来ないようだし、わたくし
たちだけでお弁当を食べます?」
 沈んだ可憐の様子を慮って、野梨子が声をかけてきたので、彼女は力なく同意し、用意してきた
お弁当箱を開く。と、そのとき、校舎の角から美童が現れた。
 一足彼が来るのが早かったら、と安堵しつつ、冷や汗をかいた。

236 :秋の手触り[65]:03/06/09 00:38
「ごめんごめん、遅くなって。女の子に捕まっちゃってさあ」
 到着するなりだらしなく鼻を伸ばしてそう言う美童を、野梨子はなんてタイミングが悪いの、と頭を
抱える。そんなことを知るよしもない美童はピクニックシートに加わる。
 見ると、いつもとお弁当箱が違う。それを指摘した可憐に、美童は更に相好を崩した。
「今日は彼女お手製のお弁当なんだ」
 家庭的な子ってのも、たまにはいいよね。
 遊びなれた女を相手にすることの多い美童は、こういったお弁当を貰うことは滅多にない。実は、
昼ごはんに差し入れられる悠理のお弁当の中に、ちらほら手作り弁当が混じっていることが、羨まし
かったのだ。
 しかし、わくわくしながら開いた弁当箱の中身は手作りとは程遠い、美しすぎるおかずの数々だった。
「……」
 思わず沈黙する一同。
「見え見えの嘘なんてつかなくってもさぁ」
 美童はわずかに失望の色を見せ、何気なく可憐のお弁当を見て言う。
「やっぱり、可憐並みの料理の腕を持つ女の子って、そんなにいないもんだね――あ、その玉子焼き
おいしそう。ひとつくれる?」
 差し出した玉子焼きをほおばった美童の美味しそうな笑顔に心を奪われ、可憐は泣きたい思いに
駆られる。
 どうして、この男はあたしの欲しい言葉をくれるんだろう。
(いつまで、あたしはこんなに膨張し続ける思いを抱えきれることが出来るだろう)
 そして、先ほどの己の考えが再び頭をもたげた。

 ――冬に、なれば。
 

237 :秋の手触り:03/06/09 00:39
続きます。
(回線の都合で、うp間隔が伸びてしまいました。すいません)

238 :名無し草:03/06/09 01:08
>秋の手触り
きゃーーー!続きがキタキタキタ〜
たのしみです〜
野梨子と可憐の会話が色気があってやっぱいいですねぇ。
女の子同士の秘密の会話スキです。

239 :名無し草:03/06/09 01:41
すいません。>>234 の「63」の後に、一章分入れ忘れました。

 今まで繰り返してきた綺羅星のような恋の数々。可憐とて、切ない想いに幾夜も泣き濡れた
こともある。本気の恋も軽い恋も、打算的な関係も、経験してきた可憐だからこそ、分かって
しまっていた。けっして自分は美童の最愛の女にはなれまい。少なくとも、現時点では。
 ただの女にはなれるだろう。驚くほどあっさりと。
 美童にとって、「彼女」ではなく「仲間」という意味合いでの女友達は、自分たち三人きりである
ことを可憐は知っている。彼の最愛の女になれるならばともかく、ただ抱かれるだけの「彼女」の
ひとりに成り下がるなど、とても我慢できるものではなかった。一度自分に抱かれた女を、美童が
仲間と認識することは二度とないだろう。
 詰まらない女たちと自分が同列にされたくはない。かなわぬ恋であるならば、せめてこの想いを
押し殺すしかないではないか。
「ねえ、可憐。あなたは、わたくしが悠理を想っていたことを知っていたでしょう?」
 静かに、野梨子は言った。
 その声音に引き寄せられるようにして、可憐は彼女を見つめた。
 そうだった。野梨子とて、この夏ひとつの切なる想いを失ったばかりなのだ。直接本人から聞いた
わけではないが、夏のある時期を過ぎて、悠理に対する態度が変わった――否、元に戻ったと
言うべきか――野梨子から、それが察せられた。
「ええ」
 逡巡しながらも可憐が頷くと、やっぱり、と野梨子は小さく笑う。
 ――その想いが、恋だったのか、麻疹に似た思春期の擬似恋愛に過ぎなかったのか、可憐に
計り知れることではない。野梨子もまた、己の恋に可憐が半ば気づいていることを悟りながらも、
それについて語ることはなかった。
 想いのさなかにあったときは、口にするたびに大切なものが壊れてしまうような気がしていた。
 そして想いを喪ってからも、心に負った小さからぬ傷ゆえに、語りはしなかった。
 今はじめて、かつての想いを野梨子は言葉にする。
「わたくしは、夏にそれを悠理に告げましたわ」
「……」
 そのとき悠理がどのような顔をしたのか可憐は想像してみたが、思い浮かばなかった。
「もちろん、叶うことのない想いでしたけれど、悠理は受け止めてくれましたわ」

240 :秋の手触り作者:03/06/09 01:42
途中で回線が繋がらず、イライラとしながら作業してしまい、
ミスになってしまいました。

本当にすいません。

241 :名無し草:03/06/09 02:15
次から小ネタをあげさせていただきます。
以前のスレッドでの小話、「タイムスリップコンビナートから」
ヒントを得て作った(清×野)の短編です。
嫌いな方はスルーして下さい。

242 :Back to the drawing board !(清×野) 1:03/06/09 02:17
ある暖かな日の昼休み、清四郎は一人廊下を歩いていた。
(おや、あれは・・・)
ふと中庭に目をやると、野梨子が立っている。
「野梨・・・!」
声をかけようとして、清四郎は野梨子が楽しげに、
談笑しているのに気づいた。まるで咲きかけの桜のような微笑を
浮かべて。
木の陰で、彼の幼馴染みの隣で笑っているのは、
魅録だった。



なんとなく声をかけそびれ、清四郎は午後の授業を行う教室に
向かった。
「菊正宗君。」
後ろから声をかけられ振り向くと、幼稚舎時代から見知った、
今は広報室長である教員がこちらに向かって歩いていた。



243 :Back to the drawing board !(清×野) 2:03/06/09 02:19
「いや、突然呼び止めてすまないね。実は今度外部の雑誌で
本付属学校の特集を組むらしくてね、男女一人ずつ
誰か取材によこして欲しいとの事なんだ。
君なら幼稚舎からの内部進学組みだし、成績も肩書きも
申し分ないからね、どうだ、引き受けてはくれないか。」
「いいんですか。<生徒会長が留年する名門校>と書かれても
知りませんよ。」
「それだけ規律ある名門校だということにすればいい。
たとえ名家の子息でも容赦しないってことだ。
君は身をもってそれを示したんだろう?」
清四郎は笑って話を続ける。
「それで、女子生徒は誰が取材に出向くのですか?」
「ああ、それなんだがね菊正宗君、彼女は、白鹿くんは一緒じゃないのかい?」


244 :Back to the drawing board !(清×野) 3:03/06/09 02:19
室長の言葉に、一瞬清四郎は動揺した。
「ええ。彼女とはクラスも違いますしね。」
「そうか。いやね、私は昔から君たちを見てるから、どうも
いつでも一緒にいるような気がしてしまってな。
でももう高校3年、18だもんなぁ。」
「19ですよ。ご存知のとおり留年してますから。」
「はは、そうだったな。まぁ女子生徒のほうは白鹿くんに頼むつもりだから、
君からも彼女に話しといてくれるかい?」
「わかりました。」
室長と別れ、清四郎は今度こそ教室へと向かった。


245 :Back to the drawing board !(清×野) 4:03/06/09 02:21
(・・・随分と、変わりましたね。)
昔、野梨子は男嫌いどころか友人もうまく作れなかった。
いや、全く作れなかったと言っても過言ではないだろう。
野梨子の隣には、誰もいなかった。
自分を除いて。
(それが・・・)
今は悠理がいて、可憐がいて、美童がいて、そして、
魅録がいる。

“菊正宗さまと白鹿さまは恋人同士?”
うんざりするほどに繰り返されてきたうわさ話。直接問われる度に
否定して、それでもなお繰り返されてきたそれも、
今では大分変わってきている。
“松竹梅さまは白鹿さまとお付き合いされているのかしら?”
近頃はやりのネタ。
そして必ずといっていいほど同時に話題にされること。それは

“それでは菊正宗さまは?”

つづきます。

246 :名無し草:03/06/09 10:20
>秋
わーい、久しぶりだぁ!いよいよ清四郎達が動きそうですね。
美×可もありそうで楽しみです。
いつも連載を楽しみにしているのでがんばってください。

>Back to the drawing board !
新連載(短編)ですね。
清四郎は野梨子に対してモヤモヤーな感じですね。
純情な清×野を期待!

247 :名無し草:03/06/09 12:00
>秋の手触り
待ってました!
238さんと同じく、私も野梨子と可憐の会話がいいなぁと思うです。
思いやりと温かさに満ちている感じが好き。
可憐の切ない想いとプライドもいいですね〜
可憐、あんた、ホントいい女だよ。
ゆっくりゆっくりでもいいから、書き続けていただけると凄く
嬉しいです。>作者さん

>Back to the drawing board !
いつもクールな清四郎が野梨子のことではそうでもない、
というは萌えますね〜。学園の噂もうるさそうだし(w
続きを楽しみにしています。

248 :名無し草:03/06/09 12:47
>秋の手触り
可憐かわいいなぁ。健気だし。
美童には着飾ってる女より、家庭的な女の子をあてがってあげたい。
パーティ向けではないけど。
可憐なら両方こなせてうってつけなのになぁ。なぜ気付かん。

>Back to the drawing board
新連載キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
速攻で嵐さんとこ行って「タイムスリップ」読み返してきました。
前は魅録がモンモンしてたけど今回は清四郎なのですね。楽しみ。
この先どうなるんだろう。やっぱり未来が変わってくるのかな。
その分岐となるポイントは?
ドキドキしつつ、続きをお待ちしてます。

249 :名無し草:03/06/09 18:54
>Back to the drawing board
やっぱり王道、清&野しかも学園ネタ大好きです。

非難されまくりの19巻読みましたが、その3話目によると、
清と野がくっついたら、清は野の尻にひかれることになりそう。
(一話目、二話目は噂どおり面白くなかった。
こちらの作家さまがたのストーリーの方が楽しいです。)

250 :名無し草:03/06/09 21:11
>Back to the drawing board
いいです!野梨子大好きだし、王道な清×野が
ヤパーリ一番スキです!!頑張ってくだしゃい!

251 :Back to the drawing board !(清×野) 5:03/06/10 01:10
245のつづきです。

放課後生徒会室へと向かうと、ちょうど可憐・美童・
悠理が帰るところだった。
「おや、もう帰るんですか?」
「今日は貿易関連会社主催のパーティーだもの。
どこかの国の大使の息子も来るらしいのよね〜♪」
「また玉の輿ですか。」
「そうよ、悪い?」
「可憐・・・すごく言いにくいんだけど、それ、
僕と杏樹のことだよ。」
「うそ!?」
「悠理ももう帰りますの?せっかくお茶菓子の差し入れ
を持って参りましたのに。」
野梨子の言葉に悠理は振り返る。
「で!?食う!!」
言うが早いが野梨子の差し出した皿にきれいに並んだ
包みのいくつかをむんずと掴み、かばんへと放り込む。
「おい!半分以上持ってくかぁ!?」
「いいじゃんケチ。ちゃんと魅録の分はあるだろう?
今日はこれから父ちゃんたちとイタメシ食いに行くんだー。
だからこれはデザートだよ。」
「悠理、心配なされなくともイタリアンデザートがしっかり
出されますわよ・・・。」


252 :Back to the drawing board !(清×野) 6:03/06/10 01:11
3人が帰ると、やかましかった生徒会室は急に静かになった。
魅録と野梨子、そして自分。
何故こんなにも居心地が悪いのだろう。
「あーあ、暇だな。家で新しく作ったラジコンヘリの
試験飛行でもすっか。おまえらも見に来いよ。」
「そうですわね。お邪魔させていただきますわ。」
「え?」
清四郎は訝しげに声をあげた。
「今日は僕と一緒に雲海和尚のところに寄るんじゃ
なかったんですか?」
確か今朝、そんなことを言っていたはずだ。
「ええ。でも私が伺ってもお邪魔でしょうし、
またにしますわ。」
「つーことはなんだよ、清四郎は和尚のトコに行くのか?」
「そのつもりです。」
「そっか。そんじゃ俺たちは帰るか、野梨子。」
「そうですわね。それではまた明日、清四郎。」
野梨子は魅録と共に生徒会室を出て行った。


253 :Back to the drawing board !(清×野) 7:03/06/10 01:12
(・・・いつからだろう。)
一人で歩く帰り道、清四郎は思った。
昔の野梨子だったら、何をおいても自分についてきた。
学校が終わり、一緒に帰ろうと、パタパタ駆け寄ってきた野梨子。
ESP研究会に顔を出すことを告げると、
つまらなそうな、悲しそうな顔をして見せた。

それが今、逆に自分のほうが寂しさを感じている。

(僕は・・・寂しいのか?)
そう、寂しいのだ。野梨子が隣にいないのが。
(それだけじゃない、不安なんだ。)
清四郎は聡い。一つのことに納得がいけば、後は簡単に次々と
全ての事実が浮かび上がってくるのを感じた。

と、そのときだった。

つづきます。


254 :名無し草:03/06/10 01:23
Back to the drawing board !の作者です。

すいません、今更気づいたのですが、
251(Back to the drawing board ! 5)
での悠理の始めの方のセリフ、「で!?食う!!」
とありますが、私の周りでの略語(?)を
思わず使ってしまいました。申し訳ありません。
“で!?”というのは“マジで!?”とか“うっひょひょ〜♪”
とか、そんな意味だと思ってください。

また、さまざまな感想、ありがとうございます。
励みにさせていただきます!!

255 :名無し草:03/06/10 10:23
>Back to the drawing board!
あっさり約束を反古にされちゃう清四郎って・・・。・゚・(ノД`)・゚・。ガンガレ

256 :名無し草:03/06/10 14:33
>ESP研究会に顔を出すことを告げると、
つまらなそうな、悲しそうな顔をして見せた。

そんな可哀想な野梨子をおいて、ESPとかに行ってたのか。清よ。
原作見ても、中学生のとき不器用なだけで何も悪いことしてないのに
悠理や可憐にからまれる野って可哀想で、野の方を説教する清って
ひどい〜、と感じたよ。言い方もキツイかったし。
やっぱ、あの頃から魅のほうが優しかったなあ。

257 :名無し草:03/06/10 15:31
>Back to the drawing board!
清×野大好きのはずなのに魅×野もいいなぁって
思いマスvv魅録カワイソ率高いですよね…

258 :名無し草:03/06/10 17:08
>256
その不器用さを理解してやれるほど悠理も可憐も大人じゃなかったんだよ、多分。
「なによ、お高くとまっちゃってさ、ふん!」みたいに思うのも無理ないって。
だってまだ中坊だし。
その代わり分かった後は一変して仲良くなったよね。「やだ、なによ、そーなの。
おもしろーい、あなたって」みたいに。
清四郎が二人の肩を持ったのも、野梨子にもっと視野を広げて欲しかったんじゃ
ないのかな。あまり自分べったりなのも良くないかなって。
で、実際に野梨子が自分の世界を持ち始めると途端に寂しくなるという・・・可愛いヤシめ。

でもって改めて言うのもなんだがsageようね。

259 :Back to the drawing board!(清×野)8:03/06/11 00:56
253のつづきです。

「きゃあ! ユウヤちゃん!」
前方をみると、小さな男の子が道路へと出てしまっていた。
そしてそこに走りこむ車。
「いやあぁー!!!」
母親の叫び。考えるまでもなく、清四郎は飛び出した。
  響くブレーキの音
  突き飛ばした男の子の感触
  そして・・・

バシっ・・・

鈍い痛みとともに、清四郎は自らが空(くう)に浮くのを感じた。
(野梨子、僕は・・・)
急速に、意識は闇へと落ちていった。


260 :Back to the drawing board!(清×野)9:03/06/11 00:57
[清四郎!]

暗闇の中で、清四郎は自分を呼ぶ声を思い出していた。

自分を見つけると、いつも笑顔で走り寄ってきた野梨子。

[いいんですか?僕とばかり一緒にいて。
また女子に睨まれてしまいますよ。]
[構いませんわ。清四郎が側に居て下さればよろしいのよ。]

そんな彼女に、いつも苦笑していた。
苦笑して、しょうがないなと思いながらも、
ほっとしていた。

守ってあげたかった。いや、守りたかったんだ、僕が。
いつも彼女を守るのは、一番側に居るのは自分でありたかった。

[やーい、金魚のフン]

あの時、野梨子を守れなかった自分。
何のために、和尚のもとに通ったのか。

・・・けれど、いつしか彼女は離れていった。


261 :Back to the drawing board!(清×野)10:03/06/11 00:58
ふと思い出す。

[裕也のこと、水に流してやれよな。]

晴海ふ頭で、魅録に言われた言葉。
でも、刈穂裕也のことなんてどうでもよかった。
気にしたのはむしろ、魅録のこと。
あのとき、野梨子を助けたのは、一番側に居たのは、
自分ではなく、魅録だった。

中学の終わりに魅録と出会って、急速に、世界は広がった。
僕だけではなく、野梨子の世界も。
それまでの野梨子の世界には常に自分が絡んでいた。
家も、学校も。
それが例の一件を境に仲間を得て、新しい世界を知った。


262 :Back to the drawing board!(清×野)11:03/06/11 00:58
(よかったですね、野梨子)
純粋に、彼女が自分以外の仲間を得たことを祝福した。
以前よりも笑うようになった野梨子を見るのがうれしかった。
(これでようやく、僕も安心して妹離れできますね。)
僕は忙しかった。中学から高校にかけて、
新しい世界が眩しすぎて。

[また今日も研究会ですの?いいですわ、魅録たちと出かけますから。]

野梨子は僕以外の居場所を見つけ、離れていった。

何のことはない、彼女を突き放したのは自分だったのだ。

[清四郎!]

僕を呼ぶ声が、きこえた気がした。


つづきます。

263 :名無し草:03/06/11 01:01
>Back to?
リアルタイムで読んでました。
清四郎の一人称が可愛いです。野梨子とむすばれてホスイ

264 :名無し草:03/06/11 07:37
>Back to?
なにげに男の子の名前がユウヤちゃんなのがワロタ
分岐がどこになるのか楽しみデス

265 :名無し草:03/06/11 08:15
>256
>258
清×野の人にはそう見えるのか・・・。
私はあの清四郎は中学生らしいリアルな反応だと思って読んでたけど。
仲のいい幼なじみでも中学くらいの頃って一番離れてる頃だと思うし。
それが清四郎の「女って面倒くさい」って一言に集約されてて一条先生うまいなぁっ思った。
野梨子は客観的に見ると、結構イヤな子だったと思うなぁ。
私だったら悠理に対するあの厭味をリアルで聞いたらかなり引くと思う。

266 :名無し草:03/06/11 09:30
スマソ。「面倒くさ」そうなのは態度でセリフは「どーでもいいけど女ってしつこい」でした。

267 :名無し草:03/06/11 18:26
>Back to the drawing board!
清四郎の切ない片思いアリ!!変態清四郎も
スキだけど…

268 :名無し草:03/06/11 20:00
>265
なるほどね。私は「副委員長自信は無いけどがんばります」
と言った野梨子に「自信が無いならやらなければいいじゃいか、
内心やりたいくせに」みたいなこと言った悠理って意地悪いなあ、
って思ったよ。なんで清はかばってやらないんだろうって。
・・・っていうか、実は清のことあまり好きじゃないんだ。
アドベンチャークイズの時の「野梨子はここでリタイヤですよ」
っていうセリフにむかついた。当時自分も運チだったから。
ばかにされた気持ちがして。あの頃はアツイ気持ちで読んでたなあ〜。
逆に、野の運痴と悠理のバカをかばった魅にホレました。
あ、もちろん、今は清の子供っぽさもわかる年だし、
清×野の作品、楽しんでます。

269 :名無し草:03/06/11 20:49
>286
私はどっちもどっちだと思った。野梨子もきついし悠理も一言多い。
『醜い争い』と作者も書いてたし。
>265さんもいってるけど、清のあれは中学の男の子らしい反応
だなと思った。女の争いにかかわるなんて面倒くさい年頃でしょ。


270 :名無し草:03/06/11 20:50
>>269です。
>286じゃなくて
>268です。

271 :名無し草:03/06/11 21:04
>268
265です。
それを聞いて私もなるほどと思った。
野梨子については、私は悠理がいうとキャラ的に軽口ってことで受け入れられても、野梨子がいうとそうならない気がしたんだ。野の方はコンプレックスもろに突いた言い方だし。
クラス初日(たぶん)にアレじゃクラスのみんなが引いてそりゃ浮くだろうと思った。だから、ちょっと自業自得な部分あるなーと。
だから>258さんがいうように、ただ悠理や可憐に理解がなかっただったら(ゴメン、そういう風な印象受けた)ちょっと悲しいと思ったんだ。
あの話って野梨子視点で進む話だから難しいんだけど、野梨子から見れば悠理や可憐って……な人たちだけど清四郎の視点だと違って見えてたんだろうなと私は思ってたから。
それとは別に、私も清×野楽しんでます。


272 :名無し草:03/06/12 01:50
Back to the drawing board!の続きをupします。

大量うp、お許しください。

273 :Back to the drawing board!(清×野)12:03/06/12 01:51
262のつづきです

「清四郎!」

はっと目を開けると、目の前に野梨子がいた。
「もう、起きて下さいな!午後から生徒総会ですのよ?」
「生徒・・・総会?」
「ええ。きっと皆はもう待っていると思いますわ。私たちも参りましょ?」
「参るってどこに・・・?」
「まだ寝ぼけてらっしゃいますの?初めてで勝手もわかりませんし、
お昼休みの間から準備と打ち合わせをなさると申されたのは
清四郎じゃありませんの。」

生徒総・・・会?初めて?

ばっと清四郎は立ち上がり、周りを見渡した。
「きゃっ・・どうしましたの、いきなり。」
・・・間違いなかった。
「・・・清四郎?」
三年前の日付
一階の教室
青々とした新緑
そして・・・

からかっているとは到底思えない、野梨子のまなざし。

(・・・間違いない。)
ここは三年前、高校入学直後の世界だった。



274 :Back to the drawing board!(清×野)13:03/06/12 01:52
「おっせーよおまえら!何してたんだよ!」
「ごめんなさい、悠理。清四郎ったら寝てるんですもの。」
「へー、おまえでも居眠りなんてするんだな、清四郎。」
「ええ、すいませんね。」

清四郎は思い出していた。
(もし本当にここが過去の世界ならそろそろ・・・)

ピン・ポン・パン・ポーン♪
白鹿さん、白鹿さん、至急教務課まで・・・

(・・・予定どうりですね。そしてこの後、野梨子が出て行き際に転んで・・・)

「きゃっ!」
「ちょっとあんた、何してんのよ、もう。」
「大丈夫?野梨子。」
「ったくどんくせーなぁ。」

(魅録が助け起こす)

「ほら、大丈夫か?野梨子。」
「ええ、ありがとうございます、魅録。」



275 :Back to the drawing board!(清×野)14:03/06/12 01:53
(全く・・・本当にここは過去の世界なんですね。)
面白いほどに、過去の記憶と一致する。
清四郎は考えていた。この後に起こる出来事を。
(確かこの後・・・)
そう、このあと生徒総会での質疑応答の時間に、
生徒からとんでもない質疑が出されるのだ。その時の、自分の対応。
(・・・もう一度、あの質問に答えろって事ですかね。)

清四郎は妙に落ち着いていた。何か目的があって今日この日に
飛ばされたのであれば、思い当たるのはあの出来事しかなかった。
(・・・僕は、なんて答えるんでしょうね、今度は。)
今の自分は、過去の自分であって、過去の自分ではない。
未来の思考を持っているのだ。
清四郎はそっと、ため息をついた。



276 :Back to the drawing board!(清×野)15:03/06/12 01:53
「・・・っつー事で、今年の各運動系団体の練習場所は決定だから。
文句言うなよ。以上!」
キャーという女子生徒の声とともに拍手が起こる。
生徒総会は順調に進んでいた。
「えーっと、次に全体を通しての質疑応答に入ります。
質問のある人は、挙手してください。」
司会である副会長が後ろの席に戻ると同時に、
応答者である会長はマイクをもって教卓のまえに立つ。
打ち合わせどおりの動き。かつ、予定どおりの成り行き。
  予算配分について
  シャワールームの増設について
     ・
     ・
     ・
  順調に、予定通りに進んでいく。

(・・・次だ。)

質問が途切れ、清四郎は言う。とんでもない質問が出ることを知っていて。
「・・・以上、質問がなければこれで質疑応答は・・・」

「ひっひつもんがあります!」
予定通り、声を裏返らせた叫びが響いた。



277 :Back to the drawing board!(清×野)16:03/06/12 01:54
後ろでまだ続くのかと生徒会の面々がため息をついている。
しかし、清四郎にとっては予定通りのことだった。


カチンコチンに緊張した面持ちで、質問者である
本校にしてはめずらしく柄の悪い男子生徒が立っている。
「・・・質問をどうぞ。」
この後の騒ぎを想像し、覚悟を決めた上で清四郎は発言を促した。
「きっ黄桜さんから聞いたんですが・・・!」
「はい?」
可憐が間の抜けた声をあげる。
「お、お二人が・・・白鹿さんが菊正宗君と付き合ってるってのは
本当ですか!?」

一瞬の間の後、わーっと悲鳴が上がった。



278 :Back to the drawing board!(清×野)17:03/06/12 01:55
「なっ!」
後ろで野梨子も絶句する。
「へー、そうだったんだ。なんだ水臭いなぁ二人とも。
教えてくれればいいじゃないか。」
「なっ、何を言ってますの美童!私たちは別に・・・」
「やーねーこの子ったら。この期に及んでまーだそんなこと言うわけぇ?」
「可憐!元はといえばあなたがいい加減なことをおっしゃるから!!」
「疑わしきは罰っすんだろ?しょーがねーじゃん。おまえら疑わしすぎんだよ。」
「それをいうなら疑わしきは被告人の利益にですわ、悠理!
中学で習ったじゃありませんの!」
あまりのことに、さすがの野梨子も混乱しているようだ。
論点がずれている。
「・・・で、どーすんだよ清四郎。
なんて答えて場を納めるのか非常に気になるね、俺は。」
魅録の言葉に清四郎は振り返った。



279 :Back to the drawing board!(清×野)18:03/06/12 01:55
[僕と彼女は付き合っているわけではありません。
 ただの幼馴染です。]

あの時、僕はそう答えた。何とか場は静まって、生徒総会を終えることができた。
そして・・・3年後にいたるのだ。
今思えば今日この日から、魅録は野梨子との間にあった一線をなくし、
親しい付き合いを始めたのかもしれない。
きっと付き合い始めのころの魅録の目には、
僕たちは恋人同士として映っていたのだろう。
そうでなくても、何か友人以上のものを感じ、
一線をひいて野梨子との付き合いに遠慮していたのではないだろうか。
魅録はそういう男だ。友達の思い人に、手は出さない。

野梨子はどうだろう。
・・・論外である。野梨子は幼すぎるのだ。
あまりに人付き合いをしていなさすぎて。
必死で人と接するだけで精一杯で、
人間関係においての経験年齢は小学生並みだろう。
到底恋愛にまで思考が及ばない。

それでは僕は?


280 :Back to the drawing board!(清×野)19:03/06/12 01:56
「・・・静かにしてください。」
ちらっと清四郎は野梨子をみた。心配そうな、不安げな顔をしている。
ふっと清四郎は笑みをこぼした。

とっくの昔から知っていたこと。
懐かしい過去から3年先の未来まで、野梨子が自分に恋愛感情抱くことはなかった。
(・・・僕らは・・・ですからね、野梨子。)
   兄妹であり
姉弟であり
親友であり
そして何よりも、
僕たちは幼馴染だ。

(・・・まったく、こうなってしまうと、
本当に損な関係ですね、幼馴染というのは。)
幼馴染であるゆえに、わかってしまう。相手の想いが。
どう足掻いても、わかりすぎてしまう。
   その表情から
   その仕草から
   その声から
   ちょっとした、まなざしからでさえも

(さて・・・場を収めますかね。)
清四郎は静かに、会場をみすえた。


つづきます。


281 :名無し草:03/06/12 07:42
>Back to
変な質問に野梨子達が動揺しているところが面白かった。
個人的には清×野で結ばれてほしいんだけど、
やっぱり幼なじみの域を出ないのかなー

282 :名無し草:03/06/12 10:07
>Back to the drawing board !
その場キャラだと思ってたヤンキーくずれの彼がここでこんな
重要キャラになってくれるとは!よくぞ聞いてくれたって感じ。
清四郎頑張れ。全部ぶっちゃけて未来を変えるんだ。なせばなる!
野梨子にまだ全然そーいう考えが無かったとしても。・゚・(ノД`)・゚・。

283 :名無し草:03/06/12 16:17
>Back to
どこが大量うpじゃあ、ゴルア!!しかもいいとこで切りおって!
・・・と思って見直してみたら、結構大量ですた。読み入って(?)
しまったので気づかず。スマソ、作者さん。

内容)・・・ってことは、過去、清四郎の行った発言も未来からきた
   清四郎の発言???ドラえもんじゃないから、それはないかw

284 :秋の手触り[67] :03/06/12 18:01
>>231-234 >>239 >>235-236続き

「どうしたのさ、可憐。さっきから黙り込んじゃって」
 美童が不思議そうな声をあげるので、可憐は慌てて意識を切り替えた。
 意外と美童は敏い。ことに、女性のこととなると。以前、悠理に恋をしていたときの野梨子の変化に
感づいたのは、男性陣ならば美童だけだった。もっとも、その彼にしても、真実を手に取るまでにはいか
なかったけれども。
 今はまだ、想いを告げるだけの覚悟は自分にはない。可憐はさりげなく話題を変えることにした。
「あのね、朝に清四郎とちょっと話をしたんだけど……」
 もちろん、魅録と悠理の件である。
 清四郎から聞かされたことを忠実になぞりながら、可憐は唆すように仲間ふたりに語る。
「清四郎が言うには、ちょっと怪しいんだって。あたしたちに内緒で、なんか企んでるのかもよ」
 可憐の言葉に、野梨子は大和撫子さながらの清楚な美貌に、ひどく不釣合いな微笑みを
浮かべる。そして、形のよい唇を開き、言った。
「抜け駆けは……」
「良くないね」
 言葉の後を引き継ぐのは美童。
 さすが有閑倶楽部のメンバー。こういうときは一心同体ねと可憐はにんまり笑った。
 続きの言葉を告げようとしたところで、悠理と魅録が姿を見せたので、目配せで「話は後ね」と言って
とりあえずは口を噤んだ。
「やっと飯が食える〜。あの数学教師、授業終わるのが遅いんだよ」
 一抱えもあるお弁当箱を手に、ピクニックシートにあがりこむ悠理を、野梨子が紅茶を入れて出迎える。
 同じく靴を脱いであがりこんだ魅録は、興味をそそられたように尋ねてきた。
「さっき何話してたんだ? えらい盛り上がっていたけど」
 しかし、さすがには可憐はそつがない。
「昨日のデートのこと」
「ふーん」
 すぐに興味が失せて、昼食を開始した魅録を見ながら、三人は内心でにやりと笑う。
 楽しいことになりそうだ。

285 :秋の手触り[68]:03/06/12 18:02
 放課後、これから遊びに行くんだと仲間に断って、魅録と悠理は連れ立って生徒会室を早々
に抜けた。
 学校の正面玄関にまで迎えに来た剣菱の車にふたり乗ると、そのまま一旦剣菱家に戻る。
そして、腹が減っては戦の出来ない悠理のために、早めの夕食をとった。
 そして休む暇なく今度は屋敷内の衣装室へ向かい、着替えを始める。魅録はつるし売りでは
なく、剣菱家専用テーラーに作らせたスーツ姿、悠理は光沢のない黒のぴったりと身体のラインの
出るドレスである。胸がないといっても、そのほかはスタイルの抜群な悠理のことである。意外と
似合っていた。胸元には、煌く紅玉のネックレス。一昨日に剣菱精機にもぐりこんだときとは違い、
艶やかな紅を刷いている。
 午後6時ちょうど。魅録が運転するアストンマーチン・ラゴンダは、軽快なタイヤ捌きで剣菱邸を
出た。今夜は予定がびっしり詰まっている。無駄な時間など欠片もない。
 ハンドルを握る魅録の表情は、いつになく浮かれている。本日、学校に登校するときもこの車に
乗ってはいたが、運転したのは五代だった。うしろの席でそれを見ていた魅録は、それが羨ましくて
ならなかったのである。
 仕立てのよいスーツを身に纏い、高級車を運転する魅録は、ひどく様になる。『LIVE AND LET
DIE』を口ずさみながら、節ばった細長い一指し指でハンドルをコツコツ叩き、リズムをとる。
「やっぱ、スパイ活動にゃこれだろ」
 上機嫌でそう言った魅録に、助手席に座る悠理は首をかしげた。
「ボンドカーはBMWだろ?」
「甘いね。ジェームス・ボンドはイギリスの諜報員なんだぜ。この間の作品は同じアストンマーチン社
のバンキッシュに乗ってたじゃねーか」
「じゃ、次は父ちゃんにバンキッシュ買ってもらおうか?」
「……お前、本当に怖いもの知らずなお嬢様だよなー」
「悪かったな」
 悠理の悪態を聞くのを最後に、魅録は運転に集中した。
 最近、日が暮れるのが富に早くなった。フロントガラスに映る景色は、早くも夜の帳が降りている。
先週まで残暑に苦しんでいたのは嘘のように、秋の夜の冷気がガラス越しに伝わってくる。
 ふと魅録は、密室ともいえるこの車内の中、非現実的な物思いに囚われた。

286 :秋の手触り[69]:03/06/12 18:03
 隣にはいつになく着飾った悠理がいて、自分もまたスーツに身を包んでいる。そんな自分たちが
ラゴンダに乗り込んで、夜の街を行く。
 まるで映画のようだな、と魅録は思う。
 並みの高校生が体験できることではない。別の大学に行き、有閑倶楽部から離れては望むべく
もない生活だろう。
 だが、来年度からは清四郎が欠けるのだ。それはひどく寂しいことに思われた。
 ちらりと何気なく助手席に座る悠理を見た魅録は、一瞬だがその横顔に見惚れた。
 ――夏休み頃より、可憐あたりが「悠理もちょっと女らしくなったわよね」とことあるごとに口にする
ようになった。それに対して、美童あたりも肯定してはいたが、魅録はいまいち実感がなかった。
 自分の隣でいつも莫迦をする親友を、女と見たことなどこれまで一度もなかった。だが、新学期
に入ってからは、可憐の言葉を認めざるを得ない自分がいる。
 悠理は綺麗になった。確かに。
 それまで認めたくないという思いが働いていた魅録の胸に、しかし今、するりとその事実が滑り込
んでくる。それは抗いがたく、心を締め付ける。
 悠理は綺麗になった。まるで恋をしたかのように。
 魅録は、思いもかけない自らの思惟に、僅かに動揺した。
(……俺は何を考えてる?)
「今日はさー」
 魅録の狼狽など知るよしもない悠理は、突然口を開いた。
「ホテルでのパーティーだろ。で、その後でいろんな奴の家に潜り込んで、携帯に機械を仕込む」
「そうそう。よく覚えてたな」
「バカにすんなよ〜」
「はは、わりぃ、わりぃ」
 剣菱グループの主要な人間が一同に会す本日のパーティーは、昨日、会長・万作により、突然
開催が決定されたものである。実はこのパーティー、仕掛け人は豊作である。いや、正確に言うと
魅録が発案し、豊作が万作に頼み込んだのである。
 魅録や豊作の話を面白がった万作は二つ返事で承知し、たった一夜で大掛かりなパーティーを
企画してしまったのだ。
 今夜の計画の前半、パーティーでは悠理が主役である。彼女が会長令嬢として、今回の事件の
黒幕と思しき人々に接触することになる。

続く

287 :名無し草:03/06/12 19:35
>秋の手触りキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
秋さんの美童萌えー。男性陣の中で一番好きかも。
続きがたのしみ〜。
ゆっくりでもいいのでぜひ完まで読みたひ。


288 :名無し草:03/06/12 22:19
>282
>Back to the drawing board !
その場キャラだと思ってたヤンキーくずれの彼がここでこんな
重要キャラになってくれるとは!よくぞ聞いてくれたって感じ。
禿同!続きキニナルーーがんがれ清四郎!!

289 :Back to the drawing board!(清×野)20:03/06/13 01:11
280のつづきです

「僕と彼女は付き合っているわけではありません。」
はっきりと、清四郎は言った。歓喜とも落胆とも思える声が、
会場に満ちる。
ふぅ、とため息をつき、清四郎は再び声を発した。
「静かにしてください。質疑に対しての返答ですが、
僕と彼女は付き合っているわけではありません。ただの・・・。」
一瞬、迷いが走る。
(本当にいいのか?)
この先の未来が、頭をよぎる。
三年後の、野梨子の笑顔。
しかし、清四郎はそれを振り払い、しっかりと、言葉を紡いだ。
「ただの、僕の片想いです。」

会場は、悲鳴が満ちた。


290 :Back to the drawing board!(清×野)21:03/06/13 01:12
(・・・これでいいんですよね。)
初めての、予定外の成り行き。背後で、倶楽部の面々が口々に騒いでいる。
「きゃーっ、ちょっとちょっと、凄いじゃない!」
「全校生徒の前で告白か。清四郎、やるじゃん!!
ただ固いだけじゃなかったんだねっ!」
「ったく、おまえもケッコー派手好きだよな。」
「俺も見直したね。でもどーすんだよ生徒会長殿、騒ぎを鎮めるどころか
油注いじまったぜ?」
口々になにかを話しているが、清四郎にはろくに聞こえていなかった。

(・・・終わりましたね。やはり。)
いつまで待っても、野梨子の声は聞こえてこなかった。


291 :Back to the drawing board!(清×野)22:03/06/13 01:12
(・・・愚かだったかな。)
予定どおりに言葉を紡げば、少なくとも三年先までは保証されていた。
そんなことはわかっていた。
それでも、何とか得たいと思ってしまった。大切な幼馴染を。
ずっと、怖くて認められなかった想い。
失いたくなくて、妥協してきた想い。
どうしても・・・あきらめきれなかった想い。

僕には、勇気がなかった。
可憐のように、美童のように、ぶつかることができなかった。
野梨子のことを知れば知るほど、想いは深まるのに。
それなのに、
知れば知るほど、叶わぬ思いだということも見せつけられて。
0か100かしかなくなるなら・・・
いや、違うな。
0になるかもしれないという確信にも似た恐れから、
僕はずっと、50を選んできたんだ。
そうして50の立場を貫くことで、
また君を知って、
深みにはまっていく。


292 :Back to the drawing board!(清×野)23:03/06/13 01:13
(・・・これで・・・ここで、ピリオドがつきますね、ようやく。)
予定されていた三年間に未練がないわけじゃない。
けれど、ピリオドはいつか打たなければいけない。
全てに終わりはくるから。
そして終わらせなければ始まりは来ないから。
僕と野梨子の間にも、魅録との間にも。

(・・・なんて、虚勢だな。魅録が僕に対して律儀になることを、
僕はこんなにも願ってる。)


293 :Back to the drawing board!(清×野)24:03/06/13 01:16
「・・・清四郎・・・」
野梨子の声に、清四郎は振り返った。
呆然と、立ち尽くしていた。大きな瞳をいっぱいに潤ませて。
(どうして・・・?)
声にはならなかた。しかし、清四郎にはしっかりと唇の動きがみえた。
「・・・どうしてもです。」
そうとしか、答えられなかった。
(・・・僕のほうが聞きたいくらいですよ、野梨子。)
野梨子は無言のまま、こちらへと近づいてきた。
「・・・ねぇ、清四郎・・・」

ここで、思わぬアクシデントが起こった。
都合二つめの、予定外の出来事。

「きゃあっ!!」
「野梨子!」
マイクのコードに足をとられ、野梨子は思いっきり前にこけた。
思わず手を伸ばし、支えようとするが自らもコードに足をとられ、野梨子を抱えたまま、後方へと倒れこむ。

ごんっ

鈍い音がして、頭に劇痛がはしった。
どうやら教壇の角に頭をぶつけたらしい。
(・・・過去を・・・ひいては未来を変えた罰ですかね・・・)

急速に、意識が闇に引っ張られる。
前にも似た感覚を感じながら、清四郎はそっと心で問いかけた。

(野梨子、どうしたら、あなたを好きにならないで済んだんですか?)


294 :Back to the drawing board!(清×野)25:03/06/13 01:17
[清四郎!]

暗闇の中で、再び清四郎は、自分を呼ぶ声を思い出していた。

・・・僕は、恋に溺れる美童や可憐のことを、ずっと笑ってみていたけれど、
本当に道化ていたのは、僕ですね、野梨子。

[清四郎!]

・・・まったく、僕をここまで追い詰めるのは、弱気にさせるのは、
きっと、後にも先にもあなただけですよ、野梨子。

[清四郎!]

・・・どうしたんですか。あまり大きな声を出さないでください。
頭にひびきます。ピリオドをうった心にもね。

[清四郎!]

僕を呼ぶ声が、本当にきこえた気がした。


つづきます。


295 :名無し草:03/06/13 07:19
>Back to the drawing board !
すげえ、すげえよ清四郎!
あんたぁ、漢だよ!!野梨子は幸せもんだぁ・・・。
目が覚めた彼に幸せが訪れている事を祈る。

296 :名無し草:03/06/13 07:49
>Back to the drawing board!
>魅録が僕に対して律儀になることを僕はこんなにも願ってる
うう、わかるなあ。切ないけれど本心だよね。
覚悟の告白の後、チラリと弱気を覗かせる清四郎に激萌え。
普段強いぶん、たまに見せる弱さがたまらない。
これが清四郎の魅力なのですかね?(w

スピードうp、お疲れ様です。ここ開けるたびに続きがある幸せ・・・。
作家様ありがとう、ありがとう。

297 :名無し草:03/06/13 07:59
>秋の手触り
ボンド・カーなどの小ネタ、魅録の車に対する熱い思い入れ、
読み所がたくさんあって面白かったです。
なにげに悠理のドレス姿がかっこいいわぁ。

>Back to
やりますね、清四郎。こういう展開大好き!
続きが早く読みたい!

298 :名無し草:03/06/13 15:22
>野梨子、どうしたら、あなたを好きにならないで済んだんですか?

この言葉、心にしみますた。クサイけどねwそう思うときがあるのよ・・・

299 :名無し草:03/06/13 21:20
>秋の手触り
少しずつ、魅録が悠理に魅せられていく過程がなんともいえずイイ!
(でも、悠理の思い人は魅録じゃないんだよなー)
ラゴンダを駆る魅録カッコいいね。

>back to
うわあ、青春だ〜(w
なんか、すごくどきどきしました。
こういう一途な清四郎、格好悪いけど、格好いいです。

300 :名無し草:03/06/13 21:44
>「ただの、僕の片想いです。」
かんどぉーです!
せつなさが伝わってくる心情描写、巧みな原作の取り入れ方、
うまいです!
早く続きが読みたい・・・。でももっとこの世界に浸っていたいから
終わって欲しくない・・・。
生徒全員の前であんな告白をされたら、野梨子の立場は
女生徒からの嫉妬と羨望で、つらいものがありそうだな。


301 :名無し草:03/06/13 21:48
>Back to the drawing board !
「ただの、僕の片想いです。」

ちょ〜イイ!!大好き!(w
野梨子がこけるのがぽい!
今夜で終わりでしょうか…目覚めた彼の幸せを
心から祈ってます。野梨子の反応も楽しみvv

302 :301:03/06/13 21:56
>300
同じポイントで感動してまつね。

303 :Back to the drawing board!(清×野)26:03/06/14 01:02
294のつづきです。


「清四郎!」

ふっと薄目をあける。
(・・・今度はどこですかね。)
とりあえず、目の前の少女に焦点を合わせた。
うさぎのように大きな、真っ赤な瞳で覗きこんでいる幼馴染に。
「・・・なんて顔をしているんですか、野梨子。」

ばちんっ

言葉を発したとたん、右の頬に激痛がはしった。
「ちょっ!清四郎はようやっと目ぇ覚ましたところなんだぞ!!」
野梨子の背後から、慌てて魅録が出てくる。
「だいじょうぶか?清四郎。こら野梨子!」
「だって・・・あんまりじゃありませんの!
私、こんなに心配いたしましたのよ!?」
真っ赤な顔で野梨子は魅録に抗議した。



304 :Back to the drawing board!(清×野)27:03/06/14 01:02
「はいはい、二人ともその辺にしときなさいよ。
だいじょうぶ?清四郎。今どこにいるかわかる?」
「・・・ベッドの上・・・うちの病院ですか?」
「そうだよ。もう、びっくりしたよ!
清四郎が車にはねられたって魅録から聞いて、
僕たちとんできたんだよ?ね、可憐。」
「そうよ!せっかくのディナーチケット無駄にしてね!」
(・・・ということは、ここは元の世界なんですね。)
ちらっと美童たちをみる。
「・・・ディナーチケットというのは・・・」
「だからこの前話したじゃないか。可憐がどうしても行きたいっていうからあちこち手を回して・・・」
「他の女と映画観に行ったのがバレて破局寸前になったんだよな、美童。」
「そっそれは、大体!悠理が口を滑らしたんじゃないかぁ!」



305 :Back to the drawing board!(清×野)28:03/06/14 01:03
・・・未来は、変わったようですね。)
美童と可憐は今、恋人同士なのだろう。そして・・・
「ほら、きちんと清四郎に謝れよ、な?」
「・・・。」
魅録に諭されながらも、相変わらず真っ赤な顔でふてくされている野梨子。
(・・・こっちもですか。)
[魅録から聞いて、僕たちとんできたんだよ?]
さっき美童はそういった。
どうして真っ先に連絡を受けたであろう野梨子からではなく、魅録から。
答えはひとつ。
自分が過去でしてきたことは何だったんだろう。
額に手をあてて、清四郎は天井を仰いだ。



306 :Back to the drawing board!(清×野)29:03/06/14 01:04
コンコン

突然ノックされ、ドアが開く。
「あの・・・」
助けた子供とその母親であった。
「この度は本当にありがとうございました。
菊正宗さんに助けていただかなければこの子は・・・。」
「いえ、とにかく無事でよかったです。なにぶんとっさの事だったので、ずいぶん乱暴に突き飛ばしてしまったのですが、大丈夫でしたか?」
「ええ、おかげさまでかすり傷程度で済みました。菊正宗さんもとりあえず異常はないと院長先生がおっしゃられてましたけれど・・・。」
「僕のことは心配なさらないでください。大丈夫ですから。」
「そうですか・・・本当にありがとうございました。
それではそろそろ失礼させていただきます。ほら、ユウヤ!」
「ありがとうございました、おにいちゃん!」
母子は帰っていった。

と、同時に室内にクククッという笑いが充満した。




307 :Back to the drawing board!(清×野)30:03/06/14 01:05
「・・・なんですか、悠理。」
そう問うたとたん、悠理は大声で笑い出した。
「だっ、だってユウヤちゃんだぜ!?思い出すじゃないか!」
それを聞いて、他の面々も笑い出した。野梨子を除いて。
「もう!やめて下さいな!私は全然面白くありませんわ!!」
「そりゃそうでしょうねぇ。
あの時はほんっとに大変だったものねー清四郎ちゃん。」
「そうそう、敵意むき出しの清四郎、怖かったよね〜。」
「裕也のやつ、元気にしてっかな。ま、
お前の負わせた傷はもうきれいに治ってるだろーケドよ。」
にやっと魅録は清四郎を見やった。
(・・・刈穂裕也に傷を・・・?)
「もう!清四郎ったら私が申したことも聞かずに殴りこみに行かれるんですもの。
本当に大変でしたわ。」
「ほんっと、付き合うようになってから前にも増して
過保護になったよな、清四郎。
んなに心配しなくてもおまえの大事な野梨子ちゃんは
幼稚舎時代から清四郎ちゃん一筋だよな〜。」
「なっ!」
「そうよね〜野梨子。」
「そっ、そうですわよ!!そうでしたら何か問題でもありますの!!」
「ひょー大胆発言!!」
清四郎はいつの間にか飛び起きていた。



308 :Back to the drawing board!(清×野)31:03/06/14 01:06
「野梨子・・・」
「な、なんですの?清四郎。私、あなたに責められることはないはずですわよ!」
「そりゃそーだ。おまえの告白に比べりゃかわいーもんだよな。」
清四郎の頭は真っ白だった。
(・・・いったい何が・・・)
「そーいやあの後も確か野梨子かばって頭打って伸びてたよな、清四郎。」
「そーそー、大騒ぎだったよね、あの時も。次の日から野梨子、清四郎ファン
の女子からいやがらせに合うし。」
「挙句職員会議にまでかけられたものね〜。
“なんて破廉恥な!!”とかいわれて。」
「ま、見えないところの被害としては、
何者かによって闇討ち返しされた野梨子ファンの残骸とかな。」
「まー清四郎の告白もびっくりしたけど、
あたいは野梨子が告ったときのがびっくりだったけどな。」
「「「どうして好きになってはいけませんの!!!」」」
「もう!やめて下さいな!!」
野梨子は真っ赤な顔で叫んだ。
「いや〜生徒規則に恋愛禁止が追加されたのも驚いたけど、
それ発表した全校集会での野梨子大胆発言、一生忘れないよ、僕。」




309 :Back to the drawing board!(清×野)32:03/06/14 01:06
・・・話をまとめよう。
僕は3年前、全校生徒の前で野梨子に告白した。
その結果、野梨子ないやがらせに合い、
また、野梨子ファンの残骸が何者かによって積み上げられた。
職員会議でも問題にされ、
恋愛禁止の項目が追加となり、全校集会が開かれた。

・・・そのとき野梨子は?

つづきます。


310 :名無し草:03/06/14 10:51
>Back to
おっ、未来が変わってる!よかったね、清四郎。
でもなんか過激になってる気が・・・。
この三年、二人が付き合ってたんだとしても、裕也を殴ったって
いったい何をしたんだい、裕也クン?(w
で、全校集会で野梨子が何をやらかしたのか、それがまたワクワク

311 :名無し草:03/06/14 11:45
>Back to
ここ開くのが楽しくてしかたありません。
未来もちゃんと変わってるし…
50をとる清四郎の気持ち、よくわかるな。
とってもばっちり決めてくれた文章でかんどー!
続き、待ってます。

312 :名無し草:03/06/14 15:11
>Back to the drawing board !
「どうして好きになってはいけませんの!!!」

もう、大好き!よく言った野梨子vv
未来が変わってよかったね、清四郎…

313 :名無し草:03/06/14 16:10
漏れは3年のうちに2人がどこまで進んでるのかが気になるな。
清四郎にその間の記憶は無い訳だから、最後まで済だった時は
当然貴重な記憶も無い訳であって・・・。も、もったいない〜。


314 :Back to the drawing board!(清×野)33:03/06/15 01:03
309のつづきです。

「・・・だって・・・必死だったのですもの。」
野梨子は真っ赤になってうつむく。そんな野梨子をみて、可憐は笑った。
「はいはいわかりました。もーからかわないわよ。今日はね。」
「きょっ今日はってどういう意味ですのよ!」
「もー怒んないの!お邪魔虫はそろそろ退散してあげるから。
ほら美童、帰るわよ!悠理と魅録もT3の試写会いくんでしょ?」
「げっ忘れてた!シュワちゃん!!!」
「やっべー、清四郎、悪いけど俺たち行くな!」
「悪かねーよな、清四郎ちゃん。けど野梨子にやらしーことすんなよ。」
「な、なにをおっしゃいますの!悠理!!」
「清四郎、私たちももう行くけど、3年前の約束は有効よ♪(笑)」
「あーあ、むやみな約束はするもんじゃないね、清四郎。
ま、がんばれ〜。」

言いたい放題言って、四人は病室を出ていった。


315 :Back to the drawing board!(清×野)34:03/06/15 01:04
一方野梨子はというと、清四郎に背を向け、
じっと、4人の出て行ったドアを見つめていた。
「・・・野梨子?」
返事はない。清四郎は何と声をかければよいのかわからなかった。
「・・・もう、帰りますか?」
ぴくっと、肩が動く。
「・・・わざわざすいませんでした。もう大丈夫ですから帰ってください。今親父に頼んで車を呼びますから。乗って帰りますよね?」
「・・・にいて・・・」
「え?どうかしましたか?」
「いい加減にして下さいなと申してますのよ!!!」
くるっと野梨子は清四郎のほうに向き直り、半ば悲鳴のような声をあげた。
大きな両瞳に収まらないほど大粒の涙を流して。


316 :Back to the drawing board!(清×野)35:03/06/15 01:04
「私・・・私、本当に心配しましたのよ!?なのにどうしてそんなこと申しますの!?」
野梨子は我を忘れたかのように叫び続ける。
「どうして帰れなんておっしゃいますの?あなたが丸一日以上も目を覚まさないから私・・・・。」
そう言って、口元を押さえる。
「野梨子・・・」
「もう知りませんわ、清四郎なんて!どうとでも好きになされば・・・!」
言葉にならなままに、野梨子の腕は強い力に身体ごとひきつけられた。



317 :Back to the drawing board!(清×野)36:03/06/15 01:05
「・・・すいません。」
いろいろな意味を込めて僕は告げた。
   現在(いま)をかえてしまったこと
   過去に願望を押し付けてしまったこと
   未来を夢見てしまうこと
   そして、泣かせてしまったこと
けれど、涙でグシャグシャな顔で叫ぶ野梨子を、この上なく愛しいと思ってしまう。
「・・・どうしようかと思いましたの・・・清四郎が眠ったままになってしまったら、
私、どうしたらいいか・・・」
しっかりと、シャツを掴んで、野梨子は顔をうずめた。
「清四郎なんて、大っ嫌いですわ。」
「・・・そうですか。わかりました。」
ぎゅうっと、野梨子の頭をかかえる。
艶やかな髪が顔に張り付いているので、取ってやる。

この3年間でなにがあったのか、僕にはわからない。
けれど、少なくとも一番ほしかったものは手に入れたのだろう。
それで十分だ。
きっと、そのうち思い出すなり何なりするだろう。

清四郎はとても幸せだった。
頭の重みがここちよかった。
永遠に、いまこの時が続くような気がした。
しかし、幸せは突如飛び込んできた老人によってブチ壊されるのだった・・・。

つづきます。


318 :名無し草:03/06/15 01:16
Back to the drawing board!作者です。

もはや短編ではないですね。半端なもので申し訳ありません。
また、パソコンがバカなため、長い文章の貼り付けはできず、また、
さらに超短文しか受け付けてくれないことがあります・・・(泣)

そのため一つ一つのレスが短いです。
迷惑をおかけする全ての方々に謝罪いたします。

Back to the drawing board!(本編)
次のうpでおわります!



319 :名無し草:03/06/15 10:18
>Back to the drawing board!
幸せぶち壊されちゃうんですかっ!!??
でもきっと最後はハッピーエンドと信じてまつ。
野梨子が可愛くてめろめろです。
原作の嫌味っぽいトコがなくてイイ!

今夜最終回ですね。
寂しいけど、楽しみにしてます。
がんがってください!

320 :秋の手触り[70]:03/06/16 01:58
>>284-286

 都内某所にあるホテル・剣菱。
 今年、剣菱グループが威信をかけて建設したばかりの高級ホテルである。
 その一階にある大広間・百合(……)は、三階分まである吹き抜けとなっている。都内
のどのホテルと比べても広さといい、豪奢さといい、目を見張らんばかりである。
 本日、百合の間では、グループ会長主催のパーティーが開かれていた。それは社による
公的な意味合いのパーティーではなく、会長とその夫人による私的なものという建前では
あった。しかし、突然すぎる招待にも関わらず、駆けつけた客人の顔ぶれはそうそうたる
ものであり、図らずも剣菱グループの威信を対外に見せ付ける結果となっている。
 ホテルの正面玄関にあるロータリーに、一台の外国車が滑り込んできたのは、パーティー
が始まって数十分が経過したころであった。
 男女一組であることを見て取ったドアボーイは、まず、さっと右側に回り込み、車の扉
を開いた。すると、中から出てきたのは、夜に溶け込みそうな漆黒――。広がる裾が衣擦
れの音をたて、はっとしてドアボーイの青年は顔を上げた。
 無造作な、しかし艶やかな明るい髪、瞬く度に音がしそうなほど長い睫、日本人離れし
た彫りの深い顔――これほどに派手な美女はそうそういまい。一瞬見蕩れた青年は、しか
しすぐに我にかえった。
「お嬢……さま?」
 以前、一度だけ見たことのある会長令嬢は、弾けるゴム玉のような印象しかなかった。
だがいまや彼女は、女優も顔色なからしめるほどに美しい。
 続いて、運転席から出てきた男性もまた、同性の目からも感嘆するばかりに格好かった。
美形とはまた違うのだが、眼光は鋭く、推定される年齢からすると、ただごとではない腰
の落ち着きようである。
(……はぁ、神様も不公平だよなぁ)
 均整の取れた青年の後姿を見ながら、ドアボーイは密かに溜息をついた。だから彼は、
ふたりの漏らした不穏な言葉を聞き逃すことになる。
「さあ悠理、お前の演技力に期待しているぜ。豊作さんの命運がかかってんだ」
「こういうのは、可憐とか野梨子の方が上手いんだけどなぁ」
「お前のガラじゃねぇことは分かってるが――場をひっくり返すのは、お前の十八番だろ」

321 :秋の手触り[71]:03/06/16 01:58
 会場に悠理が現れるなり、大きな瞳を爛々と輝かせ、百合子は愛娘に抱きついた。
「んまぁ――っ 悠理、よく似合うわぁ!」
「か、かぁちゃん苦しいよ」
 一体その細腕のどこにそんな力が潜んでいるのか、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる母
親に、悠理は顔を顰めた。しかし、そんな娘の抗議を意に介す百合子ではない。
「黙らっしゃい。いつも変な服ばっかり着てるあなたが悪いんです。――ああ、もっと
顔を見せて頂戴。やっぱり元がいいと、化粧も映えるわねぇ」
 着飾った娘に対する百合子の歓喜は半端ではなかった。このまま衆目のもとで、撮影
会でも始めそうな勢いである。
「か、母さん。そのくらいで……」
 豊作がそっと百合子と悠理を引き離した。悠理には、これからいろいろと動いてもら
わなければならない。化粧で見かけは女らしくなったものの、よく言えば天真爛漫、
悪く言えばじゃじゃ馬な悠理の地はそのままであり、今後の成り行きに些か不安が残る
ものの、計画はすでに動き出している。
 不安を振り切るように、豊作は魅録の方を向いた。
「魅録君、平日にわざわざすまないね」
「いや、久々に暴れられそうなんで楽しんでますよ」
「暴れる……ねぇ。お手柔らかに頼むよ」
「俺のプライドにかけて、豊作さんの不利益になるようなことはしませんよ」
 にやりと魅録は笑った。
 しかし、すぐに顔を引き締め、今日の計画に必要なことを聞き出す。
「今日は、剣菱精機の人間はどれくらい集まったんですか? 出来るだけ人数が多い
方がいいんですが」
 魅録の質問に、豊作は出席表を見ながら応えた。出席者は1000人を超える数で
あり、今回の企みを抜きにしても、豊作にとって重要な出席者が多数その表に記入され
ていることだろう。
 いくら今回の計画のカモフラージュのためといえど、よくこれだけの人が集まった
ものである。一歩あるけば各界の大物にぶつかるといった有様である。
「戸村社長と、常務の高砂さん、マーケティング部長と八代チーフ、経理の部長と次長
だけだよ、残念ながら。急すぎたしね。できたら、広報部長あたりにも出席してほし
かったんだが」
「ま、そんだけ集まったら上等ですよ」

322 :秋の手触り[72]:03/06/16 01:59
「豊作。そろそろ、今井の馬鹿坊ちゃんに挨拶する時間でしょう?」
 魅録と豊作が話していると、百合子がそう声をかけてきた。今回の企みには、百合
子にも役割が振られている。悠理の演技力だけでは心許ないからであった。百合子は
そのフォロー役である。
 ――今井とは、剣菱よりは些か及ばないものの、この不況下にあって黒字を出し続
けている日本有数の旧財閥の企業グループである。さまざまな部門で剣菱と今井は
ライバル関係であったが、医療機器部門では、今井グループの方に軍配が上がってい
る。
「ああ、そうだね。じゃあ悠理、いっといで。任せたよ」
 任せたというわりに、豊作の眼差しは不安げである。今回、悠理に与えられた役割
は、一番彼女に似つかわしくないものだと彼は思っていたからである。もっとも、
美しく装った妹を見て、少しは考えを改めたのだが。
「大丈夫ですって、豊作さん。悠理が阿呆なことしでかしても。重要なのは、今井の
会長令息にではなく、周囲にどう見えるか、なんだから」
 軽く魅録は請合った。
 今回、今井の会長令息をこのパーティーに招いているのだった。会長自身ではなく、
会長夫人でもなく、令息ただひとりだけをである。
 対して、剣菱の方はといえば、じゃじゃ馬で知られている令嬢をめかしこませて、
さてその意図とは――人々の邪推するところは、ただひとつ。魅録の狙いはそこだっ
た。
 魅録と豊作は、両親に伴われて今井の会長令息のもとへ向かう悠理を見送りなが
ら、話をする。
「でも豊作さん、今井精機が黒だっていうのは確実なんですか? 今更ですけど」
「証拠はないから、限りなく黒にちかいグレーとしか言えないよ。でも、うちの
技術者が何人も向こうに流れているし、それと同時ぐらいに重要書類が紛失してる
んだ。――うちの社の誰かと、向こうの人間が接触しているとしか考えられないこ
とが、いくつもある」
 疑惑は、数え切れないほどある。だが、どれも決定打がない。それゆえに、豊作は
自分の社の人間を疑うまいと努めて来た。だが、一昨日のウイルス事件と魅録たちの
介入をきっかけに腹を括ったのだ。

323 :秋の手触り[73]:03/06/16 01:59
 もう、ここまで被害が及んでしまえば、目を逸らす訳にはいかない。自分は剣菱精機
の専務として、そして剣菱グループの後継者として、徹底的に戦って、この危機を乗り
越えなければならない。
「戸村社長は無実かもしれないっていう悠理と金井さんの直感を当てにするなら……
一番怪しいのは、やっぱりマーケティング部部長や、経理部長、広報部長あたりで
しょうね」
 一昨日に豊作と彼の秘書である金井より聞いた剣菱精機の勢力図を頭に思い浮かべ
魅録が言うと、豊作は歯切れのない返事をかえした。
「うん……そうだね」
「他に心当たりが?」
「――いや……まだ言える段階じゃあないから」
 そう言葉を濁す。
 派閥がハッキリしない人間のことだろうか、と魅録は考えをめぐらせたが、豊作
が語らないかぎり、部外者である魅録が図りしれることではない。
 詮索を諦めて、魅録は再び悠理の方へ視線を遣った。
(あれが、今井会長令息か)
 人の良さそうな坊ちゃんである。坊ちゃんとはいっても、年齢は豊作と同じくら
いか。体格もそれなりに良い青年だが、美しく着飾った悠理の前で、顔を真っ赤に
して照れている。
(悠理も上手いことやってるみたいだな――じゃ、俺も頑張るか)
 自分は、地道に聞き込みをする予定である。こういう浮ついた場所では、人の
口は自然と軽くなる。ことに、行きずりの相手に対しては。
 悠理同様、こういったことは魅録の柄ではないのだが、人手の足りない現時点
では仕方のないことである。
「じゃ、俺も行きますね」
 そう豊作に告げ、席を離れる。ボーイからカクテルグラスを受け取り、目指すは
剣菱精機社長・戸村の秘書。
(よし、あの人だな)
 目星をつけ、一歩踏み出したちょうどそのとき。
 魅録の肩を、誰かが叩いた。

ツヅク

324 :名無し草:03/06/16 10:18
>秋
連続うPうれしいです!
いよいよ佳境に入ってきましたね。
美しく着飾った悠理の暴れっぷりに期待大。
そして魅録の肩を叩いた人物はやっぱり・・・ですよね?
期待するぞぉ!

325 :名無し草:03/06/16 12:06
>Back to the drawing board!
休みの間にこんなに話が進んでる!うれしい〜。
勇気を出したかいあって、野梨子と恋人同士になれたのですね。
我が事のようにうれしいわ。良かった、良かった。
次で終わってしまうのですね。最近ここを覗くのが楽しみで
しかたなかっただけに残念。でも続きは気になる・・・。
本編終わりとの事なので、続編またはサイドストーリーがあると
期待してもいいですか?
というか、切にきぼーん。

>秋の手触り
悠理、かっこいいですね。悠理のこういう姿、御大書いてくれないかな。
修学旅行のだけじゃ物足りないわ。
ふと思ったが悠理の明るいネコっ毛は万作さんゆずり?
百合子さんは真っ黒ストレートだし。
兄妹ともに顔だけは母親似でラッキーでしたね。

326 :名無し草:03/06/16 21:03
>325
ですよね。私もそう思いました!
今日で最終回でしょうか…ソワソワ

327 :名無し草:03/06/17 00:32
>325
>続編またはサイドストーリー
ハゲド。
裕也をボコったいきさつとか、清四郎に告白されてから
野梨子が受け入れるまでの話とか読んでみたい。

328 :可×清 可憐さんにはかなわない(85):03/06/17 01:48
>>148
一時間後、清四郎は再び松竹梅家の前に立っていた。先刻、魅録の部屋のドアを
叩くと、妙に息を切らした本人が出てきて「今、取り込み中だから、あと2時間、
いや1時間後に来てくれ!」と懇願するので、ぶらぶらとその辺を歩いて
時間を潰していたのである。
「いやあ、悪かったな」
先程とは打って変わって、にこやか、且つ気だるそうな魅録が清四郎を部屋に招き入れた。
室内のテレビは魅録が普段あまり見ないバラエティ番組を映し、大きな笑い声が
スピーカーから流れている。まるで何かの気配を消したいかのようだ。

「可憐のことだろ?喧嘩したのか。アイツぴーぴー泣きながら歩いてたぜ」
さりげなく切り出された魅録の言葉に、清四郎の胸はチクリと痛む。
スーパーの袋をぶら下げている可憐の姿が脳裏に蘇ってきた。

『清四郎……』

知らず知らず眉間に皺が寄った生徒会長の顔を眺めながら、魅録は笑う。
「謝っちまったらどうだ?どうせ可憐に冷たくしたこと、後悔してるんだろ?」
「……まあ、そんなところです。でも、僕から謝るつもりはありませんよ」
冷たく冷えたコーラを一本、魅録は清四郎に手渡した。
「清四郎。高すぎるプライドは邪魔なだけだぜ。たまには我を忘れてさ、取り乱す
ことも清四郎には必要な気がするけどな」
「可憐のおかげで毎日充分取り乱してますよ。本音ではこの辺で勘弁してほしいところ
ですがね」
苦笑しながら勧められたコーラの缶を開けた。
魅録は続ける。
「いつまでも恋愛音痴で甘えてたら、可憐がかわいそうだぜ。少しは清四郎が
リードしてやってくれよ」
清四郎はムッとすると同時に胸の中にモヤモヤとしたものが満ちてくるのを感じた。

329 :可×清 可憐さんにはかなわない(86):03/06/17 01:48
「可憐はいい女だよ、実際。よく気がつくし、優しいし、話も面白い。
何か不満があるのか?」
押入れの中でドサドサと何か崩れる音がした。魅録と清四郎は顔を見合わせる。
問いたげな顔の清四郎にあわてて魅録は言った。
「積み上げてあったビデオが崩れた音じゃないかな」
軽くうなずいた清四郎は深いため息をついた。
「よく気がつく。優しい。話が面白い。それに、料理もうまい」
清四郎の言葉に魅録は大きくうなずいた。
「だよな!」
また押入れの中で何かが、かなり激しく崩れる音がした。
清四郎がチラッと押入れに目をやりながら聞く。
「いいんですか、押入れを開けて見なくても。何か壊れてるかもしれませんよ」
タラタラと脂汗を流しながら魅録は「いや……」と首を振った。
彼は押入れの中が気にならないようなので清四郎は話を続けた。
「さっきの話の続きですが、可憐は料理がうまい、特に……」
話の後を魅録が引き継ぐ。
「特に、豚汁だろ?うまいよな、可憐の豚汁。ゴボウが入ってないけど」
魅録の言葉に清四郎はニッコリ微笑んだ。
「豚汁ですよね」
「だよな!?」
魅録は意見の一致にうれしそうだ。
「豚汁、最高ですよね」
「最高だよな!」
「…………僕はまだ作ってもらってませんけどね」
「え。…………そうなんだ」
「…………」
気まずそうな魅録の表情を見た清四郎は、ふと膝を抱えて座り込んでしまった。

330 :可×清 可憐さんにはかなわない(87):03/06/17 01:48
「そうですか、魅録は豚汁を作ってもらったんですか、いいですね。家庭の味です
よね。豚汁かあ。いいなあ、豚汁。僕は飲んでいませんけど」
背中を丸めた清四郎は床にのの字を書いている。
押入れの中からは物音が消えている。いや、よく耳を澄ますとポキリポキリという、
細かくて精巧にできているものを一つ一つ指でへし折っている音が聞こえる。
考えたくないが、ひょっとしてあの音は、一ヶ月かけて作った俺のプラモ……。
やめてくれーーーっっ。

「よ、よくないって。豚汁なんか、全然よくない!」
あわてて否定する魅録に向かって清四郎は憤然とする。
「いいですよ!最高じゃないですか、豚汁。可憐がここに来た時、作ってくれた
んでしょう?」
「違うって。それが笑っちゃうんだよ。あいつと大喧嘩するだろ?顔も見たくないって
思うんだけどな、こっちからは絶対謝るもんかって思うんだけどな、つい謝っちゃう
わけ。なんでだかわかるか?あいつ仲直りの印が豚汁なんだよ。うまいからさぁ、
可憐の豚汁。だからつい謝って……て俺は何を言ってんだぁ」
バキッ
魅録の一ヶ月の労力を足で踏みつぶした音が、押入れの中から聞こえ、魅録は心の中で
泣いた。その音に気づいているのかいないのか、清四郎は首だけ魅録の方を向き、皮肉な
笑みを浮かべる。
「そうですか、仲直りの印なんだ。可憐と魅録の。知りませんでしたね。うらやましいですな」
「そんなにうらやましかったら、とっとと仲直りして作ってもらえばいいだろ、可憐に」
魅録はいい加減、清四郎の愚痴っぽさに呆れている。
清四郎がふてくされた顔でつぶやいた。
「何回ですか?」
「ん?」
「何回、可憐と大喧嘩を?」
「……四回かな」
「くっ。四回もか。四回も豚汁を!」
「いい加減、豚汁から離れろっ!」

331 :可×清 可憐さんにはかなわない(88):03/06/17 01:48
清四郎を家の門まで送りながらくしゃみが一つ出た。
鼻をすする魅録に清四郎が声をかける。
「夜はまだ冷えますね」
「ああ……。なあ、清四郎。おせっかいかもしれないけど、可憐と仲直りしろよな。
お前ら、けっこうお似合いだぜ」
「さあ、こればっかりはどうも。僕が謝っても可憐が許してくれるかどうか」
「許してくれるさ」
やけに自信満々な魅録の言葉にジェラシーを感じながらも、清四郎はうなずく。
「それから。さっきの豚汁の話だけど。三回しか食ってない」
「ん?どういうことですか?」
「四回目はなかった。そういうことだ」
魅録は淋しげに笑った。清四郎は言葉を探している。
「……可憐はきっと豚汁作って待ってましたよ、魅録のこと」
「いや、それはないな。俺達終わったんだ、きれいさっぱり。だから、あまり気に
するなよ、俺のこと。あいつは一途な奴だから、今はお前一筋のはずだぜ」
しばらく黙っていた清四郎はやがて、大きくうなずくと礼を言った。
「ありがとう、恩に来ます。胸のつかえが降りました」
「可憐、大事にしろよ」
「わかりました。魅録もね、悠理に謝っておいてください。狭いところに押し込んで
すみませんでしたって」
「おう!……て、知ってた?」
ニコッと笑顔を見せて清四郎は駆け出して行った。来た時とは打って変わって、
晴れ晴れとした爽やかな笑顔だった。彼の後ろ姿を見送りながら魅録は苦笑する。
(やれやれ、これから可憐のところに行くつもりかな)
清四郎の気分に当てられたのか、何となく自分もウキウキした気持ちで口笛を吹きながら
振り返ると、そこに亡霊のように悠理が立っていた。
「ゆ、悠理。どこへ?」
荷物を持った悠理は黙って自分のバイクにエンジンをかけた。
「ツーリング。みやげは何がいい?豚汁がいいか?」
そう、捨て台詞を残すと悠理はバイクに跨がり風のように走り去って行った。

332 :名無し草:03/06/17 01:48
以上です。ツヅキます。

333 :名無し草:03/06/17 02:40
>可憐さんにはかなわない
待ってました!
豚汁にこだわる清四郎に大笑いです。
プラモを壊される魅録にもワロタ(でもこっちは自業自得かもw)
四回目はなかった、というのが切ないです。
まだちょびっと未練あり気な魅録が可愛いと思ったり、
悠理が気の毒じゃないかと思ったり・・・複雑な心境ですね・・・

>水中花(inしたらば)
こっちのスレは見ているのかな?
新連載が嬉しいです。卒業後の話が出て来たりして、
ちょっと切ない系のお話なのでしょうか。
視察旅行で悠理がどう変わるのか、または変わらないのか・・・
清四郎→悠理になりそうなのも楽しみです。

334 :名無し草:03/06/17 10:44
したらばでも作品連載してるのか…
教えてくれてありがd

>秋
ここの悠理は、全ての作品の中で一番美人に書かれてるねー
どんな暴れっぷりをされるのか楽しみ楽しみ。
気になったのは、八代チーフ。
この人ってもしや、前に出てきた……?
使い捨てキャラじゃなかったのか!(驚)

>可憐さん
待ってました―――っ!!!
高校生のときの恋愛ってこんな感じだったなぁなんて思い出しながら読みました。
ほら、いつもは高校生らしかぬ有閑倶楽部のメンバーだけどさ。
それにしても、友達の恋の世話をやくとってもいい男な魅録なのに、
自分の恋は上手くいかないんだな…(笑)

335 :名無し草:03/06/17 16:59
>可憐さん
うあ──いっ!!待ってました!
「くっ。四回もか。四回も豚汁を!」

最高です(w
でも、みんなそれぞれ切ないですね。



336 :名無し草:03/06/17 18:52
>可憐さん
待ってましたー!
>背中を丸めた清四郎は床にのの字を書いている。
…清四郎かわいいなー。
結局、居留守を使わず清四郎の相談にのる魅録…。やっぱ友達思いですね〜。
捨て台詞を残し去ってゆく悠理は、万作(クロワーゼ)浮気疑惑時の百合子さんを彷彿させる〜(w
魅録どうする!?清四郎どうなる!?
つづきを楽しみにしております〜。

337 :名無し草:03/06/18 00:19
>水中花(inしたらば)
見ましたーなんか可憐の切なさが伝わってきまつ。
清四郎も切なそうですね…

338 :名無し草:03/06/18 17:05
『Back to the drawing board !』 を最初から読もうと思って、
嵐さんのトコに行ったハズなのに、
『バレンタイン騒動』を読んで、続きが気になっている私・・・
バレンタイン〜も含めて、途中で止まってる連載モノが多くて、全ての続きが気になる・・・!

作者さま方っ、どうか続きを〜〜〜!(切実)

339 :名無し草:03/06/18 18:56
とりあえず病院坂、恋チカきぼん


340 :名無し草:03/06/18 20:03
>秋
実は今日はじめて嵐さんのとこで読んできました!
みんな鋭くてカッコイイ!
切なくもアリ、大好きになりました!がんがってください。


341 :名無し草:03/06/19 07:27
私は世界は〜の続きがはげしく気になる

342 :可×清 可憐さんにはかなわない(89):03/06/19 07:48
>>331
ベッドに寝転んで枕に顔を埋めていた可憐は、電話の呼び出し音にガバッと飛び起きた。
あわてて受話器を取り、耳に押し当てる。
「もしもし!……せ、……なんだ、美童か。今、眠いの。又、明日ね」
せかせかと通話を切り、電話器を見つめる。謝罪の電話がいつかかってくるかと
夕方からずっと待っていた。しかし、日付けも変わりそうなこの時刻になっても
清四郎から一本の電話もかかっては来ていない。
(これで、おしまいになっちゃうのかなぁ)
萎えそうな気持ちを元気づけようとガンガンにロックをかけて踊ることにした。
音楽に合わせて、髪を振り乱して踊る。自然に気持ちが高揚してくるのを待った。

(清四郎……)

なぜ清四郎は可憐が家を訪れた時、あんなに冷たい態度をとったのだろうか。
(美童か、魅録に送ってもらったらって……嫉妬?)
それとも、一足先に手伝いに来ていた野梨子に気兼ねして?
(あの二人ひょっとして……、ううん、嘘よ。そんな筈ない)
玉の輿目当てに近づいたはずだったのに、いつのまにか、彼のことばかり考えている。
理知的でクールな彼が、自分を求めて乱れる姿を見てしまったからだろうか。
シニカルな彼の薄い唇が、野獣のように熱く猛々しいことを知ってしまったから?
薄手のロマンティックなパジャマが汗で濡れるのも構わず、踊り続けていると、
微笑を浮かべたママ・あき子がやってきて、オーディオのスイッチをぱちりと消した。
音楽が消えて拠り所がなくなった可憐はウロウロと室内を歩き回り、やがて窓際に身を
寄せた。見下ろすと、ジュエリー・アキが面した片側二車線の通りが見える。
さすがにこの時間、通行量は減ったものの、途切れることなく車が行き交っている。
テールライトがかもし出す光の軌跡に目を奪われながら、可憐はふと歩道に目を落とし
心臓が飛び出しそうになった。

歩道に立って、こちらを見上げている若い黒髪の男。
(清四郎!)

343 :可×清 可憐さんにはかなわない(90):03/06/19 07:48
思わず可憐ははるか下にいる清四郎に向かって手を振り、一階の階段入り口にある
インターホンを押すよう即す。可憐に気がついた清四郎はパッと顔を明るくしたが
やがて可憐の意図がわかったというように階段入り口に向かっていった。
可憐も自室を飛び出し、居間へ転げるように入った。チャイムが鳴るか、鳴らないかの
内にインターホンの受話器を取る。モニター画面に清四郎が白黒で映っていた。
「……可憐、すみません。こんな夜遅くに、でも、どうしても」
「待って!今、カギ開けるから、階段上がってきて!私もすぐ行くから!」
オ−トロック解除のボタンを押すと同時に、また転がるように居間を出て
玄関でサンダルを履き、ドアを勢いよく開くと外へ飛び出した。
5階からサンダルで外階段を駆け降りる。4階の踊り場で足を止めると、下からこれも
急いで駆け上ってくる足音が聞こえる。可憐は唇を噛むと再び階段を駆け降り出した。
ものすごい勢いで階段を駆け降り、駆け上がりした二人はちょうど3階の踊り場で
出くわした。

ゼイゼイと肩で息をしている可憐は、清四郎の顔をうれしそうに見た。
にっこりと微笑むと清四郎は大きく腕を広げる。
「……せいし、」
皆まで言えず、可憐は清四郎に抱きついた。清四郎も可憐をぎゅぅっと抱きしめる。
しばらく二人はお互いの存在を確かめあっていた。可憐は清四郎が自分の長い髪を
なでながら、言葉に詰まり、何も言えないでいるのがわかった。
やがて清四郎は可憐を抱えたまま、しりもちをつくように座り込んでしまった。
「可憐……」
名前を呼びながら彼女の唇を自分の唇でふさいだ。
「清四郎、待って……私も言いたいことがあるの」
「いやです、可憐。もう待てない……」
「清四郎……」
「可憐、この指で、もう他の男に触れないでほしい。可憐が……好きなんです。」
「清四郎、私もよ……、淋しかったわ、清四郎……うれしい」


344 :可×清 可憐さんにはかなわない(91)R:03/06/19 07:48
可憐の片足からサンダルが脱げ、階段をガランゴロンと落ちた。
清四郎は可憐の体を壁に押しつけながら口づけを繰返していた。
それに応える可憐の濡れた唇から熱い吐息が漏れる。
清四郎の大きな男の手がパジャマの裾から侵入して、その下の素肌に触れた。
彼女が胸に何も下着をつけていないのを知って、一瞬ためらったものの
すぐにふくらみに手を伸ばす。
「ん……」
ぴくりと可憐が反応する。手の感触から想像すると、彼女の乳房は豊かな山を形作って
いる。清四郎は山が見たくなってパジャマの裾をめくりあげた。
驚いて押し戻そうとする可憐の手をパジャマを持った手でつかまえたまま、
清四郎はため息と共に美しい曲線に見とれる。
白い素肌が豊かな山を成していた。その頂きに薄桃色のやや大きめの華が咲いている。
そっと唇を寄せ、桃色の華をゆっくりと口に含んだ。
彼女は潤んだ瞳でじっと清四郎のすることを見ている。
唇と舌を使って彼女の華をゆっくりとしゃぶると同時に、両方の手で二つのふくらみを
優しく握った。
可憐が吐息と共に瞳を閉じた。彼女の体からは甘くいい匂いが立ち上っている。

柔らかな、何とも比べようのない感触。この世の中にこんなにいいものがあるとは。
彼女の胸の頂きを唇で味わいながら、清四郎は夢に遊ぶ気分だった。
ふと自分が赤ん坊になって、可憐に甘えているような気がして一人で赤くなる。
顔をあげると可憐も目を開けて清四郎を見つめていた。
そして彼の頬を両手で包み込むと優しくその唇にキスをして、
それから彼の頭を自分の柔らかな胸に抱え込んだ。まるで母がわが子を慈しむように。
二人はそのまま抱きしめ合いながら、じっとしていた。
幸せな気分だった。

やがて心配したあき子が可憐を探しに来るまで、ずっとそのまま、じっとしていた。

345 :名無し草:03/06/19 07:49
以上です。ツヅキます。

346 :名無し草:03/06/19 07:51
注)今回、可憐の母の名前は「あき子」にしました。

347 :名無し草:03/06/19 18:46
>可憐さん
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
待ってました!やったぁ、清四郎vv
よかったね、2人とも!

>Back to
まってまつ!大好きです!

>341
禿同!

348 :名無し草:03/06/20 14:04
ちょっと思いついたのでうPします。
ダークなのでお嫌いな方はスルーを。
カポーはネタばれになるのでありません。

349 :雨がボクを狂わせるので<1>:03/06/20 14:04
「つまり、こういうことですね。彼は5月の終わりに、友人のパーティーで
件の男に出会った。そして誘われるままにその男の家に遊びに行ってから、
どうも、その、変わったらしい、と」
兄の友人は静かにこう言った。僕は座った膝の上で生白い手を組んだり離し
たりしながら記憶を必死で辿っていたが、一月以上も前のことで、朧げな
イメージしか浮かんでこなかった。

そう、六月に入ってからだった、兄が変わったと気づいたのは。
いつもふにゃけた顔をして女と電話ばかりしていた兄が、淋しげな表情で
窓の外ばかり見るようになった。そんな時、きまって外は雨が降っている。
もちろんこの季節、雨がつきものだということ位わかっている。
でも確かに雨が降ると、兄貴は、アイツはおかしいんだ。
何かぼんやりとした不安、パパとママに言っても笑ってとりあってもらえ
なかった。僕もそれ以上ははっきりと確信が持てなくて……。

そして、夕べの出来事が。
今、思い出しても背筋が寒くなる。やっとの事であの悪夢から逃れることが
できたのは奇跡としか思えない。でも、いずれ、近いうちに又悪夢はやって
くる。そう、又雨が降ったら……!
どうしよう、誰か僕を助けて!

そんな時だった、兄貴の友人、菊正宗清四郎が僕を訪ねてきたのは。
彼は僕がショックを受けている理由を知っているようだった。
彼は僕に同情し、慰めつつも、僕をもっと動揺させる事実を言わなければ
ならないことに苦痛を感じていた。彼の想像通り、僕は動揺し、泣きわめいた。
清四郎さんは僕の動揺が収まるのを待って、いろいろと質問してきた。
兄貴の家での様子、いつ変わったと気がついたか、僕の父と母がそれに気がついて
いるか等。

350 :がボクを狂わせるので<2>:03/06/20 14:05
「……よく思い出せないけど、あの男の家に行ったこと位しか思い当たることは
ないよ。行こうよ、清四郎さん、一緒に行ってよ。僕、もう怖くて怖くて、
兄貴と一緒にいられないんだよ」
僕の悲鳴のような声を聞きながら、清四郎さんがちっとも動こうとしないことに
ふと疑問がわいた。
そうだよ、なぜ彼が、こんなになるまで、こんなに皆が兄貴の餌食になるのを
黙って見ていたんだ?彼が変わってから、一ヶ月。
この人だったら何か手を打てたはずじゃないのか?

「なぜ……なの?」
「……なんですか?」
「そうだよ、あなた、なぜ今まで何もしなかったの?なぜ、兄貴をそのままに……。
まさか、まさか、あなた……」
「いや、違う。」
「違わないよ。僕にはわかる。そうだよ、あなた。あなたは兄貴に元に戻ってほしく
ないんだ。元の彼に、美童グランマニエに戻ってほしくないんだ……」
「邪推ですよ、杏樹くん。僕も君と目的は同じ。美童に目を覚ましてもらいたいん
です。」

嘘だ。
背筋にぞおっとしたものが走る。一体僕は誰に助けを求めたらいいのか。
だって、兄貴の友だち「有閑倶楽部」の連中はもう……。

そう、美童グランマニエの最初の餌食は黄桜可憐だった。

『続く』


351 :名無し草:03/06/20 17:03
>350
>そう、美童グランマニエの最初の餌食は黄桜可憐だった。

そう、美童グランマニエの最初の餌食になったのは黄桜可憐だった。

の間違いです。訂正してお詫びします。

352 :名無し草:03/06/20 18:58
>雨
皆に何があったのかとても気になります!
続きお待ちしております〜。

353 :名無し草:03/06/20 19:00
>可憐さん
すごく情熱的なシーンにうっとりしました。
清四郎、やるときゃやるじゃないかw
しかし、外階段って道路からイロイロと見えるのではないかと・・・大胆ですな

>雨が僕を狂わせるので
すごく続きが気になるー。
餌食って具体的には一体何を・・・?
ところで杏樹が妙に幼げでカワイイ

354 :名無し草:03/06/20 19:58
>Back to the drawing board!
大好きなんです!おまちしてまつ。

355 :名無し草:03/06/21 23:23
今日はうpがないみたい…さみしいな。

356 :名無し草:03/06/21 23:37
お話を書くのって大変だろうからなあ・・・。
マターリしながら待ってます。

357 :名無し草:03/06/22 00:03
>雨
美童メイン(ぽい)ってめずらしいね。
ダークなの大好き。続き待ってます!

病院坂も待ってます!

358 :名無し草:03/06/22 01:52
今日はうpがなくて寂しいので。。。。遊んでしまいました。
ミッションインポッシブル(新スパイ大作戦)指令ふう
<茅台の遺産の巻>
「おはよう、菊正宗君。
 香港マフィアのボス、茅台は逮捕されるのを嫌い逃亡をとげたが、成し得なかった
夢を実現するため、巨額の隠し財産を残した。その隠し財産とは、中国全土やアジア
各地から騙し取った莫大な金塊だ。現在の市場価格で50億ドルに達するものと思われ
る。隠し場所を知っていたのは茅台の腹心の部下4名だけで、その秘密は闇から闇へ
と伝えられてきた。そして今、4人の男たちが中国・上海で茅台製薬会社の復興をは
かり、テロ活動を画策するためにその隠し財産を入手せんものと動き始めた。
 そこで君の使命だが、その金塊を彼等に先んじて発見することにある。
 例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切
関知しないからそのつもりで。なおこのディスクは自動的に消滅する。
 成功を祈る!」

元ネタ ttp://www.tora-2.com/NMISSION.HTM#3

続きません


359 :名無し草:03/06/22 01:57
>続きません

何かスキ〜

360 : ◆F0avLdWvnY :03/06/22 02:26
ごもっとも!

361 :雨がボクを狂わせるので<3>:03/06/22 03:39
>>350
六月に入ったばかりの日曜日。
その日の朝の天気は僕の気分を映したように、ご機嫌斜めな感じだった。
人の気も知らず、最近誂えたばかりの薄いピンクのシャツに袖を通しながら、
奴は鼻歌なんぞを歌っていやがる。
食堂の入り口に架かっている鏡の中の自分にウィンクをしていた。
ア・ホ・か。

英字新聞片手にパパがリヴィングから顔を出す。
「おや、美童。今朝はずいぶんとご機嫌ですね。デートでしょう?」
アホは席につきながら、にやけた顔を更に崩した笑顔になった。
「ん〜ふふ。パパにはお見通しかあ。えへへ〜。まあね〜。
ねぇ、杏樹。今日降ると思う?新しい靴おろすかどうか、迷っててさぁ。」
「さあね。降らないんじゃない。」

天気予報くらいチェックしろ、バカたれ。降水確率80%だっつーの。
びしょぬれになって新しい靴を台なしにするか、靴ずれでもこしらえたら、
い・い・気・味・だ。

兄貴のバカたれに電話がかかってきた。
バカは一度ついた席から立ちあがると、食堂の入り口で子機片手に喋っている。
その隙にこっそりパパが聞いてきた。
「美童のデートの相手って知ってるかい?」
「……知ってる。」
そうとも、よ〜〜く、知ってるさ。何てたって僕の家庭教師だ。さらさらの黒髪で長身の
麗しのS女子大生。あいつめ、よくも僕のマドンナに手を出したな。呪ってやる。

362 :雨がボクを狂わせるので<4>:03/06/22 03:39
「うん、うん……そうかぁ、悪いけど先約があって……悠理達は?……そっかぁ、
それじゃ駄目だよね、うん、ごめん、うん、また電話するよ……うん、それじゃ。」
キッチンからママがパンの入った篭を持って現れた。
「誰からだったの?」
「可憐さ。一人で淋しいからパスタ食べに来いって。残念ながら僕が食べたいのはパスタ
じゃぁないんだよねー。」
「まったく一体何を食べるつもりなんだか。それはそうと、美童、降ってきたから傘持って
いきなさいよ。」
「ええ〜っ、嘘!?」
ざまあみろ。僕の祈りが天に通じたのだ。わっはっは。

雨は雷を伴って、激しく降り出した。まだ朝だというのに夕刻のような暗さだ。
ティーを飲み終わって気がついた。兄貴がまだ席についている。
奴は激しく降る雨の音に聞き入っているのか、ぼんやりと、窓に叩き付ける雨粒を
見つめていた。
デートに遅れるんじゃないか。
時間に几帳面な僕は気になって兄貴に声をかけた。
「おい。いいのか。デート遅れるぞ。僕の先生を雨の中待たせたりしたら、
しょうちしないからな。車で迎えに行ってやるんだろうな?」

反応がなかった。
あいつは虚ろな目をしたまま、バケツをひっくり返したような騒ぎの雨音に捕われていた。
もう一度声をかけようとした時、立ち上がって食堂を出て行った。
出かけるらしい。
見ると、新しい靴を履いている。
この雨の中履いていくのか、もったいない。一回で潰れるな。
車のキーを忘れているので、呼び止めたが、兄貴は振り返りもせず、そして、
信じられないことに傘もささずに、豪雨の中に消えていった。

363 :雨がボクを狂わせるので<5>:03/06/22 03:39
==============
あの時から兄貴の様子が何かおかしいとは感じていた。
でも、何が?どんなふうに?
言葉にできなくてもどかしいけど、つまり変わってしまったんだ。
それも、たぶん、一夜の内に。
変わった、うーん、いや、違う。
例えがうまくないけど、表面の皮がめくれて中身がつるんと出てきたような。
えーと、つまり、

「本性が現われた……と?」

本性、本性、ホンショウ……。
うん、そんなところかな。ちょっと違う気もするけど。
たぶん、変わってからの兄貴は、変わる前の兄貴と全く違うわけじゃない。
宇宙人か何かに身体を乗っ取られたんではないと思う。
ジキルとハイドのような二重人格ともちょっと違う。
以前の兄貴と似て非なるもの。
切れ味の鈍ったナイフを研ぎすましたような、いや違うな。
……ハラワタみたいな、かな。

「ハラワタ?」

うん。確かにお腹の中にあるんだけど、普段意識はしないし人目に触れることも
ないはずのもの。それが、何かあって、ばあっと露出しちゃってる感じ。
正視できないけど、その人の核で、大事な部分。
表面的な美しさとかではない、もっと生々しいものなんだ。

「……杏樹くん。」

おかしいよね。清四郎さん、僕、喋り過ぎだよね。でも喋らずにはいられないんだ……。

364 :雨がボクを狂わせるので<6>:03/06/22 03:39
チャイムの音に可憐はビクッとした。あわてて頬を流れ落ちていた涙をぬぐって
玄関へ向かう。ドア越しに呼び掛ける。
「はい?どちら様でしょう?」
応答がない。不安に思ってのぞき窓を見ると誰もいない−−−と思ったところに、
びしょぬれになった金髪の男がヌッと顔を出した。

ずぶ濡れの美童が借りたガウンをはおってバスルームから出てきた時、
テーブルの上にはワイングラスが2つと大きな鉢に盛られたサラダと、
空の皿が2つ、置かれていた。
「食べるでしょう?フィットチーネ。カルボナーラだけど、いいわよね?」
血のように赤い葡萄酒がワイングラスに音を立てて注がれる。
「美童が出てから茹でようと思って。茹で立てがおいしいからね。」
美童は黙ってワインを口にした。
可憐は明るく動き回っている。美童の突然の来訪に驚きつつも嬉しさを隠せない
らしい。
「どうしたの?デートだったんでしょ?まさか、このあたしのために、デートを
すっぽかしてきてくれたんじゃないでしょうね?」
「その通りだよ。君をなぐさめに来たんだよ、僕。可憐が泣いてるのわかったから。」

沈黙。鍋の中で湯がグラグラと沸いている。
可憐はフィットチーネを二人分鍋にほうりこんだ。ため息をついて振向く。
「泣いてなんか。」
「塩忘れてるよ。」
可憐はあわてて塩を鍋に入れる。後ろに立った美童が可憐の肩をつかんだ。
困った顔で可憐はパスタをかき混ぜている。
やがてかすれた声で呟いた。

365 :雨がボクを狂わせるので<7>:03/06/22 03:39
「ママがね、再婚するんだって。お得意さまと。私も相手の人とは会ったことあるん
だけど、いい人なの。だから、嬉しいんだけど、とっても嬉しいんだけど……」

頬を再び涙が伝った。
「でも……淋しいの……勝手に涙が出て。おかしいでしょ、子供みたいね。
喜んであげなくちゃいけないのに……いけないのに……」
美童は背後から可憐を抱き締めると、その耳元に囁いた。
「困ったお嬢ちゃんだね。パスタが茹で上がるまで、ソファでお兄ちゃんと一緒に
ワイン飲まない?」
涙をぬぐいながら、可憐はぷっと笑った。

ソファに二人は腰を下ろした。
「泣いてもいいよ。」
可憐は苦笑して首を振ってみせたが、見る間に瞳に涙が盛上がってくる。
美童は可憐の頭を自分の肩にもたれさせ、しばらく彼女の好きに泣かせていた。
涙の行き場がなくなると、自分の胸を貸した。そして彼女に葡萄酒をすすめる。
「ほら、可憐。ワインだよ。」
ワイングラスを受け取った可憐は一息に飲み干した。
「飲んじゃったわ。」
「じゃあ、僕のもあげる。」
そう言うと美童はワイングラスに手を伸ばした。

自分の唇に美童の唇が重なり、温かい酒が流れ込んでくるのを、可憐はぼんやりと
した頭で感じていた。不思議と嫌な気持ちはしなかった。
それどころか、今は彼の唇が離れるのを引き止めたかった。
「もっと欲しいわ。もっとちょうだい。」
「いいよ、でも鍋をなんとかしてからね。」

パスタはとっくに茹で上がっていた。

366 :雨がボクを狂わせるので<8>:03/06/22 03:39
真っ白な絹のシーツの上で二つの裸体がからみ合っていた。
美童は葡萄酒を口に含んでは、親鳥のようにせっせと可憐の唇に運んでいる。
時々それは形のいい可憐の唇から溢れ、シーツに葡萄酒色の染みを作っていく。

白いソースがからんだパスタ−−フィットチーネがうねうねと、堕ちていく。
着地した場所は白くて柔らかい皿の上だった。
その皿は震え、悶え、うねるので、いささかパスタの安定が悪いようだ。
また、行儀の悪いことに食する方も、フォークを使用せずに、
男にしては細い指と、これまた男にしては赤い唇とで器用にパスタを
くわえている。
美童はまた親鳥となり、半ば開いた可憐の口へパスタを落とした。
白いソースが彼女の顔に飛んだが、可憐は笑った。
「おいしいわ。」
「ちょっと茹で過ぎたけどね。」

可憐は野良犬になった。
ううーっと唸ってみせるが、美童に背中の上にパスタを乗せられて、
くすぐったがって笑った。
美童は野良犬をなだめて、こう言った。
「食べるよ、君の上のパスタ。」
しかし、パスタは一口しか美童の口に入らなかった。
その後、なぜだか、ほとんど床に落ちてしまったのである。
そして、二人ともさほどこれを気にしなかった。
なにせ、エロティックな共同作業に忙しかったので−−−。

367 :雨がボクを狂わせるので<9>:03/06/22 03:39
あれほど激しかった雨がいつの間にか止んでいた。
可憐は満ち足りて幸せな気分でまどろんでいる。
ふと気がつくと隣にいたはずの美童がいなかった。
玄関のドアが開く音に驚いて裸のまま、走っていく。
「美童!」
帰るところだった美童は振り返って何も身につけていない可憐を見ると、
絶句して立ちすくんだ。
その目に脅えと不安の色が浮かんでいるのを可憐は不審に思った。
「美童……、どうして帰るの?」
美童は真っ青になって口をパクパクしている。
「あれ?可憐、あれ?……僕、なぜここにいるんだか、あれ?」

衝撃が可憐の体を貫いた。膝がガクガクと震えている。涙がにじんでくる。
「嘘……。いや……、美童、いや……。」
美童は蒼白になって固まっていた。
「あの、僕、ひょっとして……いや、まさか……だよね?」
可憐は髪をかきむしり、大声で叫んだ。
「いやっ!卑怯もの!!近寄らないで!!」

美童の鼻先でドアがバタン!と閉まった。可憐の泣きながら走っていく音が
遠ざかっていく。美童はドアにもたれながら、呟いた。
「嘘だろ……。そうだ、何かの間違いさ……。」
やがてよろよろと歩き出す。
「帰ろう。そうだよ、帰ろう。また、雨が降りそうだしさ……。」


=====================
6月某日。一人目。黄桜可憐。あと−−5人。
=====================
<ツヅク>

368 :名無し草:03/06/22 10:57
>雨
なんか、美童がカワイソウに思える…ダークって事は
6人(自分含む?)をどーにかしちゃった時点で終了なので
しょうか?救いはないのかな。。

369 :名無し草:03/06/22 11:00
>雨
かなりツボです。このまま他の人を毒牙に・・・ということは
魅録や清四郎も・・・ウホッw
背後で操ってるのは一体誰なんだろう。何か知っていそうな
清四郎はどう動くんだろう。期待が膨らみまつ。


370 :雨がボクを狂わせるので<10>:03/06/22 19:57
夕べから降り出した雨が、木々に囲まれた山荘をより鬱蒼と見せていた。
有閑倶楽部のメンバーは学校の創立記念日に、泊りがけで蓼科の別荘に遊びに来ている。

おぼつかない手つきで皿を並べていた悠理が戻って来た清四郎に声をかけた。
「清四郎、可憐に電話したんだろ?具合どうだって?」
「あまりよくなさそうでしたね。ずっと寝ているみたいです。」
そう言って清四郎は二階をちらっと見上げる。
「毎日雨続きですもの。具合が悪くなるのもわかる気がしますわ。悠理、
トマトを切ってくださる?サラダに使いますの。」
野梨子はカレーの鍋をかき混ぜている。
キッチン兼ダイニングに香辛料の薫りが充満していた。

悠理が危なっかしい手つきでトマトを切るのを、清四郎は面白そうに観察
している。料理をしたことのない悠理より彼が切った方が上手そうだが、手伝う
気はないようだ。
「おや、輪切りにするんですか、悠理。確かサラダに入れるはずですよね。
これじゃあ口に入りませんよ。」
「いちいちうるさいなあ。噛み付けばいいだろ。うわっ、気持ちわりい。」
悠理は突然包丁を放り出した。
まっぷたつに切られたトマトがまな板の上で赤い中身を曝していた。
丸い断面に赤いトロンとしたゼラチン質が虫の喰ったような跡の中におさまっている。

「あたい、トマトだけは苦手なんだよなあ。何だか脳みそみたい。」
コンロの前の野梨子がキッと振向いた。
「やめてくださいな、悠理!トマトが食べれなくなるじゃありませんか!」
しかし、悠理は心の底から気持ち悪そうな顔をし、包丁を再び持とうとはしない。
苦笑した清四郎は包丁を持ち、トントントンとリズミカルな音をさせ、
あっという間に赤い脳みそを賽の目に刻んでしまった。

371 :雨がボクを狂わせるので<11>:03/06/22 19:58
魅録は自宅から持ってきたタイのビール、シンハーの瓶をテーブルに並べた。
「美童、そろそろ起こすか?朝からずっと寝てるんだろ?」
カチリとコンロの火を止めると野梨子が言った。
「私が起こしてきますわ。カレーできましたから、お皿によそって並べて
くださる、悠理?」
二階へ続く階段を軽い音をさせて上っていく野梨子を、清四郎が何気なく見ている。

男性用のベッドルームを野梨子はノックした。
「美童?カレーができましたのよ、召し上がりません?」
返事がないので、そっとドアを開けてみる。部屋の中はカーテンを閉め切ってあり
何も見えなかった。しとしとと屋根を濡らす雨音が聞こえている。
野梨子は何も考えずぱちりと電気のスイッチをつけた。

ベッドに横たわる美童の白い体が電灯の下に照らし出される。
野梨子は彼が何も身につけてないのを見てぎょっとした。あわてて視線をそらせる。
起き上がった美童は野梨子の様子を見てニヤリとした。
顔にかかった金髪をかきあげる。
「どうしたんだよ、野梨子。そんなに顔を赤くしちゃってさ。何か、見ちゃいけない
ものでも、見た?」
「美童がそんな格好でいるからですわよ。早く何かで隠してくださいな。」
美童が両手をXのように胸の前で交差させる。
「こう?」
「そこじゃありませんわよ!」
突然、美童はベッドから跳ね起きると、野梨子の前に立ち、片手をドアの枠に置き
重心をかけた。もう片方の手は腰に当てている。
当然、本来隠されるべきところは露なままだ。
「そんなに見たくなけりゃ、野梨子が見なけりゃいいんじゃない?」
野梨子は悲鳴をあげそうになるのを必死で堪えていた。真っ赤な顔で言い返す。
「言われなくたって見ませんわよ!美童、変態ですわ!」

372 :雨がボクを狂わせるので<12>:03/06/22 19:58
野梨子は今すぐにでも逃げ出したかったが、ドアを美童の裸身がふさいでいる。
そこから出るには美童の体に触れなければならないだろう。
「なんで変態なの、僕? ただの男の体じゃない。カマトトぶらないでよ。
野梨子だって散々見てるだろ、清四郎の?」
「なっ、見てるわけありませんでしょ!?どうして私が清四郎の裸なぞ見なければ
いけませんの!?」
絶叫に近い強さで野梨子は言った。しかし、その声は緊張でしわがれて迫力不足だった。

少し驚いた顔をした美童は再びニヤッと笑った。
「ふぅん、そう。まだなんだ。ひょっとしてキスもまだ?」
「当たり前ですわ!やめてくださいな、美童。セクハラですわよ。私、もう行きます
わ、通してくださいな。」
「通っていいよ。」
美童はスッと体をずらしてドアとの間に隙間を作る。
彼の白い腕と白い胸、白い脇腹とドア枠とでアーチが形作られていた。
野梨子はためらった。美童の顔を見るとニヤニヤ笑って歌い出した。

 ロンド橋落ちる〜落ちる〜落ちる〜♪

からかわれていると思った野梨子はカッとなって、暖簾をくぐるように勢いよく
美童の腕の下をくぐった。

 ロンド橋落ちる〜さあ〜どうしましょううううううううううううううううううう

373 :雨がボクを狂わせるので<13>:03/06/22 19:59
すでに魅録はシンハーの瓶をくわえている。
悠理はイライラしてスプーンを指で回していたが、
「野梨子、何してんだよ。もう準備できたよな。あたい見てくるわ。」
そんな悠理を制して、清四郎が立ち上がった。
「呼んでみましょう。のりこー?美童は起きましたか?」

野梨子は肩で息をしていた。
その華奢な肩は美童の体にしっかりと押しつけられている。
美童が意地の悪い微笑みを浮かべた。
「どうしたの?清四郎が呼んでるよ。行かないの?」
「……美童が手を離してくださらないからですわ。」
野梨子の首筋に赤い血が押し寄せてドクドクと脈打っていた。
美童は彼女の黒髪に唇を寄せて囁いた。
「清四郎のところに行きたければ、僕の手を振りはらって行ったら?簡単だろ?
それとも……このままで僕とこうしていたいの?」

それを聞いて野梨子は激しく体を振りほどこうとしたが、美童の腕が蔓のように
がっちりと体に巻き付いている。
「かわいいね、野梨子は。図星?」
「図星なんかじゃありませんわ!美童、痛いですわ、離して!」

「本当はちょっと期待してたろ。僕の体の下をくぐる時、こうなるんじゃないかって
野梨子、期待してたろ。」
「やめて……美童。本当に、私、違う……。」
きつく閉じた瞳から涙が零れ落ちた。
「野梨子?聞こえてますか?」
清四郎の声が聞こえる。

374 :雨がボクを狂わせるので<14>:03/06/22 19:59
美童がぱちりと野梨子がつけた電気を消した。再び部屋には黒い帳が舞い降りて、
二人を暗闇が包み込む。
外で雨は降り続き、そこら中に群生したシダの葉を揺らしていた。
美童は野梨子を捕らえたまま、彼女の黒く艶のある髪を指でもてあそんでいた。
「こうしようか。僕が全然目を覚まさない。もう少し野梨子は僕を起こそうと
がんばる。清四郎にこう言うんだ。
『美童ったら全然起きないんですの。起こしますので、先に食べていてくださいな。』
言える?」
「美童……。そう言ったから何なんですの?」
「さあ、でもいいことがあるかも。」

返事がないのに焦れた清四郎が階段を上ろうとした時、野梨子の声がした。
「ごめんなさい。美童ったら全然起きないんですの。先に……皆で先に召し上がって
くださいな。」
三人は顔を見合わせた。悠理は肩をすくめるとさっさと席につく。
魅録も椅子に座ったが、清四郎は一瞬ひっかかるような表情を見せた。

「よく言えたね、上等だよ、野梨子。」
野梨子は深くうつむいていた。頬に美童の手が触れる。
親指が幼い唇をなぞると、乾いてカサカサになっていた。
「こっちを向いて、野梨子。」
野梨子は顎に重しがついてるかのように、のろのろと美童の方に顔を向ける。

ゆっくりと美童の顔が野梨子の顔に近づいてきた。
青い瞳は冷たさを孕んで静かに光っている。
息がかかりそうな程、近づいた時、野梨子は堪えられずに横を向いてため息をつく。
美童が喉の奥でクックックと笑った。

375 :雨がボクを狂わせるので<15>:03/06/22 20:00
「こういうシチュエーション好きだろ?自分は嫌がってるのに、無理矢理……
とかさ?」
瞳にいっぱい涙を溜めて野梨子はつぶやいた。
「……どうして、今日はそんな意地悪なんですの、美童……」
無垢の肌の上を真珠のような涙が零れ落ちる。

しかし、野梨子の涙にも美童は動じず、無表情に言い放った。
「どうしてかな。何だか君を見てるといじめたくなるよ。
さあて、言ってもらおうかな。僕に何をしてほしいの。」
野梨子ははっと美童から身を離そうとした。
美童は彼女の腰を引き寄せたまま、執拗に野梨子を責め続ける。
「何かしてほしいんだろ。だから、嘘言ってここに残ったんだろ。何してほしい?
してあげるよ、野梨子のしてほしい恥ずかしいこと。」
「……。」
嫌々と駄々っ子のように野梨子はかむりを振った。
「言ってよ。じゃなきゃ、しない。」
そう言いながら美童の唇は野梨子の唇に触れそうな近さにある。
涙を流しながら、ついに野梨子は告白した。
「キス……」
美童はおかしくて堪らない様子でクックと笑った。

初めての口づけは乙女に甘い痺れをもたらす。
清らかな唇は男のそれによって蹂躙され、踏み荒らされた。それは突然終わった。
ぼんやりとしがみつく野梨子を美童は自分の体から引き離した。

「キスには続きがあるのを知ってる?」
「……ええ、でも、私……」
野梨子の声は今にも消え入りそうだった。
「夜中の二時にこの山荘の下で。教えてあげるよ。知りたかったら来ればいい。」
そう言って美童は野梨子を後にして、階下に降りていった。

376 :雨がボクを狂わせるので<16>:03/06/22 20:01
濡れそぼったシダの葉が腰のあたりにまとわりつく。
野梨子は悠理がぐっすりと寝たのを見計らって、音を立てないように山荘の外に
出た。小さな懐中電灯の灯りを頼りに歩いた。
木の上から水滴がぽちょんぽちょんと落ちてくる。
なぜ美童に誘われるがままに来てしまったのか、野梨子は自分らしくないことに思え、
気がめいる一方、胸の底にはずむような期待があるのを否定することができない。
美童はまだだろうか。
腕の時計は二時を五分過ぎていた。

遠くで野犬の遠吠えが聞こえ、びくっと身を震わせた。
時間は三時近くなっている。
清四郎か魅録がまだ起きていて、それで美童は出られないのだろうか。
ふと見上げるといつ雨が上がったのか、息を飲むほど美しい星達が夜空にまたたいていた。
野梨子は野生動物の息づかいに怯えながら待っている。

三時もだいぶ過ぎた頃、ようやく山荘の扉が開いて誰かが歩いてきた。
男の足音だった。
やがて木の影の野梨子を見つけたようで、足音と懐中電灯の光が近づいてくる。
しかし、次に投げかけられた声で野梨子は失望した。
「どうしたんです、野梨子?こんなところで。悠理が野梨子がいないって驚いて
探してましたよ。」
失望を声に出さないように野梨子は言った。
「ちょっと眠れなくて。皆を起こしてしまいましたかしら。」
「いや、僕と悠理だけですよ。魅録と美童はぐっすりお休みです。」

突然、野梨子は笑い出した。
「どうしたんですか、野梨子。」
「ふふ、何でもありませんの、清四郎。ただ、何だかおかしくて。」
その後もしばらく野梨子の笑いは止まらなかった。少女の泣き声にも似た笑いは
漆黒の闇の中に木霊して消えていった。

377 :雨がボクを狂わせるので<17>:03/06/22 20:01
「清四郎さんは可憐さんがなぜ具合が悪いか知っていたんでしょ?どうして、
野梨子さんに注意しなかったの?」
「可憐のことは、ただの痴話げんかだと内心思ってましたからね。あまり本気に
してなかったのかもしれない。野梨子のことは、後で何があったか彼女から聞き
だそうとしたんですが、頑として話す事を拒まれましてね。」
「それではどうやって野梨子さんの事を知ったの?」
「他のところから話を聞いたのでね……。」

清四郎さんの端正な横顔が少し歪んでいた。
僕は野梨子さんと清四郎さんはつきあっているのだとばかり思っていたのだが、
違ったのだなと、ワイドショーのようなことを考えていた。



=====================
6月某日。二人目。白鹿野梨子。あと−−4人。
=====================

〜ツヅク〜

378 :名無し草:03/06/22 20:41
>雨
スピードうpお疲れ様です!
野梨子が、野梨子がぁ…

379 :名無し草:03/06/22 20:42
すいません!
あげてしまいました。本当ごめんなさいぃ

380 :病院坂(49):03/06/23 00:29

>>http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/487

夜の研究室に漂う空気は重い。否、それを重苦しいものに感じて居るのは恐らく
魅録だけである。
フリゲル式の古ぼけた掛け時計が規則正しく時を刻み、研究に没頭している時
ならば耳にも入らぬその音が今日は酷く気に障る。
苛苛と、魅録は手にした書類束を放るように机に置いた。ちらと同僚を盗み見る。
凛と背筋を伸ばし、普段と変わらぬ涼しげな表情で愛用の万年筆を滑らせるその
横顔に、夕刻に見た悪魔めいて邪悪な色はまるで無い。

彼と野梨子が、考えていたよりもずっと深い関係にあることを知ってから数日が
経つ。ふたりが婚約していることを鑑みればさして不思議な事でも無く、それが
多少世間の常識から逸脱した行為であったとしてもふたりの合意の上に為され
ているのなら第三者が口を挟むべき事柄では有り得ない。
元よりふたりが婚約している事は承知しており、しかも野梨子が自分を好いてい
るなどと云う幻想を抱いている訳でも無い。ならば、自分の出る幕は無いと魅録
は自分を納得させていたのである。

しかし、今日目撃した光景はその自制心を揺るがせるに充分だった。

381 :病院坂(50):03/06/23 00:29

陽の落ちようとする頃である。不審に思うことがあり、それを確かめるべく魅録は
実験室へと向かっていた。
実験室は別棟に在る。研究室とは何故か距離を置いたそこへはL字に巡らせた
渡り廊下が続いて居る。板張りの、長い廊下を軋ませ乍ら中庭を見渡す大きな
窓に目を遣った魅録はふと立ち止まった。
庭木の傍に佇む野梨子の姿を見止めた為だった。
普段着にしている和服の、袂から覗く細い腕が夕陽に映えて白い。一瞬それに
見惚れた自分を戒めて魅録は視線を逸らそうとした。と、彼女に近づく男の影に
気付いた。清四郎である。

恐らく魅録に見られて居るとは思うまい、彼は野梨子の背に一声掛けた。
びくり、と野梨子は振り返る。その表情は、とても愛する男に向けるそれでは無い。
煉瓦造りの壁に背を沿わせ、怯えた素振りで野梨子は清四郎と向かい合う。
清四郎は、それを愉しんででも居るかのような笑みを浮かべた。

382 :病院坂(51):03/06/23 00:30

つ、と彼が野梨子の頬に手を掛けた。振り払うように野梨子は顔を背ける。
清四郎はその彼女の耳元で何事かを囁いた。
一瞬だけ屹と清四郎を睨み、しかし直ぐに逸らしたその瞳には屈辱を耐えるかの
如き色が浮かんで居た。頬は夕陽よりも猶、朱い。
そこへ畳み掛けるように、頬笑んで―――否、すでに魅録には、嬲るようにしか
見えぬ笑顔で清四郎は囁きかける。遠目にも、野梨子が震えて居る事が分った。
その顎を捉え、彼は唇を重ねた。

見るに耐えず、魅録は視線をふいと逸らして廊下を進んだ。その直前、清四郎が
ちらと自分を見たような気がした。
彼らの姿が視界から消える直前、魅録は再び振り返った。

野梨子を腕に絡め取り、しかし清四郎の視線は真っ直ぐ魅録に向けられて居た。
嘲るような笑みを、魅録はそこに見た。
酷く、邪悪な表情であった。

383 :病院坂(52):03/06/23 00:31

研究室の重い静寂を、鋭い獣の咆哮が切り裂いた。
それが合図でもあったかのように清四郎は仕事の手を止め、研究室を後にした。

その間、彼が何処に居、何をしているのかを知ってしまった今となっては平静な
気持ちで仕事を続けることなど出来る筈も無い。とっぷりと夜も更け日付の変わ
ろうとする頃、何事も無かったかの如く涼しい顔で再度研究室の扉を開いた同僚
を魅録は射抜くような視線で出迎えた。

それに気付いているのか敢えて気付かぬ振りをしているのか、表情を変えぬまま
定位置に腰を据えようとした清四郎の白衣の裾に、ほんの僅かではあったが魅録
は紅い染みを見止めた。まだ付いたばかりの、それは血の跡のように見えた。
野梨子の首筋に見た毒毒しく紅い、その癖酷く艶めかしく心を騒がせる傷跡と、
それは不気味に符号した。

384 :病院坂(53):03/06/23 00:31
一見した処穏やかで折り目正しい青年に見えるこの同僚の、心の裡にどんな魔
物が潜んで居るのか魅録は嫌と云う程知っている。利害の一致する相手に対し
て彼は、この上なく力強い味方足り得る。だが、一旦敵に回せば―――彼は持
ち前の冷酷な手腕を発揮する。奸計を用い策略を巡らして自らの手を汚す事無く
相手を追い詰め葬り去る。
そうやって蹴落とされて来た助手たちを、魅録は何人も知っていた。仕事の面で
多大な影響を受け密かに好敵手とも思い、注目していたからこそ知り得た彼の、
悪魔的な一面である。

同じ冷酷さをもって、この男は婚約者の上に君臨しているのだろうか。華奢な彼
女の肢体を一体どんな方法で嬲っているものか、考えるだに不快であった。

彼に敵対する事がどういう結果を齎すか、それを重重分って居乍らも抑える事の
出来ぬ感情に突き動かされて魅録は口を開いた。
「―――あんたに、聞いてみたいことがある」
微かに眉を寄せ、しかし予測して居た事であったのかすぐに笑みを湛えて清四郎
は振り返った。
「なんなりと」
                 (続きます)

385 :名無し草:03/06/23 00:43
>病院坂
お待ちしてました!お帰りなさいまし。
お久しぶりですね、独特の語り口。
病院坂さんの文体は一見難解な感じがしますが、
とても丁寧でわかりやすく読め、面白かったです。
次回を首を長くしてお待ちしています。

386 :名無し草:03/06/23 02:32
>病院坂
待ってました病院坂!
眠れずに遊びに来たらなんてラッキーな!!!
あいかわらずの流麗な文章に溜息ものです。
文章のはずなのに脳内では御大のキャラクターが
映像になって動いているんですよ。
おまけにいつもいいところで続きにしてくださる。
くぅううう、次回が待ち遠しいです。

387 :名無し草:03/06/23 10:01
>雨が・・・
野梨子はキスだけですんだの?いやーん、ちょっとガッカリ・・・

388 :名無し草:03/06/23 11:10
>387
なーにを期待してたんだか・・・このこの! ( ・∀・)σ)Д`)


389 :名無し草:03/06/23 18:50
>雨
エチーに持ち込まなかったってことは、全員とやっちゃう(お下劣スマソ)
っていう展開になるんだと思ってたけどそうじゃなくて全員に何か
救いようのない痛手を負わせるってことなんでしょうか。
あと悠理・魅録・清四郎かあ。
清四郎はすでに(野梨子の一件を知ったことで)カナーリ痛手を負ってそう。
続きが楽しみでつ・・・

390 :名無し草:03/06/23 19:32
突然だすが、「ムーラン・ルージュ」を見たら
二コールが可憐に見えて仕方がなかった。

391 :名無し草:03/06/23 19:55
>病院坂
前回から間があいたので心配でしたが、読めて良かった〜。・゚・(ノД`)・゚・。
読んでしまうのがもったいないくらいうp楽しみです。
次回は魅録と清四郎の対決でしょうか?想像しただけでハァハァ・・・

392 :名無し草:03/06/23 21:10
>病院坂
今日はじめて全部読みました。
綺麗で切ない文章ですね。素晴らしいです!
これからも楽しみにしています。

393 :名無し草:03/06/23 21:11
ほんとすいません、すいません!!
逝ってきます…

394 :名無し草:03/06/25 11:52
雨マダー?チンチン(AA略

395 :名無し草:03/06/25 20:45
>剣菱悠理の秘密
って続きないのかな?きになるよ〜。


396 :名無し草:03/06/25 21:12
お江戸の続きも気になる〜。
また連載再開してくれないかなあ。

397 :名無し草:03/06/25 21:47
私は熱烈に恋チカキボン!!

もう夏ですね〜
有閑のメンバーは浴衣着てお祭りとか行くんでしょうかw

浴衣でRを書いて下さる神の降臨求ム!


398 :名無し草:03/06/25 21:47
>共に歩む者
の続きも気になりますぅ。
『愛のしるし』に萌え〜♪

399 :名無し草:03/06/25 22:05
私も恋チカきぼーん。
浴衣でR…ハァハァ



400 :名無し草:03/06/25 23:50
恋チカ、悠理が野梨子の気持ちに気づいてるって
明らかになるあたりで「続く」だったよね。
うあー、気になる気になる。

401 :名無し草:03/06/25 23:50
ゴ、ゴメンナサイ、あげちゃった。

402 :やみのゆめ 壱:03/06/26 01:35
 えんやーとっと えんやーとっと
 引けや回せや 宵の花よ
 ヤァ ヤァ


 遠くに祭囃子が聞こえる。
 暗がりになっている境内の裏側からは、通りを照らす燈篭やそぞろ歩く浴衣姿の男女の姿が
恰もゆめまぼろしのように浮き上がって見える。
 人々のざわめきも、ひとりひとりの言葉や性別を判別できないくらいには遠い。
(――暑いなぁ)
 慣れない浴衣の襟元から、暑気が忍び寄ってくる。じっとりと汗をかいて不快な筈であったが、
不思議と眉を顰める気にはならない。コンクリートからの地熱には、あれほど悪態をつきたくなる
というのに。
 踏みしめた土は柔らかく、甘い夏草の匂いがする。見上げた空は、星が霞むぐらいに、月が
優しく白い光を照らしていた。最終日の明日は花火が夜を彩るというが、祭囃子も月をも覆い
隠してしまうならば、いっそ花火なんてないほうがいい。
 ――月を愛でるという感性を、美童はこの国に来て、初めて知った。月は無関心に通り過ぎ
るか、そうでなければ恐れるものだと思っていた。
(月は、人を狂わせるって言うし)
 それでも、それは映画などによって普及された既成観念に過ぎず、美童自身の価値観では
ない。だが、この国では違うのだ。
 月は畏れ、そして愛するものなのだ。
(……それにしても、どうしてこんなことになっちゃったのかなぁ)
 月から視線を自分の肩に戻すと、淡い朱に染め抜かれた浴衣が薄ぼんやりと闇に浮かんで
いる。自分のではない。美童自身は、渋い紺の麻の上布を身に付けている。それは、隣で
一緒に濡れ縁に座り、先ほどから己にしなだれかかってくる少女のものだ。
 ふわりと風が流れるのとともに、上品な酒の匂いが立ち上がった。
(神酒ってもんな、しこたま飲むようなモンじゃないんだぞう……ってんだ)
 お陰で皆とはぐれたじゃないか。

403 :やみのゆめ 弐:03/06/26 01:36
 恨みを込めて軽く睨んだ美童は、しかし、ぐらりと少女の身体が傾いだことに気がついて、慌て
て肩口を捕らえるように抱き寄せる。
 危ない危ない。いくら柔らかい地面とはいえ、これ以上ぶつけたらますます阿呆に……。
「……あっ」
 刹那、溜め息のように掠れた吐息が首筋にかかり、美童はさっと下半身に湯が注ぎこまれた
かのような錯覚に身体を強張らせた。
(……ああ、もう!)
 先ほどから『そのこと』について考えないようにしてきて、半ば成功していたというのに。
(ええと……そうだ、早くみんなと連絡をとらなくちゃ…)
 祭囃子が邪魔をするのか、なんど携帯を鳴らしても無駄だということはとっくに分かっていたけれど。
 考えろ。なんでもいいから考え事をして、掌からでも分かるやわやわとした感触や、暖かい体温
から意識を逸らせなければならない。
 どうして、こんなに柔らかなのだろう。小鹿のように丸みのない骨ばっかりの身体だと思っていた。
 どうして、こんなに小さいのだろう。彼女の背丈が、僕の胸元までしかないってことを初めて知った。
 どうして、こんなに睫毛が長いのだろう。瞬く毎に、視線を釘付けにさせられる。
 どうして……

「……あれ……ここ、何処?」
 今の衝撃で目が覚めたのだろう。まだはっきりした眼差しで、悠理が尋ねてきた。美童はそのこと
に僅かな失望と、そして何より深い安堵を感じて溜め息をつく。
「境内だよ。悠理が酔っ払ってふらふらするから、追いかけたらみんなと逸れちゃったじゃないか」
 美童がそう責めると、悠理はにへらと笑った。
「えへへ、サンキュー美童」
 いつも魅録にするように、悠理はぎゅっと抱きついてきた。相変わらず胸はなかったが、薄い浴衣
越しに眩暈がするほどに甘やかな肌の匂いがする。
 

 どうして。
 僕はこいつが女だってことに気がつかなかったんだろう。

404 :やみのゆめ 参:03/06/26 01:37
「えへへ、サンキュー美童」
 そういって抱きつくと、思いもよらぬ硬い感触に、悠理は少し驚いた。
 ガタイで言うと、清四郎や魅録には到底敵わないだろう。今までの優男ぶりや、整いすぎた顔が
おそらく美童の抱き心地はひどく貧弱だろうという予想を悠理にさせていたのだ。
「……」
「えっと、美童?」
 抱きついたものの、リアクションが全く返ってくることがなく、悠理は彼の背中に回した両腕がどうにも
収まりのつかないことに困ってしまった。
 上目遣いで美童の様子を伺い――そして、怖いくらい強く、自分を見詰めてくる美童の熱を帯び
た眼差しに出会った。
「……っ」
 理屈などなかった。悠理ははっとして、美童から身体を離そうとした。
 それは、動物だと普段仲間内で揶揄される彼女独特の勘が齎した行動というよりは、女性ならば
誰でも持っている筈のありふれた危機感だった。
 そう、危険だと――そう思ったのに。
 一度は離れた胸板が、今度は美童の方から伸びてきた腕によって、再び頬に密着する。抗おうと
思って手を動かそうとしたが、腕に力が入らなかった。
 酒がまだ残っているのだろうか。ふわふわとした陶酔感が身体を包み、動きを重たくしている。
(……どうなってるんだろ)
 浴衣越しだからだろうか。美童のごつごつとした身体の感触がよく分かる。――女みたいに、もっと
円やかな体つきをしてると思ってた。
 思ったより背が高くって、腕が長くって、あたい、すっぽり包まれてら。
 気がつけば、唇が彼の名前を紡いでいた。
「び、どう」
 舌の動きが上手くいかない。
 そう思っていると、途端に視界が閉じた。
 さらさらと、あたかも絹糸のような髪が、身体に降りかかってくる。
  ぴーひゃら ぴーひゃら どん どん
 祭りの笛の音が、一際大きくなったかと思うと、少しずつ遠ざかっていった。


 口吻けされているんだと、酒に浸った頭の中で、やけに淡々と考えた。

405 :やみのゆめ 四:03/06/26 01:39
 衝動的に抱きしめ、口吻けた後、美童は悠理の表情を窺った。
 口吻けを解いた今なお、静かに自分が激情し続けていることを美童は自覚している。だからこそ、
一方的な自分の行為へも、狼狽はしなかった。
(箍を外してしまったのは、君の不用意さだよ。)
 僕が君が女の子だって気づく前に、君が自分でそれを気づいてくれたなら、僕は君の許した線から
先には踏み込まなかった。
 でも、君はいつまでも線を決めてくれないから。無防備に笑い続けるから。


 えんやーとっと えんやーとっと
 天(あま)に貢いで 祝いは ひとつ
 ヤァ ヤァ


 祭囃子に耳を寄せる。
 日本の夏はどうしてこんなに極彩色で――そして婀娜っぽいのだろう。
 悠理の透けるように白い咽喉元を見詰めながらも、眼裏にちかちかと燈篭の光が点滅する。
「どうして、て聞かないんだね?」
「あ…とつぜんで……びっくり、し、た」
 舌ったらずな子供のように、推さない口調で彼女はそう言う。
 彼女が素直に身を任せている理由が酒だけだというのならば、後日、彼女は神を恨むだろう。
 美童はそう思いながら、彼女の背中をゆっくりと濡れ縁に押し付けた。
「え……」
 強張った彼女の表情に気がつかない振りをして、肩口を押さえる。縫いとめるようにして、もはや
抗いを許すつもりはなかった。


 えんやーとっと えんやーとっと
 げにも たおやか 玉絹 ひとつ
 ヤァ ヤァ

406 :やみのゆめ 伍:03/06/26 01:42
 こんな無防備で色っぽい服をつくっておきながら、なお恥じて見せるなんて、日本人って眩暈
がするほど淫靡な民族だよね。
 足を割って体を無理やり差し入れると、双方の浴衣の裾が捲れ、生足と生足が絡み合うこと
になった。この暑さにどちらも汗ばみ、しっとりとしたその感触に悠理がますます狼狽して身を捩る。
 先ほどから彼女は、失語したかのように何も話せないでいる。それをいいことに、美童が首元に
口吻けようとすると、慌てたように彼の胸に手をやって、押し返そうとする。
 だめ、許さない。
 音もなく囁くと、美童はやんわりと悠理の腕を掴み、外す。そして今度こそ、彼女の鎖骨の下
にそっと口吻けた。簡単に内出血しそうな白い肌。傷つけるのは可哀想な気がして、痕が残ら
ないように柔らかに触れる。ちろりと舌を這わせると、びくりと過剰なまでに身体が震えた。
 ああ――無意識のくせに、君はこんなにも僕を煽る。
 美童は、一度唇を離すと、背を走り抜けた欲情が収まるのを待つ。
 こんなところでは抱けない。彼女に泣かれるぐらいなら、後で往復ビンタを食らったほうがマシだ。
 だって、女の子の初めてがこんな外じゃ、あんまりに可哀想じゃないか。酔った悠理を卑怯にも
襲っている現状で偉そうに言えたことじゃあないけれど。
 欲情の波が引いてきたのを見計らって、改めて悠理の顔に視線を遣ると、潤んだ瞳でこちらを
見詰めていて、美童は動揺した。
「……びど、う。なんであたいに、そんなことすんの」
 問いながら、溺れる人がするように、悠理は手を伸ばした。
 咄嗟に抱きしめた美童は、耳元ですすり泣く悠理の言葉を、切ない思いで聞く。
「言葉がなくちゃ、やだよ…」

 えんやーとっと えんやーとっと
 お家をおさむる 貝におやや
 ヤァ ヤァ

 悠理の髪の一房から立ち上る噎せ返るような甘い匂いに、ただ陶酔して美童は尚強く、
骨も折れよとばかりに抱きしめる。
 禁忌はもう、存在しない。この幻想的な夜の下、君と僕とふたりだけ。
 もはや、美童に祭囃子は聞こえない。燈篭の光も遠く、闇を彩なす色は彼にとって、悠理
ただひとりとなっている。

407 :やみのゆめ:03/06/26 01:43
<終わり>

浴衣でRっていう言葉にエライ萌えてしまったので、ガシガシと書きました。
即興ということで、へたれなところには眼を瞑ってくださいまし。
そしてRではなくなった(13禁ですらない)のをお許しください。
私ではここまでしか書けません……。

408 :名無し草:03/06/26 07:45
>やみのゆめ
きゃー。美童が理性があって残念です!
是非別の場所で続きをお願いします・・・

409 :名無し草:03/06/26 19:17
>やみのゆめ
嬉しい!浴衣でRがまさか読めるとは!(Rではないケド)

美童がいいなあ。
あの時点で止めることができるっていうのも、彼ならではですね。
悠理に翻弄されつつも、ちゃんと相手を思いやれるっていうのがえらいです。
デモRモヨミタイナー、ナンテ、ダメデスカ?

410 :名無し草:03/06/26 20:29
>やみのゆめ
よかったです…。
浴衣でR、に萌えて野梨子が清四郎の中に収まるように
ちょこんと座ってて、清四郎が後ろから野梨子の右耳を
ちろちろ舐めつつ浴衣の中に右手を入れて野梨子の左の乳房を
揉んでる…ってな絵を描いてましたw

411 :名無し草:03/06/26 20:34
>410
その絵を是非ビジュアル企画でハピョーウしてください!
激しく見たい…

412 :名無し草:03/06/26 21:02
>411
自己満のつたない絵でつ。
皆さんもやってみてください!
アップにした野梨子の汗ばんだうなじとか…もぅ・゚・(ノД`)・゚・


413 :名無し草:03/06/26 21:40
>やみのゆめ
早々に本当に浴衣ネタが読めて幸せでした♪
美童の浴衣に慣れないぎこちない感じが良かったでつ。
赤い浴衣の悠理もカワイイ。

>410
清四郎は浴衣慣れしてそうですw
脱がすのも素早そう・・・
着たままRに突入もアリでw

「身八口って意味わかりますか?
和服は八か所手を差し入れる口があるんですよ」
とか言いつつ、実践で数えてそうだw


414 :名無し草:03/06/26 21:56
>やみのゆめ
あの祭囃子って、作者さんの地元のかな
ぐぐっても、ヒットしなかったよ。
それにしても、そこはかとないエロシズムがいいよね
下手なRより萌える。でも、あれって結局、最後にはエチーしたのかと思ってたよ

>絵
原作に忠実でびっくりしたよ!!
カッコイイ!
次は美可キボン〜。

415 :名無し草:03/06/26 22:41
嵐さんとこにウプされてた魅×悠のイラスト凄いねー
御大の絵は難しいと思うのに、よくぞここまで原作通りに・・・
さわやかな初夏の雰囲気もgood!
ぜひぜひ他のカプも見たいでつ。

416 :名無し草:03/06/26 22:49
>イラスト(悠理と魅録)
きゃぁー!ステキ〜vv 感激&感涙でつ!
イラスト全体はもちろんのこと、
悠理の右腕(手)の上の魅録の右手の添え具合にもー
…超ハァハァしてしまいます!!


417 :名無し草:03/06/27 00:26
>イラスト(悠理と魅録)
上のレス読んで、即見に行きました。
感激!

418 :雨がボクを狂わせるので<18>:03/06/27 02:05
>>377
自家用車での送迎を断って、美童は学校までの道を久しぶりに歩いている。
アスファルトの凹みにはところどころ水が溜まっていた。
路面もまだほとんど乾いていないのに、また黒雲が近づいている。
雨が近づくとわけもなく胸騒ぎがすることに美童は気づいていた。
体の周りにモヤがかかっていて、振り払っても振り払ってもついてくる。
妙に不安で誰かの助けが欲しい。

自分の前を見慣れた背中達が談笑しながら歩いている。
美童は彼らを呼び止めようとしたが、道端に同じ高校生位のようだが学校にも行かずに、
携帯で電話したり、道に座りこんでいる男が4、5人集っていた。
酒を飲んだ帰りなのか、皆一様に乱れた服装をしている。
清四郎、魅録、悠理、そして野梨子は大して気にもかけずに、その男達の横を
通り過ぎる。美童は道端の男らの注目を浴びたくないので、声をかけるのを、
彼らの横を通り過ぎるまで少し待つ事にした。
その時、美童の靴を一滴の雨粒が濡らした。

「ふざけた事いいやがって!なめたマネすんじゃねえよ!」
突然、罵声&悲鳴が聞こえたので、清四郎たちは振り返った。
さっき、集まっていた男達の一人が聖プレジテント学園の男子生徒を殴っている。
金髪が宙に舞った。
「おい、美童じゃないか。」
魅録が止めに入る。男達は魅録の顔を見ると、サッと離れて逃げていった。
美童の顔は腫れあがっている。腹にもパンチを受けたようで立ち上がれないようだ。
「仕方ありませんね。」
ため息をついて清四郎は背中をさしだした。
「大丈夫か、美童。」
悠理が美童を気づかう。魅録も美童の鞄を持ち歩き出した。
野梨子は務めて冷静な顔を保つようにしていた。


419 :雨がボクを狂わせるので<19>:03/06/27 02:05
保健室の硬いベッドの上に豊かな金髪がさらさらと広がった。
疲れた様子で美童は丸くなる。
なんだか猫みたいだな、と悠理は思う。
悲しげな、どこかふてくされたガキの表情だ。

美童の頬が腫れて赤くなっている。
魅録はアイスノンを探し出して痛む頬に当ててやった。
ありがとう、と受け取るとき美童の手が、妙に長く自分の手に触れた気がして、
思わず魅録は手を引っ込めた。

「痛みますか。」
清四郎が美童の頬に触れる。
「イタッ。」
美童はうらめしそうに清四郎を見上げた。
「触らないでよ、痛いんだから。」
「そうですか、ではここは。」
ぎゃっと言って美童は腹を抱えた。
あきれ顔で「お前、わざとやってるだろ。」と魅録が言う。
「サドマゾの医者かよ。」
その時予鈴がなった。一時限目が体育の悠理達はあわてて保健室を出て行く。

「それじゃあ、ゆっくりお休みください。」
背中を向けた清四郎に美童が呼び掛ける。
「ねえ、でも清四郎の医者だったら少しくらい痛くされても平気かな、僕。」
訝しげに振り返る清四郎に美童はニコッと微笑んだ。
「嘘だよ。」
窓の外の雨が激しくなってきた。
清四郎達が保健室から消えると、青い瞳から微笑みが消え、
美童は雨の数を数え出した。


420 :雨がボクを狂わせるので<20>:03/06/27 02:06
帰り道、悠理は自分んちの車に頬の腫れた美童を乗せ、送り届けることにした。
雨は朝からずっと、降り続いている。車は水たまりの水を跳ね上げて
ワイパーを勢いよく働かせて水の回廊の中を進んでいた。突然、美童が
「ストップ、止まって!!」
と大きな声を出し、車は急停止する。目を丸くした悠理が「どうしたんだよ。」
と言うのも聞かず、美童は車のドアを開け、土砂降りの雨の中に飛び出した。
路肩の小さな物体を拾い上げうつむいている。
悠理も外に出て美童に近づく。あわてて運転手が傘を差して悠理を追って来た。
美童の手の中にあったのは、息絶えた子猫の小さな体だった。
目立った外傷はなかったが、車に跳ねられたのだろうか。

頭から水滴を滴らせながら、彼はじっと子猫を見つめ、ぽつんと呟いた。
「かわいそうに。」
ぐしょ濡れになった哀れな小動物に悠理も涙腺がゆるみそうになったが、
ふと気がついて、ポケットから珍しく携帯していたハンカチーフを取り出し
さっと子猫の体を包んだ。
「あたいんちに埋めてやる。」
顔を上げた美童はまだ悲しそうな顔をしていたが、少しだけ微笑んだ。
「やさしいんだね、悠理。」

剣菱家の広大な庭園の中で、大きな桜の木の根元に、小さな墓を作った。
落ちていた桜の枝で簡単な墓標も作ってやった。
「なんか名前つけてやろうぜ、こいつにさ。ここに来た時に呼んでやれるように。」
まだ元気のない美童に悠理は努めて明るい声を出し、いくつか候補を挙げる。
「ミイとかは普通かな。三毛だったからケミとか。野良だったからノン子とか。」
「びどう。」
思わず悠理は美童の顔を見た。彼の目はまだまっすぐに墓標に据えられている。
「美童がいい。僕の名前をあげる。何もしてあげられないから、せめて。」
だって、美童。それは何だか……。
言葉が口元まで出かかったが、余りにも静かな美童の眼差しに悠理は言葉を
ごっくんと飲み込んだ。

421 :雨がボクを狂わせるので<21>:03/06/27 02:06
天蓋付きのベッドの上に腰掛けた悠理は、クッキーにもケーキにも手をつけずに
じっと考えていた。客人はこの部屋に入ってからというもの、一言も口を聞かず
窓の外を見つめている。したたかな雨は止む気配も見せない。

「ねえ、美童さ、さっきの猫につけた名前だけど、『びどう』ってのはやっぱ
止めない?」
「どうして?」
振り返らずに聞く。悠理は頭をかきかき言った。
「うー、何だかなあ、縁起でもないって感じがするんだよ。生きてる奴の名前
つけるって。」
今度は振り返って美童が笑った。優しい微笑みだった。
「悠理が縁起がどうのこうのって言うの珍しいね。」
「うるさいな。とにかく『びどう』ってのはナシ!名前はあたいが考えとくから。」
「いいよ、それで。」
もっと抵抗されるかと思ったのに意外にあっさりと美童はOKした。

ついと美童は歩いてくると悠理の横に腰掛け、そのままベッドに寝転んだ。
光沢のある金髪がフワッと広がる様子が悠理の目を奪った。
思わず彼の隣に寝転ぶと、美童の金髪の端を持って遊び出す。
「お前、男のくせにホントきれいな髪してんのな。一本くれよ。」
「あげるよ。その代わり悠理のもちょうだい。」
「あたいの!?あたいの髪なんてもらっても意味ないって。」
悠理はぶつぶつ言っていたが、美童の輝く黄金の髪一本と引き換えに、
自分の茶色いナヨナヨとした髪を一本引き抜いて彼に渡す。
美童も悠理もそれぞれがもらった髪を灯りに透かして見た。
金色の髪は意外な程固く強かった。
茶色の髪はコシがなく、やわやわとして、やさしい性質をしていた。

422 :雨がボクを狂わせるので<22>:03/06/27 02:07
悠理はもっと美童の顔に興味が湧いてきたのか、彼の顔をのぞきこむ。
頬の腫れは赤黒く変色している。しかし、彼の青い瞳には気品があり、
見愡れる程、整った顔だちをしていた。はすっぱな顔のあたいと正反対だ、
なんせ世が世ならお貴族さまだもんなあ、と悠理は憧れのような気持ちを抱く。
思わず手を伸ばして髪を撫でたのは、美童が美しい人形か何かのような気持ちに
なったからだ。
「何してるの?」
「えっ、いやぁ、つい。美童何か可愛いなぁと思って。」
「ひどいなあ。男に可愛いは禁句だよ。」
体を起こした美童は本当に人形のようにきれいだった。
人形はベッドから降りるとスタスタと歩いていって、ごく自然に、
部屋のドアに鍵をかけた。かちゃん。

「えっ。何。」
人形がベッドに滑り込んで来た。

美童が悠理にしがみついてきたので、ベッドの上で美童の頭を抱え込むように
悠理は倒れた。長い髪が両方の手の間からあふれている。
「こうやっていると安心するな。」
「そ、そうなんだ。」
「うん、悠理の腕の中だからかな。気持ちいいよ。」
くすぐったい気分だったが悠理は美童を押し退けることはしなかった。
いざとなったらこんな優男くらいはね除けられる、そういう考えもあった。
それにしても。

美童は何か変だ。そう悠理が気づいたのは、やはり野生の勘の為せる技か。
「美童、何か心配事でもあるのか?」
腕の中の美童が少し動いた。
「心配事?そうだなあ。さしあたっての心配事はどんな風に食べようかなってこと。」
「食べる?何を?」
「もちろん、悠理さ。」


423 :雨がボクを狂わせるので<23>:03/06/27 02:07
男の唇が素早く動いた。
唇が離れると悠理は美童を睨んだ。
「お前って女ならホント誰でもいいのな。」
「何が?キスしたこと?誰でもいいわけじゃないよ、悠理だからにきまって
るじゃない。」
そう言った美童は再び唇を彼女の唇に重ね、今度は少し長くキスをした。
驚いたことに、悠理は目を閉じてキスを受け止めた。が、唇が離れると
「やっぱり、無理だ。あたい、こういうの。」
怒ったように美童にごろっと背中を向けた。
「そういう女っぽい気持ちになれない。」
耳元で優しく美童が囁く。
「女っぽくする必要なんてないよ。どっちが男でどっちが女なんて関係なし。」
「そ、そういうもんか?……なわけないだろ!?」

「望むなら悠理が男で僕が女でもいいよ。望むなら、ね。でも本当にどっちが
女でどっちが男なんて関係ないんだ。」
困惑した顔の悠理の体を起こす。
「悠理、キスして。」
「い、嫌だよ!どうして美童と何回もキスしなきゃいけないんだよ!」
「さっきからずっと僕を見てたろ。僕の髪や僕の瞳の色や、僕の肌の色が気になる
だろ?僕の肌に触れてみたくない?」
「ば、バカたれぇ……。」
「ほら、悠理。」
急かされて俯いていた真っ赤な顔を上げると、目の前にきれいなお人形の顔がある。
きれいなきれいなお人形さん。触ったら汚してしまいそう。
「……だめだ、あたいからなんて、できない、よ。」
「わかった。じゃ、又僕からだよ。」


424 :雨がボクを狂わせるので<24>R:03/06/27 02:08
違うだろ。そうじゃないだろ。悠理の意識が悠理の体の中でもがいている。
早くこの男をはね除けろ!蹴りを入れるんだ!
美童の舌が悠理の口の中にスルッと滑り込む。
唇に電気が走り、舌が麻痺し、体の奥の導火線に火がついた。
「どうする、悠理?」
「んん、んん。」

うわっ、やばい。どんどん脱がされてく。
制服のブラウスが、スカートが、靴下が、ブラジャーが、パンツが……。
まずい、まずい、このままじゃ。美童、離せ……。
「あっ。」

やめろ、やめろ、何てところに口を美童、やめ……。
「あぅっ。」

……あれっ、どうした、あたい、力が、力が……、美童……。
「あっ、はぅ、くっ。」

はっはっはっは。息を荒げている悠理を見て、美童は自分も全裸になった。
美童の中心を見て、悠理は髪の毛の先まで青くなる。
目に涙をためて、あわあわと首を振った。
「言ったろ、どっちが男かなんて関係ないって。たまたま僕が男だけど、
悠理が男だってよかったんだ。だから、怖がらないで。」
「そ、そんなこと言ったって、美童……。大体、お前、あたいのこと好きなの
か。あたいはわかんないぞ!」
「好きだよ、悠理。好きで好きで可愛くて仕方ないよ。だから。」
「あ、あぅっ。」
「好きだよ、悠理。」
「やめて、やっぱ、やめて……! っ! あっ、はぁっ!ああっ!」

425 :雨がボクを狂わせるので<25>R:03/06/27 02:08
未だかつて経験したことのない痛みに悠理は猛烈に抗った。
しかし美童はぴったりと悠理にそい、差し込まれたものは抜かれることがない。
悠理の体は天に向かって激しくしなった。その体を美童は捕らえて離さない。
やがて美童の中心は悠理の奥を探し当てたようだ。
ゆっくりと運動が開始される。
哀れな悠理は痛みにギリギリと歯を喰いしばっている。かすかな息の下から
「美童っていつもこんなことやってるんだ。大変じゃん。」
と憎まれ口を叩く。美童はニコッと笑うと少し動きを速めた。
「あっ、痛いっ、つう、あっ、くっ、ううっ。」
「生意気言うからだよ。」
「あのな、あたいは初めてなんだぞ、少しは手加減しろよ!」
「してるさあ。僕が本気出したら、悠理明日は腰が立たないよ。」
「ほんとか!?って、くっ、うっ、うん、あっ、はあっ。」

悠理の目尻に涙が光る。美童は舌を出してその涙を舐めた。
優しく微笑む。
「悠理、いい?行くよ。」
「……行くって何が……! って、あっ、美童、やめ、おねがい、やめて、やめて
あっ、うっ、うっ、うっ、うっ、うっ、う……!」

悠理の頬が涙で濡らされる。細い肢体からぐにゃりと力が抜ける。
美童はすっと悠理から離した。
体から汗がポタポタと落ちている。

426 :雨がボクを狂わせるので<26>:03/06/27 02:09
彼に脱力した悠理が声をかけた。
「……で、どうしたんだよ。美童。お前どうかしたのか。いつものお前だったら
絶対あたいにこんなことしないだろ。」
美童はさっさと服を着出す。
「そう?いつもの僕だよ。こんなもんじゃない?」
「美童。」
「雨か。いつ止むんだよ、まったく。それじゃあ悠理、またね。」
「帰るのか?待てよ!……あの猫の名前、どうする?」
「ああ、猫ね。適当に考えてよ、悠理。なくっても別にいいんじゃない?」

悠理は呆然とたった今愛し合った男の後ろ姿を見送った。

=====================
6月某日。三人目。剣菱悠理。あと−−3人。
=====================

(ツヅク)

427 :名無し草:03/06/27 09:34
>雨
次の犠牲者はミロクでしょうか?
楽しみでつ。ワクワク

428 :名無し草:03/06/27 10:44
うわー悠理も見事に料理されちゃいましたね。
こうなるとますます野梨子が・・・惜しい・・・

429 :877:03/06/27 10:57
>雨
ずっと気になっていること。
有閑倶楽部は6人なのに美童のターゲットがあと3人残っている・・・!
楽しみにしてます。

430 :430:03/06/27 10:59
クッキ食べ残した・・・スマソ∩Д`)

431 :名無し草:03/06/27 11:04
>429
そりゃ最後はマスタry

432 :名無し草:03/06/27 16:00
>絵
すごぉぉい!清×野も是非ぜひお願いしまつ!


433 :名無し草:03/06/28 05:03
旧スレ上げたドジッ子がいるみたい。
かといって、こっちを上げる気には、なれないしな・・・

434 :夏の夢、夜の風:03/06/28 15:01
ザワザワ…
熱気が立ち込める夏祭り。
たこやき、焼きそば、あんず飴。あちらで抱えきれないほどの食料を
買い占めたふわふわの猫っ毛の女の子が大声を出しながら嬉しそうに走ってきた。
「おいっこんなに買ったぞ!2万使った♪」
周りの人がぎょっとして振り返る。悠理はそんなことおかまいなし。
「ほら…わっ、ととっ…」バランスを崩した。──ドンッ。「きゃっ!」
悠理と食べ物は無事だったが運痴の野梨子は案の定モロにぶつかりこけてしまった。
「やだ、だいじょーぶぅ、野梨子」
「え、ええ」
「すいません、野梨子」清四郎の腕の中は悠理が落としそうになった食べ物で
いっぱいだったのだ。「平気ですか?」
「大丈夫ですわ」言いつつ立ち上がろうとすると「あっ」
「どうしたんです?」


435 :夏の夢、夜の風(2):03/06/28 15:02
「鼻緒が…」つまづいた拍子に鼻緒が切れていた。
「ごめん野梨子ぉ」悠理は申し訳なさそうにしている。
「しょうがないですね」

野梨子は足元をすくわれた気がして目をつぶった。
と、次の瞬間。
体が宙に浮いている。
「!!?」
なんと清四郎は野梨子をお姫様だっこしていた。
「何なさるの清四郎!はっ、はなしてくださいな!」
「おや、あんまり暴れると浴衣がはだけてしまいますよ?」不敵の笑み。
「〜〜っ」野梨子は真っ赤になるとともにおとなしくなった。
「サンキュー清四郎あとよろしく」「じゃなー」「また明日ね野梨子♪」「ばいばーい」
「ではまた」
ニヤニヤしている4人を残して清四郎は涼しい顔で祭りをあとにした。


436 :夏の夢、夜の風(3):03/06/28 15:03
いったん会場からでると夢から抜けたようだ。
外との違いにびっくりする。空気が静かな熱を持っている。
「……」まだ野梨子は黙ったまま。
今日の野梨子はアップにしている。汗ばんだうなじ。
「そんなにイヤですか?」やさしく清四郎が問いかける。
「…イヤってわけじゃ、ありませんわ。ただ…」「ただ?」
「恥ずかしくって」それを聞いて清四郎はすかさず愛しい恋人にくちづけた。
「!!」
「続きは帰ってからです」にっこり微笑む清四郎。
野梨子の顔がソーハクになった。
「やっぱり降ろしてくださいな!」「それは出来ない相談ですね。ちょうど今日
うちは誰もいませんから」
「……っ!」声にならない声が夏の夜へ溶けていった。


437 :夏の夢、夜の風(4):03/06/28 15:04
「お疲れさまでした」清四郎の部屋に着いた。今日彼は浅黄色の浴衣に
濃紺の帯を締めている。そうして明かりの下で野梨子を見つめた。
紺色の生地にあやめの柄。朱色の帯をきっちり締めたその姿は彼の中へ
涼しげな風を吹き込んだ。
「さて」清四郎は壁にもたれて座り込んだ。「こちらへどうぞ」
「けっ、結構ですわ」
「そうですか。あーあのままだったら野梨子はどうやって家に帰ってたんで
しょうかねぇ」
自分から担いでおいて…と思ったが言い返せない野梨子はおずおず
彼のほうへ向かった。畳がぺたぺた言う。
清四郎の前まで来るといきなり手首をつかまれストンと座りこんでしまった。
彼が後ろから野梨子をすっぽり包み込む形となった。
体育座りで足を開いた間にちょこんと座っている。
自分の両側に彼の膝があって野梨子はどぎまぎしてしまった。


438 :名無し草:03/06/28 15:07
清×野浴衣Rがどうしても読みたくて書いてしまいました。
短編です。今日と明日に分けてうpします。
R初挑戦ですが読んでいただければさいわいでつ。

439 :名無し草:03/06/28 15:11
今気付いたら「やみのゆめ」にタイトルかぶって
ますね!すみません。。

440 :名無し草:03/06/28 15:22
>夏の夢、夜の風
意地悪清四郎がイイ!!!でつね。
早く明日にならんかな〜♪


441 :名無し草:03/06/28 15:33
むむっ
残るは魅録と可憐・・・ムフ

442 :名無し草:03/06/28 16:39
>441
可憐は一番最初じゃ??
ってか、雨ですよね?

443 :名無し草:03/06/28 17:38
>夏の夢、夜の風
土、日このスレ静まりかえってるからなーと思いつつ来てみれば短編が。
うれしい。
野梨子がかわいいなあ。
常日頃から、小柄な野梨子は抱きしめられたら
すっぽりって感じで収まっちゃうんだろうなあと想像していただけに
このシーンはツボにはまりまくってます。
明日が楽しみです。

>441
浴衣でRの事ですか?
だったら、私も他のカポー読みたいなあ。

444 :fade in the rain(1):03/06/29 02:33
「空、何か泣きそーだなぁ」「ええ」
「でも、天気予報じゃ晴れるって言ってたし!なっ」彼は明るい笑顔を向けた。
魅録の言うとおりだった。晴れているのに、どこか泣き出しそうな空。
(──なーんか、オレみてー…)
雨は切なさのモチーフ。お願いだ、降らないでくれ…空を見上げた。


4人で待ち合わせ。2人は悠理と清四郎を待っていた。
何があったのか、時間を10分過ぎても2人はやって来ない。
「どーしたんだろうな、2人とも!」「そうですわね、何かあったのかしら」
…………
気まずく笑って、黙り込んだ。甘い味でない沈黙が2人を包み込む。
──ポツッ。
「雨…」小雨ではあるが予報ははずれ雨が降ってきた。野梨子の手の甲に、打ち付ける。
2人は空を見上げた。まるで泣くのをこらえているようだった。
それでも滲み出る涙を、空が零しているようだった。


君は来ない彼を待って 僕は来ない彼女を待つ
だけどずっと気にしてるのは 並ぶ濡れた肩先──

2人の想いを代弁するように、空は泣いている。


445 :fade in the rain(2):03/06/29 02:34
プルルル……カチャッ。
「あっもしもしオレっ」『…です。おかけになった電話は、電波』ピッ。
「だめだ、出ねえ」「清四郎もつながりませんわ」
「どーすっかなー。困った…」「ほんとに、大丈夫ですかしら…」
いつも遅れてくる二人ではないのに。そう、『いつも』。
野梨子は時計を覗き込んだ。時間を見るために。
魅録の瞳でなく、時間を、見るために。
「野梨子。オレ、あそこのコンビニで傘買ってくるわ。結構濡れそうだし」
「…ええ」
魅録は駆け出した。野梨子の瞳を見ないように。
言葉にならない。

「ただいま。平気だった?」「ええ、大丈夫ですわ」野梨子は微笑んだ。
2人は1つの傘に入った。
「ごめんな。身長差あるから濡れるだろ?ってか小さすぎだろ、この傘」
「平気ですわ。ありがとう、魅録」2人とも笑顔を見せている。
それが笑顔だと思ってもらえるように。


君を忘れてゆくために 違う誰か追い始めた
2人ずつで会う週末に やがて迷う微笑み──

胸が熱くなる。


446 :fade in the rain(3):03/06/29 02:35
2人とも、同じ気持ちでいる。濡れた空気がお互いに伝える。
でも、言えない。うまく行くわけがない。想い出が全部雨で滲む。

それでも、でも…
天気が回復しかけてきた。光のカケラが零れてくる。

上がりそうな雨に 時が止まる──

野梨子が自分を見つめている。見つめている。同じ想い。
何かを言いかける。瞳をそらさぬまま。
「──
「ごめーん!待ったかぁ?検問にひっかってよぉー。しかも昨日携帯
壊しちった。電話した?」
「すいません。今日に限ってなかなか稽古が終わらなくて」
2人が駆けてきた。


君は一瞬うつむいて 何もなかったようにはしゃぐ
そして今も残ってるのは 濡れた傘ときらめき──


                          Fin


447 :fade in the rain:03/06/29 02:37
雨の季節なので書いてみました。
お気づきになった方いらっしゃるでしょうか?
これは私の大好きな歌を小説にしたものです。
ご一読ありがとございました!

448 :名無し草:03/06/29 10:57
元になった歌はわかんないけど、切ない…。

449 :名無し草:03/06/29 15:05
>fade in the rain
歌の詩のような文だなと思ってたら歌が題材だったんですね。
しかし魅録ってせつないのが似合いますね。
「2人とも、同じ気持ちでいる。濡れた空気がお互いに伝える。」
ってところが好きです。

病院坂といい、恋ちかといい、せつない魅×野、大好きです!

あと、今更ながら魅と悠のイラスト超うまいですね。驚きでした。
プロ並ですね。もっと色々書いてほしいな。

450 :名無し草:03/06/29 16:21
>夏の夢、夜の風
来たぞ、来たぞ〜。続き首を長くして待ってます!

>fade in the rain
告白したいけどできない、ぎりぎりのところがいいですね。

fade〜でふと思ったんだけど、
有閑倶楽部のメンバーって遅刻魔って出て来ないよね。
たま〜に可憐が「やばーい、(学校に)遅刻だ」とか
たま〜に美童が「デートに遅れちゃうよお」とか
あるけど、よくある学園ものみたいに、遅刻常習で立たされる
とかないのよね。>特に悠理が遅刻する場面がないのがオドロキ
基本的に時間厳守のグループみたいだね。エライな(藁



451 :夏の夢、夜の風(5):03/06/29 16:52
それでも、清四郎に触れていると落ち着けるのも本当だった。
彼と体を重ねる時、緊張や快感よりも吐息とともに
溢れ出すあたたかい想いが野梨子をいつも遠くへ運ぶのだ。
「何、考えてるんです?」首に口付けながら清四郎は尋ねた。
「何でも」ない、言おうとして彼女はあらたまった。
「…こうしていると、落ち着きますの」細く息を吐き出す。
「ずっと、こうしていたいって」
「ぼくも同じです」甘くささやく。熱い息。
野梨子の身体がぴくんと震えた。清四郎は右手をそっと彼女の浴衣の
胸元へしのばせた。
「あれ?」
「…着物や浴衣を着るときは、下着はつけませんの…」
滑らかな肌。山をのぼって優しくなでたあと手の中に収めて、
柔らかい愛撫を続ける。野梨子の吐息が熱くなる。
親指と人差し指でその頂上を転がしていく。
「せっ、せいしろ…っ、はっ…」
腰が浮く。こんな時はいつも自分が自分でないような錯覚に襲われる。
ただ清四郎を思う本能が体を反応させるのだ。
胸を愛撫しつつ彼は自分の耳を舐めている。あまい舌先。
「…っふ…」耐え切れなくなった野梨子が身をよじると、
左肩があらわになった。ただ布をまとっているだけのように見える。
彼がその肩を抑えると野梨子の動きはいっそう激しいものとなった。
首をのけぞらせてイヤイヤをすると髪をまとめていたゴムが切れた。
しっとり濡れた黒髪。


452 :夏の夢、夜の風(6):03/06/29 16:52
「可愛いですね、野梨子は」なおも清四郎はじらすように愛撫を
繰り返した。2人の息が乱れる。
「お願い…」 「何が、ですか…?」
「清四郎…はっ…もっと…」 「もっと、何ですか?」
「…意地悪…」野梨子は胸を撫でている彼の右手を下腹部まで運んでいった。
「お願い…」潤んだ瞳で後ろの清四郎を見つめた。
いつまでもじらすつもりだった清四郎の、我慢が限界になった。
「そんな、目で、見ないでください…」
帯もすでにほどけていて、腿があらわになっていた。
野梨子は下の下着も着けていない。
ゆっくり、秘所に触れると、そこはずっと彼を待っていたように熱く潤んでいた。
茂みをかき分け、人差し指と薬指で部分を広げた。
「…っ、はぁ…」
潤んだ、トロリとしたその蜜を中指で掬い取り、高くなっている小さな丘に塗りつける。
やさしく、何度も何度も。野梨子の腰がますます浮いてくる。
熱くて、あまいため息の会話。2人の浴衣が擦れる音。
もはや浴衣は浴衣の意味を成していない。
突起をギュッとつまむと野梨子の身体がビクンとはねた。
泉が溢れる。
軽い絶頂を迎えた野梨子は息を吐いた。
──ふぅ…
「まだ、これからですよ」理性を取り戻した清四郎が、いたずらっぽく微笑んだ。


453 :夏の夢、夜の風(7):03/06/29 16:55
体勢を変える。野梨子が下になった。唇に、キス。
お互いがお互いの舌を求め合う、熱いキス。
「ん…あっ…」「ふ…」
清四郎は少しずつ下へおりていく。首、鎖骨、胸、腰…
「んっ…」
すべてに紅い花を散らしてここまでやってきた。
今度は舌で突起を舐めてやる。またも野梨子は激しく反応した。
「いいですか?野梨子…」
返事の代わりに息をきらせているのが聞こえた。畳がギシギシなる。
蜜がつぎつぎ溢れ出す。
「早く…清四郎…」
ようやく清四郎は、熱くなっている自身をそっとあてがった。
野梨子はずっと待っていた。滑らかに入っていく。
中は熱い想いで溢れているようだった。
ゆっくり、出し入れを繰り返す。きつく逃がすまいとする野梨子の中。
「…きついです、野梨子…つら…い、ですか…?」
質問1つにもため息が混ざる。清四郎も余裕がなくなってきた。
「いえ、ただ…早く…っ」野梨子は限界まで来ているようだ。
浴衣が足に絡みつく。汗で張り付いてとることが出来ない。
清四郎は動きを早くした。
官能の資質が彼を動かす。
「あっ、あっ、せいしろ…っ」「いいですよ、野梨子っ…!」

───────

時が、来た。
2人は同時に果てた。


454 :夏の夢、夜の風(8):03/06/29 16:55
1時間後。白鹿家の玄関。
ピンポーン
「あらどうしたの、清四郎さん、野梨子さん!怪我でもしたの?」
「いえ、お祭りで野梨子の下駄の鼻緒が切れて歩けなくなってしまって。
それでこうして帰ってきたんです」
(──今抱えてるのは別の理由ですけどね)
(やめてくださいな!)真っ赤になる野梨子。

小声の会話をする2人を、白鹿夫人は不思議そうに見ていた。


                           おわり


455 :夏の夢、夜の風:03/06/29 17:02
ありがとございました!
おわび。浴衣が生かしきれてないのと、
最初に鼻緒がきれるとこで、鼻緒が切れるのって
縁起悪いって言いますよね。でもただ清四郎が野梨子を
お姫様だっこする口実が欲しかったのでした!スマソ

456 :夏の夢、夜の風:03/06/29 17:06
ごめんなさい!!!R指定を忘れてしまいました!
読んでしまったR嫌いの皆様、本当にすみません!

457 :名無し草:03/06/29 17:28
>450
ほんとだー。清野魅は時間にきっちり、悠美可は
ルーズそうって感じがするけどね。(魅録はゲイの巻で
パーティすっぽかしたけど、イメージ的に…

458 :名無し草:03/06/29 20:59
可憐と美童は時間きっちり守りそうだと思うけどな。
意外と常識人。

459 :名無し草:03/06/29 22:57
美童や可憐は時間厳守だと思うな。
そうじゃなきゃ異性にもてないでしょ。
特に美童なんか最低でも待ち合わせの5分前には着てると思うなあ。

460 :名無し草:03/06/30 00:00
>夏の夢 夜の風
浴衣清×野Rキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
前編の野梨子は初々しくて可愛い感じだったので、
も、もしやはぢめてなのかっ・・・と思いきや、結構
場数を踏んでいたのね、お二人さん。
野梨子のママには本当にばれてないんでしょうか?
事後の雰囲気って、なんか独特だしな(w
いやー、それにしてもこの二人の浴衣はやっぱええなあ。
愛あるエチーを堪能させていただきました。
作家様、どうもありがd!

461 :名無し草:03/06/30 00:25
>>459
>美童なんか最低でも待ち合わせの5分前には着てると思うなあ。
想像できる(w



462 :名無し草:03/06/30 00:30
それでは、

・時間より早く来ている
  美童、可憐
・時間ぴったり
  清四郎・野梨子
・若干遅れる時もありそう
  悠理
・実は(機械いじりに夢中になって)遅刻魔
  魅録

463 :名無し草:03/06/30 01:07
>夏の夢
ごっつぁんです!清純かつ濃厚で美味しかったです!

464 :名無し草:03/06/30 08:46
462>
でも可憐は学校には遅刻しそーな気もする。
雨だ雪だでよくさぼるらしいし。

465 :名無し草:03/06/30 13:00
悠理は、どんだけ眠ってても、侍女がなんとか制服を着せ、
じいが無理やり車に乗せるから、
学校の遅刻だけはしなさそう。
遅刻だけは。

466 :Off shore(1):03/06/30 14:15
ザザ…ン ザザ…ン
暗い空の下。寄せては返す、波。
自分の心の中をみているようだ。色んな想いが寄せ返す。
波が激しくなるたび、魅録の心も同じように揺れた。
2人は海辺に座っていた。初夏のやわらかく涼しい風。

「なぁ」「…」 「可憐?」「何…?」
「どうしようか?」
「…まだ、帰りたくない」
「じゃ、あの橋始発が通ったら帰るか」「…うん」
ただ意味もなく、そこにいた。しっとりした空気が2人を切なく纏う。
さらさら。 並んで抱えた、膝に砂がこぼれる。
重ねた手。でも何も言わない。魅録も、可憐も。
見上げている星のせい。見えにくくなってくる星を、見上げて探す空。


水平線の夜明けの色に 不意に君に好きと告げそうで
違うとずっと言い聞かせてる 届かない気持ちに──



467 :Off shore(2):03/06/30 14:16
可憐がいきなりやってきたのは、午前3時だった。
清四郎と野梨子が恋人になった日。

トントントン。チャイムではなく戸を叩いた。彼女は涙で濡れていた。
「ごめ…ホント、非常識で…けど」
魅録は泣きながらやってきた想い人を見つめていた。
「お願い…遠くにつれてって…」断れるわけがなかった。
辛いとき、可憐を想うとき、に、来る海。
2人同じ想いで、いつか来たかった海だった。
バイクで1時間。いつも後ろに乗せる少年のような女の子とは
全く違うやわらかさがあった。
涙は、他の誰かのもので…。

可憐の横顔を見つめる。潤んだ瞳、海よりもっと遠くを見ている。
艶のある唇も、たおやかなウエーブも。
抱きしめたいと思えば思うほど、出来ない。
いま、彼女の心を奪ったりなんか、出来ない。
それをするにはこの想いはキレイすぎる。純粋すぎる。
大切なものを失くす、だけ。


水平線に夜明けを見てる 「ありがとう」って君はつぶやいて
僕は黙って微笑んでみる 「さよなら」の代わりに──


                      Fin


468 :Off shore:03/06/30 14:18
切ない魅録、その2でした!

469 :名無し草:03/07/01 01:12
ここのところスレにぎわってますね〜
改めて読み返してみると、Back to・・・辺りからすっごい書き込み増えてる!!

ということでBack to・・・の作者様、続きお待ちしています!!ホントに好きなんです、どうかよろしくお願いします!!!!!!!

470 :名無し草:03/07/01 01:33
>469
ハゲド────!!!!!!!!
「次で終わる」って言ってましたよね!?
次の日超わくわくしつつ覗いてみれば…。

ところで、もうすぐ七夕ですね。
七夕ストーリーきぼん!

471 :名無し草:03/07/01 01:50
雨のストーリー、浴衣のシーン、七夕と、
季節を生かした話って日本人らしくてGOODですね。
>野梨子のママには本当にばれてないんでしょうか
野梨子ママは野梨子以上にお嬢様が令夫人になったタイプだから
わからないんじゃないかな。
御大、野梨子の父さま母さまの話いずれかきたいって言ってたけど
早く描いてほしいよね。
しかし、あの二人は近所でも評判の超美人母娘だよな。
パパは絵を描きにいつも出かけてるようだし危ない感じ。

472 :名無し草:03/07/01 02:33
>471
でもパパも、可憐も言ってるけどかっこいいでつ(w
花火大会もいいなぁ…

473 :雨がボクを狂わせるので<27>:03/07/01 07:44
>>426
また降りそうだな。
灰色の空を一瞥すると魅録は帰宅の足を速めた。同じように急ぎ足で駅へ向かって
行く聖プレジデントの学生達の中に、一際目立つ金髪を見つける。
声をかけようとして彼の左腕に白い包帯が巻かれているのに気がついた。
「よぉ、美童。腕、怪我したのか?」
友人の声に振り返った美童は弱々しく微笑んだ。
「やぁ、魅録。うん、何かさあ、切られたみたいなんだ。」
切られたとは穏やかじゃない。また喧嘩にでも巻き込まれたんだろうか。
「いつだよ。この間の奴らか?」
「ううん、それがさぁ……。僕にもわかんないんだ。」
美童はふっと足を止めると、青い瞳に困惑の表情を浮かべて、こう言った。
「魅録。話があるんだ。」

ジンジャーエールが勢いよく鼻に入りそうになった。
「可憐とか?ホントに?」
「何があったかはっきりとは覚えてないんだけど。それに……もしかしたら、
野梨子とも。」
驚きの告白に魅録は苦笑いした。どうも笑える話じゃなさそうだな。
「気がついたら可憐の家にいて、可憐が裸でいて、僕に『なぜ帰るの?』って
聞いたんだ。どうも、その、何かあった後みたいな感じでさ。でも僕には全然
その時の記憶がないんだよ。それから別荘に行ってから妙に野梨子が僕を避ける
んだ。清四郎は、野梨子が真夜中に別荘の下で誰かを待ってたって……。
昼間、野梨子が僕を起こしに行って、中々戻ってこなかったからって清四郎の奴、
僕を疑ってるんだよ!」
美童は深いため息をついて言った。
「どうも僕、時々おかしくなるみたいなんだ。」
魅録は突拍子もない友人の話にどういう答えを返そうか考えていた。
空が今にも泣きそうに潤んでいる。

474 :雨がボクを狂わせるので<28>:03/07/01 07:44
その夜、友人のバンドが出演したライブハウスを見ての帰りだった。
泣きたいのを堪えていた涙が限界を超えて溢れ出したように、突然、
大粒の雨が降り出した。
(バイクで来なくてよかったぜ。)
駅まで走るつもりだったが表通りを一つ裏に入ったところで人だかりがしている。
ふと聞きなれた声を耳にして近寄れば、暗がりの中で金髪の大女とへべれけに酔っ払った
オヤジ二人とがびしょぬれになりながら、つかみ合っていた。
「いいこと?うちはねぇ、上品で静かで人のいいお客さんばかりなの。
あんた達みたいにガラの悪いのに来られたら店の品が下がるだろ。もう来るなよ!」
くるりと踵を返した大女に向かってオヤジが汚い言葉を浴びせた。
「るせぇんだよ!この男女!もう○○は取ったのか!?」
大女(?)がサンダルを脱いでオヤジに殴りかかろうとしたので、魅録は思わず
割って入った。
「そこまでにしとけよ。あまり騒ぐと警察が来るぜ。おっさん達も勘弁してやって。」
警察、の声を聞くとオヤジ達は大人しくなってすごすごと引き上げていった。
女は殴れなかったのが心残りなのかピンクの髪の男をキッと睨みつけ、
すごい力で手を振りほどいた。
その顔には濡れた金髪がところどころ張り付いて、ちょっとたじろぐ程見苦しい。
背中の大胆に開いた真っ赤なドレスには下品な大きな黒薔薇がプリントされている。
そして安っぽいスパンコールがいくつかついた黒のサンダルをつっかけている。

そのままフンと鼻を鳴らして雨の中を帰っていく。
あわてて魅録は追いかけていき、小さな赤いドアを潜ろうとした女の腕を再びつかまえた。
「おい、ちょっと待てよ。」
女は心底うざったそうに振り向いた。
「なによ。あたしに何か用があるの?」
むせ返るようなムスクの香りが魅録を包む。
厚化粧の下に埋もれた彫りの深い顔立ちは、見知った友人の顔によく似ていた。

475 :雨がボクを狂わせるので<29>:03/07/01 07:45
瞳の色を素早く確認したが、暗くてよくわからない。
「おまえ……。美童だろ?」
暗い色の紅をひいた唇が一瞬驚いたようにすぼまり、そして笑う形になった。
「何……、ナンパしてんだ、あたしのこと?先に言っておくけど、男よ、あたし。
いいの?」
「美童。お前が男だってこと位中学から知ってる。何してんだよ、こんなとこで。」
「あたし、美童じゃないけど。仕事してんの、ここで。ボウヤも遊んでく?」
そう言うと赤い潜り戸をトンと押した。戸が開かれた先には赤い照明の元、
酒の匂いと煙草の匂いを乗せた熱気が渦を巻いていた。

金髪は店のママらしき女(男?)に耳打ちすると、魅録の手を引っ張って
ソファが並ぶフロアを抜けて、奥の小じんまりした座敷に案内した。
染みで汚れた襖を閉めて喧騒を遮る。さてと、と目の磨り減った畳の上をずるずると
移動し、魅録にしなだれかかる。
「スペシャルが60分で一つね。ハーフが30分で半分、つまり五千円だけど。
あっ、一応オールナイトってのもあるのよ。でもいきなり三万だし、ボウヤまだ
高校生みたいだから……。」
「スペシャルって何やるんだよ。まさか……美童。」
「ミチコ。」
厚化粧の顔が近づいて魅録は少し後ずさった。
「んっ?」
「ミチコなの、あたしの名前。」
そう『彼女』が紹介する間に襖がスッと開いた。ママがミチコに耳打ちする。
「ごめんね、あたしを指名してくれた常連さんがいて、もしボウヤにその気がない
なら、そっちに行かないといけないみたい。正直、その人嫌いだからボウヤが
あたしとオールナイトで遊んでくれるとうれしいけどな。」
「嫌いって何されるんだよ?」
「いろいろ。ぶたれたり、縛られたり、咬まれたり……。あら、赤くなっちゃって
可愛い。いいのよ、無理しないで。学生さんだもんね、今日は帰って。」

476 :雨がボクを狂わせるので<30>:03/07/01 07:46
ミチコは襖を開けて「ママ」と呼ぼうとしたが、その肩に魅録の手が置かれた。
「いいよ。」

「すっごーい、ボウヤお金持ちなのねぇ。」
魅録の財布の中身にミチコは興味津々で目をキラキラさせていた。
「お前んちだって金持ちだよ、美童。なぁ、こんなとこにいないで家に帰ろうぜ。」
「こんなとこたぁご挨拶ね。住めば都って言うでしょ。え……と、君、名前は?」
やれやれ。まるきり記憶喪失かよ。
「ミロク。」
「かぁっこいい!外人みたぁい!」
外人はお前じゃないかと小一時間問い詰めたいところだったが、我慢して魅録は
これまでのいきさつを美童のミチコに説明した。ミチコは煙草を吸いながら、
ほとんど興味がないように、気のないあいずちをあまり意味のないところで打って
いた。

魅録の話が終わると心底つまらなそうにミチコは「なぁんだ。」と呟く。
「あんた、本当にその美童とか言う友達があたしだと思ってたんだ。ざぁんねん。
ちょっとあたしのタイプだったのに。」
「だから思ってたんじゃなくて、お前が美童なんだよ。」
「だから違うって。もし私が美童って子と言い張るなら証明してみせてよ。」
「いいよ。」
そう言うが早いか魅録はミチコの左腕をつかんだ。包帯こそ巻いていなかったが
比較的新しい傷が鈍く光る。
「この傷だよ。美童にもついてた。」
ミチコは舌打ちして腕を振り解いた。
「こんな切り傷くらい、まっとうじゃない商売についてたら一つや二つ簡単に
つくわよ。」
「美童はまっとうな学生なんだよ。あいつはそんな傷作った記憶がないんだ。
ミチコさんになってる時に傷作ったんだよ。」

477 :雨がボクを狂わせるので<31>:03/07/01 07:47
「いい加減にしてよ。誰がそんな話信じられるのよ。あたしはあたしよ。他の誰でも
ないの。大体、そんな美童って子、スウェーデン大使の息子で、ハンサムで
女たらしで、もし本当にそんな子がいるとしたら、何であたしなんかに化けるの?
貧乏で身寄りもなくて、体売って食いつないで、明日生きてるかもわかんないあたし
みたいなのに、なりたいわけないじゃない。あたしがその子になり代わりたい位よ。」
「……そうなんだよ。そこが不思議なんだ。」
「馬鹿にしないで。」
ミチコは勢いよく立ち上がる。長身が背の低い部屋の天井にぶつかりそうだ。
「キャンセルしてもらうわ。帰んなさい。いいお坊ちゃんがこんなとこに来ちゃ
だめよ。」
「だめだ、俺帰らないよ。美童、お前を連れて帰るまで。」
「だから違うって言ってるでしょ。」
「違わない!」
「しつこいなあ!帰れ!」
「うるせえ、首に縄つけてでも連れて帰るぞ!正気の時のお前に頼まれたんだからな。」
「あたしは正気だっつうの!」
「どこが正気なんだよ。こんなケバイ化粧して女の格好なんかしやがって。女装が好き
な奴だと思ってたが、ここまで来るとおかしいって。お前はきれいな自分が好きだった
ろ?ちっとも綺麗じゃないぞ、はっきり言って!おかしいんだ、お前は!!」
魅録はミチコの両目から大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちるのに気がついて、
やっと言い過ぎたことに気がついた。ミチコはペタンと座り込むと両手で顔を覆って
オンオン泣いている。
「ひどい、ひどいわぁ。」
「ごめん、ごめんな、言い過ぎたよ。」
「ひどい、ひどい、あんまりよっ!」
泣きながらミチコは魅録の顔面に拳を放った。魅録は油断していてまともに喰らい後ろにふっとんだ。

478 :雨がボクを狂わせるので<32>:03/07/01 07:47
遠くで雨の音が聞こえる。
ああ、まだ止んでないのか。
美童、美童、聞こえるか。
俺、やられたよ。
おまえ、喧嘩嫌いなのかと思ったら結構やるじゃん。

「ミロク、ミロク……」
顔の上に古ぼけた電灯がぶら下がっている。男女のミチコが心配そうな表情で魅録の
様子をのぞきこんでいた。タオルで包んだアイスノンをそっと鼻に当てる。
「あてっ。」
「ごめんね、ごめんね。お客さんに手を出すなんて、もうあたし、どうかしてたわ。
お願い。お店には黙ってて。首になっちゃう。」
必死で懇願するミチコの姿に、魅録はもう友人の姿を見つけることができない。
「いいよ。俺が悪かったから。」
「……帰るの?」
「うん、明日の天気知ってる?」
「天気?さあ……。ああ、でもこの雨しばらく続くようなこと言ってたわ。」
魅録はミチコの紫色の瞳をじっと覗き込んでいる。
「それってカラコン?本当の瞳の色は何色?」
「……ないしょよ。」
「明日また来るから、その時答え聞かせて。」
ミチコは顔を上げて魅録の心を探るような目つきをする。ピンク色の髪の男は
笑って手を挙げた。

〜つづく〜

479 :名無し草:03/07/01 10:31
>雨
うぅぅ〜ん。ただ喰われるのとは違う形なんですね。
やっぱ救いはないのでしょうか…美童、かわいそう。。

480 :名無し草:03/07/01 19:27
>雨
まさか美童がこんな姿になるとはなー。意外な展開にビクーリしますた。
記憶がない時に彼の身に何も起こらない事を祈りまつ。
でも、ミチコの人格は女性メンバーを喰った時とのとは違いますよね。
美童、多重人格?

シリアスな場面なのに魅録の
『女装が好き な奴だと思ってた』の台詞に
思わず笑いながら頷いてしまいました。

481 :名無し草:03/07/01 20:26
私もワロタ>女装好き
雨、続きに期待してまつ。

482 :雨がボクを狂わせるので<33>:03/07/02 08:43
=====================
雨は三日間降り続いた。俺は毎日赤い扉の店に通い、根気よくミチコの美童、
いや美童のミチコを説得し続けた。
俺が来ることを嫌がっていたミチコも、毎日客(それも嫌なことを強要しない
楽な客)がつくことが嬉しいのか、三日目の晩には、どことなく俺を歓迎して
くれるような雰囲気だった。
汚い壁とシミのついた襖とすすけた天井とで構成された小部屋の中で、
お化けみたいな化粧の男女と毎晩美童の話をする。
それはとても、奇妙な体験だった。
=====================

「あはは、それ傑作!?で、まんまと女に逃げられちゃったワケ?美童くんて
ホントかわいそうな男ねえ。」
ミチコは笑いすぎて零れた涙を小指の先で拭う。マスカラが目元に黒く滲んだ。
「あいつ、お人よしだからさ。ま、そこがあいつのいいところなんだけどな。」
くっくっくと口元を押さえて笑っていたミチコだったが、笑い終わると黙り込んだ。
「何?」
「魅録って友達思いよね。いいなぁ、美童くん。こんないい男が友達で、うらやまし。」
赤い唇を尖らせて拗ねるミチコが微笑ましい。
魅録は励ますようにミチコの肩に手を回した。
「だからお前が美童だろ?てことは俺はミチコの友達でもあるんだよ。」
肩を抱かれたミチコはほんのり頬を赤く染めて、魅録の顔を見た。
それから、つい、と魅録の腕をはずす。
「やだなぁ、あんまり優しくされると勘違いしちゃうじゃない。」
煙草を銜えて百円ライターで火をつける。ミチコの吐いた煙がふわふわと漂って
空気の中に消えていくのを、魅録は不思議な気持ちで見ていた。

483 :雨がボクを狂わせるので<34>:03/07/02 08:44
四日目の晩、降り続く雨の中、魅録が赤い扉を叩くと黙っていつもの小部屋に
通された。中々ミチコは現れない。
魅録はぼんやりと考え事をしていた。
ここに通ううち、だんだんミチコが美童である確信が揺らいできた。
本当に別人だったらどうしようか……。

突然がらっと音がして襖が開き、ミチコが現れた。
髪は乱れ、化粧は剥げ落ちている。白地に赤の柄がついた着物を浴衣用の帯で
体にかろうじてとめてあった。
「いらっしゃい。」
言うなり畳の上につっぷして寝ている。泣いているのだった。
「おい、どうしたよ。」
「魅録、もう、来ないで。」
「何で。」
「あたし今日、他の客とったのよ。魅録がここに来てから初めてよ。」
「……。」
「今まで仕事で寝るなんて平気だったのに、あんたが来るようになってから
他の男に触られると鳥肌が立つようになっちゃって、全部断ってたのよ。
でも、例の常連さんにどうしてもって、ママにもきつく叱られて。
嫌だったわ、虫酸が走るほど。」
魅録は当惑した。それって……。
「好きになっちゃったのよ、あんたのこと。でもあんたは違うよね。あんたは
美童を探しに来てるだけなんだもん。好きになったら辛いってわかってるのに、
わかってるのにぃ。」
ミチコはオイオイと泣いた。
魅録はそっと乱れた金髪を撫でてやった。光る髪が自分の指にからみついて、
妙な気分になった。体の奥がむずがゆい。

484 :雨がボクを狂わせるので<35>:03/07/02 08:45
泣いて泣いてようやくミチコの涙が涸れた頃に、ビールを頼んだ。
小さな木の盆に中ビンが一本とメーカーのマークが入ったガラスのコップが
二つ、それに白い小皿につまみが少し入ったのが載っていた。
ミチコにコップを一つ渡して、ビールを注いでやる。
静かになった部屋にビールのトクトクいう音だけが、響く。
「乾杯」
というとミチコは顔も向けずにコップだけこっちに近づけた。
「乾杯」
小さく、チンという音がする。
電灯が寿命がつきたのかチラチラと瞬き始めた。
遠くで雨の音が聞こえている。

ミチコが煙草に火をつけようと百円ライターを取り出した。
魅録も煙草を一本取り出すと、シュボッという音と共にガスライターが点火する。
一つの火に向かって二人で煙草を銜えた口を近づけた。
小さな火を見つめるふりをして、そっと傍らのミチコに目をやる。
泣きはらした目が痛々しかったが、その顔にはすでに諦めの表情が浮かんでいた。

「何だか悪いことしちゃったな。あんた、本当に美童じゃないらしい。
美童だったら男に言い寄るなんてこと、この世の終わりが来てもしないはずだよ。
ごめん、人違いだったかな。」
そう言いつつ魅録は心の中で全く正反対のことを考えていた。

ミチコはたぶん美童だろう。
顔も声も背の高さも、腕の傷まで、こんなに似ている他人がいるとは考えられない。
だけど、どういうわけか、美童のミチコは俺に特別な思いを抱いているみたいだ。
記憶がない時の出来事とはいえ、自分が男に、しかも俺に言い寄ってるなんて
美童が知ったらショック死するだろうな。
また別の手を考えよう。これ以上、ミチコにかかわるのはやめよう。

485 :雨がボクを狂わせるので<36>:03/07/02 08:45
「あたし、美童よ。」
襖をさえぎるように、ミチコがいざり出てきて、退路を塞いだ。
「おい。」
「美童よ、あたし。だからお願い、帰らないで。」
ミチコは魅録の手を両手で握った。魅録は戸惑って手をほどこうとしたが、
思いがけず―――強い力だった。突然男の力で硬い胸に引き寄せられる。
息ができないくらい抱きしめられて、魅録はミチコの腕の中で暴れた。
「離せ、ミチコ。苦しい。」
ミチコの腕から脱出するのには、かなりの抵抗を要した。
汗を拭う魅録にミチコがすがりつく。
「好きなの、魅録。ね、一度だけ一度だけあたしを抱いて。あたし上手よ。
うんとサービスしてあげる。あたしの体って忘れられないんだって、
お客さんが言うのよ。」

聞きたくなかった。やめてくれ、ミチコ。それは美童の体なんだ。
「ごめん。俺、そっちの方だめって言うか―――。」
険しい顔で見ていたミチコは、どこに隠してあったのかやおら果物ナイフを取り出した。
何を思ったか首にその刃を向けた。あわてて魅録は叫ぶ。
「何するんだよ、やめろ!」
「あたしが―――美童の体が惜しい?」
今にも刃がノドをつきそうだ。
「やめろ、ミチコ、美童、美童、やめろ!」
ミチコが悪魔のような口を開けて笑った。
「やっぱり美童だと思ってるんだ、あたしのこと。じゃあ、あんたの美童がいいこと
してあげる。魅録。嫌とは言わせないわよ。
あんただって目の前で友だちが死ぬとこは見たくないでしょう。」
魅録は歯をぎりぎり喰いしばった。
「くそっっ。」

486 :雨がボクを狂わせるので<37>R!801!:03/07/02 08:48
暗闇の中、雨が降り続いている。
魅録は苦しい息の中、雨の音が耳について離れなかった。
いや、雨の音に集中して、意識をソレから離そうとしていた。
ああ、でも―――。
「ふぅっ。」
ミチコの美童が口にしているものを離して上目づかいに笑った。
「どう?いい?」
「……いいもんか。」
「無理しちゃって。可愛い。じゃ、またあっちしよっか。」
「やめろ!」
ミチコの舌が魅録の脇腹から背中に回り、耳元で息を吹きかける。
魅録の背中の上に金髪がのしかかる。
何度目かのその行為だったがおぞましく魅録は固く目をつぶった。
耳元で友人の声によく似たミチコの声がする。
「魅録の中、熱くって好き。魅録は?いい?いいって言って。」
「……。」
「こうしたら?これはいいでしょ?」
「……。」
「強情だなぁ、少しぐらい何か言ってくれないと僕、やる気起こんないんだけど。」

僕、という単語に魅録の目が見開いた。
あわてて背中のミチコを見やる。そこには優美な微笑を浮かべる友人の姿があった。
「……え?な、まさか、おまえ、美童!?」
「最初っから美童だってば。わかってたんでしょ。何か倒錯していていいよね、
こういうの。」
「ふざけるな、やめろ!はなせよ!……あっ」

自分の中の美童が急に力を持ったのがわかる。
快感が魅録の体を貫き、冷や汗が体中を滴り落ちた。
美童の長い手足がタコのように魅録にからみつく。
「いいよ、その顔。魅録が悶える姿って最高にセクシーだよね。」

487 :雨がボクを狂わせるので<38>R!801!:03/07/02 08:49
甘い言葉を囁きながら美童は魅録の奥の奥まで差し込む。
目の前に閃光が走り、魅録の上体が崩れそうになった。
「魅録ってやっぱり友達思いだよね。僕の体を傷つけるのが嫌さに、自分の体、
差し出すなんてさ。そういうとこ好きだよ。」
「……ふざけるな、はうっ、つ、うっ、くそ……。」
「何、やめたいの?今やめていいの?やめるよ、ほら……。」
「……ああっ、くっ、」
「なーんだ、やっぱり欲しいんだ。行くよ……。」
「んっ、あっ、あうっ、うっ。」
「ああ……魅録、いいよ……。」

俺って……。
なんだかもう全てのことがどうでもよくなってきた。
美童が繰返し奏でる快楽のリズムに身を任してしまおうか。
俺の上に乗っているのは本当の美童なのか、それとも偽の美童なのか?
雨がまだ降り続いている。
このままずっと降り続くのか。
一体いつになったら止むのだろうか―――。

=====================
6月某日。四人目。松竹梅魅録。あと−−2人。
=====================

―ツヅク―


488 :雨がボクを狂わせるので:03/07/02 08:52
ごめんなさい。注意書きが後になってしまいました。
Rありです。(しかも美×魅)
切ないラブストーリーにする予定だったのですが、
気が変わって男×男のエチーをついにやってしまいました。
苦手な方ハゲシクすまんこってす。


489 :名無し草:03/07/02 10:46
>雨
(・∀・)イイ!! (・∀・)イイ!! イイ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!

タイトルの「R!801!」っていうのが作者さんの意気込みを感じさせるわw

490 :名無し草:03/07/02 11:55
>雨
ミチコの美童は美童だったのでつね…全然気付かなかった!
魅録ともやっちまった。あとは清四郎と、…美童本人?
楽しみにしています。
スピードうpお疲れ様です!

491 :名無し草:03/07/02 19:53
>雨
堪能しますたw
美童×魅録なんてこれまでみじんも考えたことのないカポーなのに
面白かった・・・自分の違う一面を発見したようですw

清四郎編も楽しみに待ってまつ。

492 :名無し草:03/07/02 23:11
有閑キャッツうpします。
4レス使います。

493 :『有閑キャッツ』編:03/07/02 23:11
>>224
物音一つしない屋敷の中は静まり返っていた。
(だけど、肝心の『三姉妹』がある部屋に入れないんじゃ、警備のしようがないよね)
結局、あの手強い老婆二人の首を縦に振らせる事は出来なかったらしく、
ピンクの髪の男が、すだれ頭の男と作戦を練っているのを美童は見ていた。
「美童は琴子の部屋の前を見てきてください」
確かに、この2人ほど捜査にかける熱意はなかったが、いささか邪魔者扱いされた気がして、
美童は憮然とした顔つきで廊下に出た。
扉を閉める瞬間、
『12時過ぎたら、俺があの扉の鍵を開けるからな、いいだろ』
『警察の言葉とは思えませんね。全く、どうやって開けるんだか。
 まあ、扉の前を守っていたってどんな経路で侵入してくるか分かりませんからね。
 致し方ないでしょう』
物騒な2人の会話が聞こえたのだが、美童はただため息をついただけであった。
何だかんだ言って、あの2人はこの任務を楽しんでいるのだ。自分とはちがい。
好敵手に出会い、ワクワクしているのが伝わってくる。
(僕はどちらかと言ったら、こっちの方がいいけどなあ)
美童の視線の先には、一乗寺家の女中部屋があった。
琴子の部屋のある北側の廊下を目指すのではなく、つい足が別の方向に折れようとする。
しかし、数歩も行かないうちに美童は動きを止めた。
クス……クスクス
耳にかすかに少女の笑い声のような響きが届いた気がしたのだ。
美童の脳裏にあの黒髪の美少女の姿が鮮明に映し出された。
頭の芯が痺れ、何も、そう何も考えられなくなる。
急速に、意識が薄ぼんやりするのを美童は感じていた。
彼は夢うつつに、真っ直ぐにあの部屋を目指す。
黒髪の美少女、琴子が待つ開かずの間を。

494 :『有閑キャッツ』編:03/07/02 23:11
柱の影で野梨子は息をひそめていた。目の先には、居てはならない人物の姿。
(どうしてこんな所にいるんですの?)
男の靴音に冷や汗がつたうのを感じる。

人々が寝静まった夜更け、キャッツの3人は行動を起こした。
屋敷内は静まり返り、人っ子1人さえいないかのようであった。
その異常なほどの静けさには訳がある。
彼女達3人が様々な方法を用い、この屋敷の全員に眠り薬を仕込んだからであった。
見張りの警官達にも、労いの言葉と共に『特製ジュース』を渡してある。
もちろんあのやっかいな3人の刑事にもだが、もっとも、その役は危険を避けるために
他のメイドにやらせていた。

(敵地では一切のものは口にしない、ということかしら)
悠理のあの切れ者の婚約者あたりが言いそうなことだ。
野梨子は、体を緊張させ刑事が近づくのを待ち受けていた。どうにか対処しなくてはならない。

だが、彼は幸いな事に、急に立ち止まると踵を返した。
これで鉢合せする危険は回避できたわけで、野梨子はほっと胸をなでおろすが、
残念な事に、彼の向かう先は野梨子と同じ方向であった。
仕方なく細心の注意を払いながら、尾行をするように琴子の部屋へと通じる廊下まで歩を進める。

495 :『有閑キャッツ』編:03/07/02 23:12
彼女の役回りは悠理と共に、琴子の部屋へ侵入する事であった。
今回のミッションはいささかやっかいである。たよりとする情報がほとんどないのだ。
そう『三姉妹』がある場所は、やはり琴子の部屋であることは間違いないだろう。
そして絵に辿り着くまでには数々の罠がしかけられているのは既知の事実であった。

罠に嵌り命を落とした女中が過去に実在したとの噂は、女中達の間で知らぬ者はいない。
しかも、その死の真相は、哀れな女中の単なる事故だっただけにはとどまらなかった。
絵画泥棒でない事などとうに知りえていたというのに、あの老姉妹達は
彼女の悲痛な声が聞こえなくなるまで死に行く過程を鑑賞していたという。

死に至る罠に、残虐な女主人。
だけど、そんな物、私達には恐怖するに値しない。野梨子は心の中ではっきりと言い放つ。
ただ野梨子にとって、非常に悔しい事は、
その罠がどんなものであるのか、どこに隠してあるのかを、未だ探り当てていない事だ。
刑事達のガードのせいだけではない。一乗寺のあの古狐どもに隙がないのだ。

時間だけが刻々と過ぎていった。作戦はおぼろげな青写真しか描けぬままである。
本意ではなかったが、3人は不安材料は多く残るものの、予定通り侵入を試みる事を決断した。
なぜなら、もし安全を期して準備に時間をかけ、獲物を無事に手に入れたとしても、
それでは意味がない。
予告とは絶対に守られるべきもの。例外などない。
自分達のプライド、意地にかけて今夜、『三姉妹』を奪う。
誓いと共に手を合わせた瞬間、3人の目は猫のように輝いていた。

496 :『有閑キャッツ』編:03/07/02 23:12
(さて、どうやって片付けましょう)
野梨子は口元に薄く笑みを浮かべた。
ポケットに手をしのばせる。指先に触れる物体は2つ。
硬質な感触の方は連絡を取り合う為の通信機。悠理からの連絡はまだ来ていない。
それと、もう一つの乾いた感触は、……麻酔針付吹き矢。自ら作成した武器である。
それ以外にも非力な自分を助けるための小道具を、今回彼女は持参していた。
ばらしていたそれを組み立て自らの唇にあてがう。
(しばらくの間、眠っていてくださいな)
野梨子は息を吹き込もうとした。

(えっ)
思わず、野梨子は目を見開いた。ぱちぱちと瞬きをする。
気のせいではない。
琴子の部屋の重厚な樫の木の扉がわずかに開いている。
(こんなわけがありませんわ)
『あの刑事の奴、期待してたのに駄目だったのよ。全く使えないわ』
苦々しげにつぶやいていた可憐の話では、刑事達は鍵を手に入れていない。
そして、この部屋の鍵は今頃老女の部屋から悠理が盗み出している途中のはずだ。
開いているわけがない――それなのに。

扉に近づいた彼の金色の髪が、月の光に煌いた。
彫像にも似た端正な横顔が浮かび、野梨子はなぜか自身の胸の鼓動が早まるのを感じる。
それにしても彼の目は虚ろで、まるで何かに操られているかのよう、
野梨子が疑問を抱くのと同時に、ドアノブに手がかけられる。
するりと体が飲み込まれた。
そして、彼の姿は、開かずの間の中へと消えてしまった。

どなたか続きお願いします。

497 :名無し草:03/07/02 23:30
>キャッツ
わぁい!久しぶりのキャッツだ。
すごい読みごたえがありました〜。展開がワクワクでつ。
はやく続きが読みたい!

498 :名無し草:03/07/03 08:50
>キャッツ
待ってましたーーー!美×野ってスキだなぁー。

499 :名無し草:03/07/04 03:42
今日はうpがなかった…ここ最近では
珍しいでつね。

500 :名無し草:03/07/04 12:31
500ゲトー


501 :名無し草:03/07/04 16:26
誰もいないのでネタを一つ。

ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソ
ウソ競作をしてみませんか
お題『ピーターが帰ってきた!』
1レス以内で。
期間はこの1日。
ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソ

ウソです。書き逃げ失礼!

502 :名無し草:03/07/04 19:17
>501
ワロタww

503 :名無し草:03/07/04 20:12
誰もいないので書き逃げ!有閑メンバーを果物に例えると
悠理:パイナップル 可憐:葡萄 野梨子:ひめりんご
清四郎:??? 魅録:ライム 美童:いちぢく

504 :名無し草:03/07/04 20:20
いちじくワロタ
清四郎は難しいね
あえて言うなら梨・・・とか?

505 :ウソ競作・『待ってたよ、ピーター!』:03/07/04 20:24
有閑倶楽部に嬉しい便りが舞い込んだ。松竹梅魅録は息せき切って走ってくると、
メンバーにこう告げた。

「皆、聞いてくれよ!」

美童が立ち上がった。
「どうしたんだい、魅録?」
可憐も振り返った。
「何なのよお、いったい」
野梨子が笑った。
「何か事件でも起こったんですの?」
清四郎が話題を変えた。
「事件と言えば、悠理が期末テストで赤点ゼロでしたよ」

「ええっっ」「それは大事件だ!」「ほんとなの、悠理!?」
「どうして言ってくれないんだよお」「えへへ。何か照れくさくってさあ・・・」

取り残された松竹梅魅録はチョト面白くなかったが、気を取り直して大声で言った。
「皆、聞いてくれよ。ピーターが帰ってきたんだぜ!」

驚くメンバー。
「ええっ!ピーターが!?」「すごおい、嘘みたあい」
「めちゃくちゃ、嬉しいよお」「全くですな」
「そうですわね。ところで・・・」

「ピーターって誰だっけ???」

ドアの外で、当のピーターが固まっていた。

(おしまい♪)

506 :名無し草:03/07/04 20:40
>ピーター
 まさかホントに読めるとは!
 大笑いしますた。
 ウソ競作ブラボー(w

507 :名無し草:03/07/04 21:01
ああ、ピーターってあいつのことかぁ・・・
>505読んで思い出したよ(w

508 :名無し草:03/07/04 21:36
ワロタ(w 最高!

509 :名無し草:03/07/05 11:19
>505
1レスしか使わないのに、おもしろかったよ!
私も、ピーターって誰??と思いながら読んでまつたw
あれだよね、ミセス・エールの甥(だっけ?)。

510 :ウソ競作・ピーターの帰ってきた理由:03/07/05 15:35
ミセス・エール恒例のお茶会。
「えーピーター帰ってきたの?ピーターって誰だっけ」
「あほー悠理。あれだよ、高千穂先生と外国行った
ミセス・エールの…」「あっピーターね!」
「高千穂先生と一緒に帰ってらしたのかしら?」
「そーよねぇラブラブだったもん」
「Ohそれが…」コンコンコン。ガチャ

「ピーター久しぶりぃ♪」
「みんな、久しぶり…学校楽しいですか?」
「ええおかげさまで毎日楽しく通っていますわ」
「ぼく…失恋しちゃったんです」
「えー気のどくぅ」「こら美童!」
「一度用事があるって哲郎日本に来たんです。かえってきたら、
好きな人が出来たって…」しくしく。

帰り道。
「ピーターかわいそう」「ねー」
「それにしても清四郎あんたさっきからずーっと黙ってるわね。
どしたの?」
「はっもしかして高千穂先生の新しい好きな人って…!」
…「皆さん、黙っててすみませんでした。実は…」


24時間以内を勝手に今日とみなして書いてしまいました(w

511 :名無し草:03/07/05 18:37
忘れ去られていたピーターなのに、2個も話がうpされてる!
よかったね、ピーター♪

512 :名無し草:03/07/05 23:48
…未だにピーターがどんなキャラだったのか思い出せない。

513 :名無し草:03/07/06 07:43
>512漏れも。高千穂はすぐに思い出せたのだが・・・

514 :名無し草:03/07/06 11:28
チビ、丸顔、口ひげ、おどおど>ピーター

515 :名無し草:03/07/06 13:16
有閑メンバーとうちの母と道を歩く夢を見ました(w
可憐にグァバッと抱きついて、髪がふわふわで幸せですた。
でも色が黄色だった…

516 :名無し草:03/07/06 21:56
>515
それは素敵な夢でしたね(藁
ちなみにあなたが可憐に抱きついたのはナゼ?聞きたいなあ。
そして母君はその時なんとコメントしたのかも気になる(W

517 :名無し草:03/07/06 22:39
>516
何でだろ?わからん。。
母「可憐ちゃんは彼氏いるでしょ」可憐「やだーおばさま♪」
漏れ「わああー」がばっ。「可憐の髪っていいにおい(w」
ハズカシー!
あと以前野梨子が「私が今までにフッた男は100万人」ていう
夢もみたな…w でも見ますよね?有閑ドリーム。

518 :名無し草:03/07/06 22:54
>517
うらやましい。私は見たことがない。可憐の豊満な胸にすりすりしたい(W


519 :名無し草:03/07/07 07:41
>「私が今までにフッた男は100万人」
スゲー(w

漏れも見たいよ。有閑ドリーム。

520 :【競作のお誘い】:03/07/07 19:20
***またまた競作をしてみませんか(七夕競作)***

★お題「手紙」
★お題(今回は「手紙」)に関係した内容で 好きな内容の短編をうpしてください。
 「手紙」は各人の考える「手紙」でOKです。「電子メール」ももちろん可。
★今回は10レス以下でお願いします。
★タイトルの頭に「七夕競作・〜(作品のタイトル)」 のように入れてください。
★締切りは13日(日)昼まで
春、6レスに泣いた人も笑った人も、自称作家もROMちゃんも・・・この一週間。

      =====燃えて・みませんか=====

ふるってご参加ください m(__)m


521 :名無し草:03/07/07 21:41
いい!いい!!
何書こうかな〜♪

522 :名無し草:03/07/07 22:02
あの、質問なのでつが、10レスつかっても
一日でうpして良いのでしょうか??

523 :名無し草:03/07/08 01:12
>522
競作だし、分けるとややこしくなるので
一気にうpして良いと思いまつ。
ただ長い場合は最初に10レスあるとか、断りを入れた方が
無難ではないかと漏れは思いますた。
さんどいっち対策としても。

524 :Back to the drawing board!(清×野)37:03/07/08 01:30
317の続きです。
(前回までの話の中にかなり伏線をはった・・・つもりですので、よろしければ一旦読み直されてから読んで頂いたほうがよいかと思います。)


「せいしろ〜だいじょーぶか〜」
バーンと盛大に開け放つ音とともに能天気な声が聞こえてくる。
パッと野梨子は清四郎から離れた。
[・・・このボケ老人――――――!!!!!!!!!]
清四郎は初めて師匠に対して本気で殺意を覚えた。
当の雲海和尚はそんなことには気づかない、いや、それを無視するからこその
人間国宝様だろうか。


525 :Back to the drawing board!(清×野)38:03/07/08 01:31
「いやーびっくりしたわい。いっくら待ってもおぬしが来んかと思えば魅録くんから事故ったって聞いての〜。
あわてて駆けつけたら駆けつけたで『じっちゃん、清四郎は菊正宗のおじさんがどーにかするからじっちゃんは野梨子何とかしてくれよ!』ってジョーちゃんに言われて。いや〜まいったわい。」
カッカッカッと雲海和尚は笑い、まだ話し続ける。
「まったく、おぬしには失望したワイ。車にひかれたくらいで情けないの〜。大体あぬし、いったい何のために幼いころからわしのトコ通ったんじゃい!野梨子ちゃんのこと少しは考えい!」
「・・・和尚様・・・」
ようやく野梨子は言葉を発することができた。そしてようやく和尚もはっとする。
わざとらしく。
「なんじゃ、いたんじゃの。いや〜もしかして邪魔したかのう。」
[・・・もしかしなくとも邪魔です!]
ブスッとした清四郎を見て和尚はまたしてもカッカッカッと笑う。
「え〜の〜え〜の〜若いもんは。それではまた遊びにおいで、野梨子ちゃん。」
しっかりと野梨子に“だけ”声をかけて和尚は出て行った。



526 :Back to the drawing board!(清×野)39:03/07/08 01:32
気まずい雰囲気が、漂う。
「・・・あたくし、そろそろ帰りますわ。」
「・・・そうですね。」
清四郎は内心で悶々とため息をつきまくりながらも、黙って帰り支度をする野梨子を見つめた。
「・・・ねえ、清四郎。」
野梨子は清四郎を見た。
「これだけあたくしを心配させたんですもの。お願い事のひとつも聞いてほしいですわ。」
「・・・なんですか。」
「2つ、聞きたいことがありますの。あたくし、ずっと気になっていたのですけれど、よく悠理や可憐が『約束は守れ』って清四郎にいってますでしょ?いい加減何のことか教えてくださいな。」


527 :Back to the drawing board!(清×野)40:03/07/08 01:32
[・・・僕が聞きたいくらいですよ。]
いったい僕は何を約束したんだ?
「・・・もう一つ、聞きたいことというのは?」
「先ほど和尚様が『何のために幼いころから和尚様のところに通ったのか』って
おっしゃりましたでしょう?そういえばあたくし、一度も理由を聞いてませんわ。」
「・・・理由ですか。」
「ええ。だって、清四郎のせいであたくし、ひとりぼっちでしたのよ?」
「え?」
僕のせい?
「それは・・・もちろんあたくしも色々とお稽古がありましたけれど、でも、
清四郎があんなに熱心に武道に通ったせいで幼稚舎から帰ってきた後
あたくし、話し相手もいずに一人ぼっちでお琴を弾くしかなかったんですもの。
さびしかったですわ。」
そういって、ぷいっと野梨子はそっぽをむいてしまう。
ふっと笑って清四郎は野梨子を呼んだ。



528 :Back to the drawing board!(清×野)41:03/07/08 01:33
「野梨子」
腕を掴み、ぐいっと引き寄せる。
「っきゃ!」
バランスをくずし、野梨子はすとんと清四郎の上に座る形となる。
あわてて立ち上がろうとするが、掴まれた腕にこもる力が、それを許さない。
清四郎が近い。
「・・・あの・・・」
「一つ目は答えられませんけど。」
野梨子の言葉を遮るようにして、清四郎は口を開く。
案の定、野梨子は現状に抗議することも忘れ、じっと清四郎を見つめてくる。
[・・・予定通りですね。]



529 :Back to the drawing board!(清×野)42:03/07/08 01:35
例え過去に戻らなくとも簡単に予測できてしまうのは、
きっと、愛しい少女のことだから。
何年も何年も一緒に過ごし、何度となく夢に見て、
どうしようもなく、欲してしまった少女のことだから。
ずっと、彼女だけを見てきたから。
「僕が熱心に武道に勤しんだのはですね・・・。」
そっと、顔を近づける。
「だれよりも、僕だけがあなたを守りたかったからですよ。」



END


530 :名無し草:03/07/08 01:38
長々とありがとうございました。
いつもにましてひとつひとつのレスがみじかいです・・・。
本当に申し訳ございません。
修理に出した意味、ゼロですね。(+д+)
短編、と申しておきながらズルズルと無駄に長く、
かつ実はLinkする話がいくつかあります。
夏休みに入ったらまとめてあげますが、ここまで満足な方、
次のカップリングがお嫌いな方はスルーしてください。
  〇美童×可憐
  〇魅録×悠理
  〇清四郎×野梨子
&あくまでメインは清四郎×野梨子です。



531 :Can you love me?(清×野)1:03/07/08 01:42
(今後、どのカップリングメインの話かは題名の後にそのつど入れさせて
いただきます。)


晴れて、かどうかはともかくも、交通事故の後遺症も特になく、
清四郎はまあまあ平和な日々を送っていた。
唯一つの問題を除いては。



つづきます。


532 :名無し草:03/07/08 08:44
>Back to the drawing board!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
まってますた!まだまだあるんだぁ♪楽しみでつ。
けれどあの、野梨子のことなんですけど私(わたくし)
と言ってほしいのです。あたくし、だと真珠夫人のようで…

533 :名無し草:03/07/08 21:23
>532
禿同。

534 :「七夕競作・清四郎君からの手紙」:03/07/09 03:59
競作うpします。8レス使います。

535 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <1>」:03/07/09 04:00
「清四郎さんがお手紙書いた♪」

『悠理へ

ずっと前からお前に言おう、言おうと思っていたことがある。
昨日も口元まで出かかったが、人前だったので寸前で飲み込んだ。
思えば、悠理、お前とは長いつきあいだ。
4つの頃からだから、もう14年。
お互いにもう子どもじゃないんだ。
悠理はいつまでも男みたいだが、一応女なんだし、僕は立派な男だ。
その事をきっちり意識してつきあおうじゃないか。
親しき仲にも礼儀あり、だ。

以前に野梨子がこんなことを言っていた。
「悠理といると、こっちまで元気になりますのよ。
きっと悠理のパワーを分けてもらってますのよね。」
確かに彼女の言う通りだ。
君の(今までお前、と書いていたが、なんだか偉そうなので君に変えた。)
側にいるとこちらまで明るくなる。楽しくなる。
悩みごとがあっても、すっかり忘れてしまう。
君の最大にして唯一の長所だ。大事にしてください。

話がそれてしまったが、何が言いたかったのかと言うと、
君は、たぶん君が思っている以上に、他人にとっては眩しい存在なんだ。
いつも注目されているんだ。見られているんだ。
そのことに気がついてほしい。
お願いだから、椅子の上で体操座りはやめてください。
目のやり場に困ります。』

536 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <2>」:03/07/09 04:01
『いつだったか、可憐が君のことを向日葵のようだと言っていた。
しかし僕は、少し違うように思う。
確かに君は太陽のように眩しく、明るく、熱い。
いつでも大車輪で、飛び跳ね、目紛しく、五月蝿く、騒々しい。
少しは静かにすることも覚えてください。子供じゃないんだから。

そういえば、一階の西廊下の窓ガラス割ったの悠理でしょう。
誤魔化したって駄目ですよ。ちゃんと目撃者がいるんですから。
「剣菱さんが廊下で野球してた」って。
「ちゃんとピッチャーもキャッチャーも、ファーストやサードもいた」って。
悠理、悠理、悠理。
一体どういう事ですか。
どうしてセカンドがいないんですか。一番大事なポジションじゃないですか。
とにかく――、先生にはうまいこと言っておきましたけど、今度やったら
一ヶ月トイレ掃除やってもらいますからね。

やれやれ、説教ばかりになってしまった。
悠理がいけないんですよ。普段、僕の中に悠理に言いたいことが溜まって
いるから、こんなに文句ばかり書いてしまうんだ。』

537 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <3>」:03/07/09 04:01
『だらだらと長い文章で、国語が苦手な悠理はさぞかし退屈しながら読んでいる
ことでしょう。僕も、自分がこんなにも、本当に言いたいことが言えない、
文章にできない奴だとは思いませんでした。内心、非常に自分にがっかりしています。
あまり悠理のことを笑えませんね。

しかし、いつまでもこうしてだらだらと書いているわけにもいかないので、
この辺で思いきってこの手紙の要旨を書いてみようと思う。

つまり―――。

今、僕はその一言を書くことをすごく躊躇っている。何故かと言われれば、それは、
僕が書こうとしている一言が、たぶん、悠理にとっては非常に唐突で、晴天の霹靂で、
そして、非常に迷惑なのではないか―――を恐れるからだ。
もし、そうだったなら、それは僕の思惑に反する。
もしも、僕がその一言を書いたことで、今までの僕らの14年間を一瞬にして、
辛く、情けないものに変えてしまうならば、それは非常に残念だ。

しかし、その一方で僕の中にほんの少しだが、楽観的な見解もある。
それは、もし僕の一言が受け入れられないと君が思ったにしろ、
今まで通り、君が変わりなくつき合ってくれるであろうという考えだ。
いや、この手紙を書いている間にむしろ、そうじゃないかと思えてきた。
とても楽観的且つ、自分勝手な考えだと言う事は重々承知している。
だが、ここまで来たからには是非そうしてくれるよう、心の中でひたすら願うしかない。
僕は僕らの関係を自らの手で壊してしまうことは本意ではない。』

538 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <4>」:03/07/09 04:02
『前置きが長くなってしまった。
ここまで読んだら(この駄文を読み通してくれたとしたら)、さしもの悠理も
僕が言いたい事の見当がついたでしょう。
この手紙を読みながら、どんな顔をしているか見たい気もするが、
今は勇気が出ない。

さて、そろそろ覚悟を決めよう。僕も男だ。そして君の恩情ある判決を待とうと思う。

悠理、

毎晩、君の夢を見るんだ。昨日の夢は君と僕の二人だけで長い長いエスカレータに
乗っている夢だった。君は、笑いながら、エスカレータを駆け上がったり、
後ろ向きに座ったり、ベルトに腰かけたりしていたよ。
僕は中々終わらないエスカレータに口では文句を言いつつも
心の中では永遠にこれが続く事を希望していた。

わかってもらえたかな、悠理。

返事を待っています。

清四郎』

清四郎の手紙は非常に几帳面な字で丁寧につづられていた。
手紙を読み終わった悠理はため息をつくと、ぼんやりとした表情でタマの頭を撫でた。

539 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <5>」:03/07/09 04:02
一方、清四郎は悠理に手紙を渡したことをずっと後悔していた。
放課後、一人で生徒会室にいると悠理が騒々しい音を立てて部屋に飛び込んできた。
その顔を見て、清四郎は覚悟を決めた。
悠理は清四郎の顔を見るなり、喰ってかかった。

「清四郎!何だよ、あの手紙は!」
清四郎は内心の動揺とは裏腹につとめて冷静に言った。
「何だとは何ですか。僕は自分の思っていることを書いただけですよ。」
「思っていることって、今さら何水臭いことしてんだよ、口で言えば済むことじゃ
ないか!」
怒りに燃えた悠理の瞳を清四郎は困って見返した。
「……それは、そうですが、手紙でというのもいいかな、と……」
「いいもんか!だらだらだらだら書きやがって」
さすがの清四郎も気にしていたことをズバリと指摘されて傷ついた。
「……やっぱり、迷惑でしたか?」
「当たり前だろ!?初めから最後まで文句ばっっかり!!こんなの喜んで読むやつが
いるかよ!」
「……そうですか……それは、すみませんでしたね」
清四郎は苦笑するしかなかった。
「パンツのことも、五月蝿いことも、窓ガラスも今度から注意すればいいんだろ?
だけどなあ、いくらあたしでも清四郎の夢の中のことまで責任取れないんだよ。」
「責任??」
「エスカレータを駆け上るな、後ろ向きに座るな、ベルトに腰掛けるなって、
そっちが勝手に夢に見たんだろ?あたしはやってないぞ!」
「―――悠理」

10分後、悠理は生徒会室のテーブルで、清四郎から件の手紙の解説を受けていた。
自分の勘違いを知った悠理は顔を赤くした。
「……あ? そ、そういうことだったのか……ごめん、勘違いだった……」
「いいんですけどね、別に。僕が回りくどい書き方をしたのがいけなかったんですよ」

540 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <6>」:03/07/09 04:03
悠理は先程までの怒りはどこへやら、ひたすら赤くなってもじもじしている。
清四郎の方にしたって、ラブレターの解説をするのはかなり恥ずかしかったらしく
黙っていた。
「あのですね」
「う、うん」
すっかり大人しくなった悠理は殊勝にうなずいた。

「別に……今すぐにどうこうして、ということじゃないですから、つまり、すぐに
彼女になってくれとか、じゃなくて……」
「……そうなんだ」

悠理が深くうなずいたので、清四郎は少し慌てた。
「……いや、言葉通り受け取ってもらうと困るんですけど、つまりですね、今日から
つき合ってくれじゃないが、いずれはつき合ってもらえないか、と。段々とゆっくりと
でいいから、僕を男として見てもらえたら嬉しいんですが」
「ゆっくりとっていつ位までに?来週とか?」
「……い、いや、もっと後でもいいですよ」
「来年?」
「できたら、もう少し早いと、嬉しいです」

最初は大人しくしていた悠理も痺れが切れたらしい。
「ああっ、もうまどろっこしいなあ!一体いつがいいんだよ、お前を男として見るのは!」
「だから、悠理の気持ち次第ですよ!悠理さえよければいつだっていいんです!
僕の方はいつでもOKなんですから」
「いつでも?じゃ、今日でもいいのか?」
「今日?って、え?……悠理、それってどういう意味かわかって言ってるんですか?」
「わあってるって、こういうことだろ。男として、見る!」
「……男として」
「見る!」
「その意味は?」
「女として見ない!」

541 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <7>」:03/07/09 04:04
清四郎はよりによって『悠理に』手紙を書いたことを激しく後悔していた。
当の悠理は大真面目な顔をしている。
何と言おうか清四郎が迷っているうちに、悠理が口を開いた。

「なあ、清四郎」
「……なんですか?」
「あたしも気持ちをうまく言葉にすること苦手だけど、つまりこう言うことだろ。
清四郎を他の男よりちょっと違って見るってコト。他の奴より少したくさん
喋ったり、少したくさん顔を見たり、少したくさん会ったり……」
悠理の足が照れ隠しかぶらぶらと揺れている。
清四郎はほっとした気持ちになった。
「そういうこと、ですね。そうです」
「だったら、あたし、ずっとそうしたいって思ってたから。ずっと前から、そうだったら
いいのにって思ってた。だから、今日でいい。こういう答えでいいかな」
そう言うと悠理は俯いた。

「……何か言えよ、恥ずかしいじゃんか」
「感激で胸がいっぱいなんですよ。それに僕も口下手なのでね」
清四郎と悠理は顔を見合わせるとにっこり笑った。

542 :「七夕競作・清四郎君からの手紙 <8>」:03/07/09 04:04
帰り道、二人はどちらからともなく手をつないでいた。
何となく公園に入り、ジュースを買って二人でベンチに座る。
鳩に餌をやりながら悠理がふと言った。

「清四郎、又手紙書いていいぞ。文句じゃないなら、あたし、大事にするから」

ぶっきらぼうなお願いに清四郎は微笑んだ。
「手紙に書いてお願いが通るんだったら、毎日書きますよ。それじゃあ、次の手紙には、
キスしてもいいですか?って書きますかね」
「いいよ」
「……え?今、なんて?」
「恥ずかしいから何回も言わせるなよっ!! いいよっ!」

余りの幸運に清四郎は驚いたが、そのままそっと悠理の形のよい赤い唇に自分の唇を重ねた。
そのまま、くらくらする一瞬を二人で共有する。
やがて唇が離れると悠理は清四郎の胸に自分の頭を預け、清四郎はしっかりと悠理の華奢な
身体を抱きしめた。

悠理は夢見心地な瞳をしていたが、やがて小さな声で呟いた。

「手紙に書いてお願いが通るんだったら、あたしも書こうかなあ。
清四郎、明日の宿題うつさせてって―――」

543 :「七夕競作・清四郎君からの手紙」:03/07/09 04:05
これで終わりです。ありがとうございました。

544 :名無し草:03/07/09 10:42
>清四郎君からの手紙
競作一作目ですねー!
ふたりの会話に笑わしてもらいました。
清×悠の悠理ってかわいいから大好き!

545 :名無し草:03/07/09 14:42
>清四郎君からの手紙

イイ!!
清×悠って眼中になかったけど、こういう会話が実際なされてそうだ、と
思わせてくれる作品でつた。
最後の悠理の一言がいいおちになってるかな、と。

とりあえず、第一番目というのは大変勇気がいるものと思います。
お疲れさまでした!

546 :名無し草 :03/07/09 15:48
>清四郎君からの手紙
清×悠 好きなもので、嬉しく読みました。

競作、他の作品も楽しみです。


547 :名無し草:03/07/09 17:44
>清四郎君からの手紙
清×悠の会話もさることながら、清四郎って本当に
こういう手紙書きそうだな〜と思うと笑いが止まり
ませんでした。
凄く長い手紙なのに、本来の目的の部分は少しだけ、
しかも悠理には全然伝わっていない、というのが
恋愛下手な彼らしいと思って(w

548 :名無し草:03/07/09 20:39
競作参加します。
カポ無しで7レス使います。


549 :夏の日の少年 1:03/07/09 20:40
 月もない蒸し暑い夏の夜のことである。東京の夜はこんな日でも星が見えにくい。
 もともと宵張りな悠理であったが、今夜はいつもと様子が違う。
 明日からのテストに向けて、珍しく勉強中である。机について早2時間、友達に作っ
てもらった問題集は、まだほとんど進んでない。
「……清四郎の鬼。こんなん全部出来るかっ」
 ブツブツいいながらノートに向かっていたが、とうとう音を上げた。
 窓を開けるとモワッとした夜の空気が部屋に流れ込む。クーラーで冷えていたのか、
暑さと湿り気が今は妙に気持ち良かった。
 気分転換に映画のパンフレットでも読もうと、本棚を探していると何かのはずみで1
冊の本が床に落ちた。
 古くて大判なその本には見覚えがあった。くすんだ青い表紙には「百鬼夜行」という
おどろしい字と共に妖怪ぬらりひょんが描かれている。
「これって……」懐かしい紙の手触りに、記憶が急速に過去をさかのぼった。




550 :夏の日の少年 2:03/07/09 20:40
 その夏は父母も兄もとても忙しく、悠理は一人で五代の家に滞在していた。
 自然がそのまま残っている五代の家の周りは小学生の悠理を興奮させる。
 連日、朝ご飯がすむと飛び出して行き、あちこち探検するのが悠理の楽しみであった。
 そのうち友達もできた。坊主頭でいつもトンボ柄の着物を着た次郎は悠理と同い年で、
いかにも田舎で育った子供らしく、セミ取りや泳ぎの名人である。
 次郎は誰も知らないひまわり畑を教えてくれたり、林の中の近道を知っていたり不思
議な子であった。気の合う二人は毎日、日暮れまで連れ立って遊び歩いた。

 ある日、父の万作が忙しい合間を縫って愛娘の顔を見に来た。数時間しか一緒にいら
れない、つかのまの親子団欒である。万作は悠理に土産を持って来ていた。
「とーちゃん!」
「元気にしてただか? ほら、これ木曽じいが悠理にってくれただがや」
 悠理は久しぶりに会う父の胸に夢中で飛び込み、懐かしい匂いをかいだ。暖かい父の
懐が心地よく、息を弾ませながら飽きることなく喋り続ける。
 裏の沼で泳いだこと、セミ取りをしたこと、トウモロコシの収穫、水切り遊び……。
 父は悠理を抱いたまま、「うん、うん」と頷き、熱心に聞いてくれる。
 そしてそのまま、悠理はいつしか喋り疲れて眠ってしまった。
 目覚めた時、枕元に手紙が置いてあった。
「悠理が元気そうで安心しただがや。五代のいうことをよく聞いていい子にしててほし
 いだ。もうすぐ母ちゃんも時間ができるから、そしたら二人で迎えにくるだよ」
 達筆な父の字を見て悠理は急に寂しくなった。折しも外はもう夕焼けで、畳を赤く照
らしており、遠くでヒグラシが鳴いている。縁側で風鈴がチリンと一回、音を立てた。


551 :夏の日の少年 3:03/07/09 20:41
 その夜、悠理はなかなか寝付けなかった。昼間寝てしまったせいもあったがやはり寂
しかったのであろう。とりわけその夜は蒸し暑かったのも原因の一つであった。とうと
う蚊帳から抜け出すと、父が持ってきてくれたお土産が気になった。
 次の間の机に置いてあった包みを開けると、「百鬼夜行」という恐しい字と妖怪が描
かれている。悠理はわくわくしながら本をめくった。そこには天狗、河童をはじめとす
る、ありとあらゆる妖怪が暗めの色調で緻密に描かれている。
 最初こそおもしろがって眺めていた悠理だが、だんだんと恐くなっていった。
 そうすると、この部屋に自分の他に何かいるような、それがジッと襲いかかるタイミ
ングを狙っているような気がしてきた。悠理は慌てて本を閉じた。
 しかし、本を閉じても怖いのに変わりはない。やはり何かの気配を感じる気がする。
 ふいに、その気配が揺れて自分に向かって来るような気がした。
 全身に鳥肌が立った。

 ハッと気がつくと、悠理は机に伏していた。「百鬼夜行」の本は先程と同じくきちん
と閉じられていたが、全身に立った鳥肌は、相変わらずである。さっきまであんなに暑
かったはずなのに、寒気がする。冷や汗が一筋、背中を伝った。
 ぐるりと部屋を見回すが、誰もいない。
 しかし、やはり何かいるような気がして、悠理は息を殺して神経を集中させる。心臓
が早鐘のように鳴っていた。
 どうするどうするどうするーーー頭が目紛しく回転する。
 ふいに部屋の気配が再び揺らいだ。
 悠理は反射的に「ぎゃっ!」と叫び声をあげて庭へ飛び出すと後目も気にせず、一目
散に駆け出した。とにかく、とにかく逃げなきゃーーこの一心であった。


552 :夏の日の少年 4:03/07/09 20:41
 空気が肌に纏わりついてくるような晩であった。
 どれくらい走ったのだろうか、息を切らせて悠理は立ち止まった。
 気がつくと真っ暗闇である。月もなく、星もない。この辺りでは珍しいことである。
音もない。毎晩のように聞いていたカエルの声も鈴虫の鳴き声もーーー。ひりっとした
痛みが走った。夏草だろうか、足が切れていた。サンダルに血がにじんでいる。
 悠理は呆然と立ちすくんだ。前後も判らない闇に一人きりである。

 泣きたいような気持ちで、しばらく途方に暮れていると、ポツンと赤い灯りが見えた。
 さっき本で見た「狐火」がついに出たと思った悠理は、慌てて身を翻したが、眼前に
はただ闇である。ようよう躊躇ったが、思いきって狐火に「おーい!」と呼びかけた。
 すると流れるように灯りが近寄ってきた。その主はなんと次郎であった。
「次郎! 良かったぁ。迷っちゃってさー」
「知ってるよ。今、五代や屋敷のみんなが必死になって探してる」
 次郎はニコニコと笑った。
「さ、帰ろう。送っていってあげるから。……驚かせちゃって、ごめんね」
「うん」すっかり安心して、悠理は次郎と手をつないで歩き出した。
 冷たいーーこんなに暑い夜なのに次郎の手は冷たかった。ひんやりした手を暖めるよ
うに握りかえすと、次郎はちょっと笑った。

 次郎の持つ提灯だけがポツンと赤い。畦道だろうか、砂利が多くて二人の歩みは遅い。
 ふいに頭上で鬱蒼とした大樹が風でザワザワと鳴った。
 刹那、それに誘われるような突風が吹いた。
「わわっ」拍子に次郎の手から提灯が落ちた。砂利道に提灯がメラメラと燃え上がった。
 立ち止まった次郎は少しの間、上を仰ぐと寂しそうに笑った。
「もう帰らなきゃ」「え?」次郎は悠理を見ることなく続けた。
「だから、ここから先は……あの人たちに連れて行ってもらってね」
 そう言う次郎がすうっと指差した先に、いつの間にか数人の大人が前方を歩いている。
突然のことに訳がわからず悠理が戸惑っていると、「提灯が、燃え尽きる前に。早く」
次郎が悠理の背中をとんっと押した。


553 :夏の日の少年 5:03/07/09 20:42
 押されて前のめりになった悠理の足下で砂利が鳴る。その時、提灯が燃える赤い炎の
向こう側で、一人の女の人がふりかえった。と同時にその人と目が合った。途端、
「あら、悠理ですわ」その凛とした声に、他の人たちもこちらを見た。
「ホントだ。何やってたの?」「遅い!」
「早く来なさいよ。みんな待ってるんだから」
 大人たちが口々に自分に話しかけてくるのを、悠理は呆気にとられて見た。知らない
人たちである。歳の頃は兄と同じくらいか、少し若い……。覚えはないのに、その顔は
どれもどこかで会ったことがあるような、何故か懐かしい気持ちが起こる。
 訳がわからず次郎を見ると、安堵したような顔で微笑んでいるだけである。
 尚ぼんやり見ていると、やがて一人がやって来て、悠理の手を取った。
「何ボーっとしてるんですか? あんまり手間をかけさせないでもらいたいものですな」
 ひっぱられて悠理はその人達の先頭を歩いた。真っ暗なのに前が見えるのか、手をつ
ないでる男の人は迷うことなく進んでいる。足の裏には柔らかい土の感触があった。
 途中、悠理は次郎が気になり急いでふりかえったが、何も見えなかった。
 見知らぬ大人たちは賑やかなお喋りと楽し気な笑い声をあげる。何を話してるのかわ
からないのに、それは悠理を楽しい気分にさせる。それが不思議であり、幼心にも何か
が疑わしいと感じた悠理は不安になって見知らぬ人たちを見上げた。
 いつも、誰か知らない人について行ってはいけないと散々言われていたのである。
 見上げる悠理を見て、その人たちは微笑んでいた。つないだ手は大きく暖かかい。



554 :夏の日の少年 6:03/07/09 20:42
「ーーー嬢ちゃまぁーー!」
 遠くで悠理を呼ぶ五代の声が聞こえた。それが徐々に近付いて来る。
「五代だ」声に気がついて悠理も叫んだ。「ここにいるよー!」
 悠理はつないでいた手を振り解いて、駆け出した。ふと後ろを見ると、大人たちは笑
って見送っている。一度大きく手を振ると、暗闇をかきわけるように走った。
 そして辻の曲り角で、ばったり五代と出会した。悠理を見出した五代は老顔をくちゃ
くちゃにしながら泣いて喜んだ。老いて筋張った腕が強く震えている。五代の柔らかい
浴衣に埋もれながら悠理は素直に謝った。走り過ぎたせいか体が妙にだるい。
 近くの田んぼから、うるさい程のカエル合唱が聞こえる。
 見上げると星が空を埋め尽くすかのように広がっている。星が一つ流れた。
 五代の家に帰り着くとそのまま悠理は高熱を出して寝込んだ。

 何故かその日以降、悠理が次郎に会えることは無かった。
 2日後、快復した悠理はいつも次郎と待ち合わせた裏の沼に出かけたが、普段誰も近
付くとこのないそこはシンと静まり返っているばかりである。
 昼間、どこへ行ってもどこにもいない。夜の悠理は当然、外出禁止である。
 近所の子供に聞いても、次郎のことを知っている子は誰もいなかった。
 腑に落ちないものを感じながら、悠理はそれでも毎日次郎を待っていた。
 しかし結局、あの夜のお礼を言う間もなく、両親が迎えに来る日がやってきて五代の
家を後にしたのであった。


555 :夏の日の少年 7:03/07/09 20:43

 あの夏はなんだったのだろう? 次郎とは誰だったのだろう?
 今思えば、夏の陽炎が見せた幻のだったのかもしれない……。
 あの日から見たことはなかったその本を、悠理は広げてみた。本はカバーが多少、色
褪せているものの、暗くて緻密な絵はそのままである。今の悠理から見れば、その絵は
とても美しく丁寧に描かれており、凝ったものであるのがわかる。著名な画家が描いた
贅沢な本であった。
 しかし、あの夜はこの本がどんなに恐ろしかったことか……。
「木曽じい。こんなもん、子供にやるなよなぁ」
 苦笑と共に呟きながらページをめくっていると、最後のページに一通の封筒を見つけ
た。封筒は黄ばんで古い紙の匂いがした。
 不思議に思いながら封を解くと、そこにはたどたどしい毛筆の字が並んでいた。

「悠理へ 
 こんなに楽しい夏は初めてだった どうもありがとう 君のおかげだ
 僕はきっと忘れない いつまでも元気で さよなら            次郎」

 悠理の心にふつふつと懐かしさが広がった。次郎からの手紙ーーーあの夏の蝉時雨が
にわかに蘇った。すいか、クワガタ、麦わら帽子、夕暮れまで遊んだ裏山……。
「次郎……」声に出して呼んでみる。
 それはあの夏、たしかに次郎が存在していた証明であった。

 その夜、ついに悠理の勉強がはかどることはなかった。テストの結果は言うまでもない。
 悠理が五代から次郎の正体について聞くのは更に後のことである。

                              <終わり>

556 :名無し草:03/07/09 20:43
お詫びと補足
次郎?と思われた有閑シークレットエピソード未読の方、コミックス派の方すみません。
エピソードその1・剣菱悠理編の登場人物の一人です。
万作の手紙は、あえてあの口調にさせてもらいました。
読んで下さってありがとうございました。


557 :名無し草:03/07/09 21:21
>夏の日の少年
おお、続々と競作が!うれしいなったら、うれしいなっ。
シークレットエピソードは未見の私ですが、楽しく読ませていただきました。
途中までは妖怪?と思っていたのですが、次郎は実在する人だったのですね。
胸がきゅっとなるようなお話でした!

558 :名無し草:03/07/09 22:49
>清四郎君からの手紙
清四郎らしい手紙に悠理らしい反応でした。
面と向かってはっきり言わないと、悠理はきっと気づかないんでしょうね。
言葉を弄しても報われない清四郎、可愛かったです。
>夏の日の少年
おお、次郎!
悠理のなつかし遊び友達ですね。
もしかしたら、また遊べるかも。

559 :名無し草:03/07/09 23:20
>清四郎君からの手紙
悠理がもし恋をするなら絶対清四郎!って思っているので
可愛いなーって思いながら読みました。トップバッターお
疲れ様ですた!
>夏の日の少年
あの次郎がこんな感動キャラに…(w

ところで東京しかやってないかな?今やってる竹野内豊の
お酒のCM白鹿ですよね。それだけで幸せw
甲子園の看板も幸せ!

560 :七夕競作・僕の姫君へ(1):03/07/10 02:02
初夏の昼下がり。落ち着いた雰囲気のちいさな一戸建ての家の表札には、
「松竹梅」と書いてある。

ガサガサ…そこには、衣替えをしようと洋服の整理をしている新妻の姿があった。
はにかんだような表情で夫の夏物を用意しているのだが、
それでもどこか切なげな雰囲気がにじみ出ている。
──と。
ハラッ。「何か落ちた…」
白く小さな手を伸ばしたその先には、シンプルな白い封筒があった。
黒のボールペンで小さく書いてある。
『野梨子へ』
人のものなどは絶対覗き見しない野梨子であるけれど、自分宛の手紙なら読んでも
差し支えあるまいと思い、そっと封を切った。紙のにおいがする。


561 :七夕競作・僕の姫君へ(2):03/07/10 02:03
『野梨子へ
結婚おめでとう。式終わって今頃家着いたのかな?
ま、とりあえず幸せだって話だよな。
オレが手紙書くなんてびっくりしたろ? 突然ごめんな。

それにしても思ったとおりだよ。お前と清四郎の結婚!
悠理と清四郎の結婚騒動の時なんかキレそうだったもんなぁ(笑)
あの時お前が清四郎ブッ叩いて部屋出てった後、あれはブラコンだとか
みんなで言ってたんだけどハズレたなー。
ま、いつもそばにいなきゃって点は当たってんだろ?
幸せになれよ。





                                  
                                  
                                   』
手紙はなぜか沢山の空白を残し2枚目へと続いていた。


562 :七夕競作・僕の姫君へ(3):03/07/10 02:04
『ごめん。色々書くつもりが書けなくなっちまった。
つくづく不器用だなぁって思うよ。当たり障りのない事しか言えねー。
つうか今日言うことじゃないはずだ、ホントは。
もっと前か、もっと後が普通だろって思う。けど、
けど何か今日じゃなきゃだめなんだ。マジゴメン。謝っとくわ。
けど(何度もごめん)、だからって2人を引き裂いてやるとかそーゆう事じゃない。
ただオレがしたくてする事だから。
この手紙かなり書きなぐってるし(字汚くてごめん)見直すつもりもない。
だから野梨子も読んだらソク捨ててほしい。
なら手紙にすんなってツッコミたくなると思うけど、
最初にもオレが手紙書くなんてとか書いたと思うけど、
面と向かって言える自信がない。それは、〜〜〜なんだろ泣くとか、キレるとか
じゃないけど、たぶん冷静でいられないって事だな。うん。

今日ほんとに結婚式なんだな。感慨深い。
なんか、漠然としたものが形になるって感じかな。
オレがそうなんだからお前たち人はもっとそうなんだろうって思うよ。

これから読むこと、忘れてくれていい。忘れて。・・・・いや、忘れないでほしいかも。
ごめん。マジテンパってるわ。手紙なのに緊張してるし。
野梨子が忘れても、俺は忘れない。
今日この日に渡すのも本心ではわざとなのかも。もうわかんねぇ。          
                                       』


563 :七夕競作・僕の姫君へ(4):03/07/10 02:05
『初めて知らせ聞いた時は、目の前が真っ暗になったよ。
わかってたはずなのに自分では何もしないでただ毎日過ごしてた。
清四郎にムカつきながら、オレには出来なかった事をしてるあいつを
尊敬した。(今もしてるし)
野梨子を幸せにするのは清四郎ってすげぇ自分に言い聞かしたし!
清四郎も大事だし。

今、朝コレ書いてんだけど、結婚式に行かない選択ってまだ残ってんじゃん。
けど多分オレは行くね。野梨子をさらいに行くわけでもなく普通に
祝福してると思うよ。今夜コレを読んでるなら当たりだな。
マジ、バカみてー。超女々しいよな。
でも伝えずにいられないんだ。今伝えたくて。ごめんな。
謝りすぎでごめん。なんか分けわかんなくなってきた。わかってんだけど。

この手紙渡したらしばらく仕事で外国行くな。打ち込むつもり。
2人を見ないですむように。清四郎によろしく。
お前たちなら大丈夫。息もぴったりだし小さい頃からずっと一緒にいたんだし。
絶対大切にしてくれるから、野梨子も大切にしろよ。
可憐と美童は絶対いい相談相手になるぜ。
悠理はやめといたほうがいい。何も得られないと思うから(笑)        
 』
震える手で4枚目をめくると、そこにはほんの、少しの言葉しか記されていなかった。


564 :七夕競作・僕の姫君へ(5):03/07/10 02:07



『     好きだ。     』




565 :七夕競作・僕の姫君へ(6):03/07/10 02:07
震える息を吐き出す野梨子の脳裏には、さすがにドラマのように
白無垢ではなかったけれども泣きながら道を駆ける自分の姿が
浮かんでいた。


ちょうど去年の今頃。朝、早い時間。
ドアをあけた魅録はすでに背広姿だった。突然の友人、それも今頃
準備しているはずの今日の花嫁の登場にとんでもなく驚いているようだった。

「みろ…く…」「おっお前、どーしたんだよ!?」
「私、清四郎とは結婚しませんわ」「!!?」
「ずっ、ずっと清四郎がそばにいたのが、いるっいるのが当たり前だって思ってましたの。でも、魅録のことを思い浮かべるたび心が痛くなって、清四郎の優しさがずっと痛くて…
そうしたら今清四郎がいきなり、『行って下さい』って、私…何も考えられないはずでしたのに気付いたらここまで、来てま」
ぎゅうっ……
言い終わらないうちに野梨子は魅録の胸の中にいた。
「ゆうのがおせぇよ…」
そしてゆっくり、濡れた瞳と唇を見つめた。
誰かを傷つけて手にいれたもの。これからの沢山の不安。
ないわけがなかった。でも、怖くない。2人でいられれば何にも。
2人は待ち望んでいた甘くて苦いくちづけを交わした。


566 :名無し草:03/07/10 02:08
>清四郎君からの手紙
あははは、サイコー!
可愛いなあ、二人。
理屈っぽくて恋愛不得手な手紙、本当に清四郎らしい。
血の巡りの悪い悠理も、いかにも悠理らしくて。
「椅子の上で体操座り」、昔LPのジャケットで、
清四郎が悠理のパンツを横目でのぞいてた事を思い出しますねえ。
爆笑です。この二人イイ!!
オチまで完璧に決めて下さいましたね!
楽しませていただきました。
作者様、サンクスコ!

567 :七夕競作・僕の姫君へ(7):03/07/10 02:08
野梨子と清四郎は籍を入れていなかったので2人は3ヶ月後に結婚した。
何も怖くないといっても2人に清四郎のことが気にならない訳なかった。
野梨子は魅録のその日の想いを知る事が出来ずに少しの不安を抱えていた。
甘い中に切なさの影がチラつく生活だった。

でも。
今、この手紙を読んであの時自分は魅録しか見えなかったこと。
そして魅録も野梨子しか見えなかったということがありありと身に染みてきた。
あの時絶対2人なら大丈夫と思えたことも嘘じゃない。
ぜんぶ、うまくいく。

その日の夜。
「ただいま」「お帰りなさい。今日整理をしてて手紙を見つけて…」
「何それ?…まさかアレ!?失くしたはずのあの手紙!?読んだ!?」「ええ」
「マジかよ、勘弁してくれよ!捨てろよ!?」「嫌ですわ」野梨子は笑顔を見せた。
「あの日のことが全部、よみがえってきますの。魅録が大好きだっていう気持ちだけ。
それがあれば、大丈夫って。絶対消えないって」「…うん」
笑顔になった魅録が言う。
「今日いいもの貰ってきた。なんだと思う?」ハガキだった。
『結婚します 菊正宗清四郎 剣菱悠理』「いいだろ。なっ?」
想いが溢れる。大切な人を傷つけてしまったこと。それを超える気持ちがあること。
全部、ぜんぶ今につながる。
目の前にいる大切な人を見つめた。澄んだ瞳。

きつく、きつく、抱きしめた。
                         
                     おわり

568 :七夕競作・僕の姫君へ:03/07/10 02:10
ありがとございました!

569 :名無し草:03/07/10 07:30
>「僕の姫君へ」
三作目ですね!乙です!
魅録の手紙心に染みました。野梨子は幸せものだなあ。
そして気の毒な清四郎にもちゃんと幸せな結末を用意してくれた
ところがニクイ。
ところでタイトルの「姫君へ」が何か美童ぽいんですが、
ひょっとして最初は美童が主役だったりとか?

570 :冗談:03/07/10 17:36
はじめに断っておきますが冗談です。

競作うpします。10スレ使います。



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571 :名無し草:03/07/10 18:53
>570
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

シカモ、10スレ…(藁

572 :七夕競作・僕の姫君へ:03/07/10 22:28
>569
ありがとうございます。なんか改行めちゃめちゃでスマソ。
題名考えるの苦手なので、野梨子が姫っぽいので
フィーリングでつけました。

573 :名無し草:03/07/11 14:44
競作参加します。
7レスお借りします。

574 :七夕競作:アマノガワ(1):03/07/11 14:47
さやさやと笹の葉を揺らしていた風が凪いだ。
清四郎は書く手を止め、徐に空を見上げた。
たった一片だけ浮かんでいる雲の周りが薄橙から薄藍に変わりつつあるのを、
ぼんやりと眺める。
冷夏と言われるこの夏にしては珍しく、陽射しの強かった一日も終わろうとしている。
地平線に潰れるように残像を残す太陽は、久しぶりの大仕事に疲れ、
倦怠に沈んでいくようにも見えた。
さぞ待ちくたびれたことでしょうね。
僕には一年も待つなどという芸当は、逆立ちしても出来そうもありませんよ。
心の内でそう呟くと、清四郎は手にした藤色の短冊に視線を落とした。
「なあなあ、なに書いた?」
夕焼け色の地にピンクとブルーの紫陽花が施された極彩色の浴衣を身に纏った悠理が、
ひょっこり顔を覗かせて聞く。清四郎は袂に短冊を隠し、問い返した。
「そういう悠理こそ、何を書いたんですか?」
悠理は慌てて短冊を胸に押し抱き、清四郎から隠した。
「見るなよ! 御利益がなくなるだろ?」
……何か間違っている、と清四郎は思ったが、敢えてそれを正そうとはしなかった。

575 :七夕競作:アマノガワ(2):03/07/11 14:48
二人の遣り取りが聞こえたのか、エンジに絣そして金茶色の七宝柄の帯を締めた可憐が、
下駄の音を響かせながら近づいて来る。
「あたしがなにを書いたか知りたい?」
可憐が赤い短冊をヒラヒラさせながら五人に訊ねたが、全員首を横に振った。
「読まなくても分かるよ。どうせ『玉の輿に乗れますように』だろ?」
美童の台詞に、魅録が吹き出す。
図星であったらしい可憐が、むっとしたように美童に聞く。
「そういうあんたはなにを書いたのよ。どうせ『僕の織り姫に早く出会えますように』
とかくっだらないこと書いたんでしょ」
「なんで解ったんだよお」
くすくすという笑い声が清四郎の耳朶を揺らした。
心地よいその音色に誘われるように、その主を見遣る。
今日の彼女は白地に藍色で竹が描かれた浴衣を纏っている。
自宅であるという気安さがそうさせるのか、その姿は凛としていながら何処か寛いで見えた。
見慣れた姿であるはずなのに、闇に浮かび上がる端正な横顔に、清四郎は暫し見惚れていた。


576 :七夕競作:アマノガワ(3):03/07/11 14:50
「なんだあ、これ? 『ツッワちゃんに会いたい』って……ツッワちゃんて誰だよ?」
何時の間にか魅録が悠理の黄色い短冊を取り上げ、読み上げている。
それを取り返そうと、悠理がぴょんぴょんと跳ねながら言った。
「ツッワちゃんじゃなくてシュワちゃんだよ! 字が汚くて悪かったな!」
「お前な、金もコネも唸るほど持ってんだから、神頼みじゃなくて自力でなんとか出来るだろ?
もっと高尚なことをだな……」
「ほおー『ボクスターが欲しい』っていうのが高尚な願い事ですか」
清四郎が魅録の背後から、青い短冊を覗き込んで言った。
「仕方がねえだろ、車しか浮かばなかったんだから」
照れ隠しなのか憮然としてそう口にする魅録の姿を、悠理が仕返しとばかりに笑う。
「で、野梨子はなにを書いたの?」
可憐が野梨子の白い短冊を覗き込む。
「『来年もこうしていられますように』……随分漠然とした願い事ね」
「いいじゃありませんの、そう思ったんですから。さあ、最後は清四郎ですわね」
野梨子が掌を差し出すが、清四郎は余裕の笑みでそれを躱すと、
一番高い箇所へと短冊を結び付けた。
既に薄墨を垂らしたかのような夜の帳が落ちようとする時間である。
眼を凝らしても、なにを書いてあるかは読み取ることは出来ない。

577 :七夕競作:アマノガワ(4):03/07/11 14:52
「ずるいぞ!」
「そうよお、見せてよ!」
飛んでくる非難の声を、涼しい顔で清四郎は遣り過ごした。
「心配要りませんよ、明日の朝笹を撤去するときに野梨子に確認してもらえばいいことでしょう?
ほら、そんなことより星が出てきましたよ。少しは静かに鑑賞しませんか。
一年に一度のことなんですから」
そう、今日は七夕だった。

都会の夜は、星の瞬きが見えにくいのが常である。
しかし今日はそれが嘘のような満天の星空だった。
暗青色の紙に水を多量に含ませた白い絵の具を無作為に振り撒いたような、星の洪水。
六人は縁側に腰掛け、さらさらと風にたなびく七夕飾りと、その向こう側で瞬く天の川を眺めていた。
「ねえ、きっと短冊って人間から神様への手紙なのよ。短冊が天の川を流れて神様の元へと流れ着くの。
そう考えればロマンチックじゃない?」
可憐がふと思い付いたように言った。
「神様への手紙、ですか。だとしたら、僕の願いは叶わないでしょうね」
ぽつりと清四郎が呟いた。ぱたぱたと扇子を扇いでいた野梨子が手を止め、
傍らの清四郎を見上げて訊ねる。
「どういうことですの?」
しかし清四郎は曖昧に微笑み、優しい眼で幼馴染を見つめただけだった。

578 :七夕競作:アマノガワ(5):03/07/11 14:54
単調に降り続く蝉時雨にうんざりしたように可憐が頬杖を付き、溜息を吐いた。
「もう、冷夏は何処へ行ったのよ。こんなに陽射しが強くちゃ、
うかうか外にも出られないじゃないの。あー、退屈だわ」
頷くことでそれに同意しながら悠理が差し入れを口にしている。
いつもと同じ生徒会室で、いつもと同じメンバーと、似たような会話を交わす放課後。
確かに退屈に違いない。
十個目の水羊羹を平らげて漸く満足したのか、悠理が顔を上げ唐突に訊ねた。
「そうだ野梨子、清四郎の短冊にはなんて書いてあったんだ?」
不意に話し掛けられ驚いたのか、野梨子がアイスティーの入ったグラスをひっくり返した。
慌ててテーブルを拭きながら、しどろもどろになりながら野梨子が言う。
「え……っ? あの……ごめんなさい、読むのを忘れてしまって……」
「えええー? なによお、楽しみにしてたのに!」
可憐が口を尖らせて不満の意を表す。野梨子は小さい体をなおも屈めるようにして、
項垂れながら、ただ謝罪の言葉を繰り返した。
清四郎はそんな幼馴染の様子を横目で窺い、素知らぬ顔でグラスを口に運んだ。

579 :七夕競作:アマノガワ(6):03/07/11 14:56
碁盤に太陽の影が映り、長考している少女をうっすらと照らし出している。
生温い風が頬を撫でる。既に陽は大きく西に傾いているというのに、
照り付ける光は夕暮れのそれとは思えぬほど強い。
清四郎は目の前で碁石と対峙する野梨子から視線を外し、
昨夜のまま放置されている七夕飾りを見遣った。やはり届かなかったのか。
落胆の色を気取られぬよう、清四郎はこっそり嘆息した。
その様子に気付いたかのように、大きな双眸でひたと清四郎を見上げながら、
野梨子が言った。
「ねえ清四郎。もしも短冊が人間から神への手紙であったなら僕の願いは叶わない、と昨日言っていたでしょう? その理由を……教えて欲しいんですの」
――どうやら、届いたようですね。
清四郎は口元を綻ばせながら応える。
「簡単なことですよ。僕の書いた短冊は神にではなく、あなたに宛てた手紙ですからね」
清四郎は知っていたのだ。
ああいう前フリをしておけば、野梨子が友人達への責任感から自分の短冊を必ず確認するであろうこと。
そして友人達にはその内容を決して告げないであろうことを。

580 :七夕競作:アマノガワ(7):03/07/11 14:58
「清四郎」
「なんですか?」
呆けたように清四郎が応える。
「……ちゃんと届きましたわ」
蚊の泣くような頼りない声で野梨子が言った。頬が夕焼けを浴びて、紅く染まっている。
「それは、僕の願いが叶うということですかね」
「……ええ」
清四郎はふっと微笑み、この斜陽の向こうに隠れているであろう星を見遣った。
「……今日も、天の川が見えますかね」
清四郎の視線を追うように空を見上げていた野梨子が、柔らかく微笑んだ。
「きっと見えますわ」
「そうですね」

『ずっと傍に居たい』
そう書かれた藤色の短冊が、風の中に舞って見えた。


581 :名無し草:03/07/11 15:00
競作リアルタイムでキタ〜〜〜〜〜!!(AA略
七夕まで取り込んでくださって、すごく良かったと思いますです。
清四郎の策士ぶりにニヤリとしまつたw

582 :名無し草:03/07/11 20:56
>アマノガワ
ロマンティックなお話ですね!
私は「短冊が天の川を流れていく」くだりがとても気にいってしまいました。
読んでいて心地よいお話でした。乙です!

583 :名無し草:03/07/11 21:56
>アマノガワ
ヤパーリ清×野が大好き!!
超良かったです!6人の願い事それぞれがよかったでつ。
特に野梨子(w原作でもきっとそーゆうだろうなぁ…

584 :名無し草:03/07/11 22:27
>アマノガワ
七夕競作だから誰か七夕ネタをやってくれるかなと期待していたら
やっぱりやってくれました。ありがとう!
いつもながら美しい文章………あ、失礼。

585 :競作 戀ひやめし夏 [1]:03/07/12 01:20

 湿気ていた先週とは打って変わり、初夏らしく蒼穹が広がっている。
 塀や柵に絡む蔓草や木陰を作る木々。そして昼日中に萎びる朝顔の淡い紫。
 甘い香り。これは、豊かな草の匂いか、それとも刹那なる夏虫の命の匂いか。
 庭師によって整えられながらも、どこかここの裏庭は野趣を残している。少女は散策しな
がら、それを心地よく受け止めた。日差しを避けて木の傍に寄ると、思いの外ひんやりとした
葉の温度が暑気を払い、木漏れ日が少女の白のワンピースや剥き出しになった皮膚に
まだら模様をつくる。
 時は眠るように、ひどく緩やかである。
 ここでなら、静かな夏休みが過ごせますわね、と少女は思った。
 明治の頃からあるという石造りの洋館は、主に避暑に利用されてきた。野梨子も、両親
に伴われて、何度か夏休みに訪れたことがある。だが、ひとりでやってくるのは初めてのこと
だった。
 今年の夏は、ひとりで過ごしたい理由があったのだ。


「あら」
 散策中にその紙片に気が付いたのは、殆ど偶然のことだった。土の中から顔を覗かせて
いる白い紙のようなものがある。
 野梨子ははじめ、無粋な塵かと思い、回収すべく近づいたのだが、果たして、それは塵で
はなかった。
 土を払いのけ、手に取ったその紙は、丁寧に二つ折りされていた。折りたたんだ状態から
でも、裏地から罫線と文字が透けていることから、すぐにそれが手紙ということが察せられた。
白かと思った色は、実のところ青が褪せたものであったらしい。
 捨てられたのでも、忘れたのでもない。ここに、誰かが埋めたのだ。
 そう悟った途端、手紙から香りたつ秘密の匂いに、野梨の胸はどきどきと脈打つ。
 己の好奇心をはしたないと思いながらも、惹かれるままに彼女は手紙を開いた。

586 :競作 戀ひやめし夏 [2]:03/07/12 01:23
白鹿深代様―――――――――――――――――――――――――――――――

 久しくお顏を合はせてゐませんが、お元氣でいらつしやるでせうか。
 遠い地であなたはどんなことを考へ、どんな生活を送つていらつしやるのか、わたしは想ひ
を馳せるのだけれども、屹度何時ものやうに靜かに過ごしていらつしやるのでせうね。
 最後に逢うた日、わたしの想ひを察したあなたは、默つて顏を背け、あらぬ處(ところ)を
見ましたね。あのときからわたしの時間は止まつた儘です。
 わたくしは、實のところ此の手紙に何を託すべきか、まだ迷つてゐます。何かを變ふる事を
希ふのでは無いのです。ただ、此の胸を塞き止める想ひを、どうかあなたに知つて貰ひたい
だけなのです。
 返事は必要ありません。ただし願はくは、私の想ひがあなたに傳へられますやうに。
 幼馴染であるあなたに想ひを寄せるやうになつたのは、あなたが女學校に入つた年のこと
です。いつまでも幼子のやうであつたあなたを説教してゐたと云ふのに、美しく振舞ふやうにな
つたあなたを見て、わたくしは動搖したのです。其れでも、わたしにはどこか意地のやうなも
のがあつて、あなたを想ふ氣持ちを中ゝ認められずにゐました。自分許りがあなたに囚わ
れてゐる事に悔しいやうな心持になつたのです。
 屹度あなたに戀歌を諳んじてみせる若者は多いでせうし、あなたも淑女らしく告白を聞く
のでせう。此のやうな想像をするとき、わたくしの胸は嫉妬で灼ききれさうに成ります。
 散ゞ、意地の惡ひ言葉をあなたに向け度けれども、本心ではありません。わたくしはただ、
わたくしをいつまでも忘れずにゐて呉れる事を望んだのです。
 初戀でした。其の想ひは日に日に積もる許りで、ちつとも薄らぐことはありません。
 けれども此の文をしたためる事で、此の戀に終止符を打たねばなりません。實に成らぬ戀
を許される歳でも、また立場でもない事は承知してゐる積りです。
 わたしの下らぬ繰言を、最後まで讀んでくださつてどうもありがたうございます。

 追伸  此の文が屆く頃は、丁度七夕あたりでせう。
      今年は短册に、あなたの健康を願ふことにします。

―――――――――――――――――――――――――――大正十年 七月五日 田仲哲郎

587 :競作 戀ひやめし夏 [3]:03/07/12 01:24
 知らず思惟に耽っていた少女は、突然啼いた鳥の声に我に返った。
 はっとして手の中にある土で汚れた手紙に眼を落とす。所々破けており、また、文字が達筆
に過ぎる点はあるが、文意が判別出来ない程ではない。
 恋文だった。
 日付も古い。油紙にも覆われずに土に埋められた状態で、よくも平成の時代まで残って
いたものだと野梨子は感嘆した。いや、土の中にあったからこそ、まだしも原型を留めていた
のだろうか?

 ――其れでも、わたしにはどこか意地のやうなものがあつて、あなたを想ふ氣持ちを中ゝ認め
 られずにゐました。自分許りがあなたに囚われてゐる事に悔しいやうな心持になつたのです。

 その文章を、繰り返し目で追う。
 白鹿深代という女性を野梨子は思い浮かべた。彼女はこの文を読み、何を思ったのだろう。
 そして、どのような想いで、土の中に埋めたのだろう。
 捨てたのではない。宝箱に収めたのでもない。こうして、土中に埋めたということに、彼女の
気持ちが推し量られて、野梨子は沈んだ。
 成就することのない恋だったのだろう。
 野梨子は、静かに手紙を元のように折りたたみ、土の中に埋めた。
 恋とは、そういうものだと思う。偶然と必然が絶妙に折り重なって、初めて芽生える。その成就
や結末もまた、神の指先を逃れえるものではない。

588 :競作 戀ひやめし夏 [4]:03/07/12 01:25
 うなじから汗が滴り、背中を伝っていった。随分長く、立ち尽くしていたらしい。
 木の葉が太陽を遮ってくれるために涼しいと感じていたが、この昼日中にあって、熱れ(いきれ)
を避けることは出来ても、夏そのものが持つ暑さまでは払うことが出来ないようだ。
 日射病になっては笑えない。
 野梨子は、とりあえず建物の中に入ろうと思って、白いワンピースの裾を翻した。とはいっても、
ここは田舎にあるということもあり、本邸を軽く凌駕する広さである。今は咲かない背の低い花木
の間を縫うように作られた道を黙々と歩く。
 考えるのは、やはり先ほどの手紙であった。

 ――今年は短册に、あなたの健康を願ふことにします。

 聖プレジデント学園では、毎年大きな笹が業者によって何本も設置され、生徒たちは思い思い
の願いを短冊を吊す。
 野梨子もまた、短冊を書いた。有閑倶楽部のメンバー全員で書いたときは、世界の平和を
書き記した。笹には、沢山の短冊が吊るしてあった。中でも恋を願うものは多く、匿名での祈りの
数々に、胸苦しい思いに囚われた彼女は、ひとりそっと場を抜けた。
 たとえ匿名の短冊でさえ恋の永続を願うことは出来なかった。今まさに失いかけているものを徒に
望むことは、同時に苦しみを伴うことであったから。
 夕暮れ時、野梨子はそっと笹に近づいた。
 そして躊躇の末、相手の健康のみを祈った。

          ・ ・ ・ ・ ・

 屋敷に戻ると、安堵の表情をして管理人とその妻が迎えてくれた。
 どうやら、あまりに長く散策から帰ってこないことから、裏庭で倒れているのではないかと心配し
はじめたところだったらしい。
 広間に戻ると、管理人の妻が、冷やした麦茶を用意してくれていた。
 野梨子は礼を言うと、テラスの方へ持っていき、デッキチェアに身を任せながら、咽喉を潤した。
 同じ屋外ではあるが、テラスの下は木陰よりもさらに涼しい。沢山の水滴が付くグラスをサイド
テーブルに置くと、そのままうつらうつらと眠りに落ちていった。

589 :競作 戀ひやめし夏 [5]:03/07/12 01:26
 午睡から醒めたのは、半刻ほどしてからのことだった。
 気怠るく身を起こした野梨子は、サイドテーブルに何枚か葉書が置かれているのに気が付いた。
 たったひとりで避暑に出かけた野梨子に送られた暑中見舞いであった。
 5日前ぐらいから、暑中見舞いがぽつぽつと届いてきている。両親や、碁の仲間、茶道のお弟子
さんたち、クラスメイト。そしてもちろん、有閑倶楽部の仲間たちの分もあった。
 魅録や悠理からは、去年も貰わなかったので、今年もないだろう。年賀ならともかく、こういった
ものを出す性質ではないようだ。可憐からは昨日、美童からは一昨日届いている。
 そして。
 野梨子は、何枚かある葉書の中で、写真もイラストもない地味なものを一枚選んで抜いた。
 筆で綴られた生真面目な字に、野梨子は淡く微笑む。彼らしいと思ったのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 暑中お見舞い申し上げます。

 炎暑の今日この頃、どのように過ごしていますか。
 僕はこのところ家に篭ってばかりで、たまには顔を出せと雲海師匠に叱られてしまいました。
 野梨子がいないと、どうにも倶楽部にも締りがなくて、ばらばらの夏を過ごしています。出来る
ことなら、夏休み中に全員で会いたいのですが、帰宅の予定はどのようになっているでしょうか
 寝苦しい毎日が続き、体力に自信がある僕も、少々参っています。野梨子も毎夏、食欲を
落としがちですが、暑気に中らぬよう気をつけてください。

                                  七月末 菊正宗 清四郎              
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

590 :競作 戀ひやめし夏 [6]:03/07/12 01:27
 予想を違えぬ内容に、野梨子は口元を笑みの形に歪めた。
 自分が逃げるように東京から離れた理由を誰よりも知っていながら、彼はなんでもないふうに、
こんな手紙を遣してきたのだ。
 自分たちは、幼馴染という枠を超えてはいけなかったのだろう。恋が叶ってから、自分たちの
擦れ違いは始まったのだ。
 手探りのように相手の気持ちを推し量り、ときに、僅かに心を触れ合わせることもあったが、
しかし心は何処までも遠かった。
 否、近すぎたのかもしれない。親よりも誰よりも近くに立ち、相手のことを知り尽くしているから
こそ、立ち入られることを恐れ、また、傷つけることを恐れるのかもしれない。
 何より、この安寧を手放しがたく思い、自ら恋を拒んでしまうのかもしれなかった。
「ああ、目が覚めたんですね」
 軽い訛りの残る口調で、管理人の重太郎が近寄ってきた。野梨子は歪な笑みを隠して、
「手紙、持ってきてくださってありがとうございます」と応じた。
「こんな暑いところで、よう眠れましたね」
「東京はもっと暑いですよ」
「そうですか。私は生まれたときより、この地から離れたことはないので」
 そう言う老人に、ふと野梨子は思いついて問いかけた。
「重太郎さんは、ずっと昔からここの管理人をしていらっしゃるの?」
「私の父がここの管理人をしていたので、生まれたときからここにいますよ」
「白鹿美代という方を知らないかしら。わたくしの曾祖母の代に生きた方だと思うのだけれど」
 白鹿家は、代々男が継いでいるため、嫡子である野梨子が、彼女の曾孫ではないことは確定
している。だが、直接的な血縁関係はないにしろ、白鹿家の人間ということは、曾祖夫の姉妹
である可能性が高い。
 重太郎は、突然のお嬢さんの質問に、首をかしげた。何しろ、昔の話である。だが、暫く考えた
のちに、思い当たったらしい。
「大旦那様の妹さんが、そのようなお名前だったかと存じますが」
 やはり、曾祖母の妹であったらしい。
「美代さんが嫁いだ家の名前は分かりますか」
「確か曽我さま、と」

591 :競作 戀ひやめし夏 [7]:03/07/12 01:28
 やはり、田仲ではなかったらしい。
「そう――ありがとうございます」
 野梨子は礼を言うと、重太郎は引き上げていった。
 ひとりになると、野梨子は再び、清四郎からの葉書を手に取り、何度も何度も文章を読む。
 たったこれだけの文章を書くために、彼が長く葉書の前で悩んだだろう姿が思い浮かび、野梨
子は泣きたくなった。
 そして、葉書を裏返し、表書きを目にやり――。
 宛名のとなりにそっと添えられた言葉に、野梨子は今度こそ、声を殺して泣いた。

          ・ ・ ・ ・ ・

「また、少し出かけてきます。携帯電話を持っていくので、心配しないでくださいね」
 先ほど心配させてしまったこともあり、そう言い残して玄関に向う。サンダルを履いていると、重
太郎の妻に、つばの広い白い帽子を手渡された。
「外は暑いですから、これを被るといいですよ」
 時代遅れのレトロな白い帽子を、野梨子は微笑んで受け取った。

 南中の頃を過ぎた太陽は、僅かに力を弱め、ただ平和で中弛みしているかのように感じる。
 館から裏庭までの小路を歩く。地面から熱が篭った空気がたちあがり、遠い景色が揺らぐ。近
づいても近づいても水面を思わせる揺らぎには届かない。
 逃げ水。
 音には出さず、そう唇を動かす。
(ねえ、野梨子ちゃん。あれは逃げ水って言うんだよ)
 何時の頃だったか、おっとりとした少年が、不思議そうにしている野梨子に向ってそう言ったことが
あった。脳裏に浮かんだのが、まだ膝小僧の見える制服を着ている彼だったから――初等部の、
それも低学年のことだったのだろう。
 どうして、突然こんなことを思い出したのだろうか。
 あのときは、何の疑問もなく、彼のおよめさんになれると思っていた。そんなかつての自分の幼さ
と純粋さに哀しい想いに囚われる。きっと、あの頃の自分のままであったなら、この想いは叶って
いたのかもしれない。

592 :競作 戀ひやめし夏 [8]:03/07/12 01:30
 ゆっくりと逃げ水を追いかけながら歩くと、裏庭に到着した。さっと濃厚な緑の匂いが鼻腔を擽り、
一瞬だけ、野梨子は瞳を閉じる。
 深代という名の女性が、ここを恋の埋葬した理由が、なんだか分かるような気がした。
 ほんの少し勇気を持ち、ほんの少しのものを失いさえすれば。
 この恋は叶うのだろう。
 そのことに気づかなかったわけではない。
 それでも、自分はどうしてもその「ほんの少しのもの」を手放すことは出来ないのだった。
 この恋を叶えて、歪んでしまう自分と彼を見たくないのかもしれない。
 野梨子は暫く歩いて、菖蒲たちの花壇の近くに窪みを見つけた。
 ちょうどいい場所だ。しかし思っているよりも、少し窪みが浅い。
 綺麗に形を整えた爪の中に土が入るのも気にせず、石を使って土を掘る。スコップを使ったわけ
ではないので時間はかかったが、気にしないで掘り続けた。
 そんなに深く掘る必要はなかったけれど、あの手紙のように、せめて自分が生きている間は土の
中に眠ってもらう必要がある。
 満足いくまで彫ると、野梨子はそっと先ほどの暑中見舞いを取り出した。
 もう一度だけ裏書を読み、そして表書きに目を移す。

『ようやく、便りを出すことが出来ました』

 他意無く読めば、忙しさに追われて手紙を出せなかったというふうに読めるだろう。だが、野梨子
には彼が暗に言いたいことが分かった。
 終業式の日、清四郎は『お互い頭を冷やしましょう』と言ったのだ。そして、やってきた手紙が、
あれだった。『幼馴染』としての、清四郎の文面だった。
 清四郎の諦観と決意が否応なく滲み出た文章に、納得するしかなかった。

593 :競作 戀ひやめし夏 [9]:03/07/12 01:31
 互いの想いが通じてしまった日のことを、やはり彼は悔いていたのだ。
 この自分が、東京から逃げずにはいられなかったのと同じように。
 これまで、何度も何度も恋の成就に近づくたびに、傷つけあっていた自分たちだったから、決定
的なことは、ずっと避けていたというのに。
 この想いは間違いなく恋であると断言できるけれども、兄弟を想うように禁忌じみているのだった。
 清四郎の存在のみで世界が完結してしまうことを良しとするには、自分は世界を知りすぎた。

 野梨子は、そっと葉書を土に埋める。
 彼から貰ったものは数あるけれど、ここに埋めるに相応しいものは、最後のこの葉書だけと彼女
には思われた。
 最後の一盛の土を被せると、野梨子は未練を振り切るように立ち上がった。
 不思議と涙は流れなかった。
 終わったのだと、ただ胸にすとんと落ちていった。
 そのまま、野梨子は踵を返す。
 もう、二度とこの裏庭には来るまい。
 この鬱蒼とした木々や、花々が死んでしまった私の恋を見守ってくれるだろう。出来ることなら、
このまま誰にも見つからないまま、葉書が土と同化し、朽ち果てるまで。
 葬式や埋葬が故人ではなく遺族の為にあるように、土に埋めたことでまだしも哀しみが純化する
のだろうか。
 けれど。
 一度だけ、野梨子は振り返った。
 視線の先には、菖蒲が揺れている。思い出すのはあの手紙の一節だった。




  『初戀でした。其の想ひは日に日に積もる許りで、ちつとも薄らぐことはありません。』



                                              終わり

594 :名無し草:03/07/12 01:57
>戀ひやめし夏
凄かったです。泣きそうになりました。
なんて綺麗で、切なくて、夏の暑さがじわじわ
伝わってくる文面なのでしょう…
今からもう一度読み返します!
>『初戀でした。其の想ひは日に日に積もる許りで、ちつとも薄らぐことはありません。』

2人とも素敵な恋が出来ますように。

595 :名無し草:03/07/12 02:41
>戀ひやめし夏
私も泣きそうになっちゃいました。
せつなくてきれいな話・・・。

596 :名無し草:03/07/12 04:51
>戀ひやめし夏
私も…。
2人の静かな痛みに胸が締めつけられます。

597 :名無し草:03/07/12 11:04
「七夕」や「手紙」には、やはり清×野が似合いますね。
情緒溢れる作品の連続で素晴らしい〜。
メールを使った作品はこれからでしょうか?ワクワク

ところで有閑のオフィシャルサイトに、お蔵入りになった8巻の
表紙イラストがうpされてました。見たことがない人はどうぞ。
ttp://chorus.shueisha.co.jp/yukan/card/index.html

598 :名無し草:03/07/12 21:02
>597
サンクスコ!初見ですた(w
清四郎カコ(゚∀゚)イイ!!!!
最近清四郎萌え〜

599 :名無し草:03/07/12 23:14
>アマノガワ
なんか、清四郎がめちゃくちゃいいですね。
やり方がニクイ。
こんな風に遠まわしに告白されたら、その人のことが気になって仕方なくなりますね

>戀ひやめし夏
新かなでは「恋いやめし夏」ですよね。
恋をやめた夏、ってこと?
しっとりしていて良かったです。

>597
そういえば、予想外にメールを使った作品がないね。
結構あると思ったんだけど。

600 :名無し草:03/07/13 06:49
>戀ひやめし夏
うう〜ん、成就しない戀が淋しい〜。でもきれい〜。
目の前に大きな洋館の裏庭が広がっている気分でした。
乙です!

601 :名無し草:03/07/13 07:59
競作に参加します。5レスお借りします。

602 :七夕競作・胸の染み(1):03/07/13 08:02
夏の訪れを目前に、週末の住宅街は一時の静寂に包まれていた。
庭に面した居間の縁側に魅録は腰かけていた。軒先から雨水が一
本の細い糸のように絶えまなく落ちる。雨に濡れる庭を見るでも
なく、空を眺めるでもなく、魅録は独りでいた。手には、今しが
た受け取った暑中見舞いの葉書が一枚。差出人の繊細で柔らかな
筆跡は、魅録には見慣れたものだった。

年賀状・暑中見舞いに始まり、季節の節目に決まって届く便り。
均等に形よく揃った文字が野梨子の几帳面さを物語っている。
(毎日、学校で会ってんのに、改まって手紙ってのもなぁ)
そう思ってはいたものの、いつのまにか便りを心待ちにする自分
に魅録は気づいていた。そのくせ年賀状にさえ、返事を書いたこ
とはない。いや、正確には書こうと人一倍の努力はした。でも、
結局は出せず終いだった。自分の筆無精を随分と恨んだりもした
が、野梨子に対する心苦しさが消えるわけではない。手紙のこと
は魅録の胸にいつも引っかかっていた。それを野梨子に打ち明け
たのは、高校生活も終りを迎える頃だった。

603 :七夕競作・胸の染み(2):03/07/13 08:03
あれは大学入試中の登校日だったか。俺は野梨子と珍しく部室で
ふたりきりになった。たわいもない話を交わす内に、言いそびれ
ていた手紙のことが俺の頭にちらついた。ふいに俺は卒業間近と
いう現実に気づき、その力にふいに後押しされた。俺は一気に手
紙のことを話し、今までの筆無精を野梨子に詫びた。野梨子は俺
の話を聞き終えると、緊張が解けたように一息漏らした。
「急に恐い顔をして、いったい何事かと思いましたわ」
必要以上に力の入った俺は眉間に皺でも寄せていたに違いない。
「私、返事などちっとも気にしていませんわ。好きで手紙を書い
 ていますのよ。でも・・・」
野梨子は、俺の心を探るように真直ぐな視線を向けた。普段なら
喧噪の中にあるこの部室が、今だけは静まり返っている。野梨子
の座る椅子が今は俺の側にあり、俺はいつもより野梨子を近くに
感じている。ふたりで見つめ合う今のシチュエーションに、自分
の頬が柄にもなく染まるのが分かる。
「もしかしたら、魅録には迷惑ですの?」
不安気に俺を見つめる瞳は、身長差から自然と上目遣いになる。
その切な気な視線を受け止めた瞬間、俺の胸は一際大きく高鳴っ
た。耳まで真っ赤にした俺は、野梨子の言葉を必死に否定するだ
けで精一杯だった。今思い返して見ても、俺の慌てぶりは異常だ
った。野梨子のたわいもない言葉や仕種に動揺する俺を、野梨子
はどんな目で見ていたのか。

604 :七夕競作・胸の染み(3):03/07/13 08:04
取り繕う言葉も思いつかずに俺が黙っていると、野梨子は穏やか
な口調で話を続けた。
「私、言葉でなかなか言いにくいことも、手紙だと上手く伝わる
 ような気がしますの」
(それも一理あるが、俺なんか、その逆の人間だよなぁ)
俺はあえて話に口を挟まなかったが、何か言いた気な俺の口元か
ら野梨子は察したようだった。
「こうやって魅録とお喋りしている今でも、この場で上手く言え
 ないこともありますでしょ?どう言えば良いかしら」
俺が冗談混じりに助け舟を出す。
「そうですわね、魅録の言う通りですわ。現に今みたいに伝える
 言葉が思いつかなかったり、話すタイミングを逃したり、他の
 人の前では話せないことだったり」
悪戯っぽく目配せをしながら、俺は野梨子の言葉を補足する。
「もう、魅録ったら嫌ですわ。中には、陰で悪口や愚痴を言う人
 もいらっしゃるでしょう、ね?」
野梨子は、やはり上目遣いに俺を軽く睨んだ。
「でも、私が言いたいのは」
野梨子は言葉を切ると、いつになく真剣な眼差しを俺に向けた。
思わず俺は息を止める。野梨子に向かって溢れ出す感情を自覚し
ながらも、それを今なお押し戻そうと俺は足掻いていた。一方で
は、加速していく俺の鼓動が言葉の先を野梨子に急かす。
(野梨子が言いたいのは?)

605 :七夕競作・胸の染み(4):03/07/13 08:06
「あなたが、好きです」
一度止めた息を、耐えきれずに俺は飲み込んだ。喉元が不自然な
音を立てて鳴る。沈黙が続く間、確かに野梨子と俺は見つめ合っ
ていた。でも俺が見ていたのは野梨子の瞳に映った自分自身。瞳
の中の俺は、野梨子の気持ちを知るよりも自分の気持ちを知るこ
とに怯えていた。俺はとっさに自分の姿から目をそらした。その
行為は、目の前の野梨子から目をそらすことをも意味していた。
「・・・の一言だったりしますのよ」
消え入るようなか細い声は、部室に雪崩れ込んできた悠理たちの
声に掻き消された。瞬く間に新しいお茶と甘い菓子の香りに部屋
は包まれ、普段通りの居心地良い空間へと戻っていった。

あの時の野梨子の告白が本心だったのか、未だに俺は確信が持て
ない。今の俺も、あの時の俺からさほど進歩していないように思
える。ただ今の俺には、はっきりと分かることがある。あの時、
俺は『野梨子が好き』だった。でも自分が変わることに、友だち
が、環境が変わることに足踏みしてしまった。季節は立ち止まる
ことなく、高校生活は終わりを告げ、なおも月日は過ぎ行くとい
うのに。もしあの時の野梨子の言葉が本心ならば、野梨子も変わ
ることを恐れつつ踏み出した一歩だったのかもしれない。あの時
の俺には、それができなかった。今の俺ならどうだろう。できる
のか。

606 :七夕競作・胸の染み(5):03/07/13 08:06
「今さら遅せぇーよなぁー」
魅録は上に向かって大きく伸びをしながら一声叫ぶと、そのまま
背中から仰向けに倒れた。ほどなく奥の書斎から、勇ましい声が
居間に飛ぶ。魅録は苦笑しながら、ぶっきらぼうに父親に言葉を
返す。しばらく二言三言何か言う声が書斎から聞こえたが、やが
てその声も消えた。再び訪れた静寂の中、魅録は天井の染みを眺
めていた。魅録の胸にもくっきりと染みついている言葉がある。
声にも出せず、手紙にもせず、ただ自分の胸にだけ残した言葉を
口の中で呟く。魅録は意を決したように天井の染みを一睨みする
と、勢い良く起き上がった。今度は魅録が書斎へと声をかける。
「親父っ!親父の部屋に便箋あったよな?」
<おわり>

607 :名無し草:03/07/13 09:26
>胸の染み
おお、何か魅録の一人称が新鮮でよかったです。
魅録は手紙に何と書くのでしょうね(^^)
乙です!

608 :名無し草:03/07/13 09:43
競作参加します。魅×悠です。
9レス使います。

609 :七夕競作・LAST・LETTER(1):03/07/13 09:43
「悠理、帰るぞ」
あたいは、最後の光を残しながら太陽がビルの間に沈んでいくのを確認すると、
海に背を向けた。
「待てよ〜」
魅録の後を追いかける。ここに来ると、つい時間を忘れてしまう。
駆け寄りながらあたいは気付いていた。また、だ。
魅録の背中を見ると、胸がほかほかする。
でもそれは、たまに温度が上がりすぎるのか、ヒリヒリすることもあった。
その変な感じに気付いたのはそんなに前のことじゃない。
「魅録っ!」
軽くジャンプしながら、あたいは魅録の背中を思いっきり叩いた。
「ーーーー痛ってえ、お前……なにすんだよ」
「へへへ〜〜」
あたいは笑って側をすり抜ける。。
「ちょっと悠理、待て。待ちやがれっ!」後ろから魅録が笑いながら追いかけてくる。

こんな瞬間が楽しすぎるから、あたいはそのことは言えなかった。
時々どうしようもなく胸がきゅーっとして痛くなったって、
このまま、ただ側にいることのほうが大切だった。

行きかう車のライトが道を明るく照らし出している。
あたい達が、晴海ふ頭を出る時には、すっかり夜になっていた。
魅録のバイクはあたいを乗せて、車の間を抜けどんどんと前へ進んでいく。
目に映ったものは一気に遠ざかって、人も町の景色も全部一瞬で線になって消えていく。
なのに、異常なほどくっきりとした後姿が目に映った。
(あれ?)なんでだろう?不思議なことに、その女の人は消えていかなかった。
まるでピントが絞られているかのようにあたいの目にしっかりと焼きついて離れない。
(なんかおかしい……)そう思った時はもう遅かった。

610 :七夕競作・LAST・LETTER(2):03/07/13 09:44
「ひゃあっ」
急に体にぞくぞくするものが走って、あたいは思わず叫び声を上げた。
(なんだよぉ……)
見たくない!とっさに目をつぶったけど、肩にひんやりとしたものが触れている。
(やだよぉぉ〜〜〜っ!)
あたいがその手のようなものを右肩で振り払おうとした、その時、
うかつにも、あたいは目が合ってしまったんだ。
女の人は今にも泣きそうな顔で、すがりつくようにあたいを見ていた。
(あ、あ、あ)……体が凍りついていく。

「おい悠理、危ねえぞ」
ぐいっと魅録があたいの腕を掴んだ。その瞬間、ふっと体が楽になる。さっきの人は消えていた。
あたいは体中ががたがたと震えていて、泣きそうになりながら魅録の背中に顔をうずめた。
「……悠理、どうかしたのか?」魅録の不思議そうな声が聞こえる。
(今のはきっと夢だ、本当のことなんかじゃない……絶対に夢だ!)
あたいは必死に言い聞かせたけど、もちろん、夢なんかじゃなかった。
その夜、あの女の人はまた、あたいの所にやってきた。

次の日の夕方。熱を出したあたいを見舞いに来てくれた魅録に、前の晩にあった事を全部話した。
そして、あたいの引き受けたことも。
「悠理、やめろ」魅録の顔は怖かった。
「もう約束したんだ。あたい、やる」
「万が一何かあったらどうするんだ。それに、自分の体いいようにされんだぞ
 お前、イヤじゃないのかよ」
「いいようにされるって、ちょっと手伝うだけだよ。
 魅録には、届けるの一緒に行ってもらうだけでいいからさ」
「そんなことじゃなくって、どう考えたってヤバイだろ。なにか起こってからじゃ遅いんだぞ!」
魅録があたいのことを心配してくれてるのは分かってた。
だけど。昨日の夜のことを思い出す。また張り裂けそうに胸が痛くなった。

611 :七夕競作・LAST・LETTER(3):03/07/13 09:45
あたいにはあの人、『さちこ』さんの頼みが断れなかった。
断っても無理やり乗り移られたかもしれないけど……でも、そんなんじゃなくて、
『さちこ』さんがあたいに触れた時に流れ込んできた想いは、
あたいには嫌になるくらい分かってしまったから。

一瞬の交通事故だった。眩しいライトが迫ってきたのが最後で、気付くと真っ暗な暗闇だった。
そこでただ繰り返し目に浮かぶのは懐かしい笑顔だけで……。
だけど、どんなに声を涸らしても、どんなに泣き叫んでも
『さちこ』さんはその人と話すことは出来なかった……『さちこ』さんは死んじゃったから。
大切な友達だったのに、好きな人だったのに。
伝えたかった気持ちは、まだ何ひとつ言えないままだった。

目から涙が止まってくれなかった。こんなのってないよ。
――ごめんね
苦しい想いを味わせたこと。そして、あたいに頼んだこと、『さちこ』さんはあたいに謝ってた。
怖くないわけじゃない。でも……放っておくなんてできなかった。
『さちこ』さんはまるであたいみたいで、あたいは、こんな結末なんて絶対我慢できなかった。

「ゴメン。でも、やるから」
厳しい顔をしている魅録をまっすぐに見てから、『さちこ』さんに心の中で呼びかけた。
すぐに、背筋がぞくりとするようなあの感覚がやってくる。
「悠理!やめろ」
魅録の声が最後に聞こえた。――そして『さちこ』さんが入ってくるのを感じた。

612 :七夕競作・LAST・LETTER(4):03/07/13 09:46
***************************************************************
  ずっと言いたかった事があるんだ。
  いつもあなたといると、馬鹿な話ばっかしてて真面目な話なんて
  したことなかったよね。
  でも、楽しかった。側にいる時は嬉しくてたまらなかった。
  私、あなたの事大好きだったよ。
  正直、途中で死んじゃうなんて悔しい。
  だけど、うん。私、自分のこと幸せだったと思う。
  いっぱい思い出もらったから。
  だから、最後に伝えたかったの。
  今までありがとう。
***************************************************************
あたいの中に入った『さちこ』さんが書いた手紙。
「嘘だろ……」
『さちこ』さんの好きだった人はそれを見て呆然としていた。
「信じられないかもしんないけどさ、本当だよ」あたいが言うと、
「どう見たって幸子のだよ……」ふらふらと玄関口に座り込むと、頭を抱え込んだ。
「……だよ……して、今……ろになって……」
その声は言葉にならなかった。肩が細かく震えている。男の人は泣いていた。
一生懸命声を押し殺しても、呻くような苦しげな泣き声は漏れ出てくる。
見てるだけで、胸が火傷したみたいになった。
(こんなの辛すぎるよ……)
あたいはぎゅっと歯を食いしばった。そうしないと今にも涙が出てしまう。
でも、目に熱いものがどんどんこみ上げてくる。止まらない。

その時、右手に力強い感触を感じた。魅録の手だった。
やっと、こぼれ落ちそうだった涙が止まってくれる。
(心配ばっかかけてゴメン)
その優しい感触に、あたいは心の中で魅録に謝った。

613 :七夕競作・LAST・LETTER(5):03/07/13 09:46
あの後、『さちこ』さんがあたいに入って手紙を書いた後、あたいは魅録が呼ぶ声で目を覚ました。
予想してたけど、頭が自分のじゃないみたいに重くて重くて、息をするだけで体がきつい。
「悠理」
魅録があたいを覗き込んでた。その時の顔は、今まで見たことがないくらい真っ青な顔で、
本当はすごくびっくりしたけど、その時は声すら出せなくって、なんにも言えなかった。

あたいは、手の平を丸めて、ぎゅっと魅録の手を握った。
(ゴメン、魅録)
また心の中で謝る。今度は、これからしようとしていることに。
絶対に心配かけるのは分かってる。……だけど、このなんじゃ終われないよ。
あたいは、心の中で呼びかけた。
(『さちこ』さん、いるよね。ねえ、このままじゃダメだよ)
『さちこ』さんの返事はこない。
(ねえ会わなきゃダメだよ、男の人だってこれじゃ終われないよ)
あたいは声に出した。
「『さちこ』さんおいでよ……」

――なにかがおかしい。
目の前であたいが男を抱きしめていた。もちろんそれは『さちこ』さんがやっている。
変だった。『さちこ』さんは入ってきたのに、『あたい』の意識ははっきりしたままだった。
(もしかして外に出ちゃったのか……?)
気付いて、あたいはぞっとした。
今まで霊に憑かれたことはあっても、あたいが体から出てしまった事なんてない。
(……戻れるのか?)
不安がどっと押し寄せてくる。
(魅録)
あたいは呼びかけた。でも、魅録にはあたいの声が届かない。
(どうしよう)
あたいには、どうしたらいいかなんて分からなくて、
ただ目の前で起こることを見ているしかできなかった。

614 :七夕競作・LAST・LETTER(6):03/07/13 09:47
『さちこ』さんが男の人と言葉を交わしていた。
2人の見つめあう視線は、あたいにだって分かるほど特別なものだったから、
『さちこ』さんの想いは叶ったみたいだった。
そう思うと、少しは救われるような気がしたけど、だけど、悲しいけど、それだけだった。
2人に、もちろん先なんてなかった。
だから、分かってしまっているから、男の人が『さちこ』さんを引き止めても、
『さちこ』さんは首を振る。
気持ちが通じた分余計にそれは辛いはずだった。悔しくてたまらないはずだった。
でも、男の人の手を離して『さちこ』さんは微笑んだ。
『ありがとう』
その時の声は、すでにあたいのではなく、別の凛とした女の人の声になっていた。

「幸子っ!」
男の人が手を伸ばしている。『さちこ』さんはあたいの体から出て行こうとしている。
(あっ……!)
その途端、あたいの体がぐらりと倒れこもうとしていた。
「悠理!しっかりしろ!」
それを魅録が抱きとめている。
(魅録、あたいここだよ。ここにいるんだよ)あたいは叫んだ。
でもやっぱり魅録には届かない。
(戻らなきゃ)
なのに、動こうとしても近づけない。なんで、どうして。
(こんなのイヤだーーー!!)
あたいは、愕然とした。
あたい、このまま死んじゃうのか?……もう魅録に会えなくなるのか?

615 :七夕競作・LAST・LETTER(7):03/07/13 09:51
その時だった。感じないはずなのに、肩に暖かい手のひらが置かれたような気がした。
――こっち
『さちこ』さんだった。あたいの手をとって体へと引っ張っていく。微笑みながら。
目にしたあたいは心が張り裂けそうになった。
その笑顔はとてもきれいで……だけど、切なすぎた。
あたいの顔を見たのか、『さちこ』さんは、また微笑んで、あたいを体へと押しやった。
「…………」
あたいにははっきりと聞き取れなかったけど、最後に『さちこ』さんは何か言ったみたいだった。
それは、『アリガトウ』だったのか『ガンバッテ』だったのか……、あたいには結局分からない。
少しずつ、ほんの少しずつ目の前が明るくなっていく。
「悠理!」
魅録の声が聞こえた気がして、あたいはゆっくりと目を開けた。

最初に目に飛び込んできたのは、魅録の顔だった。
(戻れたんだ)
そのことにほっとして、また魅録に会えたことが泣きそうな位嬉しかった。
「悠理、聞こえるか?」
その声に返事がしたかったのに、だけど、それが限界だったらしい。
すぐに、体に引きずられるみたいに気が遠くなっていく。
(魅録……あたい魅録のこと……)
そのまますとんと落ちていくように、あたいは気を失った。

616 :七夕競作・LAST・LETTER(8):03/07/13 09:51
1週間後の晴海ふ頭は、全くいつもの通りで船がいっぱい泊まっていた。
隣でそれを見ている魅録はさっきからずっと黙ったきりだ。
あたいは、そっと上着のポケットに手を入れる。
考えて考えた末、全然寝てないっていうのに書いたのは結局一言だけだった。
あとは、渡すだけなのに、決心したはずなのに、あたいは何も言えないでいる。

ちらりと隣を見ると、魅録は怒ったような顔をしていた。
なんでかは分からないけど、今日はずっと様子が変だ。
「なんかあったのか?」「……別に」
返事もそっけない。こんなんじゃ、余計に渡しづらくて、あたいはため息が出そうだった。

「あーーー、っきしょーー!」
いきなり隣で魅録が叫んだ。
「ど、どうしたんだよ」
あたいがびっくりして魅録を見れば、顔が今まで息を止めてたみたいに真っ赤だった。
「やっぱ、俺……なんて言やいいかわかんねえや」
魅録は髪をかきむしっている。
「もういい。とにかく読んでくれ」そう言うと、ジーパンのポケットから何かを取り出した。
それは、真っ白な封筒で、あたいの名前が書いてある。
(手紙?)
それをあたいに渡すと、魅録は横を向いていた。
あたいは、ゆっくりと封を開けた。でも正直、あまりの偶然に少し思ってしまう。
もしそれが、あたいのと同じ中身だったら……って。
胸がどきどきしていた。
そして、それを目にした時、ちらりと期待していたのにもかかわらず、
あたいは、一瞬で体中の血が顔に集まるのを感じた。

617 :七夕競作・LAST・LETTER(9):03/07/13 09:54
「頼むからなんか言えよ」
あんまりにもあたいが黙り込んでいるせいか、魅録は痺れを切らしたみたいだった。
「おい、悠理」
あたいの方を見る。そして、魅録がぽかんとするのが分かった。
「お前……なにやってんだ?」
あたいは黙って、ただ完成したそれを手に持つと、腕を後ろにそらして勢いを付ける。
(えいっ)
真っ白な紙飛行機は青い空へと吸い込まれていった。
「断るにしろその返事の仕方はないだろ……」
呆気にとられたような声だった。あたいは下を向いた。違うんだ。そうじゃなくて……
あたいはついにそれを渡す。本当は恥ずかしくてこっそり捨ててしまおうかとも思ったけど。
「頼むから、魅録も読み終わったら飛ばせよ」
ほっぺたが熱くてたまらない。
ほら、やっぱり、あたいの手紙を読んでる魅録の顔が真っ赤になってる。
(……ったくよりによってなんで全くおんなじ言葉なんだよ)

***************************************************************

最初の紙飛行機よりも遅れて、海に着地した2つめはそのまま
滑り込むように、少し先に浮かぶもう1つへと近づいていった。
それに書いてあった文字は両方とも水でにじんでいたが、
かろうじてまだ読み取ることが出来た。

  『好きだ』

2つの紙飛行機は一緒にゆっくりと海の彼方へ流れて行った。

(終わり)

618 :名無し草:03/07/13 12:52
>LAST・LETTER
うわーーーーーーっ
この作品、めっちゃ好きだ……

619 :名無し草:03/07/13 16:13
>LAST LETTER
うわー、最高ですね!!!
サチコさんは、切ないけどいい話です。
魅×悠には、ほんっとたまらない作品☆☆
「好きだ」いいですねえvv
海に紙飛行機(手紙)を飛ばすの、かっこいいっす。
魅悠バンザイ♪♪♪

620 :名無し草:03/07/13 17:29
>LAST・LETTER
よかったです!!!
思わず何度か読み返しましたが、ジーンときました。
切ないんだけど、やっぱりこの二人らしくて、あったかいお話で。
大好きです。

621 :名無し草:03/07/13 18:37
>胸の染み
「・・・の一言だったりしますのよ」
好き!!!カワイイィ──!野梨子〜(w

>LAST・LETTER
悠理が『好きだ』ってゆうのがいいでつ!

…よく考えたら、美童と可憐はありませんね。。

622 :名無し草:03/07/13 19:48
もう、どれもこれも素敵すぎ。
清×野好きなので、アマノガワで、嬉しい気分になり、戀ひやめし夏で
胸が締め付けられ(PCの前でマジ泣きしていまいました)・・・。
胸の染みの野梨子も、LAST・LETTERの悠理もイイ!
皆さん、すげえなあといつも楽しく読ませてもらってます。

623 :名無し草:03/07/13 20:14
競作週間もおわりかぁー。
作家様方乙ですた!!またしばらくしたら
やりたいでつねw

624 :名無し草:03/07/13 20:41
>胸の染み
耳まで赤くなっちゃう魅録&野梨子の告白シーンがツボでした!

>621
メールで可憐か美童の話があるか?と期待したけど、チョト残念ですね。

625 :名無し草:03/07/13 22:43
>恋いやめし夏
しっとりきれいな世界に酔いました。
清四郎と野梨子ってほんとに付き合いだしてからギクシャク
してうまくいかなくなりそうだなあ。お互い不器用だし、
さわやかな友情でやってきた他のメンバーにも気を使うだろうから。
思いが通じてからうまく幼馴染から恋人に昇華できなくて困惑する
不器用で切ない清×野をストーリー仕立てで読みたい!

626 :名無し草:03/07/13 22:55
>夏の日の少年
恋バナ大好きなんだけど、こういう話も大好きです!
懐かしいような話ですね。
小学校のとき、田舎に夏休み帰ったことを思い出しました。
暑い昼間にあぜ道を虫かご持って歩いた日のこと。
それに夏って、幽霊とか妖怪とか出てきてもおかしくないような、
独特の雰囲気がありますよね。
悠理らしく温かい雰囲気に、ほのぼのとしました。

627 :名無し草:03/07/13 23:00
>621
私の場合、手紙=恋文って考えてしまったせいか、
可憐で話考えてたんだけど、どうしても上手くいかなかったのサ。
彼女って、どっちかというとムードに酔いながら、
勢いで告白するってタイプに思ったから。

で、恋愛初心者の悠理と野梨子は、
そんなふうにムードに酔うのが恥かしくって手紙に託してもおかしくなさそう。

あ、でも良く考えたら、可憐っていっぱいラブレター貰ってるから、
そこから話が出来たかもね。

628 :名無し草:03/07/13 23:09
>627
彼女って、どっちかというとムードに酔いながら、
勢いで告白するってタイプに思ったから。

わかります!!!
野梨子は文才もきっとあるし綺麗なラブレターになりそうですよね。
私は悠理で携帯メール考えたんですけどなかなかうまくいかなくてだめですた。

629 :名無し草:03/07/13 23:11
清×野大好きなので
>戀ひやめし夏
悲恋でつらいのですが、あまりにもあまりにも素晴らしい作品なので
リピートして読んでまつ。
読み返しすぎてどうしようもなく悲しくなったら
>アマノガワ
読み返して復活。そしてまた
>戀ひやめし夏
に戻り………自虐スパイラル??

630 :名無し草:03/07/13 23:17
あたしは魅録萌えなので、
僕の姫君とか、胸の染みとか、LAST・LETTERとかにグっときました。
どの魅録もイイ!
こういう男から、ラブレター貰いたいよチクショウ。

631 :名無し草:03/07/13 23:23
>自虐スパイラル
ワロタ

632 :名無し草:03/07/13 23:25
>>692
わ・・・私も〜。
清×野で幸せなのが本当は好きなんだけど、戀ひやめし夏はとても綺麗な話で好き
なので、リピートしてしまいました。(そして胸が痛くなる。w)
アマノガワもとっても綺麗で情緒のある話だし、安心して読めるのでお気に入りです。

>>630
私も貰いたい・・・。

633 :名無し草:03/07/13 23:33
ここに美童がいたら、
僕だってラブレターいっぱいもらってるし
世界中の彼女に送ってるのに・・・
なんで僕の話は一つもないんだよお、て言いそうだな(w

634 :名無し草:03/07/13 23:42
>633
しょうがないから(?)作品の登場人物を美童に置き換えて妄想してみたり

「なあ、美童」
「……なんだい?」
「あたしも気持ちをうまく言葉にすること苦手だけど、つまりこう言うことだろ。
美童を他の男よりちょっと違って見るってコト。他の奴より少したくさん
喋ったり、少したくさん顔を見たり、少したくさん会ったり……」
悠理の足が照れ隠しかぶらぶらと揺れている。
美童はほっとした気持ちになった。
「そうだよ。そうだけど――でもね?」
美童はぎゅっと悠理を抱きしめた。
「こうやって悠理を抱きしめたり、キスしたりしたいってことだよ」
「!!」
真っ赤になる悠理に、くすりと笑った。
美童は悠理の気持ちを確信して、快哉の声をあげたくなった。
「それにね……」
耳元にそっと囁く。
「家に連れ帰って押し倒したいってことだよ」

以下R


なんちゃって。
作者さんゴメン

635 :名無し草:03/07/13 23:59
>634
も、萌えた!

636 :名無し草:03/07/14 00:50
>629
私も清×野大好きなんで同じくでつ。自虐スパイラル(w
野梨子大好きなので今回嬉しかった〜!

>634
萌えた〜〜〜しびれますたww
ここのスレの美童大好き!

637 :秋の手触り [74]:03/07/14 00:54
>>323つづき

 振り返ると、見知らぬ青年がそこにいた。
 どこかで会っただろうかと魅録は考えをめぐらしたが記憶にない。人間相手の記憶力には
自信があったから、全く覚えがないということは会ったことがないのだろう。
「松竹梅魅録君ですね?」
 青年は戸惑う魅録とはよそに、にっこりと笑った。見るからに軽薄な感じのその笑みに、
ますます魅録は首を傾げる。
 年の頃は少し分かりづらいが、二十代後半か、三十代前半。それより上ということはない
だろう。男にしてはやや長めの髪を、こざっぱりと撫で付けている。整った顔だちをしていて、
顔だけでも食べていけそうな手合いだが、なぜか左頬に大きな湿布が貼られている。
「ああ、やっぱりそうだ。髪の色がピンクだから、ちょっと迷ったんだけど」
 魅録の困惑は他所に、青年は勝手に納得している。
「はじめまして、ですよね?」
「うん。僕が一方的に君を知っているだけ。この間の土曜日に、専務が君を連れ回していた
だろ。どこぞから引き抜いてきた研究員か、はたまた経営改革の隠し玉か。今日一日、
社員の中で結構な噂になってたんだよ」
 あのときはTPOを考えて、スーツを纏った上に髪を黒く染めていたのだ。仕方ないこととは
いえ、かなり豪快な勘違いをされていたらしい――いや、それともあながち間違っていないと
言うべきか。なぜなら、これから自分たちは剣菱精機をひっくり返そうとしているのだから。
「さてその正体はただの高校生――残念でしたね」
 とりあえず肩をすくめて見せた魅録に、青年は人好きのよさそうな顔で笑う。
「いやいや、噂はもうひとつあったのさ。同じく土曜日、突如現れた美人秘書。彼女は一体
誰ぞや、とね。あれは会長のお嬢さんだったんだね。会社の皆にいいお土産話が出来たよ」
 聞いてみると、秘書の扮装で金井に会社の説明を受けていた悠理は、男性社員の注目の
的であったらしい。我先にと多くの男が悠理に誘いをかけたらしいが、ことごとく撃沈。今日こそ
はと力んで出勤したにも関わらず、姿を見せない悠理に涙をのんだ人間は数知れず。
「あいつ、そんな噂になってたんですか?」
「だって、あれだけの美女だろ。噂にならない方がおかしいって。――ほら見て、この痣。
僕も食事に誘ったんだけど、このざまさ」

638 :秋の手触り [75]:03/07/14 00:55
 ぺらりと青年が剥がして見せた湿布の奥には、くっきりと拳の痣がついている。
「あんのじゃじゃ馬……」
 一体、なんだってこんなに暴力的なんだか。魅録の言葉に青年は声を上げて笑った。
「なんというか、豪快だよね。――で、君と彼女は一体何のために会社を見学してたの?」
「単なる社会見学ですよ。将来の方向性が決まっていませんので」
「へぇ。えらいね。僕がそのくらいのときは、なんにも考えてなかったよ」
 まだ若い癖に、それがやたらとおじさん臭い台詞回しであったため、魅録はくすりと笑った。
 その瞬間、狙い澄ましたように青年が言った。至極何気ない口調で。
「でも嘘でしょ」
「え、何がです?」
(あ、危ね――っ!!)
 突然のことに対して、咄嗟に取り繕うことが出来た自分に拍手を送りたいぐらいだ。
 魅録は、そんなことを考えながら、顔色が変わるのを理性の力を総動員して押さえ込み、
なんとか『何を言われているのか分からない顔』を作る。どれほど効果があるかは分からないが。
(くそ、黙りやがれ、この心臓……)
「ふーん」
 馬脚を現さなかったことに対してか、それとも自分の穿ち過ぎだったと思い直したのか、青年は
詰まらなそうな声をあげた。魅録としては後者を希望するのだが、そう上手い話はないだろう。
 それにしても、どうして勘付かれた……?
「じゃ、そろそろ僕は行くから。君もパーティーを楽しみなよ。ま、あんな綺麗な娘が始終傍にい
たなら、他の女の子にちょっかいかける気にもならないのは分かるけど」
 青年にとって、「楽しむ=女の子にちょっかいをかける」らしい。
 そんな取りとめも無いことを考えた魅録は、背を翻した青年に、慌てて声をかけた。
「すいません、あなたの名前は?」
 ぴたりと青年の歩みが止まった。
 ことさら時間をかけて振り返った青年は、その質問こそを待っていたかのように、意地の悪い
笑みを浮かべて、言った。
「マーケティング部チーフの八代儀一だよ」
 覚えておいてね――にっこり笑った彼に、魅録は歯軋りをなんとか堪えた。
 それは、豊作の対抗勢力にあがっている名前だった。

639 :秋の手触り [76]:03/07/14 00:55
 今度こそ青年――八代儀一が去った後、魅録は大きく息を吐き出した。
 なぜかは分からないが、計画を持ち上げてからたった三日で勘付かれている。一体、これは
どういうことなんだ。
 魅録は、悠理に渡してあるピアス型のマイクに向って話しかけた。
「悠理、返事はいらないから少し聞いてくれ」
 そう言うと、カツンと音がした。おそらく、聞いているという証にピアスを弾いたのだろう。見ると、
まだ悠理は両親とともに、今井グループ令息と話をしている。
「敵側に、こちらの動きが悟られている恐れがある。お前には直接してもらうことはないが、とに
かく、気づいたことがあればなんでも言ってくれ」
 再び、カツンと音がする。
 分かったと言いたいのだろう、と判断して魅録はニヤリと笑った。状況は少し悪くなった筈だと
言うのに、なんでこんなに楽しい気分になっているのだろう。
 スリル満点の方が燃えるから?
 ――いや、違う気がする。しかし、では何故?
 自分の不可解な感情に魅録は戸惑ったが、しかし考えている暇はない。パーティーが終わる
までにしなくてはいけないことがある。魅録は自分の役割に戻ることにした。自分たちの行動に勘
付いている存在がある以上、あまり派手に動くことは出来なかったが、しかし何もしないわけに
はいかない。
 八代儀一のせいで中断されてしまったが、これから魅録は剣菱精機社長・戸村の秘書に
探りを入れなければいけないのだ。
 運良く、彼女は華やかなパーティーの中、壁の花となっている。
(名前、吉村裕香。趣味、噂話とドラマ鑑賞。口癖は結婚したい。現在は彼氏なし――よし)
 頭の中にある彼女のプロフィールをもう一度復習して、足を踏み出した瞬間だった。
 本日二度目のお邪魔虫。
「へぇ、魅録ってあんなのがタイプなんだ」

640 :秋の手触り [77]:03/07/14 00:58
「………。」
 嫌な予感がした。
 けっして鈍くない直感が「もしかして」を訴えていたが、それに気づかないふりをして、彼は
笑顔で振り向いた。そして、そのまま凍りつく。
(……やっぱり)
 緋色の牡丹が鮮やかな振袖が麗しい大和撫子。上品さと婀娜っぽさの混在した襟ぐり
の開いた白絹のドレス纏う美女。スタイリッシュな白いタキシードに垂れる艶やかなブロンド
が気障なスウェーデン人。そして、端整な顔立ちをしたやけに姿勢の良い青年。
 そこにはニンマリとした笑みを浮かべる悪友たちがいた。
「面白いことへの抜け駆けはご法度よ、魅録」
 可憐が代表して、そう告げた。
「……まいった」
 余計なことは何も言わず、魅録はそれだけで降参し、両手を軽く挙げる。秘密裏で動いて
いたつもりだというのに、一日顔をあわせただけで、バレてしまっていたらしい。
 げに怖ろしきは、倶楽部の結束力。
「いつ気がついたんだ?」
 魅録の問いに、清四郎が澄まして答える。
「今朝」
 ということは、朝に顔を合わせた時点でおかしいとばれていたのだ。ちくしょう、この男は
やっぱり人間離れしている。
「腹立つ男だな、お前は」
「お褒めにあずかりまして、光栄」
 褒めてねえよと内心で呟きながら、さてどうしたもんかと魅録は思案する。
「せっかく来てもらって悪いんだけどさ」
「そうよぉ!」
 介入を断る言葉を告げようとした魅録を牽制するように、可憐が言葉を挟んだ。
「美童が、剣菱が大きなパーティーをするっていう情報を予め持ってたから良かったものの、
一旦家に帰って、盛装して、ここまで駆けつけるの結構大変だったんだから。ドレスだって、
パーティーがあることを知らせてくれてたら、ちゃんと新調したのに」
 ああ、あまりに彼女らしく、なんて自分勝手な理由だろう。

641 :秋の手触り [78]:03/07/14 00:59
「それに、ここに潜り込むのに嗅がせた鼻薬。結構かかりましたのよ」
 澄ました顔で、あっさりと言い放つ野梨子。この調子なら、悪徳政治家の妻でも極道の女
でも、平気でこなしてみせるだろう。
「この鼻っ柱の高いお嬢さんたちの気を損ねるのは、得策じゃないと僕は思うな」
 そいつは奇遇だな、美童。俺もそう思い始めたところだ。
「ところで魅録。『来てもらって悪いんだけど』の台詞の続きはなんなんです?」
 にっこりと清四郎が閉めた。
「――ねえよ。『来てくれて、どうもありがとう』だ」
『どういたしまして』
 極上の笑顔付きの四重奏に、魅録は性質悪りぃと今度は口に出して呟いた。


 ――十分後。
「まあ、事件(?)の概要はだいたい分かりました。それにしても、どうして我々に黙ってことを
進めていたんです?」
 メンバーを人目の少ない壁側に誘ってのち、大体のあらましを説明すること数分。聞き終
えた清四郎が、そう尋ねた。
 もちろん、魅録はその質問を受けることを十分予想していた。自分が逆の立場でも同じ
ことを聞いていただろう。だからこそ、説明しながら言い訳を考えておいたのだ。
「ほら、いつも皆で動くだろう? それはそれでいいんだけどさ、今回は極力俺だけの力で
やってみたかったんだ。腕試しというかなんというか」
 嘘ではないが、真実全てではない。はじめは、清四郎への子供っぽい対抗意識だったのだ。
だが、豊作の情熱に押され、彼を応援したいという気持ちが膨らみ、正直、彼へのライバル心
などすっかり忘れ去っていた。
 ――なのに、何故だろう。
 こうして、彼らを前にして苦い気持ちがするのは。
 もう、清四郎への拘りは一時的なもので、今はもうそんな気持ちは薄れているのに。
 己の中にある不可解な思いの存在に気づいた魅録は、だが、すぐにかけられた清四郎の
台詞に、とりあえず考え込むのをやめた。
「分かりました。この事件に対する権利は、魅録のものです。君が望まない介入はしませんよ。
でも――ええそうですね、こういうのはどうでしょう。君が指令になって、僕らを使うんです」

642 :秋の手触り:03/07/14 01:00
続きます。

643 :名無し草:03/07/14 01:31
>「秋」
八代儀一が何げに重要キャラになっているのは人気が高かったせいでしょうか(笑
ひとりで動く魅録を応援しつつも、やはり、有閑倶楽部メンバーが勢ぞろいした
ところで拍手を送ったのは漏れだけではないはず。
面白かったです。次回が待ち遠しい!

前回は競作の後、閑古鳥が鳴いたので「秋」のうpがうれしいです。

644 :名無し草:03/07/14 02:11
>秋の手触り
八代儀一がとうとう……!(笑)
魅録の「性質悪りぃ」との呟きにめちゃくちゃ笑ってしまいました。

>643
読者の声が反映されているのだとすれば、
私は切に切に魅悠を唱え続けます(笑)
私も、有閑倶楽部のメンバーが勢ぞろいしたところで拍手。

645 :名無し草:03/07/14 09:24
>秋の手触り

ゴメソ、作者さん
>やけに姿勢の良い青年
で、紅茶をふきまつたwwえなりを思い浮かべた私・・・

646 :名無し草:03/07/14 13:30
>秋の手触り
魅録が4人と会った時の反応や内心の呟きに、
ムチャクチャ笑いました。
前作のしっとりとした繊細なムードも大好きでしたが、
こういういかにも有閑倶楽部! なノリも楽しくて好き。
作者さんの持つ引出しの多さに、ただただ脱帽です。

647 :名無し草:03/07/14 13:40
昨日来れなかったので、今さらだけど感想を。

>胸の染み
野梨子の愛らしさと魅録の不器用さが、いかにも彼ららしくて
良かったです。魅録の書く手紙の文面や、その後の二人に
ついての想像を読者に委ねるところがニクイなぁ、と(w

>LAST・LETTER
大事なラブレターを紙飛行機にしてしまうところが、いかにも
悠理らしいと思いました。
夏の有閑倶楽部につきもののオカルト話(でも切ない/泣)も、
ドラマのカメラワークを思わせるようなラストシーンも凄く良くて、
楽しませてもらいました。

648 :名無し草:03/07/14 21:31
>秋
やったぁー!そろそろうpが来るような気がしておりました!
魅録の気持ちもわかる(?)んですけどやっぱり
倶楽部がそろうのが好きです。
スウェーデン人って笑ってしまいますた。
あと、
>この調子なら、悪徳政治家の妻でも極道の女
でも、平気でこなしてみせるだろう。

私もそう思いまつ(w

649 :名無し草:03/07/14 22:13
>秋の手触り

わーい!! ずっと、楽しみにしてたのでUP嬉しいですvv
魅録ファンの私には、嬉しい話です!! がんばれ、魅録!! 
今回は、他のメンバーにおいしい所をとられないで、ファイト☆
悠理の、恋のお相手も気になるところです。
続き、楽しみにしてます(*^^*)


650 :名無し草:03/07/15 09:51
ど妄想してしまったので、壷にはまる方におすそ分けします。

朝、いつもより強い光を感じて跳ねるように起きた野梨子。
シーツが滑り落ちると、その白い肌があらわになった。
隣に寝ているはずの夫・魅録の姿が無い。
不思議に思い時計に目をやると、朝とは言えない時間になっていた。
(いやですわ、寝坊なんて。魅録も起こしてくださればいいのに・・・)
そう思っていると、携帯電話にメールの受信音がした。
「起きたか、野梨子?昨日は夜更かしさせすぎたみたいだな。
 あんまり気持ちよさそうに寝てるから、そのまま出てきた。
 でも、一応ペナルティな。おでこ、見てみろよ。」
何をされたのかと、野梨子が手鏡を取り出し、前髪を上げてみると、
そのおでこには魅録のつけたキスマークが、雪間に咲いた花のように
ついていた。

スマソ、逝ってきます。

651 :名無し草:03/07/15 10:14
気持ちよさそうに寝てる野梨子カワエエ・・・
だけど、「おでこ、見てみろよ」のセリフで、つい
「肉か!?」と思ってしまった自分に欝。

652 :山崎 渉:03/07/15 10:25

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄

653 :名無し草:03/07/16 19:29
>651
ワラタ!!

654 :可×清 可憐さんにはかなわない(92):03/07/17 01:26
>>344
「えっ……」
美童は今、耳に飛んできたものが言葉でなく、フライパンか鍋だったのかと思った。
今日始めて野梨子と顔を合わせた途端に彼女が発した言葉は、それだけ衝撃的だった。
美童は顔から目鼻耳口と全てのパーツが落ちたような表情をしている。

野梨子は苦笑した。
「嫌ですわ、美童ったら、そんな顔をして。仕方ありませんわ。これも−−運命ですわね」
手を伸ばして湯呑みを取った。
熱い茶を一口すすりながら野梨子は昨夜のことを思い出していた。

655 :可×清 可憐さんにはかなわない(93):03/07/17 01:27
清四郎が白鹿邸を訪れたのは真夜中だった。
彼は深夜の訪問を詫びるのもそこそこに、野梨子に向かって深く頭を下げた。
野梨子は彼の真剣な態度に一抹の不安を感じながら問いかけた。
「どうしたんですの?清四郎……」
「申し訳ない、野梨子」
そう一息に言って清四郎は顔を上げた。訝しげな野梨子の瞳を真直ぐ見つめる。
「今日、僕は自分の気持ちがはっきりとわかったんです。
今まで長い間遠回りしてきましたがはっきりと確信しました。
僕は、僕は、−−馬鹿でした。
どうしようもないほどの大馬鹿だということが明らかになったんです」

野梨子は清四郎がこれから口にしようとしていることを察し、そして話題をそらした。
「清四郎、人は皆、最初はお馬鹿さんですわ。どうしようもなく、例えようもなく
馬鹿で愚かで、でもだからこそ進化する喜びがあるのですわ、そう思いませんこと?」

思いがけない野梨子の言葉に、清四郎は神妙な顔をして考え込んだ。
「む、確かに。初めから完成されたものには、学ぶ苦しみもない代わりに、進む喜びも
ないでしょうね」

野梨子は清四郎の言葉に大きくうなずいて続ける。
「そうですわ。人は愚かだからこそ前に進もうとする。愚かだからこそ、しかし美しく、
愚かだからこそ、喜びに満ち溢れているのですわ」
「その通りですね、野梨子。考えてみれば素晴らしいですね、人類は。無限大に進化する
喜びが行く先々に待っているのだから」
「本当に、清四郎。素晴らしいですわ」

微笑む野梨子。感心してうなずいている清四郎。
静まり返った住宅街に二人の幸せそうな小さい笑い声がそっと響いた。
夜空に瞬く星達が初々しいこのカップルを優しく祝福していた。
<<オワリ>>

656 :可×清 可憐さんにはかなわない(94):03/07/17 01:28
「ん?」
何かが違うことに気がついた清四郎は、咳払いをした。
「いや、確かに人類は素晴らしい。ですが、僕個人は例えようもなく愚かだと思ったんです。
愚かであることは確かに、進化する喜びがあるかもしれない。しかし、愚かであるために、
その過程で誰かを傷つけてしまうことも残念ながらあるわけです……」

清四郎は野梨子の反応を伺いながら、慎重に言葉を選んで話した。
それに対し、あくまでも清らかな瞳で野梨子は応えた。
「そうですわね、悲しいことですわ」
「僕としては自分の愚かな行為で誰かが傷つくのは非常に不本意です。しかし、今
それをしないと彼女の傷は益々深くなってしまうかと……」

可憐と気持ちが一つであることを知った後、次に清四郎の脳裏に浮かんだのは、
野梨子のことだった。気持ちが動揺していたとはいえ、昼間に迂闊にも彼女に気が
あるような素振りを取ったことが悔やまれてならない。
なじられたり泣かれたりするのは覚悟の上で、清四郎は野梨子に許しを請いに来たのだった。
そんな清四郎の気持ちを知ってか知らずしてか、野梨子は静かに言葉を継いだ。

「わかりますわ。あらかじめ誰かが傷つくとわかっていても、行動を起こさないと
いけない時ってありますわね。でも……清四郎。私に言わせていただければ、
清四郎に足りないのは勇気ですわ」
再び、思いがけない野梨子の言葉に清四郎はどきりとした。
「勇気、ですか」
「そう。仮に一時的に彼女が傷つくにしろ、それが彼女の進歩に欠かせないと思うの
ならば、彼女にほんとうに必要だとあなたが思ったのであれば、行くしかないじゃ
ありませんか。恐れるな、少年。さあ、いざ行かん、嵐の荒野に!」
「の、野梨子」
清四郎は野梨子の言葉に胸を打たれた。やはり、彼女はわかってくれる。
小さい頃から共に歩み、共に学んだ幼なじみは何も言葉を発しなくても、自分の言いたい
ことを察してくれるのだ。清四郎の胸にじ〜んと迫るものがあった。

657 :可×清 可憐さんにはかなわない(95):03/07/17 01:29
再び野梨子は微笑んだ。
「……と、いうわけですのよ、清四郎。さあ、行ってらっしゃい、
か・れ・んのところに♪」
「か、可憐の!?」
野梨子がわかってくれていると思ったのは、清四郎の思い込み、そして願望であった、
らしい。しどろもどろになった清四郎は言葉を濁す。
「い、いや、あのですね……」
悪魔の微笑みを浮かべた野梨子は清四郎を玄関の外に押し出しにかかった。
「さあさあ、勇気を持ってくださいな、清四郎。さあさあ♪」
呆然とした清四郎は野梨子の細腕にやすやすと敷き居を乗り越えて、玄関の外に
押し出された。
「ちょ、ちょっと待ってください、野梨子。僕はですね……」
「さあさあ、さあさあ♪」
野梨子ノ花はぐいぐいと清四郎山を押し出している。
かろうじて土俵際で留まった清四郎は野梨子を押し戻した。

「のっ、野梨子。聞いてください!僕は、可憐が、好きなんです!」
ぴたっと野梨子の動きが止まった。
野梨子は清四郎の腹に両手をかけて前へならえの格好をしたまま頭を垂れ、
じっと自分の足を見ていた。
彼女の頭の上に幼なじみの辛そうな声が降ってきた。
「すみません、野梨子。キスまでしておきながら……。僕は野梨子の気持ちには
応えられない……。すみません、野梨子……」
胸の奥から絞り出すように、清四郎は途切れ途切れに言葉をつないだ。
野梨子は中々顔をあげない。泣いているのだろうか。
できることなら肩を叩いて慰めてやりたい。しかし、できなかった。
彼女を苦しめているのは、正真正銘この自分、なのだから。

658 :可×清 可憐さんにはかなわない(96):03/07/17 01:29
(嫌ですわ、清四郎。もちろん、わかっていましたわよ。ほんの冗談ですわ)
(私のことなら気になさらないで。そりゃ、清四郎を可憐に取られるのはちょっぴり
悔しいですけど……大丈夫ですわ。可憐と清四郎ってお似合いですわよ。
……きっとうまくいきますわ)

夕べ清四郎に向かって言った自分の言葉が、野梨子の頭の中をかけめぐっていた。
精一杯の強がり。
徹底的に傷つく事を無意識に回避していたのだろうか。一滴の涙も出なかった。
どうして、最後の最後まで彼に全てをさらけ出せなかったんだろう。
拒まれても、首を横に振られても、「あなたを愛している」と彼にすがりついたら
よかった。なんて−−見栄っ張りで愚かな私だろう。

「野梨子?」
美童の声に野梨子は我に返った。美童がこちらをじっと伺っている。
「ご、ごめんなさい。ぼうっとして。……そういうわけですの。振られてしまいました
わ、私。万事休す、ですの。清四郎は可憐とおつきあいするつもりみたいですわ。
美童にも……ごめんなさいね。可憐をとられてしまいましたわね」
「あきらめるの?」
美童の問いに野梨子はただうつむいた。
「だって、もう答えは出てしまいましたでしょ」
口を尖らせた美童は額を押さえて、ふーっと首を振った。

659 :可×清 可憐さんにはかなわない(97):03/07/17 01:29
「野梨子。野梨子のそういうところ、すごくよくないよ。こんなところで、みすみす
勝負を捨てるようなマネをするの?テニスの時を思い出せよ。強気な野梨子はどこへ
いったんだよ?」
怒ったような美童の顔に野梨子は目を丸くした。
美童は色白の肌を紅潮させて熱弁を奮っていた。
「最後まで勝負を捨てちゃだめだ。野梨子には何が何でも清四郎を自分のものにして
やるっていう気迫が足りないんだよ。あきらめるな、最後まで。」
眉間に皺を寄せて懸命に考えていた野梨子はやがて顔をあげると、
微笑んだ。美童は彼女の瞳に再び強い光が戻ったのを見ると嬉しくなった。
「わかりましたわ、美童。ネバーギブアップですわね。最後まで勝負は捨てませんわ」
金髪と黒髪、二人の悪党は健闘を誓い合った。

そんなこととは知らない可憐と清四郎は、すでに別のことを考えていた−−−。


660 :可×清 可憐さんにはかなわない:03/07/17 01:30
以上です。ツヅキます。

661 :名無し草:03/07/17 09:24
>650
激萌え・・・萌え死に。
>可憐さん
<<オワリ>>
ワロタ(w
野梨子マンセーなので、美童と幸せになってほしいでつ。
可憐さんの野梨子はおもろくて好き!

662 :雨がボクを狂わせるので<39>:03/07/17 11:04
>>487
時々、自分の他人より鋭いといわれる感覚を恨みたくなる。
それほどまでに幼なじみの変化は普通にしていたら感じ取れない程、わずかな
ものであった気がする。
誰も気づかない彼女の変身を―――できることなら気づきたくはなかった。
知りたくなかった。今となっては痛切に思う。
しかし彼女への好奇心を抑えられずに禁断の扉を開けたのは、自分。
彼女への敬慕の念を足で踏みにじり、穢すことによって喜びを得ていたのは
紛れもなく、この僕だ。
僕が自分で選んだ―――汚辱にまみれた、この行為を。

いや、違う。
やはり彼だ。美童。
彼さえ僕を導かなければ、こんな無様な自分を知ることもなかっただろう。
彼が僕をいざなった……!
快楽のリズムが鳴り響き、同時に耐え切れない悪臭のする世界へ。
ヘドロの沼の岸辺に美しく鮮やかな華が咲き乱れる国へ。

663 :雨がボクを狂わせるので<40>:03/07/17 11:05
美童。美童。
僕がその名前を呼ぶ時、僕の胸襟を覘いてみたまえ。
そこには嫌悪憎悪同情憐憫、僕の全ての負の感情が置いてある。
君はあの時のように、何の感情もない青い瞳で僕の心の臓を穿つだろう。
僕はその激烈な痛みに悶え、涙のような汗を流しながら
君を恨む。力のない目で君を見る。
そして容赦ない君の革靴が倒れた僕の体を蹴りつけるのだ。
僕の体は傷だらけになり、傷という傷から赤い血が流れ出す。

雨が降っている。
たちまち僕の周りは池となり、川の流れとなって
傷だらけの僕は流されていく。運ばれていく。
君と野梨子が岸辺に立って表情のない顔で僕を見送っている。
僕はやがて浮かんでいられなくなり、小さな泡を残して水面から姿を消す。

沈んでいく、堕ちていく。
息が苦しい。もがきながら、ふと川底に目をやると、同じように沈んでいったろう
友人たちの姿が。可憐、悠里、魅録、それにああ、さっきまで岸辺にいた
野梨子や美童までもが全裸で重なり合い、沈んでいるのだった。
やがてそれに僕も加わるのだろう。

664 :雨がボクを狂わせるので<41>:03/07/17 11:06
ここまで想像して僕はこみ上げてくる笑いを止めることができなくなった。
どうやら僕は真性のナルシストらしい。
どこまで自分を美化したら気が済むのか。笑わせる。
くだらない妄想だ。
決着をつけなければ。

清四郎は固く巻き絞った洋傘を一つ手にして、家を後にした。

××つづく××

665 :名無し草:03/07/17 22:09
>>655
野梨子に誘導されまくる清四郎にワラタ!

666 :名無し草:03/07/18 01:32
前回の競作の後はスレが寂しかったけど、続きがたくさん読めて嬉しいです。
作家さん、ありがとう。

>可憐さん
シリアスな場面のはずなのに・・・笑いますた。
肉襦袢着た清と野の姿が思わず頭に浮かんで離れません。

>雨
すごい続きが気になる・・・
実際のところ何があったんだ?
>革靴が倒れた僕の体を蹴りつけるのだ
で、SM?と思った漏れ、逝ってきます・・・

667 :名無し草:03/07/18 13:21
>可憐さん
キテタ━━(゚∀゚)━━ !!
可憐さんの野梨子が一番好き。
コズルイところが萌える。
続きお待ちしてます。

668 :名無し草:03/07/20 01:01
>雨
うわわ〜、続き気になりますね!!!
清四郎!何をされた!!
私も、密かにSMっぽいと思ってしまいました。汗
清四郎は、最後の砦っぽいですね。 しかし、美童の前にもろく崩れ去るのか〜。
楽しみにしてますvv

669 :名無し草:03/07/21 00:09
>雨
私は、清四郎なにされた!を飛び越えて、野梨子なにされた!と思った。
野梨子セーフと思いきや、もしや清四郎に!?
わわわ、妄想が止まらない。

670 :雨がボクを狂わせるので:03/07/21 15:28
「雨がボクを狂わせるので」うPします。5レス使います。
ダーク且つ清四郎、野梨子、美童他、有閑メンバーは総汚れなので
お嫌いな方はスルーお願いします。また今回性的な表現も含まれますので
ご注意ください。

671 :雨がボクを狂わせるので<42>:03/07/21 15:28
>664
三日三晩降り続いた雨もようやく上がり、久しぶりに傘なしで登校する。
長い脚でひょいひょいと水溜まりをよけながら、清四郎はゆうべ母から聞いた話題を
口にした。
「最近このあたりでも痴漢が出るそうですよ。物騒だから野梨子も気をつけた方がいい」
まあ、嫌ですわね、と呟いてから、黒く大きな瞳が悪戯っぽくくるりと回った。
「でも私には頼れるボディーガードがいるから安心ですわ」
野梨子の口調は極自然なものだったが、幼馴染みの気安さで甘えてくる彼女が愛おしく
清四郎は優しい眼差しで微笑んだ。

彼は幼い頃からずっと彼女のボディガードを自認している。
物騒な世の中になったものだ、昼明るい内だとて安心できるものではないと
身を引き締めた。

それにしても、最近の彼女ときたらどうだ。
歩く姿は華のようとはよく言ったもので年頃なのだろうか、
光り輝くようなその美しさは日に日にその輝きを増している、
と清四郎は考えていた。

彼女の風情佇まいは高嶺の花の名に相応しい。

それでも凛と背筋の伸びた姿が僕や倶楽部の連中の前では、くしゃりと崩れ笑い転げる。
その瞬間が食べてしまいたいほど愛らしくてたまらなかった。
なぜ、こんなにも芳しく麗しい女性になってしまったのか。
これではろくでもない男たちが寄ってくるのも無理はない。
しかし、と又清四郎は考える。

彼女が嫁に行くまで悪い虫を追い払うのが僕の役目ですからね。

672 :雨がボクを狂わせるので<43>:03/07/21 15:29
「清四郎、そんな話の後で言いにくいのですけど、クラブ活動を一つ増やしましたの。
今日活動があるかもしれないので、先に帰っていてくださいな」
暗記してきた台詞を読み上げているような口調だった。
彼女の顔から微笑みが消え、真面目な顔をしている。

清四郎はぴんと勘が働いた。
「生徒会室で茶でも飲みながら待ってますよ、今日は珍しく暇だから。さっきも
言いいましたが、物騒だから遅くにひとりで帰らない方がいい」
野梨子は一瞬迷っている素振りを見せた。だが、待たせていると思うと気になるので
先に帰っていてほしい、もしかしたら新しいお友達とお茶してくるかもしれないし、
とやんわり送迎を断ってくる。
ボディーガードとしては思うところあったが、あっさり野梨子の頼みを承諾した。

男か。
野梨子があえて自分を遠ざけようとする理由は、それしか考えられなかった。
彼女に気になる男性がいるとは可憐からも悠理からも聞いたことがないが、
どんな男だろう。確かめてみなければなるまい。
何せ彼女ときたら方向音痴ならぬ男音痴で、それも今までの彼女の経歴を考えれば
無理もないのだが、どうも怪しい男に引っかかりそうで危なっかしくて
見ていられないのだ。

清四郎は彼女の行動に目を光らせている自分をそんなふうに理由づけていた。
どんな男だったら許せるのか何人か頭の中で候補をあげてみたものの、どれもこれも
野梨子には全くつり合わないような気がした。
もちろん、自分も彼女の隣に並べてみたことはあるが、野梨子の持つ清廉さの前には
恥ずかしく見劣りがしてあきらめのだ。
そして結婚相手にはふさわしくなくても、せめて彼女を守る騎士でありたい、と考えた。
彼女にはせめて結婚まで清らかなままでいてほしい、無理なことだと思いつつも
そう願わずにはいられなかった。
それだけ清四郎の中での野梨子は犯すべからざるもの、神聖なものであったのである。

673 :雨がボクを狂わせるので<44>:03/07/21 15:30
上がっていたように見えた雨も午後になると又黒雲がすっぽりと聖プレジデント学園を
覆いつくしていた。やがて泣き出した空に生徒達は大急ぎで下校して行く。
放課後、清四郎は見つからないように留意して野梨子の後をそっとつけた。
野梨子はどの部室にも立ち寄らずに、まっすぐに図書館に向かう。
ちらちらと携帯を気にしているのを見て、清四郎はますます確信を深めた。
図書館で野梨子は閲覧席に座り、本を読んでいる。
清四郎も本を選ぶふりをしながら遠くから彼女の姿を伺っている。

彼女の携帯がメールが着信したことを小さな音で告げた。
野梨子はちらと携帯の画面に目をやると席を立つ。
そのまま鞄を抱えて出口に向かうのかと思いきや、
意外にも彼女はフロア内にある階段を降り、無人の英米文学の書架に向かった。
清四郎も気づかれないようにそっと後をついていく。

辺りに誰もいないのを確かめてから野梨子は鞄を床に下ろし、再び携帯を開いた。
誰かにメールを打っているらしい。
やがて着信音は消したらしく、携帯がわずかに震える音が、野梨子のすぐ後ろの
書棚に隠れている清四郎の耳に届いた。今度はメールではなく通話らしい。
小さな声で野梨子が答える。

「……ええ、そうですわ。誰も……」
携帯を耳に押し当てていた野梨子の顔が見る見る間に紅潮した。
「……私、ただ、……の言う通りにしただけ……」
次の瞬間、野梨子の肩がびくっとして急に周囲を見回し出したので清四郎は緊張した。
だが本の間に隠れている清四郎に野梨子は気づかなかったらしい。

「見ているんですの?私を?どこから……怖いですわ、出てきて……」
自分以外に誰かが野梨子を観察しているというのか。
どこだ?
清四郎も注意深くあたりを見回す。
自分の側には誰もいない。ということは反対側だろうか。

674 :雨がボクを狂わせるので<45>:03/07/21 15:30
突然、野梨子の喉から、うっという音がした。
携帯電話を両手で握りしめ泣き出しそうな顔をしている。
「……できませんわ、そんなこと……」

脅迫?
さしもの清四郎も驚いた。野梨子は誰かから脅されて仕方なくここに来たのか?
それならばまず自分に相談すればいいものを――。
自分にも言えないことをネタにゆすられているのか?
清四郎は嫌なことを考えてしまい苦い顔をした。
野梨子は肩を震わせ、携帯を耳に押しつけたまま立ちすくんでいる。

見かねて清四郎が出ていこうとした時、野梨子が何か言った。
そして――。

一歩踏み出そうとしていた清四郎は信じられない光景を目の当たりにして
全身が凍りつき、そして遅れて雷に打たれたような激しい衝撃を感じた。

野梨子はもう一度あたりを見回した後、あきらめた表情である一つの行動をした。
そして鞄に自分の持ち物をしまうと、そそくさとその場を離れた。
あわてていたので、すぐ後ろの書棚の陰に隠れていた清四郎には気づかず仕舞いだった。

清四郎もその後を追うが、はっとして後ろを振り返る。自分の後から誰かがついて
くるのかと思ったが書架はしんと静まり返っている。
だが清四郎が階段を上って書架から姿を消した後に、鼻歌を歌いながら姿を現した男が
一人いた。彼はニヤニヤ笑いながら携帯を耳に当てた。

675 :雨がボクを狂わせるので<46>:03/07/21 15:31
廊下を猛スピードで歩いていた野梨子が突然止まったので、清四郎もあわてて柱の陰に
隠れた。先程受けたショックのために明らかに自分の動作が鈍いのを、清四郎は嫌と
いう程感じていた。

野梨子は又携帯を耳に当てている。と、今度は鞄の中から先程のものを取り出すと、
放課後で廊下にはほとんど生徒がいなかったので、躊躇なくそれをゴミ箱に捨てた。
そして足早に姿を消す。

彼女の足音が遠ざかるのを待って、清四郎はゴミ箱に近づき、一瞬ためらった後
さっと野梨子が捨てたものをポケットに入れた。

そのまま男子トイレに向かう。個室に入り、ドアに鍵をかけた。
震える手でポケットから取り出したそれには、まだ持ち主の体温が残っているようだった。
くしゃくしゃになった黒くて薄いものを広げてみると、間違いなく聖プレジデント学園
の女子がひとり残らず着用している学校指定の黒ストッキングだった。

もう一つは――。
彼女の人柄そのままに純白の小さな布地が清四郎の両の手のひらの中で、
ひっそりと呼吸していた。
それは驚く程小さく、一体これに小柄とはいえ彼女の腰がおさまるとは到底思えなかった。
ウエスト部分にやはり純白のレースの飾りが控えめについている。
そして、もうすでに手にした時から清四郎は感じていたのだが、
彼は自分が何をしているかわからぬままに、無意識にそれを裏返し、
布地の若干厚くなっている部分を中心として広がる湿り気に手を触れた。
それは、まるでその部分だけ雨が降ったかのように、ぐっしょりと濡れていた。

彼はトイレのドアにもたれると、額に手をやり乱れた呼吸を必死で整えていた。

##つづく##

676 :名無し草:03/07/21 17:45
>雨
清四郎の壊れっぷりが(・∀・)イイ!!
先が全く読めないので、とにかく続きが楽しみです〜

677 :名無し草:03/07/21 23:43
>雨
うわあ〜〜、どうなるんでしょお!! 続きが気になります(>_<)
美童は、そんなことを野梨子に命令したんですね〜。
清四郎を陥れるために!?
ほんと、先が全く読めませんね。 面白いです!!
続き、楽しみにしてます。

678 :名無し草:03/07/22 01:15
単純計算で、あと46レスついたら、450KBになりまつよ。
もちろん、作品うpが続けば46レスよりもずっと早くに450KBになっちゃうだろうし
雑談ばっかりなら、もっと遅くなるだろけど。

そろそろ前スレを完全埋め立てする時期かな。

679 :名無し草:03/07/22 05:27
>678
450KBでの引越しは早過ぎると思う。
実際には500KBでも大丈夫で、前スレは早く引越しし過ぎたために
埋め立てもできず、中途半端に残っちゃってる。

つか、前スレの完全埋め立ては相当難しくない?
容量で50KB以上、レス数だと200近く残ってて、どっちも遠い道のり・・・

680 :名無し草:03/07/22 15:18
はぁー家パソ壊れて出先より久しぶりに
来たら雨が凄いことに…
ダーク苦手なハズなのに、目が離せんのでつ。

681 :名無し草:03/07/27 14:58
(゚Д゚≡゚Д゚)?
ダ、ダレモイナイノ…?

682 :名無し草:03/07/27 21:16
続きが読みたいっす〜。

683 :名無し草:03/07/27 21:33
こんなにレスないなんて珍しいね。
夏休み入ったばっかりでみんな忙しいのかな。

それはそうと、新しいイラスト見た?
清×野のしっとり感が出てて、萌え〜ですた(w

684 :名無し草:03/07/27 22:42
土日なのにレスないなんてさみすい。
>683 新しいイラストすごくうまいね。
野の表情がきれいで素敵。
清は、ちょっと魅と混ざってる感じがした。
絵で見ると二人ってけっこう身長差あるんだなあ。

685 :名無し草:03/07/28 00:17
新しいイラスト見たよー。
浴衣(着物?)の良い雰囲気の二人に萌えたー。どんな状況なんだろう。

>>684
確かに身長差あるねえ。清181cm、野153cmだったっけ?
そう考えるとやっぱり結構な差だなあ。

686 :名無し草:03/07/28 21:21
そういや、有閑キャッツの続きが気になる・・・
他力本願で済まぬが、どなたか書いてくださらんかのう。

687 :秋の手触り[79]:03/07/29 01:54
>>637-641

 さて、どうしたものか。
 魅録は、清四郎から提示された言葉の意外性に、少しだけ驚いた。
 面白い――そうは思う。それを順当にこなす自信もある。
 だが魅録は、人に指図するのではなく、自分で動かなくては気が済まない性分であることを
自覚している。人の上に立つことは出来るだろう。作戦も立てることが出来る。だが、それは
清四郎のように、人の後ろで見守るのではなく、人の前に立ち、率先して自ら斬りこむ形で、だ。
 それが器の違いというものかもしれない。それを認めるのは、あまりに悔しい。
 だが、倶楽部の誰もが知っている。指令になるのならば、清四郎だ。
 喧嘩でなら、悠理も魅録も彼には敵わない。だが、彼の本領が発揮されるのは、あくまでも
頭脳戦だ。自分の意地のためだけにそれを腐らせるなんて、勿体なくないか?
 魅録の逡巡を他所に、可憐がへぇと意外そうな声をあげた。
「プライドの高いあんたが、よく人に使われたもんだわよねぇ」
「僕を専制君主のように言わないでくださいよ」
「エゴイスティックなのには変わりないと思いますけどね」
 これは野梨子の弁。
 女性二人の言い様に、立つ瀬のない清四郎は肩を竦めるに留めた。老獪な政治家相手に
舌戦を繰り広げられる清四郎が、しかし少女達との他愛無い口喧嘩の勝率は限りなく低い。
 別段、清四郎がレディファーストというわけではない。何故かそうなってしまうのだ。
「で、どうします?」
 無理やり話しを終了させて、清四郎は再び魅録の方を見た。
 ここまで言われて、彼らの介入を拒むのも変な話だ。
 勿論、清四郎へのライバル心はもう収まっているとはいえ、まだ、なんとなく面白くないような、
あっさりと踏み込まれて残念のような気持ちが胸で燻ってはいる。それは、清四郎個人に、という
よりは、倶楽部の残りメンバー全員に向けた思いだ。これは、悠理から依頼を受けた、自分の
事件であった筈だ。
 しかしその反面、彼らの介入を心強く思うのも確かだ。
 悠理に「俺だけで解決する」と言ったときは、ここまで重要な事件になるとは分かっていなかった。
だが、これは豊作の命運――引いては、悠理に命運を左右しかねない。倶楽部のメンバーの
危機は、倶楽部で総力をあげて解決すべきだろう。

688 :秋の手触り[80]:03/07/29 01:59
「よし、分かった。それで手を打とう」
 魅録がそう言うと、清四郎は満足そうな笑みをあげた。それで、実のところ、清四郎自身がいつも
と違う立場に楽しみを覚えているんだなと分かる。
 可憐ではないが、清四郎が人に使われるという立場を良しとしたことに、意外を禁じえない。そう
いう面でも、野梨子への恋は――そして失恋は、彼を大人にさせたのだろう。
 魅録の見る限り、清四郎と野梨子の間にギクシャクとした空気は流れていない。むしろ、二人の
間はただの幼馴染としてではなく、ただの仲間だけでもなく、強い絆で結ばれているように思う。
 肉親よりも深く、友情よりも強く、恋よりも確固たるものとして。
(……それって、凶悪だよなぁ)
 将来、野梨子の恋人となる人間を魅録は哀れんだ。
「で、これからどうすんのさ」
 先ほどから、美しく装った有閑マダムたちに気もそぞろであった美童が、先を促した。このメンバー
の中で、こういった社交的かつ華やかな上流階級のパーティーに一番似合うのは間違いなく彼だ。
 場慣れしているのは全員だが、まるで水を得た魚のように輝くのは、美童である。
「魅録、さっきあの人をじっと見詰めてたろ。ああいうのがタイプ? ――それとも誑かすつもりだった?」
 美童が眼差しで示したのは、無論、先ほど魅録が話しかけようと思っていた女性だった。
 魅録は、思わず口笛を吹く。身に纏う、上等なタキシード姿には相応しくない軽薄な仕草だった
が、ピンクの髪と相まって、妙に堂にいっている。しかもホスト風にはならず、ハイセンスなのだ。恰も、
クラシックの名曲をパンクにアレンジしたような、見ていて不思議な感じがする。
「正解」
「どっちが?」
「決まってるだろ。彼女、戸村専務の秘書なんだ」
「なるほどね」
 任せた、任せてよね、の言葉はない。この場で、美童が彼女に声をかけることはすでに決定事項
であり、変更はない。たとえ、彼女の好みが美童より清四郎にあったとしても、やはり、こういうことは
美童の方が上手くやるだろう。
 ある女性によっては白馬の王子さま。ある女性にとっては危険な匂いのする男。ある女性にとっては
つらい現実を忘れさせてくれる癒しの存在。美童は、女性の望むままの姿を取ることが出来る。

689 :秋の手触り[80]:03/07/29 02:03
 清四郎は切れるが、彼は彼でいることしかできない。ラブゲームには向かないだろう。
「美童。彼女の情報なんだけど」
「要らないよ。下手に知ってたら勘繰られるかもしれないし。大体の性格とか好みとかは分かるしね」
 豪奢な白金の髪をさらりと掻き揚げ、自信たっぷりに彼は言う。そのゴージャスさは前時代的だが、
魅力的という点においては欠点のつけようがない。
 しかし、あまりの安請け合いに、黙って聞いていた清四郎が眉を顰めた。
「大丈夫ですか?」
「あー、恋に関しては百戦錬磨の僕を疑う気?」
 美童は、なめないでよねとでも言いたげに、唇を尖らせる。この、甘えるような、それでいて、少し幼い
ような口調を愛する女性は多い。それでいて、彼女たちにとって美童はしっかりと男なのだ。
「じゃあ言うけど、あの娘はお硬そうに見えて、かーなーり男に飢えてる感じだね。それも、一晩の遊びって
いうより、結婚とか、そういうしっかりした約束を相手に求めるタイプ。理想も高そう。でも、実際には完璧
な男とよりは、ヒモタイプの方に弱いかな。口も軽そう。あんまり、こっちの情報とかは見せない方が得策。
あと、分かりやすいものが好きだね、彼女。ブランドとか、テレビとか、雑誌とか」
 容赦のない、しかも偏見に満ちた言葉だったが――。
「正解だ」
 不思議と、魅録の持つ情報とマッチしている。
 普通、遠目から見ただけじゃ、そんなこと分からないんじゃないか?
 魅録たちの疑問に答えたのは、美童自身ではなく可憐だった。
「そんなの、見たら分かるじゃない」
「ほらね。僕達なら分かるんだよ。僕たちなら」
 可憐の支援を得て、得意げに言った美童に、今度は野梨子が食い下がった。
「何を聞き出す必要があるのかぐらい、魅録に聞いていた方がいいんじゃなくて?」
「大丈夫だよ、野梨子。僕だって事件の度に、伊達にこういうことしてきたんじゃあないんだ」
 美童は、仲間には滅多に見せない極上の笑みを浮かべて、ウインクひとつ。
「要はこういうことだろ。戸村社長周辺の人の動きと金の動きが分かったらいいんだろ」
「ビンゴ」
 今度こそ、魅録は敬服を込めて、美童に親指を立てた。

                 ツヅク

690 :名無し草:03/07/29 02:36
昔からの有閑ファンですが、つい最近このスレの存在を知りました。
夢中になって次々と読んでしまい、先ほど、

>>585 戀ひやめし夏

ではついに本気で泣いてしまいました。
すごいですね〜ここ、泣けるお話が読めるなんて!!
七夕競作、どれもこれも素敵でしたし、
連載ものもおもしろくてつづきが気になります。
とりあえず感動したことを伝えたかったので書き込みました。
今後もどんな話が読めるのか、すごーく楽しみです・・・!


691 :名無し草:03/07/29 03:01
>秋の手触り
魅録の仲間たちに対する想いが描かれていたのが、
何か新鮮な気がしました。
美童が本領を発揮し出したのも、いい感じですね〜
原作のテイストを充分残しつつ、より細やかなところ
まで気を配って話を進めているのが、至れり尽せりで
嬉しいです。

>690
いらっしゃいませ〜

692 :名無し草:03/07/29 06:41
>秋の手触り
美童、かっこいいーー!!!

693 :名無し草:03/07/29 06:56
>秋の手触り
ち密な人物描写がとても良いと思います。
美童がまるで生身の人間のように思えてきました。
次回彼の活躍に期待したいですね。
あ、でも柄に合わない清四郎が女性をおとす役割になる
のも見てみたいなあ。

694 :名無し草:03/07/29 18:16
今イラストみてきますた。
野梨子キレイw

695 :名無し草:03/07/29 19:43
>秋の手触り
わーい、UPされてますね!! 嬉しいです(*^^*)
美童やるジャン!!と賞賛したくなりました。 かっこいいですね、こういう時は。
魅録の気持ち、何となく分かります。
今回も、すごく面白かったです。
続きも楽しみにしてますvvv

696 :名無し草:03/07/30 18:50
>秋の手触り
「そんなの、見たら分かるじゃない」

好きですw毎回思うけどここの美童はかっこいいなぁ。。

697 :夏姿、夢花火(1):03/07/30 22:20
ヒュルルルルル……ド──ン
夜の闇へ光が咲く。一瞬の明かりを運ぶ、星の花。
カラン、コロン
軽くやさしい下駄の音。2人は縁側に座って花火を見つめていた。自然に手が重なっている。
扇風機が生ぬるい風をかき回していた。風が通ると風鈴がチリチリと鳴る。
その音が、涼を呼んでいた。

「クーラーつけようか?」「いいですわ、このままで」
じっとり汗ばんだ夏の夜。つかの間の風が野梨子の頬を通り過ぎる。
「あっ。でかいのくるぜ」
見つめた先は、花火ではなくて、お互いの瞳。

ヒュルルルルル……ド──ン
今日何発目かの花火があがった。二人のシルエットが重なって見える。
キス。
恋人の小さな唇を優しく、舌で訪ねていく。左側から下を通って右側へ。
滑らかな舌がおずおずと応えてくる。絡みつき、お互いの舌を求め合う。
彼女の小さな舌が自分の舌先にチロッと触れる時、
魅録は頭の奥がしびれる感覚をおぼえた。
すべりそうな、溶けてしまいそうなそれを逃さないように、
2人は何度も何度も探っていった。
熱くてやわらかい。2人の中身をまさぐっているようだった。


698 :夏姿、夢花火(2):03/07/30 22:21
…ちゅっ…
唇を離すと、野梨子の口元はうっすら開いていた。
魅録は縁側に向きなおし花火を見ている。庭は土の香りがする。
と、視線を感じて野梨子を見ると、やはりこちらを見つめていた。
今日の彼女は浅葱色の浴衣に朱色の帯を締めている。
汗をかいているのがひとめでわかる。潤んだ、真っ黒な瞳でこちらを見つめている。
いや、潤んでいるというよりも……
魅録は彼女にニコっと笑いかけた。「どした?」すると。

ポロッ。
野梨子の瞳から涙が零れた。
(!!!!????)
「どっ、、どした、野梨子!?」
「……」
「なっ、ど、…え!!??」
「…っ」
「やだった?」
ふるふる。
「えじゃあ何ちょっと長かったとか?」
「質問の意味が変わってませんわ…」さりげなくツッコミつつも野梨子は泣いている。
「…っく」とうとうしゃくり上げだしてしまった。「ひっ…」
「〜〜何だよ!!??」
「………………ませんのね」「え?」


699 :夏姿、夢花火(3):03/07/30 22:22
息を深く吸うと野梨子は言った。
「こうしてお付き合いをはじめてもう半年も経ちますのに…キス…
までしか触れてきませんのね。みっ、魅録は私の事どう思ってますの?」
(はっ!!??)彼は唖然とした。(コイツ何考えてんだろ…)
あまりに唖然としすぎて整理する前に全て吐き出してしまった。
「あ…のなぁ野梨子。オレが今までどんだけ頑張って我慢してきたと
思ってんの?!野梨子は初めてだし恋愛にも免疫ねぇし、大切にしなきゃって
ずっと思っててでも今日誰もいないウチに呼んだのだってあわよくばとか
思ってたしけどまだ早いかって思って、そんなセクシーな浴衣着てきやがって
そそられ…やっ可愛くていんだけど、ってか違くて〜〜あーもう全然違うから!
お前2004年度鈍感クイーンに任命してやるよ!!!」
はぁ、はぁ…  (やべっ退かれた??)興奮しすぎて何を言ったのか覚えていない。
当の野梨子は涙は止まったようだったが真っ赤になっている。
「…ごめんなさい…」そして、瞳を上げて言った。
「魅録のことを想ったり、言葉にするだけじゃ伝えきれないって思って」
いつもの凛とした野梨子だ。
「…ずっと、一緒にいたいって」

次の瞬間、魅録は野梨子の両肩を掴んでいた。ゆっくりと、倒す。
(小さい肩…)もともと小柄な野梨子の肩は魅録の手にすっぽり収まっていた。
二人の肩越しに、花火の音が響いた。


700 :夏姿、夢花火(4):03/07/30 22:23
ぎこちなく前髪をかき上げ額に口付ける。野梨子はきつく、目を閉じている。
瞼、頬、唇のはし、唇、耳、キスの雨が降る。
耳たぶを舌先で舐めると、野梨子の体がビクっと震える。
一瞬にして背中に何かが走ったようなはじめての感覚だった。
魅録は優しく舌で囁いた。不思議な感覚は体中に染み渡っていき次第にそれが
甘いしびれとなって野梨子の体を支配していく。
「……」魅録の熱い息。いつまでもいつまでもこうして欲しいと思った。
首筋、鎖骨を通って、魅録は浴衣の合わせを優しく開いた。
布からこぼれ出した誰も見たことのない白いなだらかなふくらみは、
頂上に淡い桃色の花を咲かせている。

見とれた彼は、野梨子の様子が先ほどと違うことに気付いた。
緊張と恐怖で震えているのがわかる。
それでも受け入れようとしている恋人を、魅録は優しく諭した。
「ほら、野梨子?…目開けて」ゆっくり抱き起こす。
合わせを直してやった。「…やめとくか?」笑顔で見つめる。「ん?」
「…やめ、ませんわ…ただやっぱり緊張して…」
「よっし、じゃあおまじないな」「?」
魅録は息を吸い込むと野梨子を抱きしめた。

「──好きだ…」

とくん、とくん 鼓動が伝わる。激しく波打っていた心臓が凪のようになってくる。
とくん、とくん 2人の鼓動が混ざって1つになった。あったかい。


701 :夏姿、夢花火(5):03/07/30 22:24
大切にしてもらっているのも判っていたはずなのに、
いつも不安が拭いきれなかった。
そして、ただ純粋に想っているつもりでも、彼が自分に触れるとその
暖かかみをもっと感じたいと思ったし、長い間一緒にいたいと思った。
抱きしめられると鼓動も、呼吸も重ねたくなった。
くちづけをする度にそこから気持ちが流れ込んでゆく気がした。

キレイゴトだけじゃ、恋は出来ない。

言葉や瞳で伝えるよりも、野梨子にとってきっともっと難しいはずの事だ。
でも、もどかしい想いが掻き立てられる。
こんなに、こんなに好きだと。
心も体も伝えたい。

抱きしめられた胸の中で、野梨子の気持ちが高ぶっていく。

もう、何も怖くない。


702 :夏姿、夢花火(6)R:03/07/30 22:25
そっと体を離すと、野梨子の震えは治まっていた。
瞳が涙でしっとり濡れて、艶やかな鏡のようになっている。
そこにはくっきり、魅録自身が映っていた。
小さな紅い唇に、いま一度くちづける。やわらかい。
お互いの気持ちが、緊張と思いやりの混じった甘くて濃い想いが胸の中まで
熱く流れ込んでくる。2人は吐息の会話を交わした。
「…っふ…」

ギシッ。縁側が軋む。ゆっくりと倒れていく。
「野梨子…」「…っ」
さっきよりももっと優しく、やわらかいキスを繰り返す。
自分を想ってくれる魅録の気持ちが夏の空気と共に体に染み入ってきて、
それだけで野梨子は泣きそうになった。
魅録はそっと胸元へ顔をうずめる。先ほどのように合わせを全て開くことはしなかった。「んっ…」「平気。野梨子」滑らかな白い肌。頬を擦り合わせた。
野梨子の左のふくらみの頂上はまだ、緊張の色を見せつつもとろけそうに柔らかい。
右手でそうっと周りから揉みしだき回すようにして幾度も幾度も愛撫する。
頂上を人差し指でくるくる回す。
「あ、っは…」今度は親指と人差し指でつまんでこすり合わせた。
その間右側の花びらをすっぽり口に閉じ込め、全体をやわらかく吸い尽くす。
輪郭をなぞるように舌先で頂上を追う。
「…っ!みろ、く…はっ…」「…ん…あっ…」熱いため息が2人を取り巻く。
全身が魅録への想いで満たされている。遠くの海を漂っている。
外ではまだ、花火が続いている。
1発ごとに歓声が上がるのが、頭の奥にぼんやり響くような気がした。


703 :夏姿、夢花火:03/07/30 22:27
いきなりすみません!浴衣R、魅×野です。
というより、夏Rでしょうか。
短編です。3日くらいに分ける予定です。

704 :名無し草:03/07/30 23:19
>夏姿、夢花火
・・・お約束読みました?

705 :名無し草:03/07/30 23:57
sage進行もお忘れなく(藁

706 :名無し草:03/07/31 00:00
>704
上の人、なにかおかしいか?

707 :706:03/07/31 00:01
あぁ、カップリングの表記漏れか
entar押してから気付いた。ソマソ

708 :名無し草:03/07/31 00:19
まあ、いいんじゃないっすか?
これから気をつければ。

魅×野 好きなのでドキドキしてます。
二人の会話がリアリティあっていいです。
魅録の優しさもよいね。

709 :名無し草:03/07/31 10:25
私は>704の方が約束ちゃんと読めや、ゴルア!!って思ったけど。
カプ表記って、「なるべく」ってかいてあるじゃん。
な〜にピリピリしてるかなあ。あ、夏だから?

>夏姿
いいっすねえ、ゆかたRw
私の中でタイムリーでうれしいっす。夏姿作者さんもだけど、ここにうpしてくれる
作者さんたちは、魅録の言葉づかいがイイ!頭の中で御大の絵が動きまつ。

710 :名無し草:03/07/31 17:15
>>704
( ´,_ゝ`)プッ

711 :夏姿、夢花火 魅×野(7)R:03/07/31 20:02
魅録はだんだんと、下へ向かっていった。野梨子を包む浴衣をそうっと
はがしてゆく。「…!」野梨子の腰を浮かせて、彼はもどかしそうに
帯を剥ぎ取り、紐を解いた。
はらっ
辛うじて衣服であったそれは、もはや1枚の布になってしまった。
同時に息を吐き出し、彼女の体の緊張がほどけるのがわかる。
甘い匂い。濡れた瞳。
…ド───ン
「いやですわ…見ないで…」
魅録はその肌のなまめかしさに息を飲んだ。艶やかな野梨子の黒髪は、
夏の匂いと官能の汗を染み込ませてしっとりと波打っている。
汗ばむ額。睫。その全てが自分の為なのだと思うと体中に愛しい思惑が広がる。
この少女を抱きすくめてしまいたい。自分で満たしたい。
下から手を忍ばせ優しくさすってやる。
「…んっ、は…」
丁寧な指つき。体がとろけてしまいそうになる。
触れるその指先からぎこちない想いが体の中へじんわり伝わってくる。
いつもはっきりと言葉に出来ない、こんなにも君を想っていると。
「ふ…」
甘い感覚に酔いしれていた野梨子は、魅録の手が降りてきそうで一定の場所を
漂っているのに気付くと、もっと、もっとという様に身をよじらせた。


712 :夏姿、夢花火 魅×野(8)R:03/07/31 20:03
「ぁ…っ、みろ…く…?」「何…?」
「…何でもありませんわ」
彼は口づけながら、左手で黒髪をすくい上げ、右手で腰を愛撫している。
自分が彼を求めている事を、恥ずかしくて悟られたくなかった。──でも。
その腰を辿っていく指つきに、野梨子は遂に耐え切れなくなった。
放っぽらかしてあった震える自分の左手を腰の下に入れ、そっと魅録の
右手に重ねる。そうしてその白い小さな手は彼を下のほうへと誘導する。
魅録を感じてほてった体が、自分の大胆さにますます熱を帯びてくる。
「なんだ…触って欲しかったなら言えばいいのに」
吐息を漏らしながら魅録が悪戯な笑顔を見せた。
「…っ!」こちらは恥ずかしさで真っ赤になっているというのに。
野梨子は涙をいっぱいためて彼を睨んでやった。
(可愛いよなー、こいつ…)
自分にしか見せない彼女の一面に触れるたび、魅録の気持ちは高まった。
「ウソだよ…ごめんな」
桃のようなその部分はしっとりとした張りを持っていた。
カーブに沿って優しく撫でる。
野梨子はホッとしたようにゆるい息を吐いた。
その果実を撫でては、腰元をグッと押した。何も知らない彼女の体は、
ただ触れられるだけで、電流がはしったようにびくんびくん反応した。
「ふ…っい…?あ…」
野梨子は体の異変を感じていた。下腹部がじんじん熱い。
──そして、その下はもっと。


713 :夏姿、夢花火 魅×野(9)R:03/07/31 20:04
今までにない感覚が野梨子を襲った。
その部分が熱い。とても熱くだんだん熱を帯びてくるのが感じられる。
そして、なんと言ったら良いのだろう、まるで誰かを待っているような、
妙な胸騒ぎがする。そこが濡れているのは錯覚ではない。
腿につたってくるトロリとした蜜がそれを教えている。
「っふ…はっ」どこから声が出ているのだろう…初めて耳にする自身の甘い音色に
野梨子は遠くで響く花火の音を重ね合わせていた。

彼女の体は初めての事にとまどっている。
部分が広がったような気がする。何より、今まで気にしたこともなかったはずなのに。
はっきり感じられる小さな突起が尖って、触れて欲しがっているのがわかる。
魅録の優しい愛撫が続く中、不思議な感覚が野梨子を支配する。
夢の中にひとつの意識が生まれる。全てがそこへ集まってしまったようだ。
「……」焦燥感が限界に達すると、彼女は知らず知らずのうちに腿を擦り合わせようと
していた。気付いた魅録が足を立て、曲げて開かせる。
「!!やっ…」「平気。ほんとにヤになったら言って」
秘所にそっと口づける。
「!」野梨子の体がビクっと跳ねた。同時に蜜がこぼれる。
それでも、まだ足りない。腰を浮かせてその先を求める。
想いが渦巻いて自分を満たしている。もっと、もっと。もっと伝えて。
どんなに私を好きか───
魅録は舌先で花びらを探り当てていく。そして、泉の溢れる場所へたどり着いた。


714 :夏姿、夢花火 魅×野(10)R:03/07/31 20:04
そこは絶え間なく潤んでいる。優しく口づけた。
花弁一枚一枚を舌で丁寧に味わっていく。
「っ…はぁ…」
野梨子がその上の小さな丘こそを触れて欲しいと願っているのを知りながら、
敢えてその周りだけを舐めてやる。
「んっ、は…」じらす魅録に野梨子の我慢は限界に近づいてきた。
「お願い…」潤んだ大きな黒い瞳で彼を見つめる。
自分を見つめる、大切な恋人。 その瞳には、いつも勝てない。
熱い溜息。2人の鼓動も体も、均一に熱い。
じっとり汗ばむ首筋。風鈴の音。その涼しさが胸を掠めるたび、二人とも
自分たちの熱さを改めて感じられた。

頭をくぐらせその部分を口に含み、舌で揉み込むようにして愛撫する。
「……っ……」
息をひそめて歯を食いしばってはいるが、野梨子の唇のはしからは吐息と
ともに甘い喘ぎが漏れ出してしまう。
魅録の熱い息。甘く丁寧な舌先に野梨子の部分はとろけそうになった。
無意識に腰を浮かせ、ずらしていた。縁側の軋む音。
成り立ちを確かめるように舌で縁取っていく。
「はぁ…っ」熱い溜息が漏れる。柔らかく揉み込み、舐めてやる。
ギシッ、ギシッ
「は…っ」
野梨子はどんどん高められていく。舌の動きを早め、全体でしゃぶりつくす。
「あっ、あっ」野梨子が限界まで来ているのを悟ると、彼は思いっ切り吸い上げてやった。


715 :夏姿、夢花火 魅×野(11)R:03/07/31 20:05
「!!」ビクン、ビクン…
─10秒ほどの間、彼の中で野梨子は快感を彷徨っていた。
やっと帰ってきても、その小さな丘はまだ、余韻に震えている。
そっと息を吐き出した。登り詰めた緊張が一瞬ゆるむ。

放心している彼女が一旦落ち着くのを見て、魅録はいま一度秘所へ口づけた。
余熱を残した野梨子の体は過敏に反応してぴくん、と震えた。
体勢を立て直し首筋にキス。そして今度は手で、すっかり潤った泉をかき回してやる。
彼の右手はゆるゆると野梨子の中に入っていった。
中は熱くてうねっている。
初めて誰かを受け入れるその場所は、戸惑ってはいるものの、逃がすまいと
魅録をきつく抱きしめている。
彼は自分自身が頭をもたげてくるのをはっきりと感じていた。
野梨子の泉はあとからあとから溢れ、彼を迎える準備をすっかり整えたようだった。


716 :夏姿、夢花火:03/07/31 20:08
続きます。

>704
ごめんなさい!これでよろしいでしょうか??
カポー書かない癖がついてしまってました。
これから気をつけまつ。

717 :名無し草:03/07/31 22:42
>夏姿
濃密だわー。初めてなのに求めちゃう野梨子が(・∀・)イイ!!

718 :名無し草:03/08/01 02:32
>夏姿、夢花火
魅録がテクニシャンぶりを発揮してますな(w
野梨子の可愛らしさもいいです。
魅録じゃなくとも、惚れ直してしまいそうだ。

719 :名無し草:03/08/01 02:39
王家スレの方で、まとめサイト1万ヒットのキリバンを踏んだ人が
作家さんにリクエストできる企画はどうか、という話が出てる。
書き終えた作品の番外編リクとか、新たな作品リクとか、リクされた
作家さんがパスするのも自由、というお話。

これを、こっちでも真似させてもらうのはどうかな?
嵐さんとこも、8月中には10万ヒット行きそうだよね。

720 :名無し草:03/08/01 09:41
作家さんて、不特定多数でつか?

721 :名無し草:03/08/01 10:24
>719
キリ番号ゲッツ(σ・∀・)σの人が作品リクできるって面白いね。
競作用のテーマを決めてもらうっていうのも、いいかもーなんて思いました。


722 :719:03/08/01 11:20
>720
不特定多数というか、今まで作品を発表した人。
「○○を書いていた作家さんにその後日談話をきぼん」とか、
「△△の作者さんに、□□×▽▽のSSを書いてほしい」みたいな感じ。
その作家さんがスレにもういない可能性もあるし、パスの場合も
あるから、ダメ元だけどね。

>721
競作のことも考えたんだけど、それだとゲッターさんの負担が
大き過ぎるように思って。
企画があまり盛り上がらなかった場合、テーマが悪かったんだと
ブーイングが出る可能性があって、一人でテーマを決めた場合は
責任も一人で背負うことになりそうだから。

723 :名無し草:03/08/01 12:55
面白そう!
自分、めっちゃリクしたいネタあるよ


724 :名無し草:03/08/01 13:39
それって現作家さんに負担になるんじゃないの?
パス権有りって言われても、
今、連載をしている人は断ったら「感じわる〜」とか言われそうで
断れないと思うけど・・・。
全然気にしないで喜んで書いてくれる人ばっかりだったらいいけどね。

って漏れの気にしすぎかな。

725 :名無し草:03/08/01 14:21
>724
そんなアホがいたら、他の人間がたしなめれば
いいだけだと思うんだけど・・・ <感じわる〜
少なくとも私は、そういうレスを返す。
パス権は当然の権利だもの。

726 :名無し草:03/08/01 15:43
>724タソ
そんなに心配なら連載持っている作家にはリクしないって決めちゃえば?
面白そうじゃん。漏れもリクしたい過去作家いるし。
とりあえず嵐さんのサイトの10万ゲッターが最初のリクで良いのかな?
後は千番単位か?

727 :名無し草:03/08/01 18:37
いや、でも過去作家じゃ逆にパスの嵐になりかねんような…


728 :724:03/08/01 20:10
>>725さん,726さん
レスありがd
自分でも気にしすぎかなとは思うんだけど、
競作みたいなどっちかと言えば「自発的に参加」っていうんじゃなくて
リクはいわば名指しでしょ。
断る事も負担に感じる人もいるんじゃないかなと思ったんだ。

>727
それは仕方ないんじゃないの?

729 :名無し草:03/08/01 20:10
そうだね。
リクできる作家さんを3人ぐらいにするとか。
数うちゃ当たるかも(藁

730 :724:03/08/01 20:14
>727さん
スマソ、呼び捨てになっちゃた。ゴメンよ。

731 :名無し草:03/08/01 20:55
名指しは必要ないんじゃ?
「こういうネタが読みたい」というリクエストがあって、
そのネタなら書きたいと思った人が自発的にうぷすれば。

732 :名無し草:03/08/01 21:10
>731
名指し必要なしにドウイ。
リクに触発されて書きたくなっちゃう作家さんもたくさん出てくると思うんで・・・。
やっぱ作品は多いほうがうれしいじゃない??

733 :名無し草:03/08/01 21:13
うん。確かに書いてホスィ過去作家さんもいるけど、
それでごたごたなるなら731タンに同意!

734 :夏姿、夢花火 魅×野(12)R:03/08/01 21:19
鼓動が高鳴る。ただ、荒い息のせいだけではなかった。
彼女を想うだけで。いま目の前にいるというのに、甘くて、柑橘の香りのような
感情が魅録を襲う。まるで、初恋のように。
二人の熱さ。空気に溶け込む夏の暑さで頭がぼうっとしてくる。
お互いがお互いを、こんなにも想い合う。
聞こえるのは、溜息の会話と打ちあがる花火。 汗で張り付く前髪。
彼は指を抜くと言った。「入れるよ…?」野梨子の体が強張る。
「平気。ホラ息吐いて…絶対嫌なようにはしねぇよ」
優しく胸元に口づける。自分の大切なものを、決して傷つけないように。

軽く深呼吸して、少し野梨子は落ち着いたようだった。
「……」魅録を熱く見つめる。応えるように、彼は挿入した。
「!いっ…」痛そうに眉をしかめる野梨子に魅録は何度も何度も彼女の名前を
囁き、キスの雨を降らせる。少しずつ、少しずつ、二人の体が近づいていく。

──ふぅ…
野梨子が最後の息を吐き終えると、2人はぴったり重なっていた。
安堵と愛しさが彼女の心と体を満たす。
ゆっくり魅録は上下を始めた。痛みのすぐ後から快感が追いかけてくる。
痛さで喉からでたはずのその声は、口元から零れ出る頃には細くて甘い喘ぎに
すり替わっていた。
「ぁ…」


735 :夏姿、夢花火 魅×野(13)R:03/08/01 21:19
はぁ、はぁ…魅録の熱い吐息が直接野梨子にかかる。
気持ちまでもが伝わってくる。
体が、彼に染まっていく。玉の汗。少年のような顔。
魅録はだんだんと動きを早くしていった。
「ふっ…あ…」「…くっ…」いっそう早く。伝えて、夏の空気を通して。
足元に絡みつく浴衣。ほうり捨てられた帯。Tシャツ。ベルト。
むきだしの素肌で触れ合っても、まだ足りない。
もっともっと伝えたい。どれだけ君を想っているか──

めまぐるしく周りが展開していく。自分を見失わないように、野梨子は必死で
魅録にしがみつく。彼の名前を繰り返しながら。もっと早く。頭の中が真っ白になる。
「あっ、あっ」「…っ!」


───遠くで花火が聞こえた、、気がした。


736 :夏姿、夢花火 魅×野(14):03/08/01 21:20


2人は余熱を味わうように、抱き合っていた。
甘い空気に、夜がしっとり覆いかぶさってくる。
魅録が目線をやると、さっきより艶を帯びた瞳で野梨子が見つめ返す。
軽く口づけた。
甘い思惑が広がる。まだ残る余熱。
宙を漂っているような不思議な感覚に酔いしれる中、ふいに野梨子を気だるさが襲う。
押し寄せる濃密なそれに逆らうことが出来ず、静かに睫をふせると、
彼女はすぐに深くへ堕ちていった。


737 :夏姿、夢花火 魅×野(15):03/08/01 21:21
意識の遠くで、誰かが自分の髪を撫でている。優しい手。
いつまでもいつまでもそうしていて──

野梨子がまどろむ目を開けると、魅録の切れ長の瞳が優しくこちらを見つめている。
「…起きた?」
はっと我に返ると、肌にかけられていたタオルケットがはらりと落ち、
あのまま眠ってしまった事に気付き真っ赤になった。
浴衣を着なおそうと起き上がるも腰が砕けてすとん、と座り込んでしまった。
「…!」「ふっ」魅録がいたずらっぽい笑みをこぼす。
野梨子は振り返り、むくれて彼を睨んだ。
「ごめんごめん。キツすぎた?」笑いを噛み殺しているのがわかる。
「い、今、何時ですの?」気を取り直してたずねた。
「んとまだ8時。1時間くらいかな?お前寝てたの。ほら、おいで」
着付けてくれるのかと戸惑いつつ彼の方へと向かうと待っていたのはキスだった。
「!」そのままゆっくり押し倒される。「…待っ」「待たない」
一度線を越えた魅録は少なからず強気だった。
「…魅録!」「ん?」「いいんですの、わっ、私ばっかり…」「『私ばっかり』、何?」
「その…」「言ってみ」魅録はにやにやしている。「もう、知りませんわ!」
「んな怒んなって。…いんだよ。お前が気持ちよければ嬉しいの。体だけのために
重なる訳じゃないって事、わかったろ?」
優しい微笑みに変わる。 余熱がまだ、薫っている。
チリチリ
風鈴の音が2人の頬を掠める。…コクン。
野梨子が頷くと、彼は愛しい恋人へ深く、甘く口付けた。


738 :夏姿、夢花火 魅×野(16):03/08/01 21:21
ドンドンドン ピーンポーン
「いないの、魅録!」魅録が跳ね起きる。
(ウソだろ…マレーシアじゃなかったのかよ!!??)
慌てて時計を見ると、午前1時。
ドンドン「みろくー!時宗ちゃん!」(わわわ…)
「野梨子起きろ!千秋さんが帰ってきた!」
ガバッ「ど、どうすればいいんですの!?」「いーよ、ここにいれば。オレ玄関
開けてくるから」(カギはどーしたんだよ!?)慌てたまま彼は駆けて行った。
ガラガラ…「おかえり」苦笑い。
「遅いのよ!開けるの。あんた何してたのよ?」「やっ、寝てたし」
「あら?何、この下駄」(やべっ!)「…はーん。そーゆう事。あたしこのままスペイン
行ってくるわ。はい、お土産」「どっ、やっ、いや…」「じゃねー」
ガラガラ…「あっ」振り返ると千秋は行った。
「野梨子ちゃん、ごゆっくりー♪」(何で!!??)
彼女は嵐のように去って行った。翌日魅録が出張から帰ってきた父に、
土産があって母が不在である理由について激しく言及されたのは言うまでもない。



                               おわり


739 :夏姿、夢花火:03/08/01 21:24
ありがとうございました!

740 :名無し草:03/08/02 00:10
でも、名指しリクが出来ないなら、あまりキリバンゲットの美味しさが半減かも。
今でも「浴衣Rキボン!」と言って叶えられたりとかあるし。
やっぱり、「あの作品のその後が読みたい」なんていうリクがしたい私は強欲…。

とはいえ、名指しリクが難しいのも分かるし、
結局テーマを決める権利、ていうふうになるのかな。



741 :名無し草:03/08/02 00:23
そーだね。。みんなほんとは○○さんに××を書いて
ホスィー!っていうのが理想ですよね。

742 :名無し草:03/08/02 01:22
>夏姿、夢花火
たっぷり堪能させてもらいますた(w
最後の千秋さん&時宗ちゃんも、いかにもって感じで良かったです。

743 :名無し草:03/08/02 01:40
リクエスト自体はキリ番取らなくてもできるから、名指しというところに意味が
あると思う。でも一方で、名指しになると作家さんが断りにくくなるかも・・・
それなら間をとって、こういうルール&心構えにすればどう?

・妄想同好会で10万ヒットのキリ番を取った人は、作家さんを名指しして作品を
 リクエストすることができる(具体例は>>722参照)
・10万ヒットのゲッターさんが3日経っても名乗りでなかった時は、10万1ヒットの
 人に権利が移る
・ただし、現在連載が続いている作品の作家さん(注1)とサイト持ちの作家さん
 へのリクエストは不可(作家さんが断り難いかもしれないから)
・リレー小説の作家さんへのリクエストは可(書いた作品のレス番を指定のこと)
・リクエストされた作家さんにはパス権あり(レスせずスルーしてもいいし、断り
 レスしてもいい)
・パスしたことでとやかく言うヤシがいたら、他の住人がたしなめること
注1:妄想同好会の目次でハートマークがついてる作品

リクエストされて、断りたいけど断り難い・・・と思った作家さんは、「レスせず
スルー」のやり方を選んでもらえれば、住人たちは「あの作家さんはもう
このスレにはいないのかもね」と受け取るから、ハッキリ断らずにパス権を
使えると思う。これでどうだろう?

744 :山崎 渉:03/08/02 02:20
(^^)

745 :名無し草:03/08/02 02:26
サイト持ちもダメかぁ。
旅立ち作者さんに、その後の二人を書いて欲しかったんだけど。
でも、作家さんの立場を考えると仕方ないね。


746 :名無し草:03/08/02 02:40
>745
サイト持ちさんは、断りにくいという意味では連載中の作家さんと同じ立場
だろうと思ったんで、外してみた。
名無しの作家さんたちと違って、サイトへ行ってリクエストすることもできる
相手だしね。

747 :名無し草:03/08/02 17:06
名指しはやっぱりいらないんじゃと思うのは私だけかな?
「そのテーマなら書きたい」と思った作家さんがいたとしても
別の人が指名されてたら、かえって創作欲に水をさしてしまう気もするし、
いらんトラブルの元にもなるし。

「レスせずスルー」を選択する作家さんも、居心地悪い思いを
すると思う。 新しい連載を始めたりしにくくなっちゃうとか(心理的な問題としてね)

自分、言葉が上手くないのでいい表現が思いつかないけれども、
2ちゃんという場所を考えたら、あまり場を「作家のファンサイト」化
しすぎない方がいいんじゃないのかなと思うんだ。
荒れや揉め事をさけるためにも、ある程度、風通しのいい場所にしておくためにも。
個人的な意見なので気を悪くされたらスマソ。

748 :名無し草:03/08/02 17:31
私も、名指しはいらないと思う。作家さん達は、指名されたらされたで
プレッシャー感じるんじゃないかって思うし、指名されなかったらされ
なかったで、寂しく思うんじゃないかな。

749 :名無し草:03/08/02 18:32
>夏姿
キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!
優しい魅録、よかったでつ。
野梨子もかわいかったw


750 :名無し草:03/08/02 18:36
私が思いついたこと…
きり番ゲッタの自由、はどう??
作家名指しでも、テーマ決めでも。
その人は一人なわけだし。
個人的意見ですが。

751 :名無し草:03/08/02 20:03
>750タソがいいこと言った!
ワシもドーイする

752 :名無し草:03/08/03 11:51
>747-748
素朴な疑問なんだが、名指しなしのリクなら普段でもできるんじゃないの?
普段でもできることを、わざわざキリバンゲッターがやる意味はどこに?

753 :名無し草:03/08/03 14:53
>>752
作家指定のリクもやろうと思えば普段でもできるとオモ・・・



754 :名無し草:03/08/03 15:00
キリバン名乗ってリクするほうも躊躇だな。
2ちゃんねるの延長線上なんで、名無しは名無しのままでいたい。
こっちでリクできたらいいんだが。

755 :名無し草:03/08/03 15:49
何かさぁ、キリ番だからってリクエストするのは、厨房っぽくない?

756 :名無し草:03/08/03 18:39
どうでもいい。読めればいい。

757 :名無し草:03/08/03 18:50
どーします??うまくいかないのかなぁ。

758 :名無し草:03/08/03 19:59
>夏姿
わーい。久々来たら浴衣R!
魅録はいい男でつね。こんな彼氏欲しい。
いや、友達でもいい!

>キリ番
750にドウイ!

759 :名無し草:03/08/03 21:50
こういうのはどう?

とりあえず、キリバンゲットには執着しないで、
10万ヒット記念を中心にして考えて。

名無し住人が、みんなでリクしまくるのね。
「○○さんにコレを書いてほしい」
「誰でもいいけど、こういうシチュを読みたい」
いつものノリで、ダメモトでとりあえずリクするの。
で、それを読んだ作家さんたちの中で、書きたい人がいれば、書く。

で、10万ヒットした日の24時間以内で、短期集中的にうpし、
これまでにない、作品うp祭。
で、この10万ヒットの目玉商品(?)が嵐さん手ずからのリク。

ってのは。
ゴメン、言ってみただけ(弱気)

760 :名無し草:03/08/03 21:56
>759
「24時間以内」以外には同意。
競作みたく一週間ぐらいないと、無理じゃないの?
記念に誰でもリクできるっていうのが嬉しいな。

761 :名無し草:03/08/03 23:03
リクした人、書く人それぞれを限定しないやり方だから、上手くいきそうだね。

762 :名無し草:03/08/04 02:49
>760タンに同意。

24時間以外は、759の企画は気楽で盛り上がりそうだ。

763 :名無し草:03/08/04 04:35
>759
760さんの書いてるように、24時間以内のところを1週間以内に変えたらいいと思う。
あと、嵐さんがリクするのはどうだろ?
感謝の気持ちとしてやりたくはあるものの、かえって嵐さんの負担にならないか心配。
この2つ以外のとこには大賛成。

764 :名無し草:03/08/04 08:58
んでは、>743を>759系に書き換え。これでどうだろ? 名付けて10万ヒット祭(w
==================================
○リクエスト
・妄想同好会が10万ヒットに達するまでの間、誰でも作品リクができる
 例)「○○を書いてた作家さんに、その後日談話をきぼん」
   「○○の作者さんに、□□×▽▽のSSをリクエストしまつ」
   「誰でもいいので、△△なシチュを書いて欲しい」
・リクエストは、本スレではなく「まゆこ」スレへ書く
・ただし、現在連載が続いている作品の作家さん(※)とサイト持ちの作家さん
 への名指しのリクエストは不可(作家さんが断り難いかもしれないから)
・リレー小説の作家さんへのリクエストは可(書いた作品のレス番を指定のこと)
※妄想同好会の目次でハートマークがついてる作品

○リクエスト作品のウプ&感想
・リクエストの中で書けそうなものがあった作家さんは、10万ヒットした日から
 1週間くらいを目安に、本スレに作品をウプ
・感想も本スレへ

○パス権
・リクエストされた作家さんにはパス権あり(レスせずスルーしてもいいし、断り
 レスしてもいい)
・断りレスは「まゆこ」スレへ
・パスしたことでとやかく言うヤシがいたら、他の住人がたしなめること
==================================
リクエストを本スレでやると、ログが他のものと混ざってしまって読みにくいかも
しれないので、「まゆこ」スレを専用スレにした方がといいと思いますた。

765 :名無し草:03/08/04 09:29
>764
久しぶりに来てみたら、10万hit企画すごい盛上がりでつね。
764タンの案に賛成でつ。まとめ乙です。


766 :名無し草:03/08/04 10:24
いいとおもいまーつ。
764タン乙彼!

767 :764:03/08/04 13:54
>765-766
ありがd。
でも今見に行って分かったんだけど、このまま行くとお盆の頃に
10万ヒットいくかも。

旅行や帰省する人もいて何かと忙しい季節だし、リクエスト作品の
ウプの目安を2週間に延ばした方が良さそうな気がしてきた。
ま、あくまでも目安だし、作家さんたちの好意に甘えての企画だから、
書いてもらえるならその後になっても全然OKだとは思うけど。

768 :名無し草:03/08/04 21:58
>767
>このまま行くとお盆の頃に10万ヒットいくかも。

そうだね。書くのが遅い作家だと間に合わないよね。
うpの目安は767タンの言うように2週間に延ばした方がいいんだろうね。
でももし、リクの内容が「△△さんに連載キボン」とかだったらどーすんの?
やっぱリクは短編限定なの?

769 :名無し草:03/08/04 22:09
>764
漏れもひとつ質問いいでつか?
○リクエスト
・妄想同好会が10万ヒットに達するまでの間、誰でも作品リクができる
〜までの間、ってことは今からもうリクしてもいいのでつか?
あげあしとるんじゃなくて、今からリクできるならそのほうが作家さんには
楽なんじゃないかとおもったので。。。

770 :名無し草:03/08/04 22:22
>769
漏れもオモタよー
いいんじゃナイ??

771 :名無し草:03/08/04 22:54
いまさらなんだけど。
作家の方々は創作に同意してるの?


772 :名無し草:03/08/04 23:03
>771
パス権・スルー権あるし、
最近連載中やサイト持作家さんは名指し不可だし、
同意はなくてもいいかも

773 :名無し草:03/08/04 23:09
>768
リクするだけなら、連載きぼんもありなんじゃないかなぁ。
どうだろ?>ALL
ただ叶えられる確率が、短編よりは低いような気がするから、
その辺も踏まえてリクする、となりそう。

>769-770
私もそう思う。<作家さんが楽
ここでの話し合いがまとまり次第、まゆこスレに>764の完全版を
貼りつけてスタート、で行こうか。

>771
それは私も気になる。
でもさ、個々の作家さんに同意・非同意を聞く訳にもいかないよね。
非同意なことで非難するヤシが出てきたら迷惑かけちゃうし。。
だから、非同意な人はパスしてもらう、というやり方が無難かなと。
迷惑かけないやり方で意見が聞ければ一番いいんだけど、
これといった方法が思いつかない。771さん、何かいい方法ある?

774 :名無し草:03/08/04 23:18
10万ヒット企画と違う話題で恐縮だが、

このスレの容量が旧スレを超えたよ。
旧スレよりこのスレが先に倉庫行きになりそうなので、
皆、書きたいこと書いて猛スピードで旧スレを埋め立ててみないか?(W

775 :名無し草:03/08/04 23:19
あ、ごめん。猛スピードは鯖に負荷がかかるかも。


776 :名無し草:03/08/05 00:11
>774
今、こっちが464KB・向こうが459KBで500KBまで
大丈夫だから、倉庫行きはまだまだ先だよ。
せっかちさん。( ・∀・)σ)Д`)

777 :名無し草:03/08/05 20:19
「まゆこ」スレへの貼り付けはこれでいいの?

「10万ヒット祭」
==================================
○リクエスト
・今日から妄想同好会が10万ヒットに達するまでの間、誰でも作品リクができる
 例)「○○を書いてた作家さんに、その後日談話をきぼん」
   「○○の作者さんに、□□×▽▽のSSをリクエストしまつ」
   「誰でもいいので、△△なシチュを書いて欲しい」
・リクエストは、本スレではなく「まゆこ」スレへ書く
・ただし、現在連載が続いている作品の作家さん(※)とサイト持ちの作家さん
 への名指しのリクエストは不可(作家さんが断り難いかもしれないから)
・リレー小説の作家さんへのリクエストは可(書いた作品のレス番を指定のこと)
※妄想同好会の目次でハートマークがついてる作品

○リクエスト作品のウプ&感想
・リクエストの中で書けそうなものがあった作家さんは、10万ヒットした日から
 2週間くらいを目安に、本スレに作品をウプ
・感想も本スレへ

○パス権
・リクエストされた作家さんにはパス権あり(レスせずスルーしてもいいし、断り
 レスしてもいい)
・断りレスは「まゆこ」スレへ
・パスしたことでとやかく言うヤシがいたら、他の住人がたしなめること
==================================
嵐さんに感謝をこめて、作家も読者も普段はROMラーもこぞってご参加ください

778 :名無し草:03/08/05 21:54
私はいいと思いまつ。
777さん乙です!


779 :名無し草:03/08/06 01:19
ごめん、急に思いついたんだけど、絵師さんへのイラストのリクはOK?

それ以外のことは>777でいいと思う。まとめ、ありがd。

780 :名無し草:03/08/06 01:25
>777
いいと思いまつ。まとめ乙です。

781 :雨がボクを狂わせるので:03/08/06 15:37
『雨がボクを狂わせるので』うpします。
ダークかつ、美童、清四郎、野梨子が総ヨゴレなので、お嫌いな方は
スルーお願いします。一部性的な表現もあります。
剣道に関する部分は多いに想像で書いてます。剣道がお好きな方、
すみません。

782 :雨がボクを狂わせるので<47>:03/08/06 15:37
>>675
清四郎は自分の机に向かったまま、もう何時間も苦悶していた。
振り払おうとすればする程、先刻の、あまりに忌わしい映像が
眼の前にアップで繰り広げられる。
何の因果か手に入れてしまった野梨子の所有物を清四郎は捨てることも
できずに、引き出しの奥にしまいこんであった。

野梨子の漆黒の髪が汗ばんで揺れる。淡雪のような肌を赤く染めて
意地悪された幼子のように首を振る少女。懇願適わぬと知ると、
彼女はあきらめて、ああ―――。
長く濃い睫毛に縁取られた瞳が不安そうに左右する。周囲に気をやり
ながら、美しい少女がそっと腰をかがめる。
制服のスカートの中に野梨子の白い手が差し入れられる。
手は暗闇の中でほんの少しだけ迷った後、自分の主人の戒めを解きに
かかる。細くてやわやわとした御主人を締め上げている白い鎖を
そっとずらし、つとずらし、そのまま下へ下へと追いやっていく。
少女は鎖から解放されて喜んでいるらしい。その証拠に、少女のスカートの中から
喜びの涙が雨のように彼女の太腿をつたって下りてくる。

下腹部に痛みを感じて、清四郎は思わず手をやった。そのまま己を鎮めよう
とするが、思いとは裏腹に、欲望は怒り狂って大人しくなる気配がない。
立ち上がって風呂場に行き、思いきり冷たいシャワーを浴びる。
滝のように降り注ぐ冷水が清四郎の内に燃え広がった青い炎を消していく。
彼は安心した。

冷たい飛沫に身をまかせながら、彼はある一つの決断を下していた。
机の片隅に載せられた一つの証拠。野梨子を見送った後、あの図書室にとって
返し、おそらく彼女を見つめていたであろう誰かがいた場所で拾ったものだった。
黄金に光る髪の毛が一本。磨き抜かれたリノリウムの床の真ん中に、
落ちていたのだった。そう、まるで故意に置かれたもののように―――。

783 :雨がボクを狂わせるので<48>:03/08/06 15:38
久しぶりに晴れたその日は暑くなりそうだった。
呼び出された美童は、あきらかに緊張している。落ち着かない様子で左腕に手をやる。
腕に傷跡が鈍く光っている。よく見るとそれ以外にも青アザや赤アザがあちこちに見える。
清四郎が口を開くのを遮って美童は自分から話し始める。
「野梨子のことだろ?」
察しがいいですね、と清四郎が冷ややかな口調で応えると
金髪の友人は大きく肩で息を吐いた。
「いつか話さなきゃと思ってたんだ。野梨子と僕、つきあってる。僕達、本気なんだ。」

清四郎は無表情なままだった。美童は苦笑した。
「文句があるのはわかってる。でも、野梨子のことが好きなんだ。清四郎にも、
この気持ちは負けないと思う。野梨子に似合うような男になりたい。」

友人の決死の告白にも、清四郎は相変わらず無表情だった。
野梨子が美童とつきあっている?いつの間に?
衝撃だった。
では、あれは、図書室の一件は、恋人同士の戯れなのだろうか。嘘だ、信じたくない。
清四郎の煩悶をよそに、美童は話し続けた。
「僕、剣道習い出したんだ。」
「剣道を?美童がですか。」
「うん、野梨子を守れる強い男になりたくて―――。だけど、想像以上にキツクってさ。
一人僕を目の仇にしてる先輩がいて、いつもボコボコにされてるよ。清四郎、お願いが
あるんだけど、今度、夏合宿あるんだけど、一緒に行かない?」
「―――お安い御用ですよ。」
美童の野梨子への気持ちを確かめなければ。清四郎はある決心のもとに合宿行きを承諾した。
合宿は長野の道場を借りて四日間。男ばかりで総勢二十名。

そして、合宿二日目の夜から又、雨が降り出した。

784 :雨がボクを狂わせるので<49>:03/08/06 15:38
二日目の早朝、朝稽古の声を聞きながら、清四郎と美童は朝食の当番をしていた。
「美童、このホウレンソウ洗ってください。」
美童の肩を軽く叩くと、彼は飛び上がって悲鳴をあげた。
「清四郎、触らないでよ。昨日だって体中痛くて眠れなかったんだぞ。」
腰をかがめるのも難儀な様子で美童は呻きながら働いていた。

彼の言う通り、道場の古株で三十台も後半の曽我原という男が、美貌の優男をあからさまに
しごきまくっていた。まだ、構えもしっかりできないような美童を練習台にしては
師範の目を盗み叩きまくっている。見るからに男らしさを売りにしている輩で、
ちゃらちゃらしているように見える美童が許せないかのようだった。
限度を超えたしごきに、何度清四郎が割って入ったかわからない。
美童は健気にも弱音を吐かなかったが、清四郎は今日から自分を美童の稽古相手にするよう
師範に話をつけてあった。

「美童、よく逃げ出しませんでしたね。感心しましたよ。」
「そりゃあ、野梨子のことがあるからね。僕、野梨子を本当に守りたいんだ。
彼女を汚すもの全てから、野梨子を守りたい。なんてカッコつけすぎかな。」
美童の言葉を聞きながら、清四郎は腑に落ちないものを感じる。
図書室で野梨子にいやらしい指示を出していたのは、美童ではないのだろうか。

「おい、グランマニエ。まだ、いたのか。もうとっくに逃げ出したかと思ったよ。」
曽我原の下卑た言葉に美童の頬が引きつった。
「おはようございます。今日は僕が曽我原さんの代わりに彼をしごきますので。」
清四郎が涼しい顔で見つめ返すと、曽我原はチッと舌打ちをしてドスドスと足音荒く
台所を出ていった。

785 :雨がボクを狂わせるので<50>:03/08/06 15:39
使いの用を終わって清四郎が道場に戻った時は、すでに夕暮れ近かった。
道場を遠巻きにしている門下生に、ふと嫌な予感がする。予感は適中した。
広い道場の中にいるのは、曽我原と美童の二人だけだった。
防具をつけていたものの、美童はすでに足腰が立たない程、叩きのめされていた。
ゼイゼイと肩で息をして、竹刀を杖に膝をついている。
ふらふらしながら立ち上がろうとしたところに、容赦ない曽我原の竹刀が振り下ろされた。
その竹刀を清四郎の手が止めた。曽我原が力を込めても竹刀を奪い取ることができない。
清四郎は竹刀を道場の壁に叩き付けた。
「いい加減にしてください。私刑ですか、これは。」
「坊主が相手にしてほしそうだったから、構ってやっただけよ。」
ふん、と肩をいからせて出て行く曽我原を睨み付けると、清四郎は倒れた美童を抱き上げた。

自分達の部屋に美童を運び、彼の上着をぬがせた清四郎は顔をしかめた。
「ひどいな。」
彼の白い肌の上に真新しい赤い傷跡が無数に刻まれていた。手拭いを濡らしに廊下に
出ると、すっかり外は暗くなっている。さやさやという音に風かと思ったが、実は
降り出した雨が木の葉を揺らしていたのだった。
何とはなしに清四郎は嫌な感じがした。

冷たい水で濡らした手拭いと持参した薬を手に部屋に戻る。
布団に横になった美童をうながして、体を拭いた。

傷に触ると、あっ、つぅ、と、美童が低く呻いた。
「痛いですか?」
「ううん、大丈夫……。」
そう言いながらも清四郎が別の場所を拭くと、唇を噛んで堪える。
きれいに拭き取った後の肌に新たな汗が浮かんできていた。痛みに耐えかねてか、
美童が声を漏らす。
「あっっ。」
「やめますか?」

786 :雨がボクを狂わせるので<51>:03/08/06 15:39
だが清四郎は言葉と裏腹に手を休めない。優しい友人が痛みに悶える姿が、なぜだか、
無性に見たいような気がする。清四郎の手が触れると、美童の白い肌がぴくりとする。
手拭いで浄めるとため息をつく。金の糸のような髪が布団に寝乱れていた。
その様子が、男なのに淫美な感じだった。
次の瞬間、美童が悲鳴をあげた。清四郎の手が強く傷を押したのだ。
「いっ、痛いよ、清四郎。」
清四郎は無言で美童の裸の両肩を布団に押しつけていた。
「清四郎……?」
「図書室で野梨子に何を言ったんですか?」
美童は清四郎の形相に怯えながらも、きょとんとした顔だった。
「図書室?何のこと?」
「とぼけたって駄目ですよ。図書室の床であなたの髪を拾ったんです。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何のことだか……。僕が野梨子に何を言ったっていうの?」
清四郎は言葉を探していた。
「携帯電話で野梨子に何か命令してたんじゃないんですか」
「命令?僕が?どんなことを?」
「どんなことって、それは……」
言葉につまった。
「野梨子に……、その、下着を取るように、と……」
美童の青い瞳がキラリと光った。

「……どうして、清四郎はそれを知ってるんだよ。まさか、見てたとか?」
「いや、その……」
「……見てたんだね。野梨子が恥ずかしさで顔を赤らめてるところや、泣きそうになって
下着を取ってるところ、彼女の白い脚を淫らな液が伝わって下りてくるところを。」
「やめ……。」
真っ赤になった清四郎は自分の腕の下の美童を見てぎくりとした。彼は笑っている。
清四郎の羞恥を煽り、欲望をあざ笑っている。優しい友人の面影はそこにはなかった。
呆然とする清四郎の耳に地面を穿つ雨の音が聞こえる。
雨は徐々に激しさを増していた。

787 :雨がボクを狂わせるので<52>:03/08/06 15:40
「ねえ、清四郎?」
今にも獲物に飛びかかろうとしている狼―――。
ランランと光る美童の瞳を見て、清四郎は野生の獣を連想した。
この美貌とベッドが取り柄の男のどこに、こんな凄味が隠れていたのか。
知らず知らず冷や汗が吹き出てくる。
「野梨子の痴態を見て、本当は嬉しかったんじゃない?品行方正な彼女が学校で
あんなスケベな事してるのを見て、興奮してズボンの前を膨らましてたんだろ、
言っちゃえよ。」
「美童……図書室にいたのは、やっぱり、あなたですね。」
「ひょっとしたら野梨子が捨てたパンティも持ってるんだろ。それをオカズに自分を
何回慰めたの?」
「……やめてくれっ!」
美童を押さえつけていた手を離し起き上がろうとした清四郎は、逆に下から首に
腕を回され、体勢が崩れて美童の上に倒れ込んだ。美童が甘い声で清四郎の耳に囁く。
「黙っててあげるよ、野梨子に。知られたくないだろう?だから、清四郎……」

(ここにいる間、君は僕の奴隷だ。)
悪魔の宣告をすると、美童は清四郎の唇を己の唇でふさいだ。美童の熱い舌が
清四郎の舌とからみ合う。清四郎は抗う術が見つからず、混乱の極みの中で、
金色に輝く仕掛け網にからめ取られた自分を感じていた―――。

///ツヅク///

788 :名無し草:03/08/06 17:28
>雨
貪るように読んでしまった。ブラック美童のファンになりました。

789 :名無し草:03/08/06 18:07
>雨〜
うわー、昼寝からさめたらうpされてて嬉しいわ。
ど、奴隷って、ナニをされるのかなあ、ワクワクいやちがった。ハラハラw

790 :名無し草:03/08/06 19:39
>雨
ひぃぃぃ〜〜〜
美童、怖いよう…もはや最初の可憐なんて運が
いいといえまつね…

791 :名無し草:03/08/06 19:44
>790
>最初の可憐は運がいい

ワラタ!禿げ同!

792 :名無し草:03/08/06 22:53
>嵐さん
10万ヒット祭に同意してくださってありがとうございました。
>778.779.780タソ&ALL
では「まゆこ」スレに貼ってきますね。今からリクスタートでいいでつか?

◎ここで出た話をまとめてくださっている「有閑倶楽部 妄想同好会」が
もうすぐ10万ヒットです。
そこで10万ヒット記念として、リクエスト大会を開催します。
嵐さんに感謝をこめて、作家も読者も普段はROMラーもこぞってご参加ください
==================================
○リクエスト
・今日から妄想同好会が10万ヒットに達するまでの間、誰でも作品リクができる
 例)「○○を書いてた作家さんに、その後日談話をきぼん」
   「○○の作者さんに、□□×▽▽のSSをリクエストしまつ」
   「誰でもいいので、△△なシチュを書いて欲しい」
・リクエストは、本スレではなく「まゆこ」スレへ書く
・ただし、現在連載が続いている作品の作家さん(※)とサイト持ちの作家さん
 への名指しのリクエストは不可(作家さんが断り難いかもしれないから)
・リレー小説の作家さんへのリクエストは可(書いた作品のレス番を指定のこと)
※妄想同好会の目次でハートマークがついてる作品
○リクエスト作品のウプ&感想
・リクエストの中で書けそうなものがあった作家さんは、10万ヒットした日から
 2週間くらいを目安に、本スレに作品をウプ
・感想も本スレへ
○パス権
・リクエストされた作家さんにはパス権あり(レスせずスルーしてもいいし、断り
 レスしてもいい)
・断りレスは「まゆこ」スレへ
・パスしたことでとやかく言うヤシがいたら、他の住人がたしなめること
==================================

793 :名無し草:03/08/06 23:13
>792
おお、いよいよお祭りが始まるですね。
792タン乙かれ〜〜。
そして嵐さんに感謝を込めつつ、まゆこにリクさせていただきます。

794 :名無し草:03/08/06 23:55
>793さん、今まで話をまとめてきてくれた人たち、乙でした。
久々のお祭にドキドキします(w
書いてもらいたいものが多すぎて、絞るのが難しい・・・

795 :名無し草:03/08/07 09:51
>794
ワラ
全部リク汁!!w

796 :名無し草:03/08/07 19:31
ドキドキしちゃう!!!
行ってこよっとw

797 :名無し草:03/08/08 01:00
>水中花
ほぉぉ〜〜最終回!
乙ですた。清四郎は切ない切ない役どころでしたね。
野梨子マンセーだけど、この2人が一番好きでした。

798 :名無し草:03/08/13 23:38
保守しとこ
みんなお盆休みかな・・・

799 :清×野 姫と保健室(1)R:03/08/15 01:09
まゆこ273タンへ(゚∀゚)

「野梨子、パス!!…ってえぇ!?おい、野梨子!」「え?」
振り向いた時にはすでに遅かった。
バンッ ごんっ 激しい音が頭の奥に響いてフェイドアウトしていった。

…ぱちっ。「気付きましたか」「?…いたっ」
目を覚ますとそこにはやさしい恋人の顔があった。
消毒のにおいがする。自分は保健室のベッドにいるらしい。
「体育で倒れたって、悠理が。顔面直撃した〜!って。気分はどうです?」
だんだん記憶がはっきりしてくる。
先ほどの体育の授業。ドッヂボールをやりながらも早々と外野に回され、
「僕のことでも考えてたんですか?」「!!!」図星だった。
どうせ活躍できないスポーツの中、野梨子の意識は別のところへ飛んでいた。
「昨日はねぇ…」ニヤニヤしながら清四郎がこちらを見ている。
「なっ、なんですの!?私別に昨日の清四郎の…」
「ほ〜ぉ。昨日の僕のテクニックを思い出してくれていたとか」「!!」
何もかも見透かされている。でも、からかわれていても、強く澄んだ瞳。
いつもいつも自分を守ってくれている。
空気に乗せて伝わる想いが野梨子の心を甘く締め付ける。
そして、息を吐き出すとそれが愛しさとなって彼女に浸透していくのだ。広がる思惑。
「…清四郎、授業は?」「サボりました。」そう言うやいなや彼は野梨子の唇に触れる。「!」
一瞬にして現実に引き戻される。
「先生もちょうど留守ですし、ベッドもあるし。どうです?」「なっ…!」
彼女の返事を聞くこともなく恋人はベッドに登ってきた。
「ふざけないで下さいな!」体を起こす。
2回目のキス。言葉よりも、行動で説得の手に出るらしい。
「……」野梨子がおずおず応えようとすると彼の唇はぱっと離れた。
もう1度口づける。薄い唇が触れ合うだけのキス。
じらすように清四郎の舌がチラチラ誘う。「…やっ」


800 :清×野 姫と保健室(2)R:03/08/15 01:10
「何が、嫌なんです?」ニコニコ笑ってこちらを見ている清四郎。
「もっとしますか?」「…意地悪」答えるまでもない。

4回目のキス。待ちかねていたように野梨子の舌が絡み付いてくる。
とろけそうな甘い舌。お互い、逃がさないよう必死で繋ぎとめる。
「は…んっ、あ…」「…っ…」
滑らかにすべっていく。もっと、もっと。
野梨子の髪をかきあげてやる。しっとりと艶を帯びてくる。
ゆっくり、ベッドに押し倒した。

「…体育着って、そそりますね」「もう…」
背中の下から手を忍ばせ、下着のホックをはずす。体を縛っていた緊張が解ける。
パサッ  邪魔になったそれは床に落とされた。
白い体育着の上から両手で円を描くように揉んでやる。
「…っは…」
はじめはその丘に同化していた頂上は野梨子が高まってくると共に次第に外郭を表し、
彼女の口元から細い声が零れる頃には服の上からでもはっきり形が見てとれるように
なっていた。
輪郭を見せた頂を親指と人差し指でつまみ、こすって愛撫する。
「…いっ…」
ぎしっ、ぎしっ  スプリングが軋む。
もっともっと、本当に触れてと、野梨子が身をよじる。
額にはすでに、うっすらと汗が見えている。
清四郎は裾を掴むと、うっとおしいというように思い切り自分の体育着を脱ぎ捨て、
野梨子を包むその服も取り払ってやった。
白い肌があらわになる。


801 :清×野 姫と保健室(3)R:03/08/15 01:11
そっと肌に触れる。自分しか知らない、水をも弾くような白さ。
野梨子から発する熱に急かされうっすらと汗がにじみ出る。
ミルクの様なそのふくらみを優しく捕まえた。
「…ぁ」
首筋に小さな紅い花を咲かせながら彼は器用に山を揉みしだく。
「ん…っ」「野梨子」「…?」「あんまり大きな声を出すと廊下に響きますよ」
「!!!」にっこり笑って続ける。「ですから、頑張って下さいね」
言ったそばから親指と人差し指でその頂上をきゅっとつまんで遊ばせ始めた。
「……っ」声を漏らすまいと歯を食いしばる。かわりに野梨子の口元からは
熱い溜息がこぼれ、ますます2人の温度を上げさせた。

そこがすっかり尖ったのを感じ取ると、すっぽり口で包む。
甘い甘い大切な恋人を優しく唇で溶かしていく。2、3回しゃぶってやると、
それだけで野梨子は耐え切れないと言うように身をよじった。
「あっ、はぁ…」「…っ、」
やわらかく縁取りをした後、今度は硬くした舌先で頂をつつく。
ビクンッ  野梨子の体がはねる。腰が浮いてくる。
ベッドが軋む。閉め切ったカーテンの向こうで他のクラスが体育の授業をやっている
のが頭にぼんやり響いた。自分は、彼らと全く違う場所にいるのだということ──

事実がよりいっそう野梨子に感じさせた。吐息が熱い。
それよりもっと熱くて、濡れてくる場所がある。


802 :清×野 姫と保健室(4)R:03/08/15 01:12
「……」
何と言ったらいいのか、もどかしい気持ちが野梨子を掻き立てる。
「せいしろ…う…?」同じように濡れた瞳で彼を求めた。
鏡になっている彼女の瞳は、いつもまっすぐ自分だけを映すのだ。
そう。昔からずっと、自分しか映らない。映せない。
野梨子を想う気持ちで全身が満たされる。清四郎の体もしっとりと艶を含んできた。
体育着のジャージをためらいなく脱がせると、彼は下着の上から割れ目を
探り当て、ゆっくり指で愛撫を始めた。
ずっと待っていた野梨子は安心したように息を漏らした。
清四郎の指が少しずつ少しずつ移動をしてくるに連れて彼女は高められていき、
耐え切れず漏らした甘い喘ぎが空気に溶けて体も、2人の心をも取り巻いていく。
「っはぁ、ん…っ」「野梨子…」清四郎は愛しい幼馴染みの名前を呼び続ける。
快感の意識の中、その度野梨子は自分の名前がこんなに綺麗な音色を紡ぐもの
だったろうかについて考えていた。
腰が浮く。もっともっとと、清四郎を求める。
彼は野梨子を包む最後の白い小さな布を取り払ってやった。
そして即座に小さな丘に口づける。とめどなく蜜が溢れ出す。その蜜を舌ですくって
1度自分の中で味わったあとあらためて同じ場所に塗りつけてやった。
「ふ…っ、あ…」
幾度か同じ動作を繰り返す。野梨子の動きが乱れてくる。
彼女の限界を悟ると、清四郎はその部分をジュッという音とともに吸い上げてやった。
「…!!」


803 :清×野 姫と保健室(5)R:03/08/15 01:12
小さな絶頂を越えて放心している彼女に間髪を与えず、
清四郎は膨張してきた自分自身をあてがった。
自分しか知らない野梨子の中。熱くて、潤んでいる。ずっと彼を待っていた。
ゆっくり上下する。
「いっ…」「息を吐いて…」2人の鼓動も、吐息も混ざってどちらのものか
わからなくなった。
遅ればせながら、痛みがだんだんと快感に変わっていく。
「…っはぁ…あ…」
その真っ赤な唇からこぼれる甘く細い声。
全てを自分のものに、声までを自分のものにしたくて恋人に口付ける。
さっきよりもっともっと熱い舌。想いが届くまで。

清四郎は動きを早めた。
野梨子はきつく目を閉じている。絶えず漏れる熱い吐息。
「っ、…」「せいしろ…っ」
もっと早く。もっと。もっと。
「あっ、あっ」「くっ…!」

汗で光った漆黒の艶髪が、2人の風に揺れた。


804 :清×野 姫と保健室(6)R:03/08/15 01:13
「……」優しく幼馴染みの髪を撫でる清四郎。

と。
コツ、コツ、コツ…  廊下を誰かが歩いてくる。
「先生!」「早く着替えて!!」

がらっ
「大丈夫?白鹿さん。…あら?どうしたの、顔が真っ赤よ」
「うなされていたみたいです。僕、今の時間自習でしたので」なんともない清四郎。
「起きますか?野梨子」
「い、いえ、まだちょっと。頭もうったみたいですし。…!?」
(悪魔…) 
布団をかけているその下は何も身につけていない野梨子の胸を彼はしっかり触っている。安心して出て行った先生を尻目に2ラウンドがはじまるのはほんの5分後の未来…♪



                             おしまい


805 :清×野 姫と保健室:03/08/15 01:16
ありがとうございました!
いつもオチが同じですみません。

806 :名無し草:03/08/15 02:32
>姫と保健室
清×野保健室セクース、キタ ━━(゚∀゚)━━ !!!
悪魔な清四郎がいいです。
この調子じゃ、野梨子の身体は瞬く間に開発されていきそう(w

ちょっとフライングだけど、前倒しでお祝いするのもいいよね。

807 :名無し草:03/08/15 04:33
ここも486KBになってきたし、そろそろ次スレの相談を。
あと2〜3日で10万ヒットいきそうだから、その前に
次スレを立てておいた方がいいと思うけど、どうだろう?
>2の前スレのところ以外、直す場所はないよね?

808 :名無し草:03/08/15 12:04
>姫と保健室
悪魔な清四郎イイ!
>布団をかけているその下は何も身につけていない野梨子の胸を彼はしっかり触っている。
ここに萌えますた。w
確かにちょっとフライングだけど、ここ最近スレが寂しかったので、前祝ってことでいいかも。
楽しませてもらいました。

>807
そうですね。祭前に次スレ立てた方が良さそうですね。
前スレのリンク以外、特に直すところは無いと思う。

809 :名無し草:03/08/15 12:09
>807
賛成でつ。
10万ヒットいったらすごいスピードで進みそうだしね。
(その位リクが叶えられることを祈りまつ)
直す所もそれでいいと思います。

それにしてもなかなか埋まらないね……スレ14






810 :山崎 渉:03/08/15 16:50
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン

811 :名無し草:03/08/15 18:01
スレ14は、今、863レスで461KB。
980レス超えるか、500KB超えるかするとdat落ちするみたいだけど、
レスで100近く、容量で40KB近く必要だから、まだまだ先だね。ヤレヤレ

812 :名無し草:03/08/15 20:46
なんでフライングなんだ?

813 :名無し草:03/08/16 00:45
>812
まゆこに
>10万ヒットした日から 2週間くらいを目安に、本スレに作品をウプ
とあったからではないかと。

814 :名無し草:03/08/16 02:47
フライングであろうと最近寂しかったから
嬉しい!
タイトルもいいな。

815 :名無し草:03/08/16 02:49
ちゃんとsageってなかった…
スマソ


816 :名無し草:03/08/16 10:29
数日ネットに繋げなかったんですが、久々に見たら自分のリクしたお話が早くも!
まゆこスレの273です。
清×野の保健室エチー嬉しいよう。心の底からこういうのを待ってました。(w
悪魔清四郎もいいし、野梨子が体育着っていうのも萌える!
私のリクにこたえていただいた作家さん、どうもありがとうございました。
10万ヒット後も沢山作品のうpがあるといいな〜。
とても楽しみ。

817 :名無し草:03/08/16 10:36
別にリクに応えて書いた作品とも限らんだろうに、自治厨うぜ。

818 :名無し草:03/08/16 10:46
>817
ログよくよもうねw

819 :名無し草:03/08/16 10:51
冒頭に、まゆこスレ273タンへ書いてあるからリクに応えた作品だと思うよ。

820 :名無し草:03/08/16 11:47
age

821 :有閑キャッツアイ編 番外:03/08/16 15:54
>>http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/10465646874/615
ちょっと、自分なりにつじつまを合わせてみたので書いてみます。

東京インペリアルホテルのロビーで、剣菱百合子は、硝子の向こう側の日本庭園で佇む
わが娘に溢れんばかりの愛情に満ちた眼差しを向けた。百合子は無意識に、ちょうど23
年前の、霞がかった穏やかなあの春の日を思い出した―。
その日、とある場所で、3組の夫婦が父親を失ったばかりの女の子達を引き取るべく集
まっていた。誰がどの子を引き取るかについて予め知らされておらず、3組ともどうした
ものか途方に暮れていた。どの子もそれぞれ愛らしく、ひとりを選ぶことなどできそうに
もなかったからだ。百合子はいっそ、3人とも連れて帰りたい衝動に駆られたが、他の2組
の夫婦のことを考えるとそれはできない。むしろ、一人息子の豊作がいる百合子達の方が、
本来ならば引き下がらねばならぬ立場だからだ。

続きます。

822 :名無し草:03/08/16 20:14
ぬおぉ〜キャッツ!このあと長いの来るのかな?
楽しみでつ。

823 :名無し草:03/08/17 03:35
今日中に10万ヒット行きそうなので、新スレを用意しておきました。
様子を見て、お引越ししてくださいな。

◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう16◇◆◇◆
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1061058759/

824 :名無し草:03/08/17 10:00
823タン、スレ立て乙です。
1O万ヒット祭り、今かrら楽しみだー!

825 :名無し草:03/08/17 20:41
スレ14、スレストかかってたね。良かった。
倉庫格納依頼してくれた方、乙でした!
さーて、お祭り盛り上がるといいな〜♪

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